吸血鬼姉妹は幻想郷に帰りたい   作:ブナハブ

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02 吸血鬼姉妹、鬼に同族だと思われる

 現れたのは一人の男だった。ぱっと見は人の姿をしているが、所々が異形の肉体となっており、明らかに人間では無い事が伺える。しかし二人にとってなによりの証拠は、男が放つ血の匂いである。

 

 彼女達の正体は人間の生き血を吸う吸血鬼なのだが、そんな彼女達には男から放つ血の匂いが、悪臭としか感じられなかったのだ。

 

「っつ、なんて酷い匂い、近寄らないで頂戴」

 

「うぅ、腐った匂いがするよぅ」

 

 レミリアは手で鼻を隠して蔑むような視線を男に送り、フランは匂いのキツさに鼻をつまんで思わず目をつむっていた。

 

「あぁ!? なんだテメェら、殺されてぇのか!!」

 

 そんな二人の態度に男は激昂し、より大きな殺意を二人に浴びせる。

 

「それはこっちの台詞よ、さっさと消えて頂戴、こっちはお前に構ってる暇なんて無いの」

 

「ぐっ、ギギギ、ガァ!!!」

 

 舐め切った態度に男は我慢できず、牙を剥き出しにして襲い掛かった。

 

「彼我の実力も分からないなんて、哀れね」

 

 男の攻撃にレミリアは怯む事なく、手のひらに魔力の弾丸、弾幕を生み出した。

 

ーーーいや、生み出そうとした。

 

「……?」(弾幕が出せない?)

 

「なにぼけっとしてんだぁ!!」

 

 どういう訳か、レミリアはいつもの調子で弾幕を出せなかった。それに動揺するも、とりあえず目の前の男を制圧しようと拳を握る。

 

「ぐげぇ!?」

 

 思いっきり振りかぶったレミリアの右ストレート。流石は西洋で恐れられる吸血鬼と言うべきか、拳は男の顔面に当たると、パンッと小気味良い音を鳴らして男の頭を破裂させた。

 

「……弾幕が使えない?」

 

 バタンと倒れ伏す男にレミリアは何の感情も浮かばず、それよりもなぜ弾幕が使えないかに意識が向いた。

 

「フラン、今あなたは弾幕を使えるかしら?」

 

「え? うんと、……あ、あれ、なんで? 弾幕が出せない」

 

 どうやらフランも弾幕を使えないようで、レミリアはこれもこの世界に来た影響なのかと考察し始めた。

 

「ぐ、クソ、なんつー力だ」

 

 ふと、さっき殺した男の声が聞こえた。

 

「あら、生きてたの」

 

 頭を潰した筈なのだが、どうやら男はかなりの再生能力を有してたようで、男の頭はあっという間に元通りとなった。

 

「ハッ、当たり前だろ、俺様は鬼なんだぞ? この程度で死ぬ訳ないだろ」

 

「鬼、ねぇ」(鬼ってこんなに弱い妖怪だったかしら?)

 

 魑魅魍魎が蔓延る幻想郷に暮らすレミリアは鬼という妖怪を見た事があるが、どの鬼も目の前の男みたいな再生能力は有してないが、それを補う程の頑丈さと力強さを持っていた。

 

「というか、テメェらも同じ鬼の癖にそんなのも知らねぇのかよ」

 

 男はそんなのも知らないのかと、無知な二人を嘲笑った。

 

「……なんですって?」

 

 その言葉を聞き、レミリアの中でふつふつと怒りが湧き上がった。

 

「お、お姉さま?」

 

 レミリアの怒気にフランは戸惑った。別に短気と言う程レミリアは気の短い方では無い。ちょっと嘲笑われただけでこうも激怒する事は無い筈なのだ。

 

ーーーそう、ただ嘲笑われただけなら、だ。

 

「あなた、なんて言ったのかしら」

 

「あ? なんだやる気か? やめろよ馬鹿らしい、鬼同士が殺し合うなんて不毛過ぎんdーーー」

 

「貴様と一緒にするな」

 

 瞬間、森に轟音が鳴り響いた。

 

「あ、……ア?」

 

 男には何が起きたった全く分からなかった。

 

 一瞬、一瞬で粉々にされた。

 

 なにが起きた? なぜ自分は頭だけになってる? なんだこのクレーターは、さっきまで無かったぞ。

 

「へえ、これでも再生するの、確かに再生能力に関しては吸血鬼並みね」

 

 この女がやったのか?

 

「ま、まさか、12鬼月のーーー」

 

「けどそれだけね」

 

 再び鳴る轟音、今度は肉片すら残らず消し飛んだ。

 

「この程度で、この程度で私と同類だと錯覚するなんて、笑い話にすらならないわね」

 

 レミリアにはプライドがあった。吸血鬼として、夜を統べる王として、気高きスカーレット家としての誇りがあった。

 

 故に、男の発言にはどうしようもない怒りが湧いた。

 

 私があれと同じ種族? 一体どうすればそんな考えに至るのだ?

 

「お、お姉さま? 大丈夫?」

 

「っ! ふ、フラン」

 

 しまった。フランが怯えてしまっている。レミリアはフランを怖がらせまいと怒りを鎮めた。

 

「……大丈夫よ、ちょっと気が立っちゃっただけだから、もう怒りは収まったから、ごめんなさい、怖がらせたわね」

 

 レミリアは努めて微笑みをフランに向けた。

 

「う、うん、私は大丈夫、それよりお姉さま、さっきの妖怪から色々と聞き出した方が良かったんじゃ」

 

「……ああ」

 

 暫しの間、レミリアは自身の短絡的な行動を猛省していたのだった。

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