+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー 作:ワンホットミニット
いっけな~い、遅刻遅刻☆
私、真田光輝!
ウルトラマンネクサスになれるどこにでもいる普通の高校生!
今日は大事な日なのに遅刻するなんて、も~~サイアク!☆
ドン
「キャッ!いった~い☆も~なんなの!」
「おいおい、誰にぶつかってるんだ?この、錦木 千束に。」
「千束にぶつかるなんて、どこの男ですか。この私、井ノ上 たきなにとっても、あなたは不愉快です。」
私の高校の1・2を争うイケメン女子!?
「・・・って、何その態度!ぶつかっても謝らないなんて、もー!プンプン☆だぞ!」
「おいおい、なんだその態度は?ふーん・・・面白ぇ男。」
「ずいぶん生意気ですね・・・面白い男ですね。顔、覚えましたから。」
「え、えぇぇぇぇぇぇっ!?☆」
こんなイケメン女子に目を付けられるなんて、これから私の学校生活、いったいどうなっちゃうの~!?☆
千束「・・・っていう夢をこの前見たんだよねー。」
光輝「なんやねんその夢。どっからツッコんだらええ?」
たきな「はいはい2人とも、もうすぐ着きますよ。」
「イェーーーー!!」
「い、いえー・・・」
もはやこちらもヤケクソに叫ぶしかなかった。
夜のBBQまでにお腹を空かせようということで、千束が持ちかけた提案。
それは・・・カラオケで歌ってお腹を空かせよう!ということだった。
確かにここなら汗もかかないしエアコンは効いているから終始涼しい。加えて、歌うことでお腹の運動になってペコペコになる、はず。それに、ドリンクバーだけ注文するから、水分を多く摂取すればよりお腹が空く、はず。というのが千束の考えである。
確かに、1曲あたりの消費カロリーも数キロカロリーと、僅かではあるが消費する。だが、それでも塵も積もればなんとやら、ではないが、いっぱい歌えば、普通の運動とさして変わらないカロリー消費量となるため、それを利用し、カラオケに頻繁に通うことで10キロ以上ダイエットしました!なんて人を、前にテレビで見たことがあるので、バカには出来ない。
とはいえ、千束から今からカラオケに行くぞ!と言われた当初は、たきなと2人してえぇ・・・?という反応だったものの、ただ、家にずっといてもお腹は空かないのは間違いない。加えて、BBQをするとなると、どのみち買い出しのために外に出る必要があるため、結果的にはOKを出し、ここまで来た、というわけだ。
もちろん出るとなれば、作務衣ではいられないため、紺色のシャツと黒のロングパンツに慌てて着替え、熱中症対策のためにバケットハットもかぶった。暑さ対策はちゃんとしないとならないし、そのために帽子も大事なことを肌でわかっているため、この夏の時期は帽子をかぶることが外出時は当たり前となっていた。
・・・まぁ、今帽子をかぶる理由はそれ以外にも、"ネクサスだから、なるべく目線を誰とも合わせたくない"、という理由もあるのだが。
もちろん、エボルトラスターも、シャツの裏のポケットに入れている。
そうして家の鍵を閉め、3人で例の車にへと乗り込み、出発する。当然、俺は運転免許をまだ持ってはいないため、必然的に後部座席に座ることになり、千束が東京からここまでの運転していたということで、今回の運転はたきながするということになり、千束は助手席に乗っている。
ドライブ中、2人と色々話はするものの、いつも3人で並んで歩いている時とは違う、車内という密室に加え、2人が運転席と助手席にいて、俺が後部座席にいるという、見慣れない光景。だけれど、居心地はずっと良い。なんとも不思議な感覚のドライブだった。
と、話を戻し、車を走らせること20分程度。目的のカラオケ屋に着いた。
田舎独特なのか、やたらと安いところがちらほらあるため、そこを提案したらそこに行こう!となり、早速来たわけだ。
ただ、俺も口には出さないが、もうわかっている。
これは、もう・・・
「(デートじゃん・・・)」
意識している女の子とこうして遊びに来るなど、これはもはや誰がどう考えてもデートだが、絶対口に出す訳にはいかなかった。
と、そんな折、スマホが振動し、慌ててちょっとごめん電話と声を掛け一度外に出て、電話を掛けてきた相手を確認する。
「クルミさん・・・?」
意外な相手に少し驚き、電話に出る。
「もしもし?」
『よー2人の彼女とのデート楽しんでるかー?』
何故この人はさも状況がわかっているかのように話すのか。その言葉に思わず吹き出してしまうも、慌てて電話に戻る。
「か、からかわないでくださいって!!」
『いや、誰がどう見たってカラオケに3人で行くなんてデートだろ。』
「いやいやいやいや!というかなんで知ってるんですか!?」
『お前らの行き先なんて手に取るようにわかってるのさ。』
「・・・お得意のやつですよね?」
『それはお前の想像に任せる。』
「ですけど、そもそもこれは千束が!『あいつらも、今日お前のとこ行くの楽しみにしてたんだぜ?』
クルミさんの予想外の言葉に少し驚き、えっ?と思わず口から驚きの言葉が出るものの、俺の様子を気にすることなく・・・いや違う。今どんな表情をしているのか、向こうは楽に想像出来ているのかもしれない。そんな俺の様子を気にすることなく、続きを話し出した。
『何日も前からずーっと、その話ばっかしてたけど、その話してる時のあいつら、すっげー楽しそうな顔してたぞ。だから、丁重にもてなしてやれよ?お前の地元なんだからな。』
・・・正直、少し驚いた。
まさか、2人がここまで楽しみにしてくれているなんてと思うが、ただ、よくよく考えればそうだ。
彼女達は、リコリスだ。普通の女の子とは、違う生き方をしている。だからこそ、"普通のこの年頃の女子高生が当たり前に経験することを、彼女達はしてきていないことが多い。"
その中には、こうして、"年の近い友達の家に遊びに行く"、ということも含まれているはずだ。
そのことに思い至り、楽しみにしていたということを心の中で嚙み締め、電話の向こうのクルミさんに返した。
「・・・わかってますって。めちゃくちゃもてなしますよ。俺の地元なんですから。」
お互いの言葉にそれ以上は何も言わず、ふふっと笑い出す。
『じゃあな。思いっきり楽しめよ、若人ども。』
「了解です。明日の弁当、楽しみにしててください。何せ、カキフライですから。」
『おっ、随分いいもの用意してくれるな。期待してるぞ~。』
それだけ言うと電話を切り、2人の待つ部屋へと戻っていく。
「おかえりー誰から?」
「・・・あぁごめん、母さんから。2人に迷惑かけてないかーってさ。」
流石にクルミさんからだなんて言えるわけがなく、咄嗟に母さんからの電話だったという嘘をついてしまった。
というより、あんな内容、2人に伝えられるわけがない。今日ここに来るのを楽しみにしてたってクルミさんから聞いたよーなんて口に出したら、この場が俺の死に場所になっちまう。
向こうもすぐに母さんからの電話ということに納得し、さぁさぁさぁ歌いましょう歌いましょう!と千束が声を掛けてくれたため、部屋に設置されていたマイクを取り、歌う準備を始める。
「どうする?誰から歌う誰から歌う!?というわけで光輝どうぞ!」
「はぁ!?なんでよ!?というかさっき誰から歌うって相談してたじゃん!?」
「だって光輝一番年下だしー。私達年上だしー。」
「年上命令ということで、お願いします。」
「そりゃそうだけどたきなと俺同学年じゃん・・・」
「学校という概念を知らないのでわかりません。」
「・・・そうですね・・・」
こういう時はもうどう言っても仕方がない。歌うしかない。というか、歌うしかないのだ!やってやろうそうしよう!
「俺基本知らない曲歌うよ!?いいね!?」
「いいよー!さぁ張り切ってどうぞー!」
仕方がない、と思い、カラオケによくあるマシンを操作し、歌おうと決めた曲を探し、入れていく。
「“かもしれない世界なら 届く可能性がある”って 今はただひたすらに 戻れない夜を越え 辿ってゆくその足跡を あなたが居る場所まで行け」
ここ最近、よく聞いているバンドの曲を歌いあげると、おぉぉー!と千束の声が上がる。
「いい曲じゃーん!やるじゃーん!」
「でしょー!さぁ後輩が歌ったんだから先輩2人頼みましたよ!!」
「いいよー!さぁたきな!歌うよ!2人で歌うよカモンカモンカモン!!」
「えぇっ!?いきなり2人ですか!?」
「おらやったれやったれー!」
1曲歌いあげたため、緊張の糸が解けたのか、もうやぶれかぶれになり、テンションもおかしくなっているが、もう気にしないことにした。
千束に言われるがまま、たきなもマイクを持ち、歌おうとする曲を入れ終わると、そのイントロが流れ出す。
「「あの日描いた想いはいつか それぞれの未来を照らして 今は小さなフレ一ズでも みんなに届くと信じて」」
「(うたうっま!そして・・・かっっっっわ!)」
内心、アイドルのライブだ・・・そんなことを思いつつ、2人の歌のうまさと可愛さに、盛り上がらないわけがない。
そうしてその後も歌い続け、千束のソロやたきなのソロも聞き、そしてなんと、3人で歌ったりなんかもした。
「「「誰かが泣いてたら 抱きしめよう それだけでいい 誰かが笑ってたら 肩を組もう それだけでいい」」」
そんなカラオケが続くこと・・・実に3時間。
全員出し尽くしたというくらい、結構疲れたが、車内ではお喋りが未だ続いている。
「いやー歌った歌った!楽しかったー!」
「明日の喉が心配だよ・・・」
「私もです・・・で、次どこ行きます?」
そうたきなから言われ、目的地は既に決めている。
時刻は現在午後の2時。ならば、次にやることは、これしかない。
「買い出し、行こっか。」
というわけで、そこからまたもや車を走らせてもらい、走ること10分。この辺りのスーパーにへとやって来た。
「ふぃー着いたー!てか初めて見るこのスーパー!」
「見たことないですね・・・あと、東京と違って駐車場も広いですね。」
「まぁそりゃね。何せ千葉のご当地スーパーだし。それこそ俺だって、北村さんとか常連の皆さんと話してて、ここが千葉にしかないスーパーなんだーって知ったくらいだし。」
そんな話をしながら車から降りて店内まで向かおうとする中、ふと思い出したことがあった。
「(・・・そういえばあの店、確かこっから割と近くにあんだよな・・・ネクサスになってから行けてないんだよなぁ・・・そろそろ顔見せにも行かなきゃな・・・)」
と、そんなことを思いながら入口の方へと向かっていた矢先、肩に手を置かれた。千束とたきなは前を歩いているため、この2人では当然ない。そのため、誰だ?となり、後ろを振り返る。
「Hey man.」
その人物は英語で話しかけてきたが、ただ、海外の方ではなく、日本人だ。
そして、そのように挨拶するということは、見ず知らずの人ではない、ということだ。
だからこそ、俺にとってもこの人は、よーく知っている人。
ウォッシュ加工の黒のヴィンテージだと思われるTシャツを着ており、ジーンズに緑色のスニーカーにサングラスに細いネックレス。茶色のメッシュキャップを被っているが、そこからもわかる、金髪と黒髪が真ん中で別れているという、奇抜すぎる髪色。というか今はこうで、前は緑色なんてこともあったし、坊主頭の時もあった。そして・・・"体の所々に入っている、アート。"
とてつもなくイカつい見た目をした、一見するとそちらの人としか見えないそのビジュアル。知らない人からしたら、完全に近寄りがたい存在だろう。
ただ、俺はその人の顔を見て、一瞬で顔が綻び、そしてテンションが一気に上がった。
「Hey maaaaaaaaaannnn!!」
思わず大声を出して挨拶をし、手を握ってからそのままハグをする。この人と俺の、挨拶であり、流儀。
「おい久しぶりー!元気だったか!?」
「こちらこそお久しぶりです!ちょうど今思い出してて、こんなとこで会えるなんて思ってもみなかったです!!あっ、今日お店定休日でしたか!?」
「あぁそうそう。だからさっきまでケイと2人でデートして、ほんでっから嫁に頼まれた夕飯の調達しに来た。てかお前どうやって来た?原付?」
「いえいえそうじゃないです・・・あ。」
今の今まで思っていた人物が目の前に出てきてくれたことと、こんな場所で会えたことに驚き、嬉しさが隠せなくなってテンションも上がり、話も弾む・・・のだが、忘れていた。というより、今の言葉で思い出した。
「こ、光輝、どしたの・・・?」
「その人、誰ですか・・・?」
2人のことを、完全に忘れていた。
それと同時に、俺の"アニキ"も2人に気付き、目が点になって少ししてから、肩をバシバシと叩き始めた。
「おいお前どうしたよそんな可愛い子!?マジ!?これ!?コレか!?てか、おめぇ白昼堂々二股!?お前いつからそんなスケコマシなったよ!?」
キャピキャピした笑顔を向けながら、目の前に小指を立ててきたため、だー違いますって違いますって!あとめっちゃ痛いですってば!と大慌てで茶化すのを止めさせる。
というわけで、この2人にも紹介しないと。
「あぁごめんね2人とも。この人は"空さん"。俺がいつも買ってる服屋のオーナーさんで、それで・・・俺にとってはこの地元の兄貴分的な人。」
2人に俺にとっての兄貴分、空さんを紹介する。とはいえ、2人も内心驚いているのが見てわかる。
確かに、見た目も正直いかついため、一見すると、ヤバい人に見えるだろう。確かに、俺も最初に会った時には怖かった。正直、生きて帰れないと思った。
でも、話を聞く限り、確かに昔はそうだったと本人は言うけれど、今のこの人は全くもって、そんな人ではない。
この街で一番、と断言するほど、熱いハートを持った、カッコイイ大人だ。
「よろしくな。あー、悪ぃ、名前は?」
「錦木 千束でーす!」
「井ノ上 たきなです。」
「そうか、千束にたきなか。よろしくな。後、こっちがウチの娘。」
千束とたきなと握手を交わした後、空さんの右手をギュッと握っている、小さな女の子に目を向ける。
「ケイちゃん大きくなりましたねー!あーごめんねごめんね、驚かせちゃって。」
そう。さっき話してたケイちゃんとは、空さんの娘さんだ。だから、デート、なんて言っていたが、要は、親子のスキンシップだ。見た目はどうあれ、自分の子供を心から愛しているから、やっぱり空さんはカッコいい。
「うわぁー可愛いー!!」
「まぁもう2歳だからな。つってもまだそんな喋れねぇけどな。」
「2歳ー!は〜かわわ〜!こんにちは!わたしちさと!こっちはたきな!」
「ふふっ。ケイちゃん。こんにちは。」
ケイちゃんの目線に合わせてしゃがんで目を見て千束とたきなは挨拶をすると、キャッキャとケイちゃんも喜んでいる。それを見て2人もまた笑顔を浮かべている。
流石、幼稚園でボランティアもよくしているだけあって、子供との接し方は上手い。あっという間に、ケイちゃんが2人に心を許しているのがすぐに見て取れた。
「でよ光輝、どうしたんだこの子達?どこで出会ったんだよ?」
「あーんと・・・バイト、仲間です。」
「・・・バイト仲間ぁ?」
「なるほどな・・・そんなことがあって仲良くなったと・・・おめぇ今まで貯めてきた分の運使い果たしたな。」
「ホントそうですね・・・自分も時々不安になりますよ。」
「心配すんな。運なんて毎日生まれっからよ。」
店内に入ると、俺は空さんにどうやって千束とたきなと仲良くなったのかということを伝えていた。もちろん、ネクサスとリコリスということは秘密にしてだが。
かつ、その流れで八神さんと知り合ったことも伝えると、あの空さんでさえマジかよ!?となっていたので、改めて、とんでもない人とも深い仲になってしまったんだなと、思い知らされることになった。
「ほらー!ケイちゃん、やー!」
「ふふっ、ケイちゃん、次はどこ行こっか?お菓子あのお兄ちゃんに買ってもらおっか?」
「おかし!」
その一方、千束とたきなはケイちゃんとそれぞれ手を繋いで、親以上に遊んであげてる。流石は幼稚園にも手伝い行ってるだけある・・・いやちょい待てやたきな。まぁケイちゃんのためなら仕方ないけれど・・・
「千束もたきなもめちゃくちゃうまいな扱い!何かやってんのか?」
「私達、時々幼稚園行ってて、お手伝いもしてるんです。」
「へぇーそうなのか。何?将来はそっち志望なのか?」
「そういうわけじゃないんですけど、それもありですねー!というか、空さんはどうやって光輝と知り合いになったんですか?」
「光輝と全く正反対な人だと思うんですけど。」
どういう意味じゃい、と突っ込むも、その理由は俺から話すことにした。
「・・・俺がね、迷子になった時に助けてくれたんだよ、空さんが。」
「「迷子?」」
「そうそう。高校入学してからすぐ、俺が原付免許取ってからあのスーパーカブ乗るってことになって。元々父さんが若い頃に乗ってたやつのおさがりなんだけどね。それで練習するぞー!って思って走らせたら・・・俺、とんでもない方向音痴でさ、数キロ先で道に迷って、それであてどなく走ってたらよくわかんないとこ着いちゃったのよ。」
事実とはいえ、流石にこんなことを言うのは恥ずかしいが、とはいえ嘘をついたところで何の意味もないため正直に伝えると、さっきまで興味津々だった2人の目が、ジトっとした目に変わっている。
その目がどういう意味なのか、俺にはわかる。
これは・・・蔑んでいる目だ。
「ダッセー・・・」
「かっこ悪・・・」
「言われてんぞ?」
「うるせーなー!本当のことだから仕方ないでしょ!?・・・で、それでどっかの道の路肩停めてスマホで地図見てた時に、たまたまバイク走らせてた空さんが俺に気付いてくれたの。」
「そうだったな。いや何しろ、こんなガキが乗ってるとは思えねぇ白と緑のスーパーカブに乗って、路肩に停めてるもんで気になってな。ほんで、話して道に迷ってるってことで俺が送ってやって。牽引もしてな。」
「あの時は本当に助かりました・・・それで家着いて親と話したら意気投合して、それで空さんお店もやってて、それでいて飲食もやってるってことで、ウチで作ってるもの気に入ってくれて、ハチミツ卸したりもしてるの。だからね、実を言うと、"ウチのハチミツを初めてお店に卸した先って、実は空さんとこなのよ。"」
そう。実のところ、リコリコが初めてウチのハチミツを使ったお店ではなく、その前に、空さんのお店が、初めて使ってもらったお店なのだ。
「えっそうなの!?ウチが初めてじゃなかったのかぁ・・・」
そのことに少しだけ千束はがっかりしていたようだったが、いやいや、と付け加え、後付けの説明をしていく。
「といっても、量で言えば、リコリコほど大量に卸してるわけじゃないよ。空さんのところでは、ハニーマスタードチキンで使うっていうのが主だから、食べる人からしてもなかなか気付いてはもらえないところだし、それで言えば、リコリコの方が全然反応いいよ。」
念のため、リコリコの方が量の多さやウケがいいということを伝えつつも、2人の興味は意外なところに移っていた。
「ハニーマスタードチキンって・・・なんだかハワイで食べてたご飯みたいですね。」
「だよねー!私もなんか思い出しちゃった!あー、またハワイ行きたいなー!」
「ん?なんだ?お前らハワイそんな詳しいのか?」
「実はウチ、ハワイにも支店があるんですよ。まぁ、キッチンカーなんですけど。少し前まで、そっちに住みながら営業していたので、私も千束も、必然的に詳しくなったんです。」
「そうなのか。いやしかしすげぇな。俺でもまだそこまでは手出せてねぇわ。」
「そうなんですよー!ちなみに空さんのとこ、さっき服屋って光輝が言ってましたけど、飲食店もやってるんですか?」
「ああ、ウチは・・・まあ、なんつーか・・・何でも屋だな。」
何でも屋?と2人も疑問に思うが、それは確かにそうだ。
空さんのお店は・・・本当に変わっているからだ。
「俺、ルーツが元々アメリカにあってな。だから、出してる飯もブリトーとか、この辺りじゃ食えないような、アメリカに近いものを提供しててな。まあ、料理は別のヤツがメインでやってんだけどな。で、古着も好きだから古着込みでアパレルの販売も別のフロアでしててな。」
「・・・凄いお店ですね。」
「まあな。俺はこの店、自分の好きなものを発信するお店を出したいっていう昔からの夢もあったんだけどな、今はそれだけじゃなくて、誰かのSafe Spotになればいいと思っててな。」
「セーフスポット・・・?」
「ああ。ウチに来る奴って、こう・・・社会からはみ出しそうになる未成年のガキどもも結構来るんだ。ただ、そういう奴らが非行起こして物とか壊して逮捕とかされる前に、楽器弾いてそれ発散させろっつって、ウチの3階にはギターも置いてあんだよ。」
「えっ!?ギターも置いてあるんですか!?」
「そうそう。だから空さんのお店、本当に何でも屋さんなの。」
「で、ついでに、アンプも置いてあるから、それでたまたま鉢合わせたやつと話して、えっお前ギターやってるの?俺もやってんだよとか、俺ベースやってんよ。じゃあ後ドラム探してバンドやろうぜってなったら、それこそ絶対にそういう道には走らねぇって俺は信じてっから。本当だったら東京とかでも良かったのかもしれねぇけどよ、地元だからこそ、店構えたんだよ。まあ、入るのは抵抗あるかもしんねぇけどよ、入っちまえばもう後はIt's My Paradiseになっからよ。それに・・・」
そう言うと、俺の方を見ながら、親指を俺の方に向けた。
「こういう、非行には走らねぇだろうけど、学校に居場所がねえっつう、教室の隅っこにいるような奴だって、仲間に迎え入れてぇんだよ。」
「ちょっと空さん!?それどういう意味っすか!?学校行くのは好きですからね俺!?」
一人慌てていると、全員が俺の様子を見てゲラゲラと笑い出している。
「ほらーケイちゃん見てみー。あれがぼっちだぞー。ああいうのになっちゃダメだぞー?」
「ぼち?」
「こら千束!ケイちゃんに余計な言葉教えないの!」
ケイちゃんに覚えさせてはならない言葉を教えないよう千束を諌めていると、空さんもゲラゲラと笑っている。
その後も世間話をしながら俺達はいくつもの食材をカゴに入れていく。野菜はウチのものや近所からのおすそ分けで貰ったものがあることや、メインディッシュは先程貰った牡蠣と伊勢海老になるため、基本はお肉だけだが、3人で食べるには中々な量になっている気もするが・・・まぁ最悪明日のお弁当に何かしらの形で入れよう。ちなみに途中、ケイちゃんにもお菓子とジュース、それとアイスも買ってあげた。ケイちゃんのためならば、仕方がない。
そしてようやく、レジに着いたため、とりあえず空さんが前に並び、俺は違うレーンに移ろうとすると・・・
「おい、後ろ来い。」
「えっ?」
いいから、と言われ仕方なくではあるが、その後ろに並ぶ。
そして空さんの番となり、レジにかごを置くと、俺達の方を見てきた。
「お前らも置け。」
「えっ?」
「大丈夫だ後で払え。」
そう言われ、後で払うのなら、ということで納得し、一緒に会計を済ませてもらった。
そしてお会計後、袋詰めのスペースまで持って行き、お財布を出し、財布の口を開けた。
「何出してんだ?」
「えっ?いや後で払えって言われたので・・・」
「後で払えっつったろ?だから、今じゃねぇ。気にすんな。」
「いやいやいやいや空さん!?ダメですってそんなの!」
「そうですよ!私達の分は私達が払いますから!」
後で払え、というのは、今ではなかった。それはつまり、今回は空さんからの奢りということ。
それに驚き、慌てて駄目だと返すと、たきなも同じ気持ちであり、払うということを伝えると、空さんは少しだけ、めんどくせぇ、と言いたげな表情に変わった。
「おめえらほんと細けぇな!いいんだよんなみみっちいこと。ガキが余計なこと気にすんな。大人の俺がおめぇらみてぇなガキからせびってるのなんか、クソダセぇだろ?」
「ですけど・・・」
「それに、千束もたきなも東京からわざわざ来てんだろ?だったら地元の俺らがもてなしてやんなきゃいけねぇだろうよ?そんなに心配するくれえなら、今度店来て金落とせ!それと千束とたきなも連れてこい!それでいいからよ!わかったか!?」
空さんから提示された交換条件。それに驚くも、空さんらしいやり方に納得し、こちらも腑に落ちた。
確かにそれなら、お店の利益にもなり、ウィンウィンな関係になる。それに納得し、先程までの不安は無くなった。
「・・・はい!ご馳走様です!」
「・・・ありがとうございます。それじゃあ今度またこっちに来た時は、必ず寄らせてもらいますね。」
たきなと2人、空さんに感謝を伝える。が、俺達2人は、忘れていた。
「うっはー!空さん太っ腹ー!ごちそうさまでーす!」
千束は、素直にこんなリアクションを取るのだということを。
「ほら、こういうリアクション取ってりゃいいんだよ。」
「「いえ、千束はアホなので。」」
「おいおめーら、ひっぱたくぞ?」
息をぴったり合わせ、千束の性格を言うと、空さんも笑っていたが、ようやく、買ったものの袋詰めをしていく。
袋詰めをしながら終始思っていたことだが、やはり空さんは本当に、いつ会っても変わらない。熱い大人であり、この地元で一番カッコいい兄貴だ。
そうして袋詰めを終えた後、お互いの買い物袋を持ち、空さんの車にまずは向かう。
そして見えてきた、空さんの車。
「うおぉぉぉぉすっげーーーー!アメ車だアメ車ーーー!!」
千束が大反応しているが、確かに映画好きの千束ならば、反応しても当然だろう。
空さんの愛車は、ノーズの長い、スポーツカータイプの、昔のアメリカの車。元々アメ車が好きだという理由から、色々探し回り、やっとのことでこの車を手に入れたそうだが、当然だが、こんな車に乗っている人なんて、この街では空さん以外いないため、これが空さんだとわかる目印にもなっている。
後部座席に買った荷物を置き、改めてお礼とあいさつをし、俺達も車に戻ろうとする。
「おい光輝、お前ちょっと話あるから残れ。」
そんな中、空さんに呼び止められたので、2人を先に行かせてからなんだろうと思いつつも、ちょっと待ってろと言われたため、まずはケイちゃんをチャイルドシートに乗せ、ケイちゃんに先程帰りがけに買ったソフトクリーム型アイスのふたを開けて手渡した後、空さんはエンジンをかけて車のエアコンを入れてから、俺に向き合った。
「Hey, you. Believe in yourself.」
「・・・えっ?」
突然、英語で語りかけられたため、一瞬ぽかんとしてしまうが、その内容は、高校生どころか、中学生でもわかりそうな内容だ。
だが、そのように言った意味や、わざわざ英語で言った意味を踏まえると、まさかかもしれないが・・・その本質をわからないふりをして、空さんに尋ねてみた。
「あの、空さんどうしたんすか突然・・・?」
「んあ、いや、なんつーか、前よりもおめぇが悩んでるような気がしてな。だから言った。大丈夫だよおめぇなら。」
その説明を聞いて、おそらくだが、確信したことがある。
・・・多分、空さんは俺の中にあるもう一人の存在のことを、わかってはいない。
ただ、この人は昔からそうなのだが、第六感というか、人の機敏に対して物凄く敏感なところがあり、指摘すると、かなりの高確率で当たることがある。本人にも何かしてるんですかと聞いたことがあるが、特段何もしていないということなので、天性の才能なのだろう。
だからこそ、ただこの人は、俺が何となしに、前よりも悩んでいる。そんな雰囲気を感じたからこそ、こう言ってくれたことに、少し胸が熱くなってくる感覚を感じながら、ありがとうございますと、感謝の言葉を口にする。
「あぁそんだけ。じゃあ千束とたきな待たせてっからもういいぞ。」
・・・忘れてた。熱い人なんだけど、用済んだらさっさと帰れ的な、乱暴な面も多い人だったということを。さすが元ヤンチャしてた人。根っこは変わらん。
「それじゃ、ありがとうございました!ご馳走様でした!ケイちゃんもまたね!はいたーっち。」
「たち!」
「またな!今度は3人で店来いよ!」
「もちろんです!それじゃ!」
出てからあいさつをし、ケイちゃんと優しくハイタッチを交わしてから、俺は慌てて千束とたきなが待つ車にへと、駆け足で戻っていく。
「しっかしあれだよなぁ。光輝もあの2人のこと好きだけどよ・・・"あの2人だって、あいつのことめっちゃ好きじゃねぇかよ。"」
「ごめんごめん!お待たせ!」
「おかえりー。何話してたの?」
「ん-とね・・・話してたっていうより・・・自分を信じろよって励まされた。」
「空さん、まさか光輝のこと・・・!?」
「いや、多分わかってはないと思う。ただ空さんはね、なんか、オーラが見える、みたいな人なんだよ。だから好かれるんだけどね。」
千束とたきなが待つ車に戻ると、先程まであったことを話していた。ネクサスのことがまた一人バレたというわけではないため、そこは向こうも一安心してくれたが、ただ、もし空さんが俺がネクサスだということを知ったとしても、きっと今日と変わらず、また背中を押してくれると、俺は信じている。
あの人は、いつもカッコよくて、落ちこぼれを絶対に出さないアクションを常にしてくれる。イカツイけど誰に対してもフレンドリーで、熱がある大人。大人になるのって、悪くないかもしれないと思わせてくれる一人だ。
そんなことを思っていると、千束とたきなが俺の方を見て話し掛けてきた。
「本当に光輝の周りには、いい人しかいないですね。」
「ホントホント。めっちゃ怖そうなのに話したら超良い人ばっかだもん。光輝、本当に人に恵まれてるね。」
「・・・でしょ?俺はだから、この街が、人が好きなんだ。」
「なんか、うらやましいなー。こんないい地元があって。」
「錦糸町も浅草も、2人にとってみたらいい地元でしょ?」
「まぁね~!・・・たきな、また絶対ここ遊び来ようね!」
「えぇ。こんないい場所、他にないですし。」
そう言ってくれて、素直に嬉しかった。千束とたきなにも、俺の故郷がいい場所だと心から思ってくれたなら何よりだ。
そうしてエンジンをかけ、たきなが車を走らせる。その横では先程同様、千束が茶々を入れている中、俺は車窓から景色を眺めている。
「・・・あ、そうだった。忘れてた。」
その時、思い出したことがあった。
俺が呟いたことに対し、2人も会話を止め、どうしたの?と質問をしてきた。
「あのね、言うの忘れてたんだけど、空さんとナツばあ、知り合いでね、で、空さんの今のお店の建物紹介したの、ナツばあなんだよね。」
「「えっ!?」」
そう。すっかり忘れていたのだが、ナツばあと空さんは20年以上の知り合いであり、それこそ空さんが10代で最もヤンチャしていた頃に世話になった人なのだという。
その関係が未だに続いており、空さんがお店を出そうかということを計画していた際、現在の店舗であり、当時空いていたその建物を紹介したのが、ナツばなのだという。
以前、空さんにバイト先を聞かれた際に話したところ、マジかよとなり、このような経緯を説明してくれた。当時それを聞いた時に、世間は狭い、と思いつつ、こんな派手なビジュアルの人同士だから、惹きつけあったのかなぁ・・・なんて思ったこともあるが、下手なことを言うと、両者から拳or足が飛んでくる可能性があるため、絶対言わなかったのだが。
なので、そのような経緯を説明すると・・・
「・・・ナツさん、何者なの?」
ですよね、という反応が返ってきた。俺も時々、知りたくなる。
そうこうしているうちに、段々とだが、眠気がやってきた・・・
「おいおい自分が運転出来ないからって寝ようとしてんじゃねぇぞてめぇ何様だこらーー!!」
その様子を見た千束が大声でこちらを注意してきたため、ちょうど寝落ちしかけていた俺にとっては驚きと同時に、いい目覚ましとなったため、再び目が覚めた俺は、窓から流れる風景を再び眺める。
「(・・・あれ?)」
と、そんな中ふと、気付いたことがある。
「(・・・俺、今のところ何もしてねぇじゃん・・・)」
よくよく考えてみれば、今朝食べたパンだって母さんが買ってきてくれたもの。今日食べる牡蠣と伊勢海老だってナツばあがくれたもの。さっきカラオケを楽しんだけれど、それも父さんが出してくれたもので支払った。そして、さっきの買い物も、空さんが支払ってくれた。
それに、家でBBQをするとはいえど、基本的には家に常備されているものなので、自分で買っているわけではない。
ともすると、つまり・・・"今のところ、俺、特段何ももてなしてねぇじゃん"、と、今になってはたと気が付いた。
別にそんなこと気にする必要もないのかもしれないし、明日お弁当を作るため、それだけでいいのかもしれない。
だが、とはいえ、何かしてあげたいと思った。せっかくこの2人が来ているのだ。ここでしか出来ないこととか、田舎ならではの体験を・・・
「(・・・あっ。)」
そこまで考えて、体験、というところで、あることを思い付いた。
それは、ここでしか出来ないことや、田舎ならではの体験、というわけではないが、少なくとも、この2人に俺がさせてあげられる唯一の体験であり、父さんも母さんもいないからこそ出来る、ある一つの事を思い付いた。
けれど、そのことをするのに、"一瞬ためらいもした。"
だが、この2人はチームであり、パートナーであり、大切な友達であり、片思い中の相手、という、俺にとって特別な存在であるからこそ、その迷いを振り切った。
「(・・・それしかないよな。俺がしてあげられることって・・・いいよね?2人も俺の命の恩人だし。)」
─────喫茶リコリコ
「あーもー!いい男だと思ったらなーんで年収偽ってやがんだよあのやろー!!」
一方、店休日の喫茶リコリコでは、定休日にもかかわらず、ミズキがカウンターのいつもの席に座り、これまた見慣れた泥酔、とラベルに書かれた日本酒をコップに入れて飲みつつ、バン、バン、と、割れんばかりの勢いでテーブルに拳を何度も打ちつけていた。
「・・・だからってここに来て飲んだくれんな。ほんと、ボクの静かな時間を邪魔しないでくれ。」
「うっさいわね!これが飲まずにいられるか!って話よ!高収入だと思ったらまさかの年収偽り!これがマッチングアプリの闇!あーもー私の王子様はどこにいるのよー!あーもうううう・・・」
そのミズキの口からは、先程までマッチングアプリで出会っていた男の愚痴が続いていた。それも、店に来てから今まで、ずっとこの調子だ。
なんでも、今日マッチングした男と、レストランで食事をしながら話をし、当初は良いと思っていたのだが、しばらくしてから、ん?と疑問に感じた点がミズキにはあり、話を聞いてみたところ、実は年収を偽って書いていたと告白されたため、そこで終わり・・・となり、その憂さ晴らしをするためにも、やけ酒を飲みにリコリコへと来たわけだ。
「(・・・やっぱな。言った方が良かったかもしれないけど、ワンチャン人間性でカバー出来るかもな、って思ったけど、やっぱ無理だったか。)」
ただ、一方のクルミはうんざりしながら話を聞きつつ、内心では、やれやれ、という心持ちではいた。
というのも、実はこの話を聞かされてすぐ、今日会う相手の素性を調べており、どんな職業に就いているか、どんな家に住んでいるか。そして、どんな仕事をしていて、月給から導き出される年収や、口座残高といった、ほぼ全てのスペックを、お得意のハッキングで確認していたため、この日会う男が嘘をついていることも、当初からわかっていた。
だが、それでも言わなかったのは・・・"そういったものを上回る何かを、この男は持っており、そこでひょっとしたら、引っかかるものがあるかもしれない。"そう思ったからだ。
なんだかんだ、ミズキとも長い付き合いになってきた。相も変わらず、喧嘩ばかりしているが、ただ、身近な人の幸せを願わないほど、クルミも薄情ではない。特にここで働く仲間ならば、それは尚のこと。
そう思っているからこそ、あえて口にはしなかったが、結果はというと・・・ご覧のあり様である。
「やれやれ、全く、諸々の用事を終えて明日の仕込みのための準備をしに来たら・・・これじゃ、仕事しているのと変わらないな。」
愚痴を聞きながらそう口を挟んだのは、こちらもまた、諸々の用事を済ませ、明日の仕込みのためにやって来たミカだ。
ただ、ミカも今日は休みということや各所へ足を運ぶ用事があったからか、いつもの紫を基調とした和服ではなく、白い襟付きのシャツにズボンといった、いわゆる、クールビズスタイルな格好をしており、その格好のまま仕込みをしていた。
「まーったくおっさんも他人事だと思ってよー・・・どーせ私に何か言うつもりでしょ。ほーら言いなさいよー。」
「別に何も言わないさ。私が傷口に塩を塗るようなことをする人間だと思うか?」
不貞腐れ、憐れむような言葉をミズキは望んでいたが、ミカは最低限の言葉を伝えたうえで、それ以上は何も言わず、仕込みのために手を動かし続けている。
「・・・うっさいわよ。」
ミズキもまた、ミカの何も言わない優しさを感じ、それ以上は愚痴を出すことはなく、そっぽを向き、またちびちびと日本酒を飲み始めた。
その反応に他の2人もやれやれ、といったような表情をしながら、お互いにそれぞれのやることを続けている。
「そーいえば、千束とたきな、今頃どーしてんだろうな?」
そんな中ふと、クルミが今ここに居ない、あの2人のことを口に出した。
とはいえ、先程ミズキとミカが来る前に光輝には電話をしていたので、おそらく今も楽しいことをしているのだろうとは思っているのだが、一方のミズキは、知らないわよあんなガキんちょ共のこと、と吐き捨てるように言うと、コップに残っていた日本酒を一気に飲み干した。
そんなタイミングで、綺麗に3人のスマホが同時に振動した。無論、偶然なわけではない。同時に鳴るということはつまり、"全員に共通のメッセージが送られた"、ということだ。
3人それぞれ、スマホを確認すると、そこには一つのメッセージと、画像が付けられていた。
"光輝ん家でBBQ中ー!サイコー!!"
メッセージの送り主は千束であり、画像には撮影者である千束がピースをしており、その向こうには、屋外でBBQ用の鉄板を囲み、箸と紙皿を持ち、少し驚きながら千束の方を見るたきな。その真向かいに、片方の手にはトングと、もう片方の手には、なぜか伊勢海老を掴んでガッツポーズをし、ヤー!と言っているのが写真からも聞こえてきそうなほど、大口を開けた光輝の3人が映っていた。
「・・・あいつらいいもん食いすぎだろ。」
その写真を見て言ったミズキの一言に、ミカとクルミも、うんうん、と思わず頷いていた。
「・・・で、ミカ、どうなんだ?」
「どう・・・とは?」
そんな中、クルミは少し真剣な口調で、ミカに話しかけた。
いきなり何の脈絡もなく質問をされたため、何が言いたいのかわからず、思わず聞き返すと、より真剣な表情をしながら、クルミは口を開いた。
「単刀直入に言うぞ。"お前の娘が他の男に取られることについてどう思ってるんだ?"」
そのワードに、ミカだけでなく、日本酒を飲んでいたミズキも、少しだけ表情が真剣になる。
誰が、誰に取られるのか、というのは、もう言わなくてもわかっている。
その質問に対して、少し悩んだ後、ミカは重い口を開いた。
「・・・どこぞの馬の骨ともわからない男だったら、認めてないさ。ただ、彼は・・・私達全員、恩があるだろう?」
「まぁ・・・ね。私達全員、命救われてるわけだしね。」
「だから、その点においては、もうクリアしているさ。」
「へぇ、随分あっさりだな?」
「あぁ。それに、この店を預かる者として言わせてもらうが、彼を手放すことなんて、甘味を扱う店にとってもデメリットしかない。」
「まぁね。仕入れの値段も、これから先より減るっていうのは、たきなの試算からも出てるわけだし。」
「だからこそ、この先もずっと、真田家とは良好な関係を続けていきたい・・・と私は思っているよ。」
意外な回答だったのか、クルミはへぇー、という反応をしつつ、ミカは何かもったいぶるように、それに・・・と付け加えた。
「むしろ、私だけじゃなく、2人もそうなってほしいと思っているだろう?」
「・・・知らないわよ。ガキんちょ同士の色恋沙汰なんて。好きにやらせとけばいーんじゃないの。見せつけない限りは、どうなってもいいわよ。」
手をひらひらさせ、我相関せずというような態度を貫くということをミズキは宣言すると、そっぽを向いた。
「・・・あんなに似た者同士、周りがどうこう言って関係割くのが不可能ってもんでしょ。つーか、早く言いなさいっての。」
だが、誰とも顔を合わせないままだが、ミズキは独り言のように想いを口にした。
その言葉に、クルミも納得したような笑顔を浮かべる。
「・・・まぁな。お前ら、もう付き合っちゃえよって、何度思ったかわかんないな。しっかし、人殺しが出来ないリリベルに、人殺しをしないリコリスに、人を殺しすぎたリコリス。誰にも見られないで平和を守るリコリスに、誰からも見られる中で平和を守るウルトラマンネクサス。個人のためのリコリスと、世界中の人々のためのウルトラマンネクサス・・・本当、ちょっと並べてみただけでも、共通点もあるのに、まるで正反対。月と太陽みたいな関係だな。」
共通点はあるけれど、その多くは、正反対なことばかり。今クルミが言ったように、彼らの関係は、正反対である。正直、今このような関係になっているのが、奇跡なのかもしれない。
だが、それでも言えることがある。
「・・・それでも、お互いに支え合ってるし、求めあってるからな。だから、ボク達が何言おうが言うまいが、近いうちにくっつくだろ。あいつらは。」
クルミもまた、わかりきっていた。
"あの3人は、必ずそういう関係になる"と。
千束もたきなも、強いが人としてはクセがある。そんな彼女達を、光輝は支えている。
そんな光輝は、人としてクセがなく、誰に対してもフラットで強い・・・ように見せているだけで、心に深い傷を負っている。正確に言えば、現在進行形で、傷を負い続けている。
自分のせいではないのに、誰かを守れなかったこと。その誰かの身近な人の悲しみや恨み、それら全てを忘れないで、それでもこの世界を守るという、最も過酷な道を選択している。悲しみを隠して、笑い続けている。
だからこそ、千束もたきなも、そんな彼を支えようと、必死になっている。それは、自分達もそうだが。
そんなことを思っていると、ただ・・・と、ミカが零した。
「・・・まだ、"お義父さん"、と彼に呼ばれるわけにはいかないけれど、な。」
ミカの口から飛び出したまさかのワードに、しばらく沈黙が訪れた後、ミズキとクルミは同時に大笑いし出した。
「お、お義父さんっ!お義父さんって!!?おっさんの口からそんなワード聞くとは思わんかったわー!!あー面白!」
「いやいやミカ!流石にそれは気が早すぎだろ!!」
「いやいや、いつそうなってもおかしくはないだろう!」
「てかミカ、なんだ?もう光輝を”婿"扱いしてんのか!?」
「まさか、まだだよ。もう少し、頑張ってもらわないとな。」
そんな話をしている中、急にリコリコの固定電話が鳴った。
今日は休みではあるが、ここに電話をしてくるということは、DAか?そう思い、ミカは電話を取る。
「もしもし・・・あー、どうした?・・・いや、今日は俺とミズキとクルミの3人しかいないが・・・ほう、ほう、なるほど・・・それはいいな。」
だが、ミカの話し方からすると、どうやらDAからの電話ではなさそうであった。その後も少し話を続けた後、じゃあまた後で、という言葉の後にミカは電話を切ると、すぐさま2人の方を向いた。
「ミズキ、クルミ、少ししたら出るぞ。」
突然、この後外出するということを切り出した。しかも、ミカだけでなく、ミズキとクルミも含めた、3人でだという。
予想だにしない提案に驚くと同時に、いきなりこの後出るということに疑問を持ち、行くってどこによ?とミズキはミカに行き先を尋ねると、当のミカは少しニヤリとし、その目的地を言った。
「・・・"神室町"だ。」
神室町、そのまさかの場所に驚くも、その場所に行くということ。だとすれば、先程電話をしてきた相手は、まさか・・・!
だからこそ、先程までは飲んだくれていたミズキも、一瞬で目が覚め、期待を込めてミカに慌てて詰め寄る。
「えっ八神さん!?何!?八神さんからのお誘いなの!?」
「ああ。なんでも、知り合いの寿司屋から、今日どうやら予約が入ってたそうなんだが、急遽キャンセルになったっていうことで、仕入れた食材を無駄にするわけにもいかないから、誰でもいいから誘って食べてくれないないかと頼まれたそうだ。キャンセル代は貰ったそうだから、お代も割安でいいということだ。」
「へぇ~、なるほどな。」
納得しつつも、クルミもまた、その表情はニヤニヤが止まらないようである。
それもそうだ。何故なら、今日の夕飯は・・・
「・・・向こうはBBQ中だが、我々は、寿司と洒落込もうじゃないか。」
この後の夕食が決まったことで、全員、いそいそと、神室町に向かうための準備を整えていく─────
ひどい茶番からスタートしました。
お目汚し、失礼しました。
というわけで、2本目です。
リコリコショートムービー、面白かったですね。
(ちょっと( ,,`・ω・´)ンンン?と疑問に思うところも一個人としてはありましたが。面白いシーンとは別ですよ。)
そしてこのタイミングでの新キャラです。
モデルはもちろんいますが、それは言いません。
が、一つだけヒントを出すと、"スモーキーなギタリストサン"、です。
ちなみにそれで言うと、あのセリフは、ある曲の1フレーズから落とし込みました。
で、カラオケで歌った楽曲についてもご紹介させていただきます。
アーティスト名:FOMARE/楽曲名:GREY
使用楽曲コード:258-1475-3
アーティスト名:Claris/楽曲名:nexus
使用楽曲コード:179-7432-1
アーティスト名:PUFFY/楽曲名:誰かが
使用楽曲コード:500-4230-1
ネクサスの前でnexusをちさたきに歌わせるという暴挙
1曲目はあの作品というより、普通に私がこのバンドのファンだからです。
そして3曲目は、あの作品の映画の主題歌というよりも、ドラマCDで千束とたきなの2人でこのアーティストの曲を歌っていたという繋がりに加え、作詞・作曲を調べてみてください。
またしても、リスペクトを込めました。
そして、宣言している通り、次で最後です。
そしてついに、私がこの小説で一番書きたかったものを書きます。
言い過ぎかもしれませんが、世の中のちさたき二次創作に、一石投じるのではないかと思います。
あと、それとは別に、サプライズで、2つほど仕込んでいるものがあります。
読んでいただければ、おっ!?となるかもしれません。
ではまた、その日に。