+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー   作:ワンホットミニット

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The Last Day of Summer Vacation③

千束がミカさん達にメッセージを送る、その少し前に、話は遡る。

その連絡を送る前、俺達は家に帰ってきてから何をやっていたかというと・・・

 

 

 

「そうそう、その根元の部分から力入れてむしって。どっちかっていうと折る!くらいの気持ちで!」

「こ、う!?」

「そうそうそんな感じそんな感じ!」

「とうもろこしなんて自分で採るの初めてです・・・」

「いいでしょ?自分で採ったらより美味いんだよ。」

 

そう。この後のBBQ用の野菜の収穫だった。

とりあえず野菜に関してはウチのナスととうもろこし。それと後は貰い物のししとうと玉ねぎを少し焼けば完璧だ。

そんな中、千束が今収穫したばかりのとうもろこしを、キラキラとした目で見つめていた。

 

「ねぇ光輝、これ生でも食べられたりとかする!?私あーいうのやってみたかったんだー!」

「あーんとね・・・出来なかないけど、正直ひげ根口入ったりとかするから、あんまおすすめしないよ。それこそ、焼きとうもろこしにでもした方が美味しいからさ、ちょっと待っててよ。」

「焼きとうもろこし!これ1本まるまる焼いちゃう!?」

「もっちろん。やるべやるべ。」

「やるべって・・・方言ですか?」

 

つい方言じみた言葉が出てしまい、あっいっけね、となるが、そんな風な言葉が自然と出てしまうということは、もうそれだけお互い心を許しているということだろう。

というわけで野菜の収穫も終わったが、2人にはどうしても聞きたかった。

 

「農業体験・・・どう?またやりたい?」

「めっっっちゃたのしい!絶対また手伝い来るから!」

「まぁ、こんなこと、東京にいたらまずもって出来ませんもんね・・・私も、初めての体験でしたけど、楽しかったですよ。」

「ならよかった。たまには、土と触れ合うのも大切だよ?」

 

2人がこの経験を嫌がっていないことに一安心し、一度家まで戻り、収穫した野菜を洗い、野菜を切ることは2人に任せ、俺は外に出てBBQの準備を進めていく。

倉庫からバーベキューに使うコンロを取り出した後、外に置いてある物置からテーブルと椅子も引っ張り出す。コンロに炭を入れ、火を起こす準備を着々と進めていく。

そうこうしているうちに食材を切り終えた2人が来たため、そのテーブルに先程買ってきたお肉や飲み物、そして、貰った牡蠣や伊勢海老、野菜などを次々と乗せていく。

そんな中、やる前からわかっていたが、あることに思い至り、つい、想いが口から出てしまった。

 

 

 

「・・・いくらなんでも3人で食べるには豪華すぎるね・・・」

「・・・ですね。」

「・・・それを言っちゃあおしめぇよ光輝。」

 

 

 

「ではでは皆さん、いきますよいきますよ~!かんぱ~い!」

「「「かんぱーい!」」」

 

ジュージューと、色々なものが焼ける音をBGMに、乾杯の声が重なり、グラスをカーンと、小気味いい音と共に鳴らす。

買ってきたジュースの美味しさが、この暑さに見事にマッチする。

 

「ぷはぁーっ!幸せー!」

「暑いと美味しいですね・・・」

「たまらんねぇこれは・・・そういえばさ、今2人の間に置かれてるテーブル、俺と父さんの手作り。」

 

さらりと言うと、2人は驚いて思わず座っていたキャンプ用椅子をガタリと動かす。

 

「すっご!?これ作ったの!?」

「そうそう。キャンプ用椅子は安いの買ったんだけど、いい机なくてね。そんで、父さんから作るぞー!って言われてね・・・ちなみに母さんのためが目的。」

「流石憐さん・・・」

「本当に愛妻家ですね・・・この黒は塗料ですか?」

「いや、それね、俺と父さんで焼いたの。バーナーで表面燃やすことで防腐とか防水効果もあるから、それでかなりいい感じになったんだよ。」

 

そんなことを説明しながら、目の前のバーベキューコンロでとうもろこしをコロコロと焼いていく。ウチのバーベキューコンロは大型の2Way仕様となっており、右半分では鉄板で焼く・左半分は網で焼くといったことが出来るため、まずは網の部分を使って、とうもろこしを焼いていく。段々といい感じに焼き目がついてきたため、小さい器に入っているバターを溶かした醤油の容器に、ハケをちょんちょんとつけて、それをとうもろこしに満遍なく塗っていく。もうわかる。もううまい。

そうして焼けた1本のとうもろこしをトングで取り、俺のテーブルに置いたキャンプ用のまな板に乗せて、包丁を使って半分に切る。そしてそれを千束とたきなのそれぞれのお皿に乗せる。

 

「うっひゃー!絶対美味いやつー!いいのこれー!」

「いいのいいの。ささ、食べて食べて!」

「やったー!いただきまーす!」

 

一口かじるとその熱さに少しはふはふしているが、直ぐに終わって飲み込むと、2人の顔が綻ぶ。

 

「~~~っっ美味しーーー!」

「めちゃくちゃ美味しいですよこれ!この甘さと醤油の香ばしさが・・・たまんないです・・・」

 

この2人の顔と感想に、こちらの顔も自然に綻ぶ。

シンプルなものだけど、これが美味いし、俺は結局、こういう食べ物が大好きなのだ。おそらく2人だって、普段は凝ったものを食べることが多いはずであり、かつ、バーベキューなんて、2人が住んでいるところではあまり出来る場所も少ないだろう。無論、リコリコでだって、出来ないはずだ。だからこそ、今日はめいっぱい、バーベキューを楽しんでもらうつもりだ。

なら良かった、と思いながら、俺も片手にとうもろこしを持って齧りながら、目の前の鉄板に乗せている分厚い、大好物を焼いている。

 

「やっぱベーコンは厚切りじゃなきゃね。薄いベーコンも美味しいけどやっぱBBQでベーコン焼くんだったらこれだけ厚切りじゃなきゃ上手くないからね。あーソーセージも早く食いたい・・・加工肉はなんでこうも食欲をそそるのか・・・」

「ほらほら光輝ー!早く焼け早く焼けー!」

「・・・今日だけで絶対太りそうですね・・・」

 

早く食べさせろと急かす千束とは対照的に、たきなは体型のことを心配している。真面目なたきならしい考え方に納得する一方、千束はむすーっとした表情で、頬杖をつきながらたきなの方を見ていた。

 

「たーきなー。気にしなくていいんだよー今日くらいー。今日はこれまで頑張ってきた私達のご褒美ってことにしよーよー!」

「そうそう!せっかくなら美味しくいっぱい食べてよ!そうじゃなきゃ皆にも失礼だから!」

 

千束がそう言う一方、俺も気持ちは同じだった。

今日並んでいる食材のほとんどは、色々な人がくれたものだ。体型や今後のことを考えることも大事だけれど、皆がくれたものを無駄にするのは失礼にあたるため、2人でたきなを促す。

 

「・・・ふふっ、そうでしたね。だったら今日くらいは、何にも考えませんよ。」

 

俺達2人の催促に、たきなも納得してくれた。そして、自然と出すこの微笑み、何度見ても破壊力がえげつない。毎度思うけど、これ見せられて落ちない男はいない。

そして・・・今この2人の笑顔を独占しているのだと思うと、これはとてつもない優越感だ。

 

そんなことを思っていると、肉や野菜もいい感じに焼けてきた。さぁ、食うぞ!

 

「うっはーBBQらしくなってきた!」

「千束、ちゃんと野菜も食べてくださいね。」

「なんだよーたきなは私のおかんかよー!」

「栄養が偏るからです!」

「栄養以前にそもそもウチで作ったもんとか知り合いのもんだから食べてよ!!」

 

そんなことを言いながら、それぞれ思い思いに、焼けたものに手を伸ばし、お皿に乗せ、口に運んでいく。肉も野菜も、どれもこれもがとても美味しい。本当に、幸せな晩御飯だと思い、顔も自然に綻ぶが、2人の表情を見れば、気持ちは同じだということが伝わってくる表情をしている。

 

「野菜も美味しいです・・・とってもジューシーですね!」

「よかったー。なら作った甲斐があるよ。」

「豚肉もベーコンも野菜もどれも美味しー!おい光輝もっと食わせろー!」

「わかってるわかってるって。けど、それよりももっと大事なのはこっちでしょ!」

 

もったいぶるように言うと、持ってきた発泡スチロールの箱をテーブルの上に置き、蓋を開けた。

 

「あーっ!そうだそうだこれがあったかー!」

「そう、それじゃ・・・焼くか!」

 

牡蠣と、伊勢海老。

メインディッシュを、遂に焼く時が来た。

 

「あ、ちょっと待って!写真撮ろ写真!」

「オッケーいいよー!」

「えっちょっと!?」

 

そんな最中、千束が写真を撮ろうと言ってきたので、持っていたトングと伊勢海老を掴んでポーズを取ると、千束は写真を撮り終えた。たきなは写真を撮るということに少し驚いていた様子を写真に収められてしまったようだが、逆にそれがいい味となったかもしれない。

 

「よーしいい写真撮れたー!これリコリコのグループチャットにあげちゃおーっと。」

「・・・まぁ、店長たちならいいですか。」

「そうだね。SNSアップするってなったら流石に俺も止めるけどね・・・」

「流石に千束さんだってそんなことはせんよー。いいかのたきなさんに光輝さんや。こういう自慢は、フキにだけしとくんじゃよ。」

「なるほど。」

「春川さんにも迷惑かけるからやめなさい。」

 

春川さんに送るのもダメだと言いつつ、焼いている鉄板を右に寄せ、左の網の上に6個ほどの牡蠣と、伊勢海老をドカンと乗せる。牡蠣はまだわかるけど、伊勢海老は正直どのくらいで焼けるかわからないから、様子を見つつも、その間は鉄板の方で更にお肉を焼き、食べていく。そうしてしばらくしたら牡蠣の片面をひっくり返し、もう片面も焼いていき、しばらくすると牡蠣の口が開いてきたため、トングとナイフを使い、器用に殻を開けていく。

おおっ!という千束の声が聞こえてくるが手は止めず、伊勢海老もひっくり返してみたら赤く色づいてきたため、とりあえずこのくらいでいいだろうと思い、ひっくり返した後、まずは牡蠣をそれぞれのお皿に乗せれば、2人の目がキラキラしているのが見て取れる。

やけどしないようにね、と念押ししつつ、全員ふーふーと、息で少し冷ましてから口に運ぶと、その美味しさに全員の顔が綻ぶ。

 

「んまーーーー!!」

「とってもプリプリで肉厚・・・!」

「やっぱうめぇ・・・!」

 

その牡蠣の美味さに悶絶しつつも、伊勢海老もいい感じになってきたので網から一度下ろし、俺のところに置いてあるまな板の上に置き、軍手をはめてからふぅと一息入れると、伊勢海老を掴んだ。

 

「あっちあっちあっち!」

「ちょ、大丈夫!?」

「大丈夫大丈夫!ザ・ワンの火球背中で受けた時よりは熱くねぇから!」

「そんなのと比較しないでいいですからやけどしないでくださいよ!」

 

そんな冗談を言いつつ、伊勢海老を掴み、尻尾の部分をひねると、テレビでよく見るような、身が飛び出してきた。うおっ、と思わず声が出るも、手を止めず、なんとか身を取り出し、取り分けた分を千束とたきなにトングで渡していくと、我慢出来なかったのか、早速口に入れた。俺もまた、我慢ならず、口に運んだ。

 

「・・・うっっっっま!!」

「・・・美味しい・・・!」

「・・・やっべぇってこれ・・・!」

 

あまりの美味さに、全員が悶絶した。

 

ちなみにこの後、伊勢海老の殻から出汁を取り、伊勢海老の出汁は取ったのだが、これは明日の朝のお味噌汁用に取っておくことにした。

そしてシメには、鉄板の上で塩味の焼きそばを作った・・・だけでなく、俺の分を少し多めに残していた伊勢海老の身と、先程の牡蠣を焼いたものを3個入れた、超豪華な塩焼きそばを完成させた。

 

そのあまりの美味さに、パァン!と、無言のハイタッチを、3人で交わしたのは、言うまでもない。

 

 

 

 

そんな楽しいBBQもすっかり終わり、焚き火を囲んでまったりしている・・・かと思いきや、俺達は、あることに勤しんでいた。

それは・・・

 

「うわーっ、焼けてきた焼けてきた!」

 

3人、火の前にそれぞれ持っている竹串を近付け、クルクルしている。

その竹串の先端には、白い小さいものがある。

 

「ミカさんの和菓子も大好きだし、ウチのハチミツも好きだけど、でも俺はこれも好きなんだー、焼きマシュマロ。」

 

そう、3人で、マシュマロを焼いていた。つまるところ、デザートタイムだ。

少しずつ焦げ目がついたマシュマロを見ながら、もういいよと言うと、3人火から放し、口へ入れる。

その甘さと、ドロっとした口どけに、はふはふとなりつつも、全員の顔がほころぶ。

 

「ん~~~~!!最高!!」

「焼いただけなのに全然違う・・・」

「やっぱこれだなぁ・・・でもさ、せっかく焼きマシュマロやってるなら・・・」

 

そこまで言うと、更にあるものを取り出した。

 

「じゃじゃーん!」

 

それは、ビスケット。しかも、チョコビスケットだ。先程マシュマロを持ちに家へ戻ったついでに、こそっと持ってきておいたのだ。千束の目をごまかすのは大変だったが、いいサプライズとなったはずだ。

そこから、これから何をするのか察したのか、千束は喜び、たきなは少し頭を抱えていた。

 

「やっば!えっまさか!?」

「そう。しかも、乗っけるんじゃなくて、挟んじゃおうぜ?」

「キターーー!さっすが光輝!」

「・・・明日から私と千束、しばらく食事制限と運動しっかりしなきゃですね・・・」

「たきな、ごめんね。でももう、観念してね。美味しいものに罪は無いから。」

 

ここまで来たらもうなるようになれと、たきなも観念したのか、全員また、マシュマロを焼き出す。

そして、焼けたマシュマロをチョコビスケットの上に乗せると、更にその上からもう一枚乗せ、サンドする。

簡単、それでいて美味しい。同時に罪悪感たっぷり。けれど絶対、誰もが好きだという、スモアが出来上がった。

 

このスモアをもう皆待てないのか、かぶりつく。

その甘さに全員の顔がまたもやほころぶ中、BBQ前に淹れておいてくれたコーヒーに氷をたくさん入れ、アイスコーヒーにしたコーヒーを、全員、同じタイミングで口に運ぶ。

 

「・・・私、今んとこ人生で1番の晩ご飯だ・・・」

「・・・こんな幸せ、この世にあるんですね・・・」

「・・・最高・・・」

 

我々3人、おそらく今、世界一贅沢な晩ご飯をいただいている。全員、そう確信した。

 

 

 

そんな至福の時間を過ごしている中で、前々からずっと聞きたいことがあり、2人に尋ねてみた。

 

 

「あのさ・・・よかったらなんだけど、2人のこと、教えて。2人、ってか、リコリコはさ・・・去年、どんな事があったの?」

 

 

話のネタを作るではないが、前々からずっと、このことが気になっていた。

以前、たきなが俺に話してくれた、千束に助けられたと話してくれたこと。その話もそうだが、そもそもこうして出会うまでに、2人にはどんなことがあったのか、それをずっと、聞いてみたかったのだ。

 

「いいよ!それじゃあ私とたきなのなれそめ話を聞かせてやろう!って~と~、そうだなあ~・・・」

 

話をしてくれることにOKを出してくれたものの、そこまで言ってから、何かを千束は悩み始めた。その様子が気になり、たきなが質問をした。

 

「千束?どうしたんですか?」

「いやさーたきな、こういうのはさー、映画みたいにさー、タイトルがあって語った方がいいじゃーん。その方が話への没入感も出るっていうかさぁ~!」

「はぁ・・・そんなことでしたか。いいからさっさと話しましょう。」

「あーんもーたきなつーめーたーいー!ねーこーきー!なんかいいアイデアなーいー!私とたきなの去年の大冒険譚をまとめるいいタイトルとかさー!」

「いやいやいやいや、何も知らない状態で2人の話に相応しいタイトルなんてつけられるわけないでしょ。」

「大冒険譚って・・・そんな大層なものじゃないでしょ・・・」

 

いきなり俺に話が振られても、2人のなれそめやどんなことがあったかなんて知る由もないから、何も言えないしつけられるわけがない。

 

逆に、だったらさと、逆に千束にこんな提案をしてみることにした。

 

「じゃあさ、話を全部聞いてから、それから、もし千束とたきなに起こった話にタイトルをつけるとしたら、っていうのはどう?」

「・・・なるほど。そうきたか!それアリかも!」

「まぁ、確かにその方が時間も使いませんし、千束も満足出来るかもしれませんからね。」

「よかった。じゃあ聞かせてよ。2人のこと。」

 

2人とも納得をしてくれたため、ようやく、千束とたきなが出会ってから今までの話が始まった。

 

 

始まりは去年の4月、たきながその時対応していた銃取引の事件において、人質となってしまった仲間のリコリスを助けるため、銃取引の現場に居合わせた商人を全て殺害したことが原因で、DA本部から、リコリコに転属になったこと。そしてその初日から、トラブルがあったそうだ。

ちなみに、この銃取引というのが、去年起きたあの延空木のテロ事件に繋がる、全ての始まりだったそうだ。

 

それから少し経った後、リコリコにクルミさんが救助・護衛の依頼をし、その流れで、クルミさんもリコリコの仲間になったという。ちなみに最初からリコリコに住み込みとなったのだが、選んだ理由は、命を狙われない安全な場所だから、という理由からなのだそうだ。選んだ理由がクルミさんらしい。

 

更にその後、明確な事柄は言ってくれなかったのだが、とあることがきっかけで、たきなは千束と仲良くなりだし、今のような関係になったという。

ちなみにそれまでは、たきなは千束さん、と呼んでいたそうなのだが、この時から名前呼びになったのだという。

 

「あの時のことがあったから、私は次に進めた。私も、千束に救われたんですよ・・・あの時はありがとう、千束。」

「・・・ううん、私はたきなの背中をちょっと押しただけ。あの時、一歩踏み出すことを決めたのは、たきなの選択だよ。」

 

この時のことが、前に話していた、たきなが千束に助けられたことなのだというのはすぐにわかったが、ただ・・・この時ばかりは、この場に居ない方がよかったかな、と思った。

 

 

その後、お互い少しだけ距離が近くなり、今のような関係になってから、一緒にショッピングをしたり、甘いものを食べたり、水族館にも遊びに行ったのだという。

 

「でね~、そん時のたきなチョーーー可愛かったんだよ~!さかな~~!って!」

「そこまでふざけてやってません!大体千束だってチンアナゴ~~!とか変なことやってたじゃないですか!」

「えっマジで・・・?水族館でそんなことやったの・・・?あの、2人ってひょっとして・・・バ「それ以上言ったら脳天撃ち抜きますから。」「よしこの炭を今からお前のほっぺに押し付けてやる。」

「ごめんなさい・・・」

「ねぇたきな~、今度また水族館行ったらやろうよ~!さかな~~!だけじゃなくってさー、2人でリュウグウノツカイ~~!ってやろうよ~!たきなが私の足持ってさー!」

「やりません!もう2度とやりませんからそんな恥ずかしいこと!」

「(・・・なんでだろう、なんか笑顔でリュウグウノツカイ~~、ってやってる2人の絵が想像つくの、なんでだろう・・・?)」

 

という閑話休題を挟んだ後、話が再開し、そんなことがあってから少しした後、あの例の延空木を占拠したテロリスト・・・そいつは、"真島"、と言うらしいが、その男と因縁が出来たこと。

というより、そもそもの因縁は、実はそこからではないという。

 

「ねぇ光輝、光輝ってさ、旧電波塔の事件覚えてる?」

「えっ?確かあれって・・・事故じゃなかったっけ?」

 

千束から言われた旧電波塔の事故、ではなく、事件。

流石に昔過ぎて覚えていないが・・・確か事故だったはず。けれど、事件とは一体?

 

「あぁそっか。光輝6歳くらいだもんね。あれが起こったの。その頃ってリリベルに入ってた?」

「入ってたけど・・・それが起こる前か後かはあんましよく覚えてないなぁ・・・で、それがどうしたの?」

「あれ、実はテロリストが立て篭もった事件だったんですよ。」

「えっそうなの!?あれ事件だったの!?」

「そうですよ。世間一般には事故だと報道されてますけどね。で、あの時リコリスが対処に当たっていた中で、旧電波塔事件の英雄とリコリスの間で称されていたのが・・・」

 

そこまで言うと、たきなは小さくため息を漏らした。

それはまるで・・・その英雄が、誰なのかと言いたくないような。

 

 

「そう!私、千束サーン、がその人でーす!」

「・・・はあっ!?」

 

 

その英雄当人自ら名乗り出てくれたことで、たきなが言いたくない理由がわかった。

 

その旧電波塔の事件を解決に導いた人物こそ・・・目の前にいる、千束なのだという。

 

それに驚いていると、たきな曰く、そもそも千束は、実はリコリス内でも、トップクラスに優秀なリコリスなのだという。

確かに、千束が強いのはわかっていたけれど、まさか千束がそこまで言われているとは思わなかった。

・・・というより、そんな最強のリコリスとそのリコリスに肩を並べる相棒とチームになっているって・・・改めて身が引き締まるというか、自分自身ももっと強くならなければならないと、改めて思わされた。

 

 

「ですが基本千束はちゃらんぽらんですけどね。」

「だよね。なんでこんなアッパラパーが優秀なリコリスって言われてるんだろうね?」

「おいおめーら、ゲンコツおみまいしちゃろうか?」

 

 

と、少し話が逸れたが、そもそもなんでその話をしたのかというと、その真島という男は、旧電波塔の事件に関わっていたテロリストの一人なのだと言い、千束は覚えていなかったが、真島の方は一方的に覚えていたのだという。

そして、その真島こそがまさに、その銃取引事件の主犯格であったのだという。

更にそれだけでなく、真島もまた、"アランチルドレン"、なのだという。

 

その真島という男は、恐ろしいほどに耳がいいらしく、ただ聴力が良いというだけではなく、暗闇の中で何も見えなかったとしても、物体の反響音を聞くだけで、どこに何があるのかが正確にわかるのだという。実際、千束もその能力で苦しめられたのだという。

アランチルドレン、と一口に言っても、色々な人物がいるのはテレビで見ていればわかる。加えて、目の前にその当人がいる。千束は目がいいため、アランチルドレンはそれぞれに強みがあるのはわかっていた。けれど、耳がいい、ということだけでアランチルドレンになれるだけでなく、テロリストという悪人であっても、支援をするアラン機関、という存在の不気味さも気になるため、この話を聞いてから、アラン機関という存在にいいイメージは無くなった。

とはいえ、千束とたきなにとって真島は当然いいヤツではないため、必然的に俺にとっても敵になった。話を聞いているだけで、こっちまでイライラしてくる。

 

「光輝、だからってネクサスになって殺そうとしないでよ?」

「いやいやいやいや、しないしない。」

「いやしそうな目してましたよ。」

「・・・マジで?」

 

そんな最中、更に明らかになった事実があり、千束の人工心臓を提供してくれたのが、お店に来ていた常連の、"吉松"、という人であったことも、この事件を追う中で判明したのだという。

 

そして更に、その吉松という人物こそがまさに、度々話に挙がっていた、アラン機関の人間であり、同時に、千束やたきな、というより、リコリコが昨年対処にあたっていた事柄、その全ての事件の黒幕的存在でもあったのだという。

 

千束はこの吉松という人物から人工心臓を貰った恩義があるのか、そうじゃないと擁護していたが、たきながこの吉松という人物について話している時は、終始表情が怖く、たきなにとっては、よっぽど嫌な人物であったというのはすぐに察し、何も口を挟まず、相槌を打つだけに留めていた。

 

・・・ただ、正直に言えば、俺はどちらの立場に立てばいいか、この場ですぐに判断するというのは難しかったから、というのもあるが。この話は、あまりにも複雑すぎる。

 

そして、そんな最中、千束の人工心臓がその吉松の部下に壊された後、新しい人工心臓を手に入れるために吉松という人物を追い詰めつつ、同じタイミングで起こっていたのが、あの延空木での事件だったという。

実際、その時たきなはDAに戻っており、本来ならばあの延空木の事件に参加していたのだが、千束を助けるために、DAを完全に辞めたのだという。

 

「まぁ、辞めたって言ってもまだリコリスなんだけどね私達。」

「それは言わなくていいでしょ・・・でも、司令があの時の一件で寛大な対応をしてくれたからですね。」

「まぁ~でも、あの時は全リコリスを私達が助けるっていう最重要ミッションもあったからね~。」

「そういえばあの時、私初めて見ました、リリベル。」

「えっ!?」

 

たきなの口から飛び出した、かつて所属していた組織、いや、元・家の名前。

何故リリベルの名前がいきなり出てきたのかというと、あの時、リコリスという存在がバレた際、その処分のために、リリベルが出てきたのだという。結局のところ、誰も死にはしなかったが、千束やたきな、それに、その時一緒にいた春川さんや乙女さん達に、発砲を加えていたのだという。

 

つまり・・・"あの時、リコリスを、リリベルが、殺そうとしていた。"

もしかしたら、何かが異なっていたら、千束やたきな達が・・・そう思うと、そのやり方に、怒りが湧いてくる。

 

「こ、光輝落ち着いて!大丈夫!クルミのおかげで結局リリベルも帰ったからさ!だからそんなに拳強く握んなくていいから!」

「えっ?」

 

千束から慌てて指摘されたそのことにハッとし、思わず自分の手を見ると、いつの間にか拳を握っており、よくよく見れば、少し血が滲んでいるようにも見えたが、それは自分の視界からしか見えていないため、2人にバレないようにしつつ、冷静さを取り戻した。

 

「・・・ごめん。熱くなり過ぎた。今となってはもう関係ない場所なのに・・・ってことはわかってんだけどさ、そんな風に千束やたきな、それに春川さんに乙女さん、他のリコリスまで殺そうとしてたなんて思うと・・・やっぱ怒りしか湧いてこないよ・・・」

「・・・心配してくれてありがとうございます。やっぱり光輝は、リリベルには向いてませんね。」

「えっ?」

「私達、本当は人間として存在してないんですよ?でも、そんな私達を、リコリス1人1人を、1人の人間として見てくれる。そんなお人好し、リリベルにいたら普通クビですよ?」

「うん。それに、前居た場所だからっていう愛着もなくて、私達の側に立ってくれる。やっぱり光輝は、いつだって私達の味方で居てくれるんだって思ったよ。ありがと、光輝。」

 

リリベルに対する怒りを語っていると、2人はそんな俺を見てか、前も似たようなことを言ってくれたが、再びそのように言ってくれた。

確かに、俺はもう、リリベルではないし、リコリスの側に立つリリベルなんて、組織にいたらダメだろう。けれど、もう自然とそういう考え方になってしまうのだから、俺はもう、リリベルのエージェントではなく、そのあたりにいるただの人間、になったんだろう。

・・・でも、リリベルに居た時と今とで違うことがあるとすれば、彼女達を、この世界を守れる力があるということだけれど。

 

ただ、そう言ってくれた千束とたきなに対して、またもや心の中が温かくなる。

 

「・・・おうよ。」

 

だからか、こんな言葉しか返せなかったが、それでも2人が微笑んでくれているから、これで良しとし、この話は終わりにしよう。

 

そして、話を戻し、まさにこの事件を解決した最大の功労者が、クルミさんをはじめとした、リコリコの皆、加えて、春川さんや乙女さんだったという。

確かにそういえばあの時、なんかよくわからない3D映像が入って、これは全部アトラクションのPRですなんて謳っていたが、それを作ったのがクルミさんと今になって知り、まさかあの事件を解決したのが、こんな身近にいる人だとは思わず、世間は狭いとしか言えない。

 

ただ、これでようやく一件落着・・・とはならなかった。

 

この延空木の一件を解決する直前、旧電波塔にその真島という男が本当は潜んでおり、千束が当初は一人で対峙していたのだが、千束を助けるために、たきなはDAを辞め、旧電波塔で千束と合流し、真島を制圧した。

だが、その後クリーナーが真島を取り押さえようとしたところ、逆に返り討ちに遭い、そして真島は、千束達の後を追うように、延空木までやって来たのだという。

更に腹が立つことに、全員がエレベーターに乗って帰ろうとする瞬間に、真島はやって来ただけでなく、千束との1対1の対決、いや殺し合いをするために、他のリコリスには手出しさせないよう、銃を乱射し、その結果、エレベーターに乗り合わせた乙女さんが、瀕死の重傷を負ってしまったのだという。

その真島という男の所業にまたもや怒りが湧いてくるが、また千束とたきなに窘められるわけにはいかないので、頭の中で何度も冷静になれ、と言い聞かせ、話の続きを聞くことにした。

 

そして不幸なことに、たきなもそのエレベーターに乗ってしまっていたのだが、エレベーターが止まったタイミングで、何十階もあるが、千束の元へ自分の足で戻り、そして残った千束は、真島と1対1の死闘をしていたのだという。

 

「あの時さ、本当にたきなに助けられたよ。来てくれてありがとう。たきな。」

「いえ。千束が死ぬところなんて、絶対見たくなかったですから。」

「でもたきな、ごめんね・・・一生消えない傷跡を残しちゃって・・・」

「またそれですか。もう気にしないでいいですから。それに、何度も言いましたよね。これは、私の相棒を助けた、勲章ですから。」

 

2人が何を話しているのかわからず、あまりいいことではないかもしれないが、どういうことと尋ねると、たきなが説明をしてくれた。

 

延空木のかなり高い階に、下が見下ろせるスケルトンのガラス張りで出来た写真スポットがあるのだが、あの場所で真島と闘っていたのだという。そして、戦いの最中、千束と真島の2人がそこに落ち、重量や銃弾などの衝撃により、その箇所が壊れ、千束はそのまま地面に落下していきそうになったのだが、ギリギリ間に合ったたきなが、リコリスの装備の一つである、拘束用ワイヤーを使い、間一髪千束を縛ることが出来、なんとか救出に成功したのだが、とはいえ、千束が落ちないよう、自らのことを顧みず、落下しないようその体一つで必死で千束を支え続けた結果、左肩に深い傷を負い、今はもうなんともないそうだが、その傷跡は、今も消えていないのだという。

 

そう説明するたきなの言葉に、絶句する。

リコリスの制服は、第一級の戦闘服だ。防弾・防刃機能が施されているにもかかわらず、その戦闘服越しに、ここまでの傷を負うことになった。ということは、どれだけの負荷がかかっていたのか、どれだけ深い傷だったのか・・・その傷自体を見るわけにはいかないが、それでも、そのことを思い出して、その傷の部分を服の上からなぞるたきなの姿を見てわかるが、かなり大きな傷跡だ。その時のことを想像するだけで、胸が痛くなってくる。

 

「・・・もっと早く出会ってたら、俺が換わってあげたかった・・・」

「気にしなくていいですよ。私がやりたかったことですから。」

「いや、偉いよ・・・本当に。やっぱりたきなは、本当にヒーローだよ。間違いない。凄いよ本当に。やっぱり、勝てないわ。たきなに。」

 

その勇気に、ただただ感服する。

目の前のこの子は、本当に、全てにおいて強い。射撃の腕も格闘も、そして、勇気ある行動が出来ることも。

こんな小さい体のどこに、これほどまでの勇気があるのだろう。

 

 

そんな中、決して2人には言わず、心の中で思ったことがある。

それは、俺がウルトラマンだから、という、ウルトラマンの目線を持つ者だからこその意見だ。

 

 

 

 

・・・"間違いなく、世界が違ったら、たきなはウルトラマンになれる素質を持っている。それは、千束もだけど。そのくらい2人には、素質がある。"

 

 

だからもし・・・"俺がネクサスの光を誰かに受け継がせるなら、間違いなく、この2人になる。"

 

 

けど、同時に、絶対渡してはならないとも決めている。こんな痛みを負うのは、自分だけでいい。2人をウルトラマンになんて、ならせてはいけない。

 

 

 

と、そんなことを心の中で思っていた一方、たきなはというと、その言葉に少し感慨深そうにしており、小さく微笑んでいる。

 

 

「・・・ネクサスのお墨付き、いただいたぜ。」

 

 

飛び出した、まさかの一言。それに思わず小さく吹き出し、笑いが零れる。が、すぐに表情を戻す、というより、厳しい表情に変える。

 

「・・・でさぁ・・・千束・・・」

 

そう言うと、これまで話に入ってこなかった・・・その助けられた方を見ると、悪事がバレたかのように、ヒッ!と、まるで猫が驚いたかのような顔をしている。

 

「・・・千束さん。あなた助けられて感謝言った?」

「言いました。それはもちろん。」

「・・・でさ、多分だけどさ、あの事件11月末だったじゃん。」

「はい。」

「で、千束が新しい心臓になった手術をした。にもかかわらず脱走したのが12月でしょ。」

「はい・・・」

 

かつて千束の口から色々と聞いていた脱走のこと。そして、あの日の事件の日取りや、千束がいなくなっていた時期。それらを合わせて考えていった結果、一つの結論にたどり着いた。

 

 

 

「・・・つまりあなた、この助けられた後に・・・脱走したってこと?」

「・・・はい。」

 

 

 

悪い意味で、予想的中。

・・・もう、色々な意味で、怒りに震えてきた。

 

「・・・あ、の、さぁっ・・・たきなに命助けてもらって、それでここまでの傷負わせてるにもかかわらず、その後何も言わずどっかいなくなるとか、ほんっっっとサイテーだね千束!!ちょっと見損なったわ!!」

「なっ!うるせーなぁ!大体私だってあの時はよぉ!」

「はいはい。2人とも。ケンカしないケンカしない。さっさと話し終えましょ。長くなってますし。光輝も千束も、仲直りしましょ。ね?」

「「・・・はい。」」

 

色々言おうとしていたのだが、その当時最もダメージを負っていたであろうたきなが窘めたため、我々もそれ以上は、何も言えなくなったため、話が再開した。

そして、その後に起こっていたことが、例の千束の失踪、そして、リコリコの全員で、ハワイに行っていたということだった。

これが、俺が出会うまでに、リコリコで起きていた出来事だった、のだというが、一つ言いたい。内容が濃すぎる。とてもじゃないが、1年の間に起こった話とは思えない。

それに、千束とたきな達にそんなことが起こっている間、同時期にアドデック9の事件もあったから、八神さん達もその間に色々あったはずだ。だから、そう考えると、昨年というのは、とんでもない事件が並行して起こっていたのだと改めて思うと、正直肝が冷えた。

 

「で、光輝。思いついた?」

「・・・ん?何のこと?」

 

と、そんな中、千束から質問された。何のことだろうと思い、聞き返した。

 

「ほらあれだよ!最初に話してた私とたきなの話を映画のタイトルみたいにしたら!ってやつ!何か思いついた!?」

「・・・あー!言ってたねそんなこと。」

「言ってたね、じゃなーい!こっちは楽しみにしてたんだよー!で、なんかいいアイデア思いついた!?たきなもたきなも!どう!?」

「いやもう完全に忘れてましたよ・・・」

 

俺も俺もと頷いたが、うきうきしている千束の顔を見たら、無下にあしらうわけにもいかないため、何かしらのアイデアを出すために、腕を組み、頭を捻らせる。

なんだ、2人に起きた話をまとめると・・・千束たきなアドベンチャー?いやダサい。リコリスの大冒険。これもダサい。色々考えてはみるものの、中々いいのは思いつかない。

そう考える一方、改めて思い知らされたけど、千束もたきなも本当に凄い。リコリスでありながらも、DAに背を向け、自分達の頭で考えて行動し、その結果全てがいい方向に動いたのだから・・・こう、あほっぽい言い方になるが、彼女達は凄い、生き様がロックだ。反骨心の塊というかなんというか・・・でもたきなも、全ての始まりは、俺と同じく、喫茶リコリコにやって来たことからだったのだと思うと、始まりは似ていたんだなと、少し笑みが心の中で零れる。

 

「(・・・あれ?そういえば・・・)」

 

と、そんな中、ふと、あるものを思い出した。

それは、まさにその喫茶リコリコ。今や俺にとってもバイト先になったが、そういえば・・・お店の看板のアルファベット表記は確か・・・"LycoReco"、だ。

 

「(これ、なんの略称だ?先のLycoは、リコリスのことだよな?確かアルファベットも・・・)」

 

そう思いスマホを開き調べてみると、確かにリコリスの英単語は、Lycoris、で合っていた。

ならば、後のRecoは・・・?

 

「(・・・!)」

 

そこまで考え、全てが繋がった。

後のRecoは、俺もリリベルに居た時に、和倉教か・・・和倉さんからよく聞かされていた。銃におけるとあるワード。

後は、その意味が合えば・・・

 

 

「ねー光輝ーまだー?待ちくたび「出来たよ!!」

 

 

千束の言葉を遮るように、俺は1つのアイデアが思いつき、出来たと返す。

先程スマホで意味も調べたこの後の単語も、ある意味千束とたきなの去年1年の生き様を表すような意味を持っていた。

先程思いついた、ロック・反骨心というのも、それを促す一助になった。

 

「えっ?何何光輝!出来たの出来たの!?聞かせて!」

 

千束はワクワクしながら、今か今かと心待ちにしている。

 

「・・・じゃあさ・・・つけるとしたら、こんなタイトルはどう?」

 

そして、俺は答えた。

この2人の昨年の日々を表す、タイトルを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・リコリス・リコイル、なんてどう?」

 

 

 

 

 

 

「リコリス・リコイル?」

「そう。リコリス・リコイル。リコリスはそのままだけどさ、リコイルって、反動って意味じゃん。」

「まぁ、よく言いますねそれは。」

「で、反動って、反対方向に動く力って意味もあるんだけどさ、今調べたら、反動って、"ある動きに対して、その反対の動きが起こる"、って意味もあんのよ。ただ、それはどっちかっていうと、体制を維持するっていう意味合いなんだけど、2人はさ、リコリス・DAの動きとは反対方向に動いてたでしょ。個人のためのリコリスって意味でも、延空木の時の事件でも、DAの命令とは違う動きをしていたってとこでも。それに、リコリコもさ、看板の名前、LycoRecoじゃない?」

「あっ、そういえば確かにそうだった。センセそこまで意味考えてたのかな・・・?」

「で、多分おそらく、この2つの単語から取ったのかもしれないって今思って、だから、リコリス・リコイル・・・って考えてみたんだけど・・・どう?」

 

今思いついたこの2人の日々を物語にするとした時のタイトル案。我ながらいいのが出来たと思うが、2人は喜んでくれるだろうか。

 

「・・・いいかもね!リコリス・リコイル!」

「・・・ですね。光輝にしては、やるじゃないですか。」

 

どうやら向こうも気に入ってくれたようなので一安心した。我ながらよくこの短時間で、いいタイトルを思い付いたもんだ。

 

 

「じゃあ~、せっかくいいタイトルをつけてくれたから、そんな光輝さんにプレゼントをやろうー!」

 

そんな中、千束はプレゼントをくれると言った。そんなことを聞いてなかったのでへ?と思わずあほっぽい声が漏れるが、その発案をした千束は特段気にすることなく、スマホを取り出し、操作をしていく。

 

「ねぇたきな、これ光輝に見せてもいい?」

「えっ!?これですか!?」

 

そしてすぐに目的の何かを見つけたのか、たきなに見せていいかどうかの確認をしていた。たきなに確認するということは、何か重要なものなのかもしれないし、確認を取るということは、それ相応の何かなのだろう。

だからか、たきなも少しだけ迷っていたようだが、まぁ、いいですよ、とOKを出すと、千束は俺にスマホを手渡した。

 

「えっ!?」

 

そして、画面に映っていた一枚の画像に驚く。

画面に映っていたのは・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・"どこかのビーチで、赤のハワイアンなドレスと髪飾りを着けた千束と、千束と色違いの青いハワイアンなドレスと髪飾りを着けたたきながポーズを決めている写真だった。"

 

 

いきなり突然目に入ってきた、大胆な衣装の2人に驚き、どうしたのこれ!?と慌てて尋ねると、まさに度々話に上がっていた、ハワイで撮影した写真なのだという。

なんでも、元々は千束が最初に着たのだが、せっかくならたきなも着ようよ~とたきなに提案したが、やはりたきなも当初は恥ずかしいから断っていたそうなのだが、何日もしつこく言われ続けた結果、たきなが折れることになり、こうして同じ格好を着て、せっかくならということで写真にも収めたのだという。ちなみに写真はクルミさんが撮ったのだそうで。

だが、プレゼントとはいえ、どうしてこんな写真を見せてくれたのか。その理由を尋ねてみたところ・・・

 

 

「ん?いや光輝へのじま~ん。うらやましいだろ~?って。」

 

 

・・・そんなことだろうと思った。

 

 

 

そうして賑やかで、かつ、千束とたきなのことをまたより深く知ることになったBBQが終わり、後片付けを進めながら、一旦家へと戻ってきた。

残った食材はいったん冷凍庫に突っ込み、お風呂の準備も進め、自動お湯張り機能でお湯を溜めている間に・・・ずっと考えていた、"例のこと"を、ここでやろうと決めた。

そして、そうとは悟られないよう、顔には出さないよう気をつけながら、勇気を出して、2人に声を掛ける。

 

「2人とも、ちょっと外出てもらってもいい?」

「いいけど、まだなんかやることあった?」

「うん、ちょっとね。後さ、スマホ、一旦家に置いておいてもらっていい?」

「?・・・なんでですか?」

「ごめん、ちょっと理由は後で話すんだけど、お願い!もちろん悪いことするわけじゃないから!」

 

どういうことなのかさっぱりわからない2人ではあったが、どうしてもというお願いに、半ばしぶしぶといった様子ではあったが納得をしてくれ、スマホをテーブルに置いてから、改めて靴を履き、3人で再び外に出た。

そして、先程までバーベキューをしていたところまで来た。

 

「どうしたん?忘れ物でもしたんか?」

 

千束は冗談交じりで何か言っているが、一方、2人の前に立っている俺は、背を向けたままだった。正直、緊張しているからだ。けど、俺から切り出さないといけないということもわかっているため、勇気を出して、口を開いた。

 

「あのさ、2人とも、本当にありがとう!」

「えっ?」

「2人と出会ってから、世界が大きく変わった。楽しいことばっか増えた。本当にありがとう!」

「う、うん・・・?どしたの?遺言?」

「・・・光輝、今から死ぬとか言わないでくださいよ。」

「違うわい!!だからさ・・・」

 

そこまで言うと、振り返って2人の方を見た。

 

「ごめん。今からちょっと悪いことするんだけど、秘密にしてね。」

「えっ?何?リコリスとして光輝ぶちのめしていいの?やったー!」

「千束、今から銃取り行きましょうか。」

「ちげーよ!!後超ぶっそう!後そしてそんなことじゃない!」

 

相変わらずの口の悪さに突っ込み、せっかくの決めた覚悟が少し折れそうになり、緊張の糸がほどけてしまうが、なんとか気を戻す。

 

「あーもう!じゃあやるから!絶対秘密にしててね!」

「はいはいやってどうぞー。まっ、そんな期待してないけど。」

「どうせしょうもないことですし大したことじゃないと思いますけど。」

「2人ともホントよくもまあそんなひどいことサラサラ口から出るね!あーもう!じゃあやるよ!ちょっと悪いこと!」

 

色々言われて半分もうやらなくてもいいかも、と思うが、それでもやることを決めた。

午後からずっと決めていた、悪いこと。

 

ただ、それは・・・"人間として、というわけではない。"

 

「ただしね・・・」

 

その言葉を言った後、

 

「えっ!?」

「ちょっと!?」

 

2人の驚きの声が聞こえてくるが、それを無視した。

何故なら、俺が今からする悪いこととは・・・

 

 

 

「・・・ウルトラマンとしてだけど!!!」

 

 

 

ウルトラマンとして、こんなことをしてはいけないというのは百も承知している。

けれど、俺の命の恩人であり、最大の理解者であり、片思いをしている2人の女の子にしてあげられることを考えたら、これ以外なかった。

最初で最後になるかもしれない、世界唯一の体験をさせてあげるために。

 

 

 

2人の目の前で─────エボルトラスターを抜いた。

 

 

 

 

 

 

いきなり光輝が何か言い出し、何だろうと思っていた。けれど突然、エボルトラスターの鞘を抜くと、赤い光がそこから溢れ出す。

光が止むと、目の前には、私達の大好きな、50メートルはあろうかという大きさの、銀色の巨人がいた。

けど、何が何だかわからない。光輝が何故今、ネクサスに変身をしたのか。

 

「ど、どうしたの光輝!?ビースト出たの!?」

「(違うよ。)」

 

突然、いきなり頭の中に響いてきた、光輝の声。

 

「えっ何これ!?」

「(んーと・・・テレパシーって言えばわかりやすい?)」

「テレパシー!?これが!?」

 

頭の中に響いてくる光輝の声。これがよく、SF作品などで言われているテレパシーなのだということに驚いていると、ネクサスは片膝をつき、私達の目の前に、その大きな右の掌を差し出してきた。

 

「・・・えっ?」

「どういうこと?」

 

その意図がわからず、聞き返してしまう。

 

でも、本当は、わかっている。

 

 

多分・・・千束だって/たきなだって、わかってる。

 

 

「(・・・乗って。)」

 

 

その言葉に、驚きと同時に、笑顔になる。

 

ここまで来て、確信した。

 

今だけは、ビーストを倒すために現れたんじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

私、錦木 千束と、私、井ノ上 たきなのためだけに来てくれた、ウルトラマンネクサスなんだと。

確かにこれは、悪いことだ。

 

 

 

 

 

 

 

片膝を曲げているとはいえ、それでも全然大きい。首をいっぱいまで上に向けて、ようやく顔まで見える。相変わらず、無表情だけれど、どこか笑っている印象を常に受ける不思議な顔。

そんな存在と面と向かい合って、私達は、とんでもない存在と友達に、仲間に、チームに、パートナーになってしまったんだと改めて思わされる。

もしハワイに行っている時に、未来の私達が来て、あなた帰国後に宇宙人と友達になりますよなんて言われたとしても、絶対信じなかったけれど、現実は、それを大きく凌駕してきた。

 

膝をついて差し出されたその手に、たきなの手を握って、2人でその手の上に乗る。これまで色んなものに乗ってきたけど、ウルトラマンの、いや宇宙人の手に乗るなんて、当然初めてだ。

でも、ネクサスの正体は、私達のパートナーだから、なーんにも怖くないんだけど。というか、ウルトラマンネクサスが怖いなんて、最初に会った時から感じたことなんてないんだけど。

でも多分、後にも先にも、こんな経験はまずもって出来ないはずだ。

 

「これがネクサスの手・・・」

「不思議な感覚・・・」

 

その手の上は少し不思議な触り心地と乗り心地で、思わずパシパシと叩いてしまう。筋肉のようでもあり、鉄のようでもあり、それでいて、まるでゴムのようでもあり、滑らかな皮のようでもありと、様々な感覚を感じる不思議な触り心地だ。

そうこうしていると、私達の周りを光が包み込むと、一瞬で消えた。

 

「光輝、何したんですか!?」

「(これから高いとこ行くから、まぁバリア的なものを張ったの。これで風圧とかも抑えられるから、2人の周りの気温も極端には下がらないし、呼吸がしづらくなるとかってこともならないから平気だよ。)」

「・・・ウルトラマン、すっご・・・」

 

アフターケアも万全。流石は、私達のパートナーだ。

そして、膝をついていたネクサスが立ち上がると、一瞬で何十メートルも視界が変わり、思わずうわっと、2人して驚きの声が漏れる。

 

「(・・・それじゃ、どこ行きたい?)」

 

ネクサスは、いや光輝は目的地を聞いてきたため、すぐに、行き先を伝えた。

後から思えば、これは、考えたわけではない。思わず咄嗟に、口から出た言葉だ。それほどまでに興奮していた、っていうことなんだろう。

まぁ、こんな体験させられて興奮すんなー、っていう方が無理だけど。

 

「連れてってネクサス!宇宙に一番近いところ!誰も見たことないところまで!」

「ちょ、ちょっと千束!」

「(・・・了解。ちょっと目、瞑ってて。)」

 

その目的地に納得をした後、言われるがままに目を瞑ると、少しすると風を感じるが、それでも私達2人の周りは安定していた。

 

そして暫くし、目を開けていいと言われ、目を開けた瞬間・・・

 

 

「うわー!すっごーい!!」

「すごい・・・!!」

 

 

目の前に広がるのは、満天の星が広がる星空。下を見れば、雲がかかっている。こんな光景、有り得ないが、現実として目の前に広がっている。夏の大三角形はもちろん、天の川も見えそうだ。そして、月もとても大きい。こんな星空、当然ながら初めて見た。

やはり持つべきものは、頼りになる友達の、ウルトラマンだ。

 

「へっくしゅ!」

「たきな大丈夫?寒いから気を付けてね。」

「こ、これくらい平気です!」

 

星空にうっとりしていたが、たきなのしたくしゃみで現実に引き戻されると同時に、その可愛さに思わず顔がほころぶ。あーもー!やっぱり私の相棒は、世界一可愛いなー!

だけれど、やはり気になってしまい、つい尋ねる。

 

「ねえ光輝、なんでこんなことしてくれたの?」

 

彼は前に言っていた。ウルトラマンは、力を見せびらかすために来ているわけではないと。誰かを、何かを守るためにあるのだと。

だがしかし、今このネクサスは、誰かを、何かを守るためではなく、どちらかといえば、前者に近い在り方だ。それは、たきなもまた、わかっていた。

だからこそ、ネクサスの方を向き、尋ねた。

 

しばしの沈黙の後、再び頭の中に、声が響いてきた。

 

 

「(・・・見てもらいたかったんだ。俺の見ている景色を。)」

 

 

見てもらいたかった。その言葉に疑問を持つ。

 

「(2人と俺は今チームでパートナーだけどさ、俺はリリベルにいたし、1回だけミッション出たからさ、どんなことをやってるかはなんとなく想像つくけど、2人はさ・・・わからないじゃん。俺がネクサスになって、どんな風景をいつも見ているかって。だからさ・・・共有したかったんだ。俺が、どんな景色を見ているのかって。そうすれば、お互いもっと、分かり合えるって。)」

「光輝・・・」

「(それにね・・・)」

 

そこまで言うと、光輝は、いやネクサスは、空いている左腕を胸の前で曲げ、すぐに腕を下ろす。

目の前で何か波のようなものがうねったと思いつつ、ネクサスの顔を見ると、いつの間にか、ネクサスの姿は変わっていた。

 

「それって・・・」

「(ジュネッスプログレス。俺にしかなれないネクサスの強化形態。ただ、俺のこの姿は・・・皆がくれたものなんだ。千束、たきな、ミカさんにミズキさんにクルミさん。八神さんに海藤さん。父さんや母さん、色んな人との絆が力になって、この姿になれた。だから、俺は1人でウルトラマンをやってるわけじゃなくて・・・皆のおかげでウルトラマンをやれてるし、そういった意味で言えば、皆で、ウルトラマンネクサスになってるんだよ。だからさ・・・そんな2人には、感謝を何かしらの形で返したかったから、俺にしか出来ない方法を考えた時に思い付いたのが、これだったんだ・・・)」

 

そう語るネクサスの、光輝の心からの言葉に、思わず笑みを浮かべる。

本当は、感謝をするのは、私達の方なのに。

でも、その言葉が、嬉しくないわけがない。

 

「・・・ありがとーーー!」

「うぇっ!?」

「(えっ!?)」

 

突然たきなが大声を出して感謝をネクサスに、光輝に伝えたため驚くが、一方のたきなはというと、どこかスッキリした表情で、笑顔を浮かべていた。その表情に、私も先程まで感じていた、重苦しい空気がなくなり、いつも通りに戻れていたため、ネクサスに、いや光輝に、数分前と同じように向き合う。

 

「・・・そうだぞー!もっと褒めていいんだぞー!私とたきなのことー!!」

 

この返し方が正解かどうかはわからない。けれど、こんな言葉でも、お互い通じ合っているから、どんな意図なのかというのを、向こうも汲んでくれている。

だからか、表情の出ないネクサスだけれど・・・今だけは不思議と、笑っているように見えた。というより、笑っている光輝の表情が、簡単に目に浮かぶ。

 

そんなことを思いながら、改めて、2人並んで、いや3人揃って、星空を見ながら色々なことを振り返る。

 

「・・・もうすぐたきなと出会ってから1年半になるんだね。」

「早いですね・・・まさか、千束とここまで相棒になるだなんて、リコリコに来た当初は思ってもみませんでしたよ。」

「おいおい、私は最初っからたきなを信頼してたんだぜ?」

「わかってますよ、そんなこと・・・本当に、色々ありましたね・・・」

「そうだね・・・私とセンセとミズキの3人だけだったのに、たきなが来て、クルミが来た。そっから、色んな事件を解決して、ハワイに行ってリコリコハワイ支店をオープンした。まさか、リコリスなのにハワイに行けるなんて、いくら千束さんでも信じられんかったわ。」

「ですね。かと思ってたら、帰国したその数ヶ月後には巨大怪獣が現れて、それを倒す宇宙人がやって来て、そこからしばらくしたらその宇宙人ともパートナーになるなんて、もうどこから突っ込めばいいんでしょうね。」

「わかるわかる。もうそれだけでもぶっ飛んでんのに、その流れであの八神さんと海藤さんと知り合って、そして・・・光輝に出会えた。この1年半で、新しい人に沢山出会って、悲しいこともあったけど、楽しいこともたっっっくさんあった。」

「ですね。私も、本部にいた時には想像もしない未来が待ってましたよ。それに、こんなに考え方や性格が変わるなんて、その当時の私が見たら呆然とするんでしょうね。」

「・・・かもね。でも、私は今のたきなの方が、あの頃よりもずっと輝いて見えてるよ。」

「・・・私も、今の生き方、嫌いじゃないですよ。だから・・・ここまで連れてきてくれてありがとう。千束。」

「・・・ううん。何度も言うけど、私はたきなの背中を押しただけ。たきながこうしようって決めたから、未来がこんな風に楽しい毎日になったんだよ。全部、自分が変わろうって思ったからだよ。」

「・・・じゃあ、そういうことにしておきますね。」

「へへっ。じゃあさ、これからどこ行こっか!」

「・・・どこでもいいですよ。千束と一緒にいれば、どこでも楽しそうですから。」

「・・・私も同じ。だからこれからもさ、楽しい思い出、いっぱい作っていこうね!」

「・・・ええ。」

 

ふふっとお互い顔を見ながら笑っている。私の隣に、こんな最高の相棒が居てくれるのが本当に

 

 

 

「(あのさ、人の手の上でイチャコラすんのやめてもらってもいい?)」

「ちょーいちょい!せっかくいいとこなのに水ささないでよ!」

「ちょっと黙っててください。」

「(おい落とすぞこのリコリスども!?誰が連れてきてやってきたと思ってんだ!)」

 

 

忘れてた。今私達がどこにいるのか。

そして、後ろからずっと見られていたことを。

 

 

「(全く・・・どこで話しかけようかわからないくらい深い話してて、ようやく話しかけられそうって思って話しかけたらなんで怒られなきゃいけないのよ・・・)」

「いやいや、光輝の話しかけるタイミングが悪いから。」

「同感です。本当に空気読めませんね。」

「(おい本当に落とすぞ?)」

 

そうして茶化すものの、ネクサスが絶対落とさないことはわかってる。

というか、こんな乱暴な言葉でネクサスに話しかけられるのは、世界で私達2人だけだろう。

 

「じゃあ光輝、もういいよ。戻ろっか?」

「(は?何言ってんの?)」

「えっ?だってさっき、見ている景色を共有したかったって・・・」

「(いやいや。俺の見ている景色、って言ったじゃん。だからさ、行くよ!)」

 

そこまで言うと、光輝は、いやネクサスは、浮きながら体制を水平に変える。

 

「えっっ!?」

「ちょっと!?」

 

この体勢、これは、まさか・・・

 

 

「(しっかり掴まっててね!振り落とされんなよ!)」

 

 

ネクサスは、飛行しはじめた。

先程の光を受けたからそこまで風は感じないけれど、にしてもこれは・・・!

 

「うわーーー!!すごいすごーーい!!はやーーーい!!」

「おおお落ちないんですよね!?大丈夫なんですよね!?ちょっと早すぎませんか!?」

「だーいじょうぶだってたきなー!ネクサスが落とすわけないでしょー!」

「(当たり前でしょ!さっきも言ったでしょ!俺の見ている景色、一緒にめいっぱい共有してよ!)」

 

隣で慌てるたきなの手を握りながら、体勢を低くしながら、空を飛ぶ感覚を味わう。

 

「もうほんっっと夢みたい!!ネクサスありがとーー!!」

「ぁぁぁあああっ!!ちょっと、スピード落としてくださいよーーー!!」

「(これでも落としてる方だよ!何度も言うけど落とさないから!たきな!千束みたいに楽しんでよ!)」

「いやこんなの無理ですってばーーー!!?というかどこ行くんですかーーー!!?」

「(そうだなあ・・・じゃあまず、千束の脱走の地でもある、思い出の石垣島でも行こっか!で、その次はハワイ行こうか!)」

「やったーーー!!いけいけーネクサスーーー!!あ、でもまず東京行ってー!」

「(OK!じゃあ東京経由の本州縦断、石垣島経由のハワイ行き、行っくぜーー!!)」

「もうルートが滅茶苦茶なんですけどーーー!!?」

 

これから行く目的地は、石垣島とハワイなのだということを伝えると、一体どれくらいの速度なのかわからないが、空中をネクサスは物凄い速さで飛んでいく。これでもスピードを落としているなんて言っているが、そんなの嘘だろうとしか思えず、逆にもしこれが本当なら、普段どれだけの速さで飛んでいるのか、想像もつかない。

 

けど、でも、とにかく、とにかく!今はすごい!しか言えない!

間違いなく私達は今、世界初の偉業を成し遂げている!

 

 

 

─────神室町

 

「いやー、食った食った。八神ー海藤ーサンキューなー。」

「まぁ気にすんなって。せっかく用意した寿司が腐るより、食った方がよかったんだし。」

「まぁな。それに、俺らはその会社のやつらが食えなかったおこぼれのおかげで、普通よりも安く寿司食えたんだしな。」

「あぁ。おかげでこちらもいい思いをさせてもらったよ。ミズキもそうだろう。」

「んあー?そうね~~。やーっぱり、あ~~んなよくわからん男より八神さんたちと居た方が幸せだわ~~~。」

「おい酔っ払い、酔い覚ましにわさびでも貰って鼻に詰めるか?」

「あ~~んだとこのガキんちょーー!!」

 

神室町のとある寿司屋から出てきたミズキとクルミとミカ、そして八神と海藤は、大通りを歩いていた。

あの電話の後、すぐに用意を済ませ、ミカが運転するリコリコの自家用車に3人で乗り込みここに到着し、これでもかというほどの、贅沢なお寿司を堪能した。

更にミズキは、先程までの鬱憤を晴らすという意味に加え、憧れの八神と夕食を共に出来るということもあってか、お酒が進みに進んだ結果、このような泥酔状態になっているというわけだ。

そうして、食事も終えたため、リコリコの自家用車へと戻ろうとした、そんな時─────

 

「おっ。」

 

八神があるものに気付き、足を止めた。

それと共に、全員もまた、あるものに気付いた。

 

それは、空を駆ける、一筋の赤い光。

その正体が何なのか、というのは、今更誰も言う必要はないが、それでも、それに最も深くかかわってきた5人だからこそ、自然と足を止めた。

 

「またビーストか?」

「じゃないの~?あいつもいっそがしいわね~。」

 

その空を駆けていく赤い光に、海藤とミズキはいつも通り、ビーストが現れたため、また彼がその場所へと向かっていったのかと思い、その心情を慮った。

 

「ん?」

「・・・どうした、ミカ?」

 

そんな中、ふとミカは、他の4人とは違う表情でその光を見た。その様子が気になり、クルミは声を掛けた。

 

「いや、気のせいかもしれんが・・・千束の声が聞こえたような気がしてな。」

「はぁ?千束の声だぁ?」

「いやいやオッサン、ないないない。有り得るわけないでしょそんなこと。」

 

なんでも、ミカは千束の声が聞こえたのだという。そんな馬鹿なという反応をする海藤と、そんなわけないだろうとミズキは返す一方、八神とクルミは二人で話していた。

 

 

「そういえば、千束とたきなは、光輝の家行ってるんだよな?」

「あぁ。そうだぜ。さっきも言ったろ?3人でしっぽり、おうちデート中だな。」

「へぇ。おうちデート、ねえ。」

 

そんな中、先程も寿司を食べながら聞いていたが、改めて八神は尋ねると、クルミはニヤニヤしながら、八神に返した。

その様子に、八神は少し考えるかのように、口元に手を当て、少しした後、どこか納得したように、光の跡が消えた後の空を再び見上げた。

 

 

「・・・そうかもしんないよ。」

「「えっ?」」

 

八神は全員に声をかけると、フッと納得したように小さく笑みを浮かべながら、空を眺めた。

 

 

「・・・あいつ、張り切ってんのかもしんないぜ。あの2人のために。」

「・・・そうかもしれないな。」

 

 

本当にビーストを退治に行ったのかもしれない。けれど、ひょっとしたら、あの2人のためかもしれない。そんな、少しの期待を込めながら八神は言うと、ミカも納得したように、空を眺めた。その意見に納得するかのように、他の3人も同様に空を眺め、どこかへと向かっていったネクサスを思っていた─────

 

 

 

─────???

 

「あっ。」

 

一方、どこかの街の、とある一軒家の一部屋。

明日からまた学校が始まる。学校へ行きたくない。そう思う学生が、ここに、ひとり。

まさに学校では典型的なぼっちであり、友達はいない。故に、学業のことについて聞ける友人もいないということもあってか、成績も悪い。そういった様々な要因があり、学校には行きたくないと、夏休みが始まるその日からずっと思っていた。

 

しかし今日、今年に入ってから出来た、友達、ではなく、"メンバー"が誘ってくれ、人生で初めて、夏休みに、家族以外の誰かと遊びに行くことが出来た。

それがとても楽しく、またしたいと思いつつも、とはいえそれで明日からの2学期のスタートが変わることなどない。

そのため、星に願いを、ではないが、明日何かの理由で学校が無くなりますように!という不純な願いを夜空にしようと、カーテンを開け窓を開いた矢先、空を駆ける一つの赤い光が目に飛び込んできた。

 

「ネクサスだ・・・」

 

その学生も、それが今や世界を守るヒーロー、ウルトラマンネクサスだということは知っている。いくら自分でも、そのくらいはわかる。

だからこそ・・・

 

 

「お願いしますネクサス様どうか学校を怪獣との戦いで壊してくださいお願いいたします!お願いいたします!お願いいたします!お願いいたします!・・・」

 

 

と、藁にも縋る思いで、土下座をしながら、ネクサスに対して決してありえない願いを唱え続ける。

だが、そんなこともちろん起こるわけがないというのも理解をしており、かつ、高校がある場所で、新宿のような被害が起これば、今の自分の居場所である、あの"ライブハウス"だって壊れる可能性が大いにあるのも、わかっている。

もしそんなことが現実に起こり、そして、あの子達が死んでしまったら・・・そう思うと、急激に怖くなり、胸がキュッと締め付けられた。

だから、そんな考えを口にしたが、すぐにその考えを撤回した。

 

そんな中、ふと、ネクサスの姿を見て口からこぼれた。

 

「ネクサスも、嫌だとか、戦いたくないとか思ったりしないのかな?」

 

自分は学校という、誰も話す相手がいないだけでなく、強制的に勉強や運動をさせられるあの場所を嫌っている。

だが、テレビで度々見るネクサスは、まるで神か仏かのように、ただ怪獣を倒すために現れ、倒しているが、ネクサスだって、自分達のように、嫌だな、怖いな、戦いたくないな等、マイナスな感情を抱かないのかと、この女子高生は不思議に思ったが、とはいえ本人がいやー、本当は嫌っすよー!なんて言うわけなどないため、あくまで当人の頭の中だけの妄想に過ぎないことである。そもそも、人間と同様の思考回路を持っているのかすらわからないのだが。

 

だが、それでも、この女子高生は、ネクサスに対して、一つだけ、羨ましいなと思っていることがある。

 

「・・・いいなあ、ネクサスは。皆からチヤホヤされてて・・・皆の前に立つだけで喜ばれるんだもん・・・」

 

彼女の目から見ると、ネクサスはこの地球に生きる人間全てから感謝されている。なので、彼女が思う、スーパースター、に一番近しい存在が、まさにネクサスだった。

ただ、そこまで言った後、机に置いていた、自分のメモ、というより、創作のためのアイデアが詰まったノートに目を向けた。

 

「・・・なんか、書けるかな。続き。」

 

それは、書き途中だったある文。いや、"歌詞"。

これまでは、自分の不満や葛藤などを歌詞に込めていたが、これから新しく作ろうという曲のテーマは、バンドについて歌うような歌詞にしようとしており、いざ書き始めてみたはいいものの、かなり難航していた。

直接的すぎるフレーズばかりで、どう他の言い方に言い換えればいいかわからなかった中で、先程のネクサスの姿や、背景になっていた夜空を見て、何かが、出てきそうな予感を感じていた。

 

だからこそ、明日から学校は始まるが、机に向かうと、そのノートを開き、ペンの先を見る。

いい曲が、出来ることを信じて─────

 

 

 

しかし先程見えたネクサスが、実は女の子を手に乗せているという、とどのつまり、リア充爆発しろ的なことをしているなど、この部屋にいる、ひとりぼっちの女の子には知る由もないことだが。

そして明日─────"普段の運動不足がたたり、大変な思いをする羽目になることを、まだ知らない。"

 

 

 

一方、こちらもまた、そんなことを知る由もないネクサスはというと、最初の目的地である石垣島に向けて、通常のスピードよりは落としつつ、安全運転ならぬ、安全飛行で向かっていた。

 

その時、向こうからこちらに向かってやって来る、一機の自衛隊の航空機であろう飛行機がこちらに向かってやって来るのを、ネクサスの超人的な視力が捉えた。

どうやら迎撃というわけではないというのは察し、その飛行ルートにぶつからないよう、右にへと飛行しながら移動をする。

少しすると、見えていた航空機がやってきたが、進路を変えていたため正面衝突することはなかった。

けれど、スピードを普段よりも落としていたということもあり、気のせいかもしれないが、"その航空機のパイロットと、目が合ったような気がした。"

だが、向こうにも何かを思わせるわけにもいかないため、気には止めず、そのまま飛行を続けていく。

 

「すごいね光輝。よくわかったね。」

「(まあ数キロ先まで見渡せるからね。ネクサスになると。)」

「いやさらっと怖いこと言わないでくださいよ・・・」

 

そんな話をしながら、ネクサスは目的地にへと向かっていく。

 

 

 

「ウルトラマンネクサス・・・まさかこんなところで遭遇するなんてな・・・」

 

一方、先程すれ違った自衛隊の航空機、イーグルに乗っていたパイロットは、ネクサスに遭遇したことに一人驚いていた。

今日はたまたま夜間飛行訓練の日であり、一定の訓練を終え、基地に戻ろうとしていた矢先だった。

 

自衛隊の一隊員であり、あの日、自分も本来であれば出撃予定であった。

そうして自宅から基地まで急いで着いた時には、ネクサスが全てを解決してくれた。

自身としても隊員の任務を果たせなかったことに少しの悔しさは滲ませたものの、それ以上に、地球の平和を守ってくれたネクサスに感謝しかなかった。

もし彼が来てくれなければ、おそらく自衛隊の全戦力をもってしても、あの怪獣には勝てなかったはずであり、仮に自身も出撃していたのならば、命を落としていたことだろう。

彼がいなければ、今もこうして仕事を続けていられるだけでなく、愛する家族と幸せな時間も過ごせなかったため、ネクサスに対しては感謝の念しかなかった。

 

 

 

「・・・"継夢"に、いい土産話が出来たな。パパ、ウルトラマンネクサスに会ったぞ、って。」

 

 

 

この訓練を終えて、早く家まで帰ろう。きっと、息子もこの話を喜んでくれる。

そんなことを思いながら、このパイロットは基地までの道のりを飛んでいく。

 

 

機体の色も相まって、それはまるで、銀色の、流星のように─────

 

 

 

「・・・ところでネクサスは、なんで右腕を胸のあたりに置いていたんだろうか?それに、手に人を乗せていたように見えたが、気のせいか?」

 

 

 

少しの、違和感は残してだが。

 

 

 

─────???

 

「うっはーすげー!キラウエア火山だー!」

「ほら千束!あっちはワイキキビーチですよ!」

「(いやー、なかなかハワイなんて来ないからこうしてゆっくり眺めるのなんて新鮮だよ。)」

 

そうしてしばらくしてから、私達は石垣島を経由してから、目的地であるハワイに来ていた。

我が愛しき第二の故郷、ハワイ!!・・・と、興奮しているのはもちろんそうなんだけど、ただ、ちょっとだけ冷静な自分もいる。その理由は、至って簡単。

 

 

「でもまさか、ハワイを上から見ることになるなんてねえ。」

「冷静に考えても意味不明ですけどね・・・」

 

 

そう。ネクサスの手に乗っている状態で、ハワイを真上から、眺めているのだ。

ちなみに先程の石垣島も同様に、ネクサスの手に乗った状態のまま、上から眺めていた。

 

理由、というか、そんなことは当たり前だけれど、もしこの状態で私達がハワイに降り立ったら、不法入国に他ならない。それに、光輝も一度変身を解除したら、すぐにはネクサスになれないのだという。

それらの理由を踏まえれば、こうして見ることになるのは仕方がないことなのだが、ただ・・・当然ではあるが、こんな形でハワイ諸島を見るなんて、まずない。飛行機の上からも見えるかもしれないが、そこで見る景色とはまた異なるため、これはこれで興奮しているのは、私も同じだ。

 

「次はいつハワイ行けるかなー?」

「・・・まぁ、しばらくは無理でしょうね。次行けるとしても、来年以降になるでしょうね。」

「えー!もっと早く来ようよー!光輝だってリコリコの仲間になったわけだしさー!」

「(・・・千束、その気持ちは嬉しいんだけどさ、農家がそんなに家空けるわけにはいかないんだよ・・・)」

「えー!なんだよー!光輝のケーチ!」

「(ケチじゃないよ!それが農家の運命なんだよ!もちろん俺だって行きたいけどさ!)」

 

ハワイを見ながら千束と光輝が言い争っているが、そもそも今光輝じゃなくてネクサスなんですよね・・・

 

「じゃあ光輝、そろそろ帰りましょうか。」

 

ある程度ハワイを上から見たため、そろそろ帰ろうかと提案をした。というより、私もですけど、もうこの状態に慣れて普通に喋っていられる私達がおかしいんですよね・・・

しかしそんな中、光輝は、いやネクサスは何も言わず、じっと向こうを見つめていた。

 

「どうしました?」

「(・・・ハワイまで来てそのまま日本に帰るなんて、ウルトラマンがそんなケチくさいことするかよ!)」

「「えっ?」」

 

何を言っているのかわからず、思わず聞き返すと、光輝はまた、水平の体勢になった。

 

 

「(おっしゃー2人とも!地球一周してから帰るぞー!!)」

「はいっ!?地球一周!?」

「えーっマジでー!?やったーー!行けーー!!」

 

地球一周。そんなありえないワードが頭に響いた後、ネクサスは再び、飛行を始めた。ハワイの東へと飛んでいくということは、今から行くのはまさか・・・!?

 

「うっはーーー!!サイコーーー!!」

「・・・アハハハハ!もうわけわかんないですよスケール大きすぎますって!こうなったらもう、どこまでも付き合いますよ!!」

「そうだよたきなーー!やっと開き直ったかー!こういうのはめいっぱい楽しむべきなんだよーーー!!」

 

たきなももう諦めたのか、あるいは開き直ったのか、笑い出してようやくこの状況を楽しみだした。そうだ、もうこんなこと出来ないかもしれない。だからこそ、めいっぱい楽しむべきだ!

 

「ありがとーネクサスーー!最高な体験させてくれてーー!」

「ありがとうございますーー!」

「(気にしないでいいよ!よーしもうすぐアメリカ大陸見えてくるよーー!!)」

 

 

 

千葉県─────ナツの家

 

「へえそうなんかい。光輝君達に会ったんかい。」

『ああ。久しぶりに会ったと思ったらまさか女二人連れてておめぇもかよ!?って思ったら、めっちゃいいやつらでビビったわ。』

「あんたが昔連れてた女と一緒にすんじゃないよ。」

 

一方、千葉県にあるナツの一軒家では、マッサージチェアに座りながら、ナツは電話をしていた。また、膝の上にはちゃっかり、プチ丸が乗っている。

その相手は、言わずもがなではあるが、空であり、向こうからかかってくるなんて珍しいと思っていたが、話の内容を聞けば、今日向こうから電話をしてきた理由も、大いに納得が出来た。

 

『てかよナツばあ。光輝もだけどよ、千束もたきなも、めっちゃあいつのこと好きじゃね?』

「あんたね、そういうことは言わなくていいのよ。当人達に気付かせてあげればいいの。」

『いや俺も言ってはねぇけどな。でもあいつ、どっち選ぶんだろうな。』

 

そんな中、空は一番気になっていたことを、なんとなしに質問してみた。

あの2人、というか3人は、それぞれがそれぞれに好意を持っている。傍から見ても、あまりにも仲が良すぎて、むしろこのまま3人でゴールまで行ってもおかしくない。そんな印象すら、今日会っただけの空ですら受けていた。

勿論、日本どころか、世界でもそんなこと許されていないのが現状ではあり、自身も昔はヤンチャをしていて、そういう女関係でトラブルになったことも、無いとは言い切れない。だからこそ、どちらを選ぶのか。そんなことを思いながらナツに質問をしてみた。

 

「さぁねぇ。どっち選ぶんだろうねぇあの子は。まぁただ、どんな形であれ、私にはあの子たちには幸せになってほしいけどね。」

『だろうな。でもよナツばあ。思ってたけどよ、なんでそんなにあいつ特別視するんだ?まぁ俺だってあいつには幸せになってほしいけどよ。』

 

そんなこと簡単よ、と返すと、ナツは窓の外の空を眺めた。

 

 

「・・・あの子が、いい子だからよ。」

『・・・そりゃそうだな。』

 

 

そんな話をしている中でタイミング良く、ほんの一瞬だけだが、夜空を走る一筋の赤い光があったが、それが見えていたのか見えていなかったのかは、わからない。

 

 

 

 

そんな夜のこと

千葉県─────光輝の家

 

客間の部屋で2つ布団を並べ、タオルケットをそれぞれ1枚掛けながら、千束とたきなは話し合っていた。

その二人の足元には、古めかしい扇風機が一つ置かれており、横に首を振りながら、2人の足元を終始涼しくしていた。

 

「いやー!ほんっと、いい一日だったね!」

「そうですね。本当に、楽しい一日でしたね。ただ、おかげでくったくたですけど。」

「いやーそりゃ私も。今日はオールナイトで映画三昧だぜー!なんて思ってたら、もうその体力すらないわ・・・」

「まさか、石垣島とハワイ行くとは思いませんでしたね・・・というか私達、地球一周したんですよね。」

「意味わかんないよねぇ・・・それも降り立たずに終始上から見るっていう・・・贅沢なんだかなんなんだか・・・」

 

元々、今日は光輝の両親からの依頼ということで、面倒を見る、という名の遊びをするつもりだった。

が、蓋を開けてみれば、たきなにとっても、千束にとっても予想外のことばかりであり、想像の何倍、何十倍も遊び、食べ、飲み、歌い、そして・・・数時間前には、数千キロ、もっと言えば、数万キロ以上を、行って帰ってきた。絶対に誰にも言えない、とんでもない体験をしてしまった。遊びどころか、大冒険だ。

 

だからこそ、家に帰ってきた時には、その反動からか、急激に疲れが襲い、お風呂に入った後は、もう何をする気力すらなく、布団を敷くのを協力した後は、こうしてもうすでにバタンキュー、となっているわけだ。

そんな中、お風呂に入っている間に光輝は明日のお昼の準備を進めていたため、いったいどこにそんな体力があるのかわからず、改めて、光輝を少しだけ見直した・・・というのは、もちろん本人には言えないのだが。

 

そうしてしばらく横になっていると、だんだんと体力、いや英気が回復してきたのか、千束はいつも通りのテンション感で、たきなに話しかけた。

 

「でさ、たきな!女の子2人が同じ部屋で寝る!やっぱりこういう時は、恋バナだよね恋バナ!」

「またですか・・・」

「いいじゃーん!女の子同士だよー!で、たきなはどんな男の子が好きなの!?ねね、どうなの?」

 

はぁ・・・と、一つため息をつくと、特になし、と言わんばかりに、寝返りをたきなは打ち、千束に背を向けた。

 

「あーんたきな冷たいー!もっとお話ししよ「真田 光輝。」

 

えっ?と千束は思わず聞き返した。

その反応が来ることをわかっていたかのように、たきなは寝返りを再び打つと、千束と向き合った─────今度は、真剣な表情で。

 

 

 

 

 

 

「千束。私は、真田 光輝のことが好きです。」

 

 

 

正直に、自らの想いを口にした。恥ずかしく気もなく、真っすぐ、自分の言葉で。

 

その言葉に驚き、少しすると千束の顔が赤くなり出していく。

 

「・・・へ、へー!そうなのか!たきなは、ね!へ、へー!ふーん・・・」

「千束だって、そうですよね?」

 

その答えに戸惑い、あやふやな言葉で返すも、たきなはそれを全く意に介していないように、千束も同じだろうと、質問をした。口調も先程と同様、至って真剣だ。

その言葉と目と表情に、それ以上は何も言えなくなり、今度は逆に、千束が寝返りを打ち、たきなに背を向ける形となった。

そのような雰囲気になっても、たきなは表情を変えることなく、千束の背をずっと見つめている。

 

 

 

 

 

 

「・・・私とたきなのヒーロー、他の子に取られたくないでしょ。」

 

 

 

背中を向けた状態で、千束は一言口にした。

その言葉を聞き、たきなもようやく、柔らかい表情にへとなった。

 

「・・・よかったです。千束も同じ気持ちで。」

「なーんだ、私だけじゃなかったか。」

 

そこまで言うと、千束もまた、寝返りを打ち、たきなの方を向いた。先程とは違い、優しい笑みを浮かべながら。

 

「ええ。私は、この先もずっと3人でいたいですよ。」

「・・・そうだね。私も、これからも3人でいたいな。でももし、光輝が私達のどっちかを選んだらどうしよっか?」

「その時は、ちゃんとどっちも面倒見るように私が言ってやりますよ。仮に私を選んで千束を不幸にするなんて、絶対許さないですから。」

「たきなこっわ・・・って言いたいところだけど、私だってたきなを不幸にさせるような真似したら、すぐ光輝のことボッコボコにしてやるから。」

 

もしも、起こるかもしれない未来。そんな未来がもし来た時の対策を講じていると、同じような考えの対処法を言ったことで、2人して思わず吹き出し、笑い出した。

 

「でもまー、光輝がそんなことするわけないけどね。」

「ですよね。あんな風に、地球一周を私達のためだけにしてくれるなんて、どっちも好きじゃなかったらしてくれないですよ。」

「だよね。ああいうふうに言ってたのに、私達のことになると、約束を破ってくれる・・・だから好きなんだよね。光輝のそういうところ。」

「・・・ですね。というか千束、さっきああして写真見せたのも、本当は意識向けるためですよね?」

「・・・バレたか。」

「バレバレですよ。それに最近、光輝に対してちょっと興味持ってそうな女性のお客さん、よく対応してますよね?」

「いやいや、それはたきなもでしょ。千束さんの目はごまかせんぞ。」

「・・・やはりお見通しでしたか。まあ、私と千束の命の恩人を、何にも知らない人に取られたくなんてないんですけどね。」

「大体、あいつネクサスになったらすーぐどっか行っちゃうし、それで帰って来ても理由はぐらかされるなんて、男として見たら最悪でしょ。」

「ですね。だからこそ、私達みたいに、ちゃんと理由知ってる人じゃなきゃ務まらないですもんね。」

「だね!そうなると結局、私達にしか務まらないんだよな~これが。困ったことに。」

 

最後の千束のジョークに、ふふっ、と互いに笑い合うと、お互いに顔を見る。

 

「それにねたきな。光輝を絶対に手放しちゃいけない理由、もう一つあるよ。」

 

なんですか?とたきなは尋ねると、千束はこれまで以上に、優しい微笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「光輝を一人にしたらプチ丸を独占される。」

「それだけはなんとしても阻止しましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

─────翌朝

 

「・・・っし終わり。」

 

時刻は朝の6時。1時間ほど前に起きてから、6人分のお弁当を作り、先程、朝ごはんも作り終えた。

お昼のお弁当用のカキフライだが、一旦俺のは置いておいた。

パン粉までつけ終え、後は揚げるだけという状態にまで昨日の内にしておいたが、昨日のうちに冷凍庫に突っ込んでおいた。

やはり揚げ物は、揚げたてが一番美味しいからこそ、これだけは向こうで揚げるように準備をしておいた。

 

さて、というわけでそろそろ、向こうも起きてきてくれないと困るな・・・そう思っていると、ピピッピピッと、スマホのアラームが聞こえてきた。しばらくすると、ドアを開け、2人が出てきた。

 

「ふわぁ~~おはよ~光輝~・・・」

「おはようございます・・・」

「おはよう。よく眠れた?」

「んや~おかげさまで~・・・」

 

その様子に、熟睡出来たのだろうと察し、千束とたきなにテーブルに座るよう指示すると、朝ごはんを置いていく。

今日の朝ご飯は・・・

 

 

「・・・おにぎり?」

 

 

机の上に置いたのは、2つのおにぎりと、昨日のうちに作った伊勢海老出汁のお味噌汁。具材はシンプルに、わけぎと海苔だけ。それと、コーヒー・・・ではなく、牛乳を入れた、カフェオレを置いた。

非常にシンプルな食べ物だからか、2人とも少しポカンとしていた。

けれど、どうしても今日の朝ご飯を考えたら、これ以外なかったのだ。

 

「昨日はヘビーなご飯だったから胃に優しいやつってか~?」

 

それもあるんだけどね・・・と付け加えると、今日この朝ご飯にした理由を口にした。

 

「・・・俺のね、思い出のご飯なんだ。」

「思い出のご飯?」

「そう。俺がこの家に来て初めて食べたご飯。俺が・・・吐かずに食べれた、最初のご飯。そんな重い飯いらんわって思うかもしれないけどさ、昨日あんだけいっぱい食べたし、明日の朝ご飯何にしようかなって昨日布団に入って考えてた時に、せっかくなら、食べてもらいたいなぁ・・・って思ってね。あ、ごめんね重たい話して!もしあれだったら違うものに「いっただきまーす!!」

 

今日の朝ご飯を選んだ理由を口にしたが、よくよく考えたら重すぎる理由だ。その理由を口にしながら流石に申し訳ないと思い、もしそんな話聞いて口にしたくないのなら、違う食べ物にと思っていたら、千束は手を合わせてからいただきますと大きな声で口にし、1つのおにぎりを口にした。

しばらく咀嚼を繰り返した後、その表情が綻んだ。

 

「・・・めっっっちゃ美味しい!この混ぜご飯、どんなふりかけ使ってんの!?」

 

・・・驚きと共に言葉が出なくなるが、ただ、千束はおそらく、本当に美味しいから尋ねたというのが5割、俺に気を遣わせないように尋ねたのが5割なのかもしれない。

本当のところはどうかわからないが、ただ、その優しさに、俺も笑みを浮かべ、いつもの調子に戻る。

 

「これね、しらすに鮭フレークに、炒めた小松菜とかつお節と胡麻を混ぜた母さん特製のふりかけ!どう?めっちゃ美味しいでしょ!」

「えーそうなの!?これ瑞生さんの味なのかーー!」

 

そのいつも通りの空気に戻してくれた千束に少しほっとしていると、たきなもまた、おにぎりを一つ取った。それも、今千束が食べたものとは違う方のおにぎりを。

そして、その味に驚き、少し目を見開いていた。

 

「これ、なんですか!?玉子焼き・・・の中に、ひき肉が入ってるんですけど。」

「これはね、玉子焼きの中に炒めた鶏のひき肉を入れた、食べたら親子丼おにぎり、っていうやつ。笑っちゃうでしょ?」

「確かに・・・でも、こっちもめっちゃ美味しいですよ。」

 

たきなもまた、このおにぎりの美味しさに、顔が綻んでいる。それは、気を遣ってなのかもしれないが、けれども、この顔は、そうではないだろう。

 

・・・でも、やっぱりこの2人の優しさは、いつだって、安心する。

そう思いながら、俺も朝ご飯を食べ始める。

今日から二学期の始まりだから、忙しいのだ。

 

「・・・あ、伊勢海老出汁の味噌汁めっちゃうまい・・・」

 

 

 

「さてと、2人とも忘れ物ない?」

「大丈夫大丈夫ー!全部持ったから!」

「千束は忘れ物が多いですからね。ちゃんと私が見直しましたので大丈夫です。」

「おいたきな、そりゃどういう意味じゃ?」

 

そうして朝ご飯を食べ終えてから身支度を済ませ、俺達は着替えを済まし、戸締りを終えると、玄関の前までいた。

俺はいつもの学生服に。千束とたきなは、いつものリコリスの制服に。

 

「やっぱり、あんま見慣れないですね。光輝の制服姿。」

「そう?」

「そうだよ。いつも私服が多いから、なんか物珍しいし、やっぱ光輝は高校生なんだなーって思うよ。」

 

どういう意味?と笑いながら言いつつ、全員それぞれの靴を履いていく。

そして、全員外に出て、暑さにうっ、となるが、車へと色々な荷物を積んでいく。今日のリコリコの皆へのお昼と、冷凍してあるカキフライも忘れていない。保冷バッグにカキフライは入れ、保冷材もその中に入れておいたので、溶ける心配はまずもってないだろう。

加えて、今日はどのみち帰宅かつ、このままリコリコへ出勤ということなので、せっかくなら高校の近くまで運転をして乗せていってくれるそうなので、いつもの出発時間より少し遅く出ても助かる。

 

そうして車に荷物を積んでいき、家の鍵も閉め、後は乗るだけとなった時に、2人とも、と声を掛ける。

おそらく、その言葉を忘れている。いや、知らないかもしれないと思ったからだ。

 

「2人とも、人の家で楽しんだ後は、なんて言うの?」

 

その言葉に、当初は2人もポカンとしていたが、ああ!となり、俺が何を言いたいのか、察した。

 

 

 

「「・・・お邪魔しました!」」

「・・・またどうぞ!」

 




というわけで、改めて、完結させました。
私のメンタル的なところで終わらせるような形になってしまい、不本意かとは思いますが、それでも、本編で綺麗には終わらせており、こちらでもある程度はきれいな形では終わらせましたので、ご理解ください。


最後に少しだけ、思いを吐き出させてください。

僕はクロスオーバー小説しか書けませんが、書いているうちに、一つだけ、やりたいということを決めました。

それは、この作品の千束とたきなは、原作とは違うけれど、本編同様どころか、それ以上に凄い経験をさせてあげたいと思ったのです。
無論、生み出したアサウラ先生やいみぎむる先生、並びに関わった多くのリコリコスタッフへのリスペクトはありますが、だからといって、僕は絵は描けません。文字でしか、それをすることは出来ないですが、それこそが、クロスオーバー小説ならではの醍醐味であり、本編では実現不可能だからこそ見れる、面白みだと思ったのです。

そして、僕が書いているこの小説の中で、他のリコリコ作品にいない、唯一無二であり、最大の存在であるウルトラマンネクサス。

そんなウルトラマンネクサス、いやウルトラマンだからこそ、人間にしてあげられることとは?ということを考えた際に、ガイアやコスモスで描かれていた、大切な人を手に乗せて、一緒に空を飛ぶということを思いつきました。

昨今のウルトラマンでは、中々その描写はありませんが、ただ、二次創作くらいしてもいいだろう。そして、世の中のちさたき二次創作を描いている人は絶対に出来ない、"千束とたきなの2人が、空を飛ぶ"という、荒唐無稽・実現不可能な表現も、ウルトラマンがいれば出来ると思いましたし、どんなとんでもないことでも、まぁウルトラマンだからな・・・で片付けられる、説得力を持たせられると思ったのです。

もちろん、表現としてはいまいちと思う方もいる方も多いと思いますが、ただ、円谷プロの言葉に、空想の力、という言葉があります。
その空想の力というのは、あくまで僕の主観ですが、ウルトラマンを見て、ロマンやワクワクを感じることが、我々の空想の力であり、ウルトラマンが関わるからこそ、他とは違う、この作品ならではの味が出たと思いたいです。
(ちさたき至高・百合の間に入る男は〇ねぇ!っていう人には届かないんでしょうけどね)

そして、もう一つ、いや二つだけ説明するべき、サプライズ。1人は、とある女子高生。学校に行きたくない女子高生。1人は、とある自衛官。家庭を持っている、自衛官。
あの女子高生は、たまたま家の外から見えちゃった、っていう感じです。
どんな女子高生なのかな?バンドやってるのかな?

で、あの自衛官は、ずっとイーグルにでも乗り続けているんでしょうね。で、もし、子供もずっと元気だったら・・・?そんな想いで、入れました。

最後はこのような形で終えましたが、ただ、リコリコショートムービーや、ブレーザー、そして触れていなかったですが、ウルトラマンアークを見て、なんかこういったこと書きたいなぁという、ふわっとした想像も生まれています。

なので、最終回と言いつつ、ひょっとしたら、読者なんか知らねー!俺が書きてぇんじゃーい!となって、ひょっとしたら短編、あるいは、想像していた続編を書く可能性も、0ではないとだけ言っておきます。
その時は温かい目で見てもらえたら嬉しいですが、とりあえずは、一旦これで、ピリオドとさせていただきます。

そして、最後の言葉は、私の想いでもあります。
ハーメルン様、大変お世話になりました。
というわけで、お邪魔いたしました。

















─────数日後

田舎道を走る1台のスーパーカブ。そのドライバーは、目的地にまで来ると、停め慣れているのか、その人物のいつもの場所に、スーパーカブを停めた。

「ふぅ。あっちぃ・・・」

そのスーパーカブの乗り手であった光輝は、ヘルメットを外すと、この暑さが応えたのか、はぁ・・・と疲れたような表情を浮かべる。
すると・・・

「ワン!アンアン!」

そのスーパーカブを停めた場所にある建物から、犬の鳴き声が聞こえた。
その声にハッとし、疲れていた表情が一瞬で戻る。

「プチ丸!?そうかそうかナツばあ。今日はプチ丸名誉店長出勤日かー!」

それは、ごく稀に、ナツが気まぐれに行う、プチ丸をお店にまで連れてきて、その日一日名誉店長として店を共に盛り上げるイベント。だがそれは、本当に気まぐれであり、かつ、不定期開催。そして、一年に10回もなければ、光輝にもシークレットだ。
だからこそ、店までやって来てプチ丸の鳴き声が聞こえた瞬間にそれがわかると同時に、光輝のテンションも上がるというわけだ。

そうして小走りで店の前まで行くと、店のドアを開けた。


「おはよー!プチま「おうお疲れー光輝ー。」
「お疲れ様です。」


光輝の視線の先には、何故か、数週間前もここにやって来ていた、千束とたきなの姿があった。
あまりにも予想だにしていない人物に驚き、声も出ないのか、何度かまばたきをした後、えぇっ!?と大声を出した。

「な、なんでいんの!?」
「いやだってプチ丸は私とたきなの弟だし。」
「姉が弟に会いに来るのは当然じゃないですか。」
「誰が誰の姉じゃおぉん?」
「はいはい光輝君。さっさと準備しな。」
「てかナツばあ!知ってたの千束とたきな来ること!?」
「さぁー?どうだかねー?」

そんな話をしていると、またもやガラッと店のドアが開いた。

「あ、いらっしゃいませー!」
「よう光輝。」
「えっ、空さん!?」
「あら、遅かったじゃない。」

ドアを開けたのは、まさかの空であり、その手には、大きなビニール袋を抱えていた。

「はいよ。テイクアウトのビーフブリトーとハニーマスタードチキンサンド持ってきたぞ。ナツばあはチキンブリトーのワカモレ追加トッピングにハラペーニョ追加でいいんだっけ?」
「そうそう。今更聞くんじゃないよ。」
「うっひゃーー!待ってましたーー!!」
「おういっぱい食べろよ。なんてったって、ウチの自信作だからな。」

そんな話をしながら袋から出来たてであろうアルミホイルに包まれたブリトーとチキンサンドをそれぞれに手渡していく空。
その和気あいあいな様子に驚いていると、またもやドアが開いた。

「あらやだナッちゃん!その子が光輝君の!」
「あらまー!べっぴんさん!」
「いやー!ついに光輝君にそういう子が!」
「もう、やめてくださいよ。そういう関係じゃないですから。」

よくお店に来る、常連のマダム達までもがやって来た。
そう言うマダム達を宥めるかのように、たきなは丁寧に取り繕っている間に、光輝以外の集団は、一丸となって盛り上がりはじめる。


そうして取り残されたのは、この場に全くついていけない、光輝一人。



「・・・帰れーーーーー!!!」



そんな光輝の絶叫が店内に響く一方、

「ファーーーァ、アウン。」

いつの間にか全員の喧騒から離れ、一つ、大きなあくびをしたプチ丸は、エアコンが1番あたるような場所に置かれたクッションまで行き、体を丸くすると、グー、グー、と、我相関せずといった具合で、いびきをかいて寝始めた。

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