+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー 作:ワンホットミニット
閑話については、あえて何もを書きたくなかったので、ここで改めて。
というわけで、6.5話で、ようやくビーストと、ウルトラマンネクサスの設定を描きました。
そして・・・ついに、アブソリューティアンという背景を明かしました。
なので、このネクサスは、人造ウルトラマン?やっべ壊さなきゃ。でアレをフルボッコにして、リブットを置き去り光の国のウルトラマンに任せて去ったあの時間軸からやって来た設定です。
ここはまたより詳細を書いていこうとも考えております。
そこで3話を読み返していただければ、前書きにそう言った意味も、ザ・ワンの台詞の意味も異なってくるかと思います。
そしてようやっと、本格的にクロスさせていきます。所々都合はありますが、お許しください。
物語も、中盤戦です。
そして、ここからはいつもの余談です
ウルトラマンデッカー、本当に面白かった!出演者やスタッフの皆様本当にお疲れ様でした。
手堅い傑作を作ってくれ、非常にウルトラマン初心者にも進めやすい、面白いウルトラマンでした!トリガーも要所要所で頼りになるいい先輩として出ており、先輩ヒーローの客演として非常にいい塩梅の客演だったと思っております!
映画も楽しみです!
─────株式会社東日
「・・・ありがとうございました、姫矢さん。お手数をおかけしました。そして、今回の件、本当に申し訳ありませんでした。依頼については失敗ということで、前金などもいただいておりませんので、このまま依頼の締結とさせていただければと思います。」
翌日、早速八神と海藤は株式会社東日へと再び赴き、会社に残っているデータの削除のチェックを先程まで行っていた。
姫矢のデスクのPCだけでなく、それ以外のPCにもデータがないかを姫矢の直属の女性の先輩社員にも確認してもらいながら、この会社にあった全てのデータを削除したことを確認した。
とはいえ、もし残っていたとしても、DAがハッキングし、削除するとは思っていたのだが。
ただ、その女性の先輩社員も話を聞いた当初は怒っていたが、その理由を八神、そして姫矢の口から説明することで納得してもらい、協力してもらったわけだ。
一連の作業が終わり、八神と海藤、そして姫矢の3人は会社の入り口前のエントランスで、今回の依頼が失敗に終わったため、その件について話し合っていた。
だが、それもあくまで形式的なものであり、そうは言っているものの、今はそれ以上に、ジャーナリストにとって、真実をもみ消されるという屈辱を理解してくれた姫矢への罪悪感で八神の心は一杯だった。
DAやリコリス、そして、ビーストの習性といった様々な要素が関わっているとはいえ、何も情報を明かせない中でデータの削除を依頼するなど、気持ちのいいものではまるでなく、昨日からずっと罪悪感に襲われ、本当にこれで良かったのかと自問自答し続けていた。
とはいえ、データを消さなければ多くの人の命だけでなく、姫矢の命までもが危ないため、気持ちや意見が変わることはなかったものの、正直、データの削除を見ている時には、心苦しさから、まともにPCの画面を直視することが出来なかった。
にもかかわらず、姫矢は八神に対して爽やかな笑顔を八神達に向けている。
「いえ、気にしないでください。こちらこそ、私のために尽力していただき大変感謝しています。」
「ですが姫矢さん・・・」
「むしろ、こちらも昨日は感情的になってしまい申し訳ありませんでした。あの後、冷静に考え、八神さんが私を守るためにしてくださった行動だということを理解し、納得しましたので。それに、元々依頼したのは私でしたので、どのような結末になっても受け入れようという覚悟ではいましたので、何も気にしないでください。」
八神の気苦労とは裏腹に、目の前にいる姫矢はその屈辱も受け入れ、逆に自身を守ってくれた感謝を示してくれたことに、八神はより一層の申し訳なさを感じつつ、同時に探偵としてもある種プライドを救われており、その心意気にただただ感謝し、頭を下げることしか出来なかった。
「それに、まだ八神さんはあの写真を持っていますよね?」
姫矢はまるでさもわかっているかのように写真のことを聞くと、それを聞いた八神もまた、やはりご存知でしたか。とすぐに表情を変える。
「えぇ。それに、この依頼をする直後から現像していましたので、実はもう一枚写真は手元にあります。なので、あの時すぐにデータを壊したんです。最後に頼れるものは、やはりアナログなモノなので。」
さすがは裏社会の真実を追うジャーナリスト。そういった対策もバッチリしており、伊達にこの界隈で今まで生き残ってきたわけではないのだな・・・と素直に八神は感心する。
「それに、私が撮った写真で普通に暮らしている人の命の危険を晒すようなら、それはジャーナリズムではないと思っています。なので、その写真に関しては私が厳重に保管しておきます。ただ、その写真は八神さんが持っていてください。」
昨日まさにそれを使わせてもらおうという話を海藤としていたのだが、何も言っていないにもかかわらず、姫矢もまた、その写真を持っていてほしいという提案をした。
まさにそれについても聞こうとしていたので、その提案に驚き、いいんですか?と八神は思わず聞き返す。
「えぇ。今の私が持っているより、八神さんが持っていた方が今はいいと思うんです。なので、その写真はお渡しいたします。」
こちらの都合とはいえ、自身の無理難題と言えるお願いを素直に受け入れ、公表しないと決めた心意気だけでなく、この写真は今は自分より八神が持つべきだと判断し、この写真を譲ってくれたこと。
それらの姫矢の心意気と行動に、ただひたすら八神は感謝し、ありがとうございます。と言いながらもう一度深く頭を下げた。
「姫矢さん、何から何まで本当にありがとうございます。今回の件、公開出来る時が来たら改めて、ご連絡をさせていただければと思います。」
八神は顔を上げ、約束するかのように、姫矢と硬い握手を交わす。
「八神さん、それとなんですが・・・」
ただ、まだ何か話すことがあるかのように、姫矢は八神の目を見ながら、今自分が撮影しようと思っている、この先の新たな目標を話し出した。
「まだ、彼を・・・銀色の巨人を撮影していません。次はそちらを撮影するという目標が今はありますので、その写真だけは絶対に世間に公表してみます!」
銀色の巨人。確かにそれならば、人々にプラスになる、明るい感情を与えられるかもしれない・・・そんなことを思いながら、姫矢の新たな目標に、期待してます、とだけ言い残し、八神と海藤は会社を出た。
出て直ぐに次の行動を起こしても良かったが、いつどこでDAやリコリスから監視されているかわからない。自分達や周りの人々の安全を確保するためにも、念のため一度事務所へ戻ることを決め、タクシーに乗り込み、八神探偵事務所へと戻った。
「さて、それじゃ、電話するか・・・」
事務所へ戻るとすぐ、八神はスマホを取り出し、とある場所へと電話を掛け始める。
例の、あの喫茶店へ─────
錦糸町─────喫茶リコリコ
コードネーム、ビースト・ワンと遭遇して以降、小さな依頼をこなすことは何度かあった。
しかし、当のビーストやビースト・ワン。そして、ウルトラマンは一向に現れることはなかった。
むしろ、他のリコリスがビーストに遭遇したというケースが一件だけあり、かつ、そのリコリスというのは、以前、ビーストと遭遇したリコリスだという。
まるでそのリコリスの口封じをするかのように、再びそのリコリスの前にビーストが現れた。
そして、それに釣られるかのようにウルトラマンも現れ、ビーストを倒して去っていったとの情報が届いた。
ただ、不思議なのが、ウルトラマンはビーストは倒すものの、その場に居合わせた犯罪者には一切手を出していない・・・とのことだった。
つまり、ウルトラマンはビーストしか倒さない・・・という、人類の味方と言える存在ではあるが、人間の悪人は罰さない・・・という、リコリスの味方とも言い切れない、非常に曖昧な立場だった。
あるいは、人間には一切手を出さないというのが、ウルトラマンのポリシーなのかもしれない。
「あーもーそのリコリスばっかりずーるーいー!なんでまたウルトラマンに会えてんだよー!私だってウルトラマンに会ーいーたーいー!会ってお礼言わなきゃいけないのにー!出てきてよーウルトラマーン!!」
「千束・・・そんなこと言ってもしょうがないじゃないですか。ビーストだってどこに現れるかわからないんですし・・・それに、そんな簡単に出てきたら街は大パニックですって・・・」
「いいじゃーんたきなだって出てきてくれたら嬉しいでしょー!?それにお店のPRにもなるしさー!だからウルトラマンリコリコ来てよー!サービスするからー!」
「いやウルトラマンが何か食べられると思ってるんですか・・・?」
更衣室で喫茶リコリコの制服にへと着替えながら、千束はウルトラマンに会えない悔しさを叫んでいた。
名付け親は自分達なのに、その名付け親が会えないのはどうなんだとばかりに、千束の恨み節はその後も続く。
その話を右から左へ受け流しつつ、たきなは慣れた手つきで肩まである長い黒髪をヘアゴムで結び、ツインテールを器用に作っていく。
着替え終わった2人も更衣室のドアを開けたらそれ以上は口にすることはせず、気持ちを切り替え、開店時間となったため、千束はドアを開け、ドアに立てかけられている看板をCLOSEDからOPENにへとひっくり返す。
と同時に、それを待っていたかのように、突如店内の電話が鳴った。
こんな開店直後の朝一から電話が鳴るのは珍しいと思い、ミカは電話を取る。
「お電話ありがとうございます。喫茶リコリコです。」
『あ、どうも。私、八神探偵事務所の八神と申します。』
電話の主は八神と自分のことを名乗った。
それは少し前、このお店にやって来ていたあの探偵であり、有名人とも言える存在でもあったため、すぐにその顔を思い出した。
「・・・あぁこの前の!今日はどういった御用でしょうか?」
『えぇ、実はですね・・・』
八神は電話越しに、昨日起きたことを全て話した。
全てを話し終える頃には、電話越しのミカは先程の店員の時とは少し異なった態度となっており、八神も声のみだが直感で感じていた。
これは・・・"そういう世界を渡り歩いてきた人間だ・・・"と。
「・・・なるほど、楠木から、あなた方にご依頼を。」
『えぇ。俺達も、正直まだ呑み込めていないですし、納得出来ていないところも未だに多くあります。ただ、今回の依頼は人々の命に関わることだと我々も認識していますし、弱い方々を守るというのも八神探偵事務所のポリシーとしておりますので、現状はDAとリコリスと向かう方向は同じということで納得をし、とりあえず協力関係を結びました。そこで、ぜひ情報交換をしたいと思いまして。本日ご都合いかがでしょうか?』
「であれば、14時以降に来ていただければ比較的空いているかと思いますので。」
『わかりました。ではその頃にそちらへお伺いさせていただきます。それではまた後程。』
それだけ言い残すと、八神は電話を切った。
口元に手を当てると、ミカはひとり言のように今の電話の内容を反芻し、理解しようと努めていた。
「・・・あの八神隆之を仲間に迎え入れるとは・・・確かにあれだけの成果を上げたのならば、味方に置いておいた方がいいというのがDAの考えだろう。わからなくはないが・・・にわかには信じられんな・・・それに、こちらに来るということは、向こうも何かしらの情報がある、ということか・・・」
あの秘匿を貫くDAが八神隆之を協力関係に迎え入れた。それも楠木からそう言われたというのだ。本人からそう言われたものの、内心にわかには信じられなかった。
訓練教官をしている頃も、そして今までも、DAが民間人と協力関係を結ぶなど聞いたことがなく、ミカもまた、前代未聞の出来事に少し混乱していた。
これは後で一旦楠木に確認してみるか・・・そう思っていると
「えっ八神さん!?八神さん今日来るの!?ファーーーー!神様私を見捨てないでくれてありがとう!ジーーーザス!!」
「うるさいミズキ!仕事しろ!」
八神隆之、という言葉に反応したミズキがえらい勢いで食いついてきたため、まずはこれの対処からだな・・・と、気持ちを切り替えることにした。
そして指定時刻になったと同時に、喫茶リコリコにやって来た八神探偵事務所の八神と海藤。喫茶リコリコの千束・たきな・ミズキ・クルミ・ミカという、即席の共同戦線となった7人は、それぞれの側で持っている情報を全て交換した。
「・・・以上が、こちらが持っている情報だ。」
リコリコ側が持っている情報になるほど、と八神は頷き、昨日の楠木の話にプラスアルファの情報として、DAという組織の中にある実行部隊としてリコリスがあり、犯罪者やテロリスト達を対処するという、噂通りの存在だということを改めて理解した。
ただ、今はその話以上にインパクトのある、ビーストと巨人。彼女達はこの巨人のことを、"ウルトラマン"、と呼んでいるそうだが、終始その話で頭の中は混乱していた。
先程、目の前にいるリコリスの錦木と井ノ上という2人の女の子から、以前DAに呼び出された時に、そのウルトラマンの絵を描いたということで見せてもらったのだが、その姿は全くもってこの世のどの生物とも異なるビジュアルをしていた。
同じく、映像越しだがウルトラマンを見ていたという店主のミカ、そしてクルミという幼い見た目ながらも、天才ハッカーだという彼女もまた、こんな姿だと語っていたため、これがウルトラマンの容姿で間違いないのだろう。
確かに、姫矢さんが言っていたように、銀色の巨人だ・・・と、八神も海藤も納得したが、問題はその能力だった。
このウルトラマンが、錦木と井ノ上をビーストから助け、格闘だけでなく、手から光線を発射したという。加えて、この2人がビーストから受けた傷まで治したというのだから、尚のことその異常な能力に驚きを隠せなかった。
光線も発射して治療も出来る。それこそ本当にテレビ番組のヒーローとしか思えないようなウルトラマンの能力に、姫矢から聞いていた以上に現実離れした存在だと改めて思い、昨日からそうだったが、ウルトラマンへの理解が全く追い付いていなかった。
さらに驚きなのが、錦木と井ノ上が遭遇したビースト、ビースト・ワンは人間が変身し、加えて、本人・・・そもそも人なのかどうかもわからないが、そのビースト・ワンが他のビーストを捕食したと自分から言っていたそうだ。
つまるところ、ビーストというのは人間が変身し、そして共食いまでしているという、規格外の怪物だということが、より頭を悩ませていた。
リコリスだけでも十分頭を悩まされるが、ビーストという怪物がこの世にいること。そして、それを秘密裏に倒していく巨人、ウルトラマン・・・探偵業を生業にしてから早数年、それなりに色々な事件や依頼を受けてきたが、ハッキリ言って、今回の事件が今までで一番、奇怪な事件だというのを八神も海藤も肌で感じていた。
「なぁター坊・・・俺ら、一体何してんだろうな・・・?」
「俺だってもうわけわかんないよ・・・」
八神と海藤が2人して頭を抱えている一方、リコリコ側も、姫矢というジャーナリストが撮影した写真を全員で食い入るように眺めていた。
写真に写るのは虫のような姿をしたビースト。あの時遭遇したビースト・ワンも見た目はアレだが、こちらの方がよりグロテスクなビジュアルをしており、それこそ映画によくあるクリーチャーと言えばこんなビジュアルをしている、と千束は一人考えていた。
「ひょっとしなくても、これがおそらく、千束達を襲ったビースト・ワンが食べた、って言ってたビーストだろうな。」
「以前ビーストと遭遇したサード・リコリスの話では2種類いたみたいなのでビースト・ワンが捕食したのはどちらなのかまではわかりませんが・・・その可能性は大いにありますね。」
「これをそのビーストが食べた・・・とするならば、確かに、千束達を襲ったビースト・ワンの方が、そいつらよりも上にいると言えるだろう。」
確かにこのサイズであれば、明らかに戦ったあのビースト・ワンの方が見た目やサイズ的にも強く、これらを捕食するということも容易に思える。ともすれば、こちらが食物連鎖のピラミッドで言えば、下位と言えるだろう。
2つの陣営がそれぞれが持っている情報を交換し、ビーストのことについてはある程度お互い知識を深められたが、一つだけ両陣営共になく、それでいて一番知りたかった情報がある。
例の銀色の巨人─────ウルトラマンについてだ。
「・・・結局、ウルトラマンのことについてはあの時私と千束が見ていたこととしてもらったこと以外には何もわかりませんね。八神さんが持ってきた情報にも少しありましたが、大きさが違う、ってことだけでしたし、その情報から推察するに、ウルトラマンは大きさを自由に変えられるのかもしれませんね。」
大きさを自由に?と八神が思わず聞き返すと、千束とたきなを助けた時のウルトラマンは10メートル程度の大きさだったという。
姫矢が話していた50メートルとは明らかに異なっていたため、確かにそうかもしれないな・・・と八神は返すものの、そんな簡単に何十メートルも背丈を自由に変えられるウルトラマンの生態についてよりわからなくなってしまったのも事実だ。
なので、ウルトラマンは人知の及ばない、地球外生命体、宇宙人なのだろう・・・と心の中で合点を見つける事で、それ以上ウルトラマンについて考えるのをあえて止めようとしてみた。というよりも、そうでもしないとやっていられない。
ある程度の情報整理が互いに出来た中で、海藤がちょっといいか、と切り出し、探偵の直感からか、全員にふと、これまでの話の中で気になっていたこんなことを口にしてみた。
「その、ビースト・ワンってのは、人間がその、ビーストになったんだよな?てことは、だ・・・ひょっとしてその、ウルトラマン・・・だっけか?そいつも誰か人間がウルトラマンに・・・あー、なんつーんだ、変身・・・してるって可能性はないのか?」
それは、ビースト・ワンが人間が変身したのならば、ウルトラマンだって人間が変身している可能性があるかもしれない・・・という、ごく自然な発想から来る質問だった。
「・・・いやいや海藤さん!ないない!それこそテレビとか映画じゃないんだから。」
「けどよ、だったらソイツはいつもどこにいんだよ!?宇宙か?海か?山か?川か?」
「・・・そりゃ、わかんねぇけどよ。」
テレビのヒーローよろしく、人間がそんなウルトラマンに変身しているなんてありえないとつっこんでいる八神を横目に、喫茶リコリコ側の全員は、意外にも誰もそんな考えまで発想が至らなかったのか、その話を聞いて確かに・・・と、感嘆の声を口にする。
「確かに・・・私が見てる映画でもヒーローは常に姿を隠してた。で、何か事件が起きたら世を忍ぶ仮の姿からヒーローに変わるから、それあるかも!」
「まぁ、ビースト・ワンは人間から姿を変えてましたからね・・・あり得ない話ではないかもしれません。」
「実際問題、あんな超人がエネルギーの補充もせずずっと動き続けられるなんて、生物としてありえないだろ。その可能性も、あるだろうな。」
「それに、常時そんなのがどっかにいるとしたら、"ラジアータ"ですでに何かしら引っかかってるはずなのに、ラジアータも感知してないなんて、変でしょ。」
「考えてみてもいいかもしれんな・・・人間が、ウルトラマンに変身している可能性を。」
意外にもその意見を真剣に受け止めており、えっ?と驚きの顔をしながらそちらの方を見る。少し呆然とした後、一つ咳ばらいをすると・・・
「・・・さすが海藤さん。そういう洞察力にかけては俺以上の探偵だよ。」
「調子いいこと言ってんじゃねぇぞター坊!」
先程の意見をあっさりと変えて褒め称える八神と海藤の間で少しだけ一悶着起こった後、じゃあ・・・と、全員はさっそくウルトラマンの正体について考え始めた。
「まず、私とたきなはウルトラマンを見てたし、ウルトラマンに助けてもらったから当然ない、と。」
「私も地上からその光が降ってくる様子を見てたから必然的になし。というか、あの赤い光がウルトラマンで間違いないでしょ。」
「ボクとミカはその時一緒に車に乗っていた。お互いがそれを証言出来るということは、必然的にリコリコメンバーの誰でもない。」
「俺らもこの情報を姫矢さんから知るまでその存在すら知らなかった・・・八神探偵事務所もまた、シロだ。」
当然ではあるが、この場にいる全員は誰もが違う、ということが改めて確認出来たため、皆またうーん・・・と悩み始める。
その雰囲気を壊すかのように、千束はDAの誰かじゃない!?と提案したものの、すぐにミズキから
「もしそうだとしたらそいつ自身が報告してるでしょ。何よりも、DA本部内は24時間館内も本部周辺の屋外もずっと監視してるわよ。リコリスだったら寮内は基本相部屋。片方が頻繁にいなくなってたらどっちかは気付くでしょ。おまけに、それ以外の職員の誰かだったとしても、出るってなったら館内情報として記録されてるし、そんなに頻繁に出入りしてるようなら今頃そいつは目ぇつけられてる。DAの誰かだったら、今この時も尋問詰めで人体実験の真っ最中よ。」
と、DAの情報部に居たからこそ言える正論を返され、またもや話は振り出しに戻る。
当然といえば当然だが、ウルトラマンに関する情報がさっぱりない中で、こいつがウルトラマンだという確証は一つも出てこず、加えて、この世界にいる全ての人間を捜索対象とするならば、それこそ途方もない作業であり、例えるならば、砂漠の中から針を探すようなものだ。
そのため、全員が頭をフル回転させ解決策を考えてみるものの、そのまま時間だけが過ぎていった。
このままでは埒が明かないということや、とりあえずの情報交換も済んだため、今回はここまでにしようかという八神の提案から、作戦会議はここで一旦お開きという運びとなった。
ただ、せっかく喫茶リコリコまで来たということで、以前飲んだコーヒーの味が忘れられないということもあり、八神と海藤も、ここからはお客さんとしてコーヒーを飲みたいという話となったため、ここからはお客様と定員という立場に戻り、喫茶リコリコメンバー各自もまた、それぞれ準備に入る。
「八神さんと海藤さんはミルクとかお砂糖とかどうしますかー?」
千束から言われたコーヒーにミルクを付けるかどうかということに対して、2人とも大丈夫だと返す。
ただ、砂糖と言われたその時にふと、同じ甘いものという繋がりや、最初にここに訪れた時に千束から頼まれていた伝言のことを思い出し、この前たまたま会った彼のことを八神は思い出した。
「(そういえば・・・光輝君のこと聞いてみるか。)」
早速、そのことを聞いてみようと思い立ち、千束に声を掛ける。
「そういえばさ、俺がこの前来た時にいたハチミツ作ってるって子いたじゃん。その子って来た?」
伝言を彼に伝えたということも併せて伝えようと質問を投げかけてみたのだが、それを聞いた千束は色々なことがあった故、そのことを今の今まですっかり忘れており、八神から尋ねられたことでその伝言内容のことを思い出し、あー!と大きな声を上げた。
「そういえばそのお客さん、あれから来てないんですよー!おのれ約束破りおってー!」
約束を守らず、未だに持ってこないことに対してプンプンと言わんばかりに怒る千束を横目に、たきなは何故今いきなりそんな質問をしたのか。というより、まるでさも知っているかのようにその人物の話題を出したのかが気になっていた。
「八神さん、その人がどうしたんですか?」
「いや、錦木から持ってきてくれって伝言預かってたらさ、実はこの前神室町で偶然会ったんだよ。たまたま見かけて声かけたら、そん時学校サボってて。それで、俺がそのまま案内するってことになってさ・・・というか、来てない・・・?」
そこまで言いかけた時、八神はふとあの時、改札で別れる寸前の光景を思い出した。
ー・・・はい。それはまた持っていきますね。ー
「(・・・だとしたら・・・なんであんな顔した・・・?)」
八神が疑問に思ったのも無理はない。
あの時、自分は何の気なしに、このお店の店員である錦木から頼まれた伝言を伝えたのだが、その質問の時に、自分が違和感を感じた、あのぎこちない笑みを浮かべていた。
つまり、"ここに関わる何かを言ったことで、表情がおかしくなったのだ。"
そもそも、あの程度の年齢の男の子なら、女の子に少しでもカッコいいところを見せようと躍起になるはず。
もちろん自分は狙っているわけでもなんでもないが、錦木と井ノ上は、高校生くらいの男の子から見たら、少しでも気を引こうと躍起になるほどの美少女であり、少なくともかなりの数アプローチされてきたはずだ。
だからあの時、その表情からして、おそらく撃沈したものだと内心では思っていた。
彼の性格からして、あえて自分に気を遣わせないように、既に訪問はしていたけれど、ああして持っていきますと、嘘をついているものだと考えていた。持ってってフラれて撃沈したなど口にするのは恥ずかしいだろうし、その程度ならば思春期の男の子ならではの可愛い嘘だと思える。
だが、今話を聞いてみて、本当にあれ以降彼はここに来ていないという。
つまり、撃沈も何も、そもそも何も起こっていないということだ。
それなら、あんな顔をした意味がわからない。というよりも、あんな顔をする方がむしろ不自然だ。
更に以前会った時のことを思い出していた中で、先程自分が口にしていた言葉と、その時の会話を改めて思い出していた。
ーただ、ちょっとショッキングな出来事があって、心の整理が追いついてなくて授業とかにも全然集中できなくて・・・ー
「(・・・目の前にいる錦木と井ノ上が、ウルトラマンに命を救われたと言っていた・・・まさか・・・?)」
「あの、八神さん?どうかされたんですか・・・?」
「・・・どうしたター坊?」
突然口元に手を当て黙り込んだ八神を心配したたきなと海藤から声を掛けられていることに気付き、あぁ大丈夫。と2人に返すものの、探偵のカンに引っかかるものがあった。少なくとも、これを見逃すようでは探偵とは言えない。
自分のその違和感がずれていないことを確認するためにも、八神は海藤にあることを質問した。
「ねぇ海藤さん。例えば、海藤さんが誰かから何か持ってきてって頼まれてたものがあったとするじゃん。で、海藤さんがその約束をすっかり忘れていて、何日か経った後にそのことをその人とか他の誰かから指摘されたらどういう反応する?」
「えっ?どうしたいきなり?」
「いいからいいから。で、どうする?」
「あー、そうだな・・・あっ、いっけね!とか、そういうリアクションを取るだろうなぁ。それがどうかしたか?」
その回答やリアクション、そして顔の表情などを見聞きしたことで、やっぱりそうだよな・・・と八神は確信し、ある一つの考えに行きつく。
そして、作業中のクルミを呼び止め、あることをオーダーする。
「真田 光輝って子のこと、調べてもらってもいいか?ひょっとしたら、その子が・・・ウルトラマンの正体かもしれない。」
「八神出たぞー、コイツでいいか?」
八神の注文から程なくし、クルミは依頼されていた男のデータを画面上に映し出した。
当然だが、クルミの専用スペースである押し入れには入れないため、戸の入り口からその画面を眺める。
「そうそうこの子。ありがとう。」
「へーっ。あの時のお客さん、こんな名前なんだ。」
「何だか変な漢字ですね?」
八神の脇から千束とたきなをはじめ他の全員もなんとかして覗こうとしている中、クルミは出てきた情報を説明しだす。
「真田 光輝。10月2日生まれ。年齢は17歳。千葉県在住。高校3年生。家族構成は父と母のみ。まぁどこにでもいる普通の高校生だな、これだけ見たら。」
「これだけ見たら、ってことは、まだなんかあるんだな?」
「八神、お手柄だ!よくこんな奴見つけてきたな。なんかあるんだなどころじゃない。コイツ、かなり怪しいぞ。というか、怪しい点まみれだよ。」
どういうことだ?と八神は思っている中、クルミはカタカタとキーボードを叩き、いくつかのデータを画面に表示させた。
「まず、コイツはこの両親から産まれたわけじゃない。つまり養子だ。」
「養子・・・光輝君が・・・」
「養子になったのは7年前だそうだ。で、さらにあることがわかった。」
あること?と八神が尋ねると、クルミの口から出たのは予想外の一言だった。
「コイツ、養子になってから少し経った後に、名前を変えて今の名前になってる。」
えっ!?と驚くと、クルミはとあるデータをディスプレイの一つに表示した。
そこには、申立書、と上の方に書かれていた紙の資料であった。
どっからそんなもん持ってきたんだよ・・・と思いつつも、とりあえず今はその名前のことについて知りたかったため、一旦置いておくことにした。
「色々調べた中で出てきたんだよ。孤児院にいた時の名前は、"シン"って名前だったそうだ。それを今の親が養子に迎えてから少し経った後、この名前にしたそうだ。」
「シン・・・ね。」
シン、という名前を聞いた瞬間、以前、依頼と称して戦いを挑んできた謎の男、"亜門新"という男のことを八神は思い出していた。
戦いを挑んできたと思っていたら、一瞬でそれまでいた場所とは違う場所に移動し、電流デスマッチのような戦いをさせられた。
あの技が未だにどうやったかはわからないが・・・こうしてウルトラマンという存在がいる以上、あいつも宇宙人だったのかもしれないな・・・と、ふと考えを巡らす。
ただ、一旦その人物のことについて考えるのはそこまでにし、今は光輝のことの方が知りたかったため、そちらに気を戻し、なんで名前を変えたんだ・・・?と八神は尋ねてみる。
すると、画面上に申し立ての理由のページが表示されると、その他に〇がされており、理由として・・・"本人の健康状態が悪くなる"という記載がされていた。
「名前を呼ぶと体調が悪くなってしまう。だから名前を変えたい・・・とのことだ。」
「体調が悪くなる?何でだ・・・?別にそこまで変な名前ではないと思うんだけど。」
「さぁな。それは本人に聞くしかないだろ。」
シン、という名前はいわゆるキラキラネームというわけではない。むしろ、漢字だけで言えば、今の方がいわゆるキラキラネームと思えてしまう。そして、何よりも気になった、名前を呼ぶだけで体調が悪くなる。
それが一体どうしてなのか・・・理由を今すぐにでも聞きたいところだったが、これ以上は本人から聞くしかないのだろうと思い、八神もそれ以上踏み込むのは止めておくことにした。
正直、未成年の情報を覗いているのだ。いいこととは到底呼べないだろう。
そんな中、加えて、とクルミは切り出し、さらに追加で、それよりも重要な情報を話し始めた。
「それとだけどな、コイツなんだが、7年前より前のデータがさっぱりない。」
「・・・は?どういうことだ?」
その言葉に、更に疑問を持った。
7年前より前のデータがない、ということなんてあり得るのか。出生届すらも出てこないのか?と一人八神は疑問に思っていると、それを見越したクルミから、正確に言えば、ある。と言われた。
やっぱあるじゃん、ジョークかよ・・・と思っていた矢先、その気持ちを裏切るかのようにただ、とクルミは付け加えた。
「調べていくと明らかにチグハグ・デタラメなところが多すぎる。というか、ほとんどそうだ。血縁関係もなけりゃ、住所だって適当だ。こんなもんよく通ったなってレベルだよ。」
その証拠だと言わんばかりに、次々ディスプレイに機密情報と思える資料が映し出される。
そこに間違いだと言わんばかりに、資料のあちらこちらに赤線が引かれている資料が、そのクルミの言葉を物語っていた。
この赤線はおそらく今クルミが何かしらの方法で引いたものだと思われるが、その赤線の量に思わず誰も言葉が出なかった。
引かれていないところは、顔写真と年齢と生年月日のみ。後は─────全てに赤線が引かれていた。
八神の期待を裏切るかのように次々と出てくる怪しい情報。これには流石の八神も理解に苦しみ、この前会った彼のパーソナルな部分そのものから疑いを持ってしまいそうになるが、経験上、それを行うことで痛い目を見るのは身に染みているため、今は自分の直感を信じることにし、再びクルミに確認の意味も込めて質問をしてみる。
「・・・そんなの、ありえるのか?」
「ありえるわけないだろ。何もない中で突然10歳で孤児院に入ったなんて、それこそ宇宙人でもなきゃ出来ないだろ。ホームレスとかだったとしても、わざわざこんなでっち上げの資料を作るなんて思えないな。作る方も受ける方もリスクが大きすぎんだろ。」
「だとすると・・・彼は、一体・・・?」
それはもう、八神自身も今すぐにでも聞きたいところだった。
あの時、優しそうに見えたただの田舎の高校生の男の子が、調べたらその素性がまるでわからないという。
だとしたらあの時、自分が会っていた彼は、何者なのか・・・?
しかし、クルミもこれ以上の情報が出てこないということであり、それ以上は本人から直接聞くしかないだろ。と一蹴されたため、彼の生まれについての話は一旦ここまでとなった。
話を変え、クルミは八神にもう一つ確認したいことを尋ねてみた。
「それと八神、そいつ前に柔道とか空手やってたって言ってたんだな?」
「あぁ。何せ、京浜同盟っていう、いわゆる半グレを一撃で叩きのめして、その後に本人がそう言ってたんだ。」
「そうか、本人が、ね・・・八神、またもや残念な知らせだ。そいつ、両方ともやってない。」
えっ!?とまたもや先程と同様のリアクションを取る中、クルミは千葉県のマップをディスプレイ上に表示する。
更にその地図上のいくつかの場所に赤いピンが刺さっている。
「これは千葉県内の柔道・空手施設一覧。で、7年前から今日まで、所属している・していた人物のデータを抽出した。」
「抽出って・・・さっきもそうだけど、お前どんな方法使ったんだよ?てか、俺弁護士だからね?よく堂々とやってんな・・・」
それは秘密さ。と言った後、釘を刺すように言われた。
「言っとくがお前もそれなりにやってんだろ?不法侵入・盗聴・汚職警官から情報貰ったり・・・とかな。それなりに色々やってることも知ってるから、こっちだってバラすことは簡単だぞ?」
それを聞くと、八神もうぐっ・・・と痛いところを突かれたせいか、それ以上の言葉が出てこなくなる。というより、この短時間で何でそんなことまで知ってんだよ・・・と思ったのだが、自分を見る周りからの冷ややかな視線に怯むと、一つ咳ばらいをし、続けてくれ。と議論を終えることにした。
わかればよろしい、と八神を納得させた後、Enterキーをカタンと小気味良い音で鳴らすと、赤いピンが全てグレー色に変わっていく。
「いなかったんだよ、どこにも。真田 光輝という人物が所属していたという痕跡すらない。念の為関東圏までで検索範囲を拡大してみたが、それも結果は0だった。」
「つまり・・・光輝君は嘘を言っていた、ってことか・・・?なぁ、例えばその前にどっか別の県に居たって可能性はないか?」
「それもないな。コイツが養子になってから引っ越しは一度もない。ましてや、保証人もお金もない孤児院の頃にそんな教室入れるとは思えないな。」
「でも、それにしちゃあの強さと身のこなしは正直異常だった・・・」
「そこだな。その半グレを一発KOするほどの強さがあるのは何故か。それこそウルトラマンだから、かもな。」
嘲笑するように笑った後、更に画面にもう一つの映像を出した。
その映像には、この辺りの路地が映っており、おそらく監視カメラの映像と思われる。
「これは、コイツが前ウチに来て、店を出た後の映像だ。そいつの家は山の中にあるから監視カメラなんてあるわけがない。だから、ここに来た時の映像から何かないかと思い探し出した。」
「お前・・・そんなことまで出来んのかよ・・・」
「九十九よりヤベェんじゃねえのか・・・?」
そのクルミのハッキング能力に驚きを隠せない2人は、知り合いである九十九のことを思い出したが、この能力だけを見る限り、明らかにクルミの方がハッカーとしての腕が高く、その能力に流石の八神も海藤も驚きを通り越し、恐怖すら感じていた。
その映像には、喫茶リコリコを出た後、光輝がスマホと道をにらめっこしながら歩いている様子が映っていた。
そんな中、突如スマホをポケットに入れて慌てて走り出したため、全員が不審にその映像を見ている。
「クルミ、光輝君が行った方の映像は?」
「ない。そっちの方に監視カメラは設置されてなかった。だから、映像はここまでだ。スマホの画面を拡大してみたが直前まで地図アプリが開かれている。誰かに会いに行ったってわけでもなさそうだしな。」
映像がここまでというのは残念だったが、直前までスマホとにらめっこをしながら道を歩いていた彼が突如慌てて走り出した。その様子に、少なくとも一つ、検討が付いたことはある。
「多分、こいつは何かしらを使って、ビーストの存在に気付けている。この時だってそうかもしれない。だからどこでもビーストを倒しに行けるし、あの時、千束とたきなを助けに行くことだって出来た・・・ってことだろうな。」
「まだハッキリと決まったわけじゃないが・・・これを見る限り、光輝君がウルトラマンの可能性は大いにありえるな・・・」
この不審な一連の行動はおそらく、ウルトラマンの力があるからこそ出来るのだろうと八神も思っており、元々言われていたその可能性をより確信に近づけるものになったと言える。
中でも、自分達の命を助けてくれたウルトラマンが、画面に映っているこの男の子かもしれないということに、千束とたきなは呆然とし、その画面を見つめていた。
「この子が・・・ウルトラマン・・・?」
「・・・かも、しれないですね・・・だったらこの人は、人間に擬態している、ウルトラマンなのかもしれないですね・・・」
あの時自分達を助けてくれたウルトラマンが、自分達と変わらないくらいの年齢の少年かもしれない。それに驚きを隠せない様子ではあるが、これまでのデータを見てきた上でたきなはポツリと、この人物は人間ではなく、ウルトラマンが人間に擬態している姿なのかもしれないと呟く。
ただ、そんな中、その言葉に対して、八神が一瞬、チラリと千束とたきなに対し、少しだけ怒りを込めた目を向けたことには気付かなかった。
各画面のデータを改めて見せた上で、クルミは結論を出した。
「つまり今のところ、ウルトラマンの正体として、現状最も怪しい人物はコイツかもしれない、ということがわかった。もちろん違うかもしれないが、にしたって今のところあまりにも不審な点が多すぎるのも確かだ・・・で、八神隆之。あんたに1つ聞きたい・・・DAからの依頼もあるみたいだが、コイツは捕まえるのか?」
シンプルながら、今後の動きにも関わる重要なことを質問した。
確かに、探偵ならば、怪しい人物を追い詰め、白状させて、そして逮捕する・・・ということがドラマや映画では定番であり、探偵ならばそうすると思ったのだろう。
特に、今目星をつけている相手は、下手したら、人類外の存在かもしれない。だとしたら、放置などするはずがなく、捕まえて、DAに引き渡すのだろう・・・そう見込みを付けていた。
しかし、八神の答えは意外なものだった。
「・・・確かに怪しい部分は沢山ある。けど、俺は彼を捕まえたくはない。むしろ・・・俺は彼を・・・光輝君を、助けたいと思ってる。」
その八神の答えに対して全員が驚く中、続けて自身の考えを述べていく。
「そもそも、彼が養子になったっていう事実が7年前。もし、彼がウルトラマン、ひいては宇宙人だとしたら、その7年の間に日本、いや世界中のどこかで宇宙人、それこそウルトラマンの目撃情報があってもおかしくはないし、ビーストが出たって情報が出てもなんら不思議じゃない。ましてや、DA・リコリスという裏社会にかなり精通しているような組織なら、そういった情報が出てきたら全員が知っているはずだ。でも、そんな話が出てきたのはここ最近だろ?何年にも渡って秘匿している可能性も考えたけど、あの楠木って人もここ最近になってビーストは現れたと言っていた。あの口振りからして、多分本当のことだ。これらを踏まえると、彼が宇宙人って線は、正直考えずらい。少し一緒にいた限りだったけど、俺の感覚として多分、彼はウルトラマンが擬態しているわけじゃなくて、ただの人間のはずだ。」
先程の千束とたきなの言葉に反論する意味も込めて、最後に光輝に対する自身の意見を言うと、千束とたきなも自分達に言われていると気付いたのか、八神にチラリと厳しい目を向ける。
それに気付きつつも、一切意に介することなく、八神は更に自身の持論を述べていく。
それは、先程とは違い、多少なりとも彼と話して、一緒にご飯も食べたという触れ会いがあったからこそ言える、一個人としての言葉だった。
「改札で別れる前に見せた表情、あの時俺は違うことが理由でそういう表情をしたと思ってた。でも、今の話を聞いて改めて思った・・・あの時の顔は、何か複雑な気持ちを抱えているようだった。経験上、ああいう表情をする時、人は何か悩みや迷いを抱えてる顔なんだ。俺は、八神探偵事務所は、そういう困っている人の味方なんだよ。それが未成年なら尚更だ。だからこそ、俺は光輝君の力になりたいし、助けにもなりたいと思っている・・・もし、だ。あんた達が光輝君を捕まえて研究とかのために利用するって考えているなら、俺はそれを全力で止めるし、あんたがたのこともあの時の延空木の事件のように、どんな手を使ってでも世間に公表する。共闘関係もここまでにさせてもらうし、今から俺らとあんた方は敵同士だ。」
「ター坊・・・」
八神の探偵としての見解と、少し関わったからこそ言える、人として、探偵として彼を守りたいという想いが強く表れた決意を言葉にすると、一瞬にして張り詰めた空気が流れる。
「私も賛成。」
その空気を破ったのは、千束だった。
千束はクルミが映し出しているディスプレイをじっと見ながら、自身の考えを話し始めた。
「だってこの子、前会った時も悪い感じしなかったもん。それに、本当にウルトラマンだったとしたら、私とたきなを助けてくれて、あの火の玉から身を呈して私達を守ってくれた。おまけに、体のケガまで治してくれたなんて、性格悪い人だったら絶対してくれないもん。だから、多分いい子だよ。」
「千束・・・」
そこまでは笑顔で語っていたが、それにさ・・・と付け加えると、少し真面目な表情に変わる。
「もしこの子が本当にそうだとしたら、きっとこの先大変な目に遭うし、命を狙われちゃうかもしれない。誰かの時間を奪うのは私は好きじゃないし、奪われてるところだって見たくない。だったら、私も八神さんと同じで、この子を助けてあげたいし、力になりたい!」
「錦木・・・」
「それにさ、本当にウルトラマンだとしたら、私とたきなを助けてくれたことに、直接お礼も言えるし!一石二鳥・・・いや何鳥になるんだ?」
千束もまた、光輝を助けることを決め、それによって発生するメリットを考えている横で、リコリコ側の全員ははぁ、と小さくため息をつくも、いつものことだと言わんばりに、すぐにやれやれといった表情に切り替わる。
「相変わらず、千束らしいですね。」
「あぁ。また、いつもの人助けだな。」
「正直、DAがウルトラマンに変身する人間なんていたら、どんな手使ってでもとっ捕まえて人体実験するなんて目に見えてるし、相変わらずそういうやり方が私は気に食わないのよね。だったら~、私も八神さんと一緒に動いたほうが~一分一秒でも長くいられるし~その方があわよくば~・・・」
「ミズキ、心の声がダダ洩れだぞ。後八神は全然金持ってねぇぞ。」
「えっマジ・・・?」
皆が千束の意見に同調し、今回に関しては、全員が保護・救助という目的に向かう方針となりつつも、いつの間にか話は脱線し、ワイワイと騒ぎ始めていた。
その様子を、八神と海藤は微笑ましそうに見ていた。
「この5人、いいチームだね、海藤さん。」
「あぁ。俺とター坊。それに、東や杉浦、星野君やさおりさん。最近会ってねぇけど、九十九とかと同じように、こいつらも俺達と同じくらいのいいチームだな。」
「そうだね。この件が終わったら、九十九にクルミを会わせてやってみてもいいかもね。」
さて、と八神が全員に声をかけ注目を集めさせ、目的が決まったことで今後の動き方や計画について話し合うことにした。
「まずは何よりも、光輝君と会わなくちゃいけない。加えて、彼の連絡先もそこで聞き出したいところだ。」
「なんだ?電話番号くらいすぐに出せるし、そんなやつのパソコンやスマホくらい簡単にハッキング出来るけど?」
「いやいやそれ立派な犯罪だし・・・そんなこといきなりしたらそれこそより一層警戒させることに繋がりかねない。もしウルトラマンだった場合、すでに錦木と井ノ上のことを知っていることになるから、ここは慎重に行こう。」
クルミの提案を一蹴し、八神は持っていたメモ帳から用紙を一枚破り、計画の流れを書き出していく。
「まず、光輝君はそもそもここにハチミツを持ってくるっていう約束がある。これを利用しよう。少し会って感じたことだけど、あの子はグイグイ押せば断れないような子だと思ってる。だから、こっちとしては正体を知らない体で、持ってきてくださいって積極的に話を向こうに持ち掛けるんだ。きっとOKを出すと思う。で、持ってきたら、ここの誰かが連絡先を聞き出す。年齢的にも、これは錦木か井ノ上が適任だと考えてる。ただ、当然向こうだって警戒してるはずだ。だからこそ、こっちは君の味方だというスタンスを見せるためにも、少しずつ仲良くなっていって、その後にどこかのタイミングで呼び出して、本当にウルトラマンかどうかを確かめる・・・こういう流れでいこう。連絡を聞き出す日に俺までその場に居たら怪しまれるだろうから、その日は居ないでおく。結果だけまた連絡してもらえると助かる。」
「それはわかりましたけど、どうするんです?八神さんだって連絡先知らないんですよね?だとしたら、どう呼び出すんですか?高校とか家に連絡したら、それこそ怪しまれますよね・・・?後、私も千束も苗字じゃなくて名前呼びでいいですよ。」
あ、そう。と八神は2人の呼び方についての認識を改めつつ、同時にそこなんだよな・・・とたきなに突っ込まれたところについて頭を悩ませていた。
確かにあの時自分の探偵事務所の名刺は渡したが、向こうの連絡先を聞くのを忘れていた。
というよりも、依頼人でもなければたまたまその日に会っただけの人間の連絡先を聞くなど、よっぽどの下心でもない限りは聞かないだろう。ましてや、他県に住んでいる高校生の男の子に。
それはある意味自然なことなのだが、あの時聞いておけばよかったと、今になって八神は悔いることとなった。
なので、最初の作戦である、ここまで呼び出すための明確な方法や理由というのを、言っておきながらもどうするか、その具体的な方法が現状ないのだ。
家や高校などは調べたので出てくるが、そんな所に直接電話をしたら、それこそ今指摘されたように、本人ではなく、周囲の人間から怪しまれて終わりなので、その案はハナからない。他に、彼に繋がる連絡先はないか・・・
「例えばなんかないの?バイト先とか。」
そんな中、ミズキはなんとなしにポンと提案をしてみた。
その言葉を聞いた瞬間、それだ!と八神はミズキを指差した。
「そうかバイト先だ!以前家の近くでバイトしてるって話を本人がしてた!確かにバイト先に電話するなら、家や高校よりも怪しまれる可能性も多少なりとも減るかもしれない。それに、誰か他に従業員がいたとしても、光輝君にすぐに取り次いでもらえるはずだ!ナイスアイデアだよミズキさん!」
「ほっ!ほぇぇぇぇぇっ!?あ、あはぁ、え、えへ、や、八神さんが私に笑顔を向けてくれた・・・こ、これはもしかしてもしかしなくても、お付き合い宣言ンンン!!」
一人妄想で膝から崩れ落ちたミズキのことは無視し、一行は次の行動について話し合っていた。
「バイト先ならちょっと割り出せばすぐに出るだろう。まぁ、いるかどうかについては、シフト表とかを確認するしかないが、それについてはこっちでやってやる。ただ、どうすんだ八神?明確に知ってる理由を向こうに伝えられなかったら、それこそまたさっきお前が言ってたことと同じだぞ?」
クルミの再びの指摘にそうなんだよな・・・と頭を掻いた。結局どうやって調べたのか彼に理由を伝えないままに電話をしたら、結局警戒され、その時点で計画は終わりだ。
そのことに頭を悩ませ、再び壁に当たっていると・・・
「なんだ、そんなことか。簡単じゃないか。」
これまで口を出してこなかったミカが口を挟んだ。
えっ?と全員がミカの方を見ると、ミカはニヤリとし、とある2人に視線を向けた。
「その理由作りを出来る人物がいるじゃないか・・・そうだろう、探偵のお2人さん。」
というわけでついに・・・こういう形で気付かせました。
そして、姫矢の直属の女性の先輩社員ですが、名前は出しませんが、姫矢さんなら、そりゃ先輩にいるのは・・・ね。
そして、ようやく、ようやくです。
次回からついに、ようやっとこさ、オリ主、絡んできます。そして、ようやっと、メインになってきます。
おそらく、こちらに掲載されている原作リコリス・リコイルオリ主登場SS史上、最遅の合流でしょう(笑)
閑話含めたら8話分かけてますから。
では、また。