+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー   作:ワンホットミニット

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Interlude・異常 -アノマリー-

日本─────どこかの山中

 

深夜の山中、そこを歩く一匹の怪物がいた。

 

それは、以前姫矢、そしてサード・リコリスを襲った怪物、いやビーストである。

 

この、僅かなビーストの生き残りは、ここ数日、あてどなく彷徨っていた。

無論、この山は自分達の餌がある場所ではないことはこのビーストも理解している。

 

だが、"天敵"が今、同胞達を次々と掃討し続けている。

生き延びるためには、手段を選んでなどいられなかった。

 

そもそも、自分がオリジナルだったのか、それともオリジナルから別れた分体なのかどうかすら、すでにこのビーストは理解出来ない。いや、そもそも考えたことはなかった。そんなことを考える必要性などなかったからだ。無論、それは今も変わらない。

 

だが、"どうしてここにいるのかだけは、何度考えても、どうしても理解することが出来なかった。"

 

 

 

─────"ビーストは、ある時から、この世界にいた。"

 

この世界が自分達の居た世界とは違う世界だと気付くのには、そう時間はかからなかった。

そして、それと同時に気が付いた。

 

 

 

この世界には─────"自分達の天敵である、自分達を倒して回るあの人間達も、そして、あの光の巨人もいない。"

 

 

 

そのため、本能でビーストも理解した。

 

 

この世界では─────誰にも邪魔をされず、容易に、人間を捕食出来ると。

 

 

とある理由から種全体が弱体化していたビーストから見れば、こんなに素晴らしいことはなかった。

 

事実、自分達の餌である人間を捕食することも、"少し前までは"簡単に出来ていた。

 

おまけに、この世界には、"人間の中でもとりわけ強い恐怖を出す人間があの世界の人間よりも多くいる。"

そして、そういった人間は、武装をしているのに、"あの自分達を殺す人間達よりも弱ければ、自分達を殺すことも出来ない。"

 

加えて、そういった人間は人目に付かないところにいることが多い。

この習性は、ビーストが生まれた時から自然と身に付いた防衛本能なのか、あるいは弱体化したことで後天的に付いたものなのかどうかはわからないが、ビーストもまた、人目に付くのは出来れば避けたかった。

この世界の人間が自分達を殺せないとは分かっているものの、その習性が抜けることはなかった。

 

だからこそ、そういった人間達はまさにビーストにとって格好の餌であり、加えて、"その人間達を殺す人間もいる。"

それらもまた、同様に武装をしているのに、自分達を殺せないという、同じような存在であった。

そのため、例え数が僅かであっても十分満たされる、人間の中でもとりわけ素晴らしい餌だった。

 

 

結果、この世界はビーストにとって良い点が数多くあり、ビーストにとっては最高の環境。いわば、楽園でもあった。

そのため、この世界はあっという間に、ビーストが跋扈する世界になる

 

 

─────はずだった。

 

 

そんな中、ここ数か月、ビーストを根絶やしにせんとばかりに、急速な勢いで自分達を倒して回る存在が現れた。

 

それは

 

 

─────"かつて自分達が元居たあの世界で、自分達ビーストが弱体化する要因となった、人間達に希望を与えた、あの光の巨人(ウルトラマン)その者であった。"

 

 

それをビースト独自の情報ネットワーク、ビースト振動波により自身も察した。

 

そして、多くのビーストがウルトラマンに倒され、増えつつあったビーストはあっと言う間にごくわずかとなった。

一層の慎重を期すようになっても、ウルトラマンは次々と見つけ、掃討していく。

 

そのため、自分だけでなく、他のビーストもまた、少しでも種そのものが生き延びる可能性を上げるために、餌を我慢しこうして逃げに転じているというのが、ビーストの現在置かれている立場でもある。

事実、このビーストもまた、空腹のまま、ここ何日か過ごしていた。

 

 

しかし、そんなビーストに突如、空から謎の金色の光が降りかかってきた。

 

その光を浴びた瞬間、その空腹が満たされたと同時に・・・

 

「~~~~~~?!?!?」

 

声としてどう表現すればいいかわからないほどの絶叫を上げ、そのビースト、バグバズンブルードは、2m程度の大きさから、40~50メートルはあろうかという大きさに変化する。

 

突如自分に起こった変化に若干の戸惑いを見せたものの、すぐに状況を把握すると、先程よりも力を得たことによって、簡単に自分の餌を捕食出来ると本能で理解し、早速、餌となる人間を狩りに行こうと山と山の間を闊歩し始め、市街地へ向かおうと歩を進める。

 

 

 

─────しかし、そうは問屋が卸さない。

 

 

 

突如、空から降って来た赤い光が地面にぶつかり、その光に気付いたバグバズンブルードも思わず後ろを振り向く。

 

そしてその光の中から、例の存在が現れた。

 

自分達の、ビーストの天敵─────

 

 

「シェアッ!」

 

 

─────銀色の巨人、ウルトラマンが。

 

 

それに気付いたバグバズンブルードは天敵であり、邪魔者であるウルトラマンを倒そうと走っていくが、ウルトラマンは右手から青白い光のムチ、セービングビュートをバグバズンブルード目掛けて放つと、一瞬でその体に巻き付く。

 

縛りあげたバグバズンブルードをウルトラマンはセービングビュートと共に思い切り持ち上げ、バグバズンブルードが居た方向とは反対側の地面に叩きつける。

更にカウボーイのように、縛り上げた状態でもう一度、今度は先程居た方向の地面にへと叩きつける。

 

二度も地面に勢いよく叩きつけられたバグバズンブルードはそれだけで軽い眩暈のようなものに襲われ、すぐに立ち上がるものの視界はまだフラフラしており、よろけた状態となっている。

 

「ヘアアアアアッ!」

 

しかし、ウルトラマンは攻撃の手を止めない。

いつの間にか目の前まで走って来ていたウルトラマンの光り輝く右拳、ジェネレードナックルが炸裂すると、更にそこから数メートルは大きく吹き飛ばされる。

 

そのまま倒れ込んだバグバズンブルードに向けて、ウルトラマンは三日月型の光弾、パーティクルフェザーを何発も撃ちこむと、ただでさえダメージを負っている上でそのパーティクルフェザーの連撃を食らい、バグバズンブルードはすでに立つことすらままならなくなっている。

 

「・・・シュアッ!」

 

ウルトラマンは手を止めず、左腰に両手を構えてから、腕を十字に組み発射した光線、クロスレイ・シュトロームを未だに倒れ込んでいるバグバズンブルードに向けて発射すると、立て続けに攻撃を受けていたため防御も出来ずそのまま直撃を受け、バグバズンブルードは動かなくなると同時に爆発を起こすと、爆炎と共に青いチリのようなものが舞い上がり、あっという間に巨大化したバグバズンブルードはこの世界から、跡形もなく消滅した。

 

それを見届けたウルトラマンは、いつもであればすぐ姿を消すのだが・・・今回は違った。

 

 

赤い光に包まれたウルトラマンは、一塊の赤い光になると、上空へと飛び去って行く。

 

 

それはまるで─────"まだ対処するべき何かがあるとでも言わんばかりに。"

 

 

 

─────宇宙空間

 

「バカな・・・"カスケード光線"を与えたのだぞ!?それをあんないともたやすく・・・!?」

 

宇宙空間に浮かぶ謎の金色の巨人は、宇宙から先程のウルトラマンとバグバズンブルードの戦いを眺めていたが、あっという間に倒したウルトラマンの圧倒的な強さに一人驚いていた。

 

先程バグバズンブルードに撃ったものは、自分達のエネルギー、そしてパワーの源となっているものだ。

少なくとも、話に聞いていたヤツとは違い、今のは完全に純粋なビーストだ。

なので、自分の持っている力の一部を与えることに成功し、その結果があの巨大な姿だと理解した。

 

にもかかわらず、ものの数分で奴は倒した。それも、全くダメージを受けずに。

やはり奴は強大な力を持っている・・・"流石は、宇宙を又にかける伝説の存在なだけはある。"

 

 

"我々の決まりとして、奴には手出しをしない"─────確かに、そう取り決めただけの力はあると、あのウルトラマンの戦闘を見て金色の巨人は肝を冷やした。

 

 

ただ、手出しをしないということだったが、先程自分達のエネルギーを撃ったのは、命令などではなく、この金色の巨人の独断だった。

 

自身の早計もあったが、ビーストにカスケード光線をけしかければ、早々に奴を倒せると思っていた。そうすれば、我々の脅威が一つ減ると・・・これによって起きるデメリットも考えたが、脅威が一つ減るに越したことはないと考え、むしろそちらの方がメリットとしては大きいと考えたからだ。

 

しかし、その予想はまるで外れ、あっという間にビーストは倒された。

これは"タルタロス様"から処分を受けることを覚悟し、金色の巨人は踵を返し、自分達の故郷へ帰ろうとするが・・・

 

 

「デヤアアアアアッ!!」

 

 

突如として眼前に現れたウルトラマンの拳が金色の巨人の体に叩き込まれると、その金色の巨人は吹き飛ばされ、その直下にあった月まで一気に落下していく。

それを見て、ウルトラマンもまた、ゆっくりと月へと降り立つ。

 

「ぐぅ・・・貴様ぁ!」

 

立ち上がった金色の巨人はウルトラマンに向けて突撃していくが、先程と同様にセービングビュートをその金色の巨人の体に巻き付けると、セービングビュートを勢いよく回し始めジャイアントスイングを行い、何回転かした後、月の大地へその金色の巨人を叩きつけた。

ただでさえ先程強烈なパンチを叩き込まれただけでなく、こうして勢いよく地面に叩きつけられたことで、すでに金色の巨人は満身創痍となっている。

 

 

「・・・去れ」

 

 

その中で突如、ウルトラマンはその金色の巨人に向かって話しかけた。

 

「何だと・・・?」

 

突然話しかけられワケもわからずその金色の巨人は思わず聞き返すが、ウルトラマン、いや、"ウルトラマンに変身している者"は、より語気を強めながらその金色の巨人に向かって叫んだ。

 

 

「この地球から去れ・・・"アブソリューティアン!!"ここは、お前達のいるべき世界じゃない!お前の命は奪わない!だから、去れ!」

 

 

そうして叫んだ次の瞬間、ウルトラマンの胸に輝くY字のシンボル、エナジーコアが突如光り出すと、辺り一帯を光が包み込んだ。

それに対し、金色の巨人、アブソリューティアンの一兵士は辺りを怪訝に見回すも、あっという間にそのネクサスのエナジーコアから放たれた光に包まれる。

 

「うっ、うわああああああああああっ!?」

 

絶叫と共にアブソリューティアンを光が襲い、その光が収まった頃には、その場には倒れ込んだアブソリューティアンのみがおり、ウルトラマンはいつの間にか姿を消していた─────

 

 

 

─────???

 

「・・・アイツが、アブソリューティアン・・・アイツらが、"ザ・ワン"を連れてきた存在・・・ただ、すみません。ビーストをあんなに活性化させて、人々を危険に晒そうとしたアイツらが許せなくて・・・手を出さない決まりだったのに、すみません。」

 

どこかの部屋の中、一人の少年は握っていた白い剣、"エボルトラスター"に向けて話し掛ける。もちろん、ここには彼だけしかいないが、ただ、まるでエボルトラスターの中に、もう一人誰かがいるかのように話しかけていた。

 

そんな話し掛けに反応するかのように、一度だけエボルトラスターが点滅をすると、彼は表情を変えた。

 

「・・・ありがとうございます。後は、貴方がやってくれたんですもんね・・・失礼しました・・・えっ?君に、任せる・・・?わかり、ました。それなら・・・とはいえ、命を奪うことはしませんので・・・」

 

話が一段落したのか、エボルトラスターをテーブルに置き、ふぅ・・・と、彼は一息ついた。

 

「・・・色々あったな。まさか、ビーストだけじゃなくてアブソリューティアンまで来るとは・・・こんな形で宇宙人と遭遇したくなかった・・・よくよく考えたら、俺さっき宇宙人ぶん殴ったのか・・・ダメだ、これ以上考えても埒が明かないな・・・寝よ。明日はバイトあるから夜までフル稼働だし・・・寝てるところ起こされるの本当に辛いな・・・はぁ、ゆっくり20時間くらい寝ていたい・・・」

 

 

一つ愚痴をこぼしながら、彼─────真田 光輝は寝間着に再び着替え、布団へと潜った。

 

すぐには眠れないかなと思っていたものの、戦いによる疲れからかすぐに眠れることが出来、彼は再び深い眠りについた。

 

 

 

そして、彼もこの時、知らなかった。

 

もう間もなく、自分の日々が大きく変わり出すことを─────

 

 








この時間に予約投稿をした理由は、もはや言わずともがなでしょう。
ネクサスメインなら、この時間しかなかったです。
諸々は次回書きます。
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