始解がモロ滅却師な席官さん   作:K+#ガソ林

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第10話

 現世、空座街。

 浦原商店にて、石田雨竜、井上織姫、茶渡泰虎とロバート・アキュトロンの4名は悩んでいた。

 

 一護から先に帰っていろと言われ、穿界門を抜けて現世に帰ってきたのはいいが…一護の帰りが思っていたよりも遅いのだ。

 

「黒崎が遅いな…もう30分は経ってるぞ。何をやってるんだろう。」

 

「ああ、トイレに行ってくるとは言ってたがな。」

 

「…なにか、あったのかも。」

 

「でも、黒崎は卍解もできるようになったらしいじゃないか。心配することはないと思うが…。」

 

「そうですな。卍解ができれば大抵の敵には負けることはないでしょう。」

 

「大きい虚が尸魂界に出て、それの退治を手伝わされてるのかもしれん。」

 

「それはおかしいよ茶渡くん!そうなら私たちにも感知できるはずでしょ?」

 

「…そうだな。考えすぎか。」

 

「やーやー皆さんお揃いで内緒話っスか?」

 

「浦原さん!」

 

 浦原喜助は黒崎一護のことを心配する四人へと話しかけた。

 その表情には笑みが張り付いている。

 

「心配するこたぁないっス。今、断界を走る黒崎さん達の霊圧を確認しました。」

 

「や、やったぁ!無事に帰って来れたんだね!」

 

「そうみたいだな…。」

 

 喜ぶ井上と茶渡。

 どちらとも過去に黒崎一護に助けられ、ルキアに宿った崩玉を介して一護を助ける力を得た者たちだ。

 

 彼らは無事に一護が帰ってきたことに安堵した。どちらとも、もう一護には傷ついて欲しくないと思っているのだ。

 

 なにしろ、藍染との戦いで腹を切り裂かれ、倒れた一護は…高校生の彼らから見ては、ほぼ死体と何も変わらないように見えたが故に。

 

「あと、そこにいる滅却師のオジ様は誰なんすか?」

 

「この方はロバート・アキュトロン。200年前の大虐殺で尸魂界に送られてきた後、何とか死神から隠れ逃げ延びて、涅マユリからの人体実験から脱出してきた誇り高き滅却師だ。」

 

「どうも。ロバート・アキュトロンです。」

 

「よろしくお願いします。ロバートさん。」

 

 石田から紹介され、ロバートは浦原喜助に一礼する。

 石田としては、虐殺を受けても誇りを手放さず、魂魄の状態でも生きることを選んだロバートのことを、同じ滅却師として尊敬しているらしい…。世間一般体でいうヒーローのようにロバートを思っている。

 

 ロバートからすれば、現世に生き残った滅却師は、千年前になんとか逃げ隠れ、死神に頭を下げて生かしてもらった落伍者の末裔だ。石田に尊敬されようがロバートに何か感じるものはなかった。

 

 浦原の探るような視線を感じとり、笑みを浮かべて演技を続けるロバート。

 石田が何か引っかかることがあったようで、浦原に質問した。

 

「あと…浦原さん、あなたさっき、黒崎さん"達"って言ったのか?」

 

「はい。…黒崎サンと一緒に、"死神の霊圧も確認"できましたんで、黒崎サン達と言いました。」

 

「…確か、ルキアさんは尸魂界に残るって言ってたはずだ。なら、黒崎がこっちに来るなら、一人じゃないとおかしい。」

 

「何か、おかしいことになっているみたいだな。」

 

「…門が開きます。あとのことは黒崎サン本人に聞きましょう。」

 

「ええ。そうしますか。」

 

 自身の来歴を偽ることで、石田達に紛れ込むロバート・アキュトロンであった。

 温和な笑みを絶やさず、されど、彼の心根は冷き霜に覆われている。

 

 

 現世の空に穴が開く。

 飛び出るは死神一行。

 朽木ルキア、浮竹十四郎、京楽春水。

 また、完現術使いの二人組。

 銀城空吾、月島秀九郎。

 さらに、高校生にして死神代行、黒崎一護───。

 

「なし崩し的に戻ってきてしまったな…。浮竹隊長!しっかり!」

 

「…うぅ…ぐ…。」

 

「…察しは、ついてるけどねぇ。彼らだろう?浮竹。」

 

 

「現世に戻ってきちゃったけど、良かったのかい?銀城。」

 

「ああ。護廷十三隊は想像以上のバケモノ揃いだって分かった時点で大金星だぜ。」

 

 

「…浦原さんとチャド達にどう説明すればいいのか…。」

 

 

 突然だが、死神は虚と混ざり合うことで、その力の限界を突破できるようになる。

 

 路地裏で談笑するのは仮面の軍勢(ヴァイザード)。

 尸魂界では、力の限界を越えることを求めて、虚化の技術を身につけて出奔したとされている死神達だ。

 

「京楽に浮竹か。アイツらもこっちきとんねんか。」

 

「ま、まじか!?おい平子ォお前そのケータイ貸せや!」

 

「待つこともできひんのかドアホォ。俺は元々は隊長やで?少しは遠慮したらええんちゃうか。」

 

「仮面の軍勢なった時点で上も下もないやろがドアホはどっちじゃ!!」

 

「え?…あ、はい。わかりました。」

 

「無視すんな金柑頭ァ!」

 

「俺の金髪がハゲに見えるんやったらオマエまじで目ぇおかしくなっとるで。…そいで、浦原さんから連絡が来てな。最近破面(アランカル)がやたらめったら現世に来るようになったっちゅうことで…。」

 

「話の流れきいてたかいな!さっさと浮竹と京楽の隊長二人がこんな僻地に飛ばされてきた経緯を言えっちゅーてんねん!」

 

「ひより、アイツらも罪人になったっぽいねん。」

 

「え…?」

 

「転勤やないで。どちらかと言うと夜逃げや。まぁ重要なことちゃうけどな。」

 

 仮面の軍勢のリーダー、平子真子は空を仰ぐ。

 

「浦原さんがそっちは重要やないっちゅーたんや。気にせんでええ。今はとにかく、破面やな。」

 

「おっ、おい!待て平子ォ!そんなやばいんか?破面は…!」

 

 仮面の軍勢のメンバー、猿柿ひよりは平子に問う。

 破面とは、虚ならば誰でも身につけている自身の仮面を剥がした個体のことで、その者たちは例外なく死神と虚の力が混ざり合い、斬魄刀を持つなどの性質を兼ね備えている。

 

「ああ。藍染や。」

 

「───!」

 

「破面を辿れば、藍染に行き着けるらしいで?浦原さんがいうことにはな…。」

 

 

 虚圏(ウェコムンド)、虚夜宮(ラス・ノーチェス)。

 最上級大虚(ヴァストローデ)であり、虚圏の神を自称していたバラガン・ルイゼンバーンの居城であったが…藍染惣右介が虚圏を制圧後、再建され、屋根がつけられた。

 

「やぁ。失礼するよ。」

 

「藍染惣右介…!」

 

 黒腔から現れたのは、藍染惣右介と…。

 

「滅却師まで連れてきて、何をする気だ…!」

 

「彼は私の護衛だ。自己紹介を頼めるかな?」

 

「…滅却師ノ、エス・ノトだ。」

 

 星十字騎士団(シュテルンリッター)所属の滅却師、エス・ノト。

 黒い長髪に、口元を黒いマスクで覆った、不気味な挙動が特徴的な青年であった。

 

「ありがとう。…バラガン・ルイゼンバーン。彼の力量はわかっているようだね?」

 

「…ぐ…!」

 

「君が私に逆らっても、勝つことは不可能だ。今のままでは…だがね。」

 

 藍染惣右介の霊圧は、最高位大虚ですら見劣りするほどの膨大な霊圧だ。それに加えて、虚を滅却できる滅却師までいては、勝つことなど不可能である。

 

 しかし、藍染はその差を何とかできると宣う。

 藍染の手の中で、神秘的な紫の光を放つ二つの崩玉が合わさった。

 

「私の作り出した崩玉と、浦原喜助が作り出した崩玉がこれで一つになった。」

 

「…何をするというのだ。」

 

「世界を変える。君たちが見ていないような、尸魂界の罪を私が背負い、新たな未来を作り出す。」

 

 崩玉が光れば…バラガンの仮面が粉々に砕け落ちた。

 変化はそれだけにとどまらず、バラガン自身の体躯すらも変貌し、苦しみの喘ぎが部屋に反響した。

 

「ぐ…う…な…何を…!?」

 

「自身の内部の力の高まりを感じるだろう。これが破面だ。」

 

 骸骨の化け物から、白い死覇装(しはくしょう)を身に纏い、死神と似た人間体になるバラガン。

 その腰には、斬魄刀がくくりつけられていた。

 

「君は虚でもなく、死神でもなく。力の限界点はすでに存在しない…。高めて見せろ。その牙が私に届きうるように。」

 

 藍染惣右介とエス・ノトはバラガンの前から姿を消した。

 虚圏中の虚を破面へと変え…山本元柳斎の力を封じるような力を持った破面を探す。

 

 

「ほんで、ここが見えざる帝国ってわけですか?影の中に国を作るなんて器用な人たちですなぁ。」

 

「ここは時の流れが遅いとも聞いた。そのためただの一介の人間でも、死神のように何千年と生きることができるらしいな。」

 

「然り、だ。死神。」

 

 市丸ギンと東仙要はユーハバッハから歓待を受けていた。

 実のところを言えば、人質のようなものだが。

 

「しかし、なんでボクらを?一般兵はわかんないですけど、ここの騎士団の人らは一人一人が隊長級…ボクらでも相性が良くなきゃ勝てないぐらい強い風に見えますが。」

 

「私の力は万全ではない。0番隊に勝つことは今の段階では不可能だ。故に、お前達という未知数を欲した。」

 

(王族特務、0番隊…藍染様も霊王宮へ向かうならば敵になる者達だと言っていたな。)

 

 市丸は二ヘラと笑い、ユーハバッハも笑みを深める。

 

「ボクら、仲良うできそうですね。」

 

「ああ。キルゲ。死神達に住居の案内を。…エス・ノトが帰るまでは彼らと模擬戦を行え、いいな。」

 

「はァい!皆様の住居はこちらですねェ!!」

 

「…おもろい眼鏡やな。藍染隊長とは大違いや。」

 

「………。」

 

 キルゲに見えざる帝国を案内されながら、今後のことを不安に思う東仙であった。

 

(…王と呼ばれる滅却師と、天に立とうとする藍染様。…うまく関係が進むとは思えないが…。)

 

 

「ああ、この蝿だネ。潰したヨ。」

 

「さすが涅マユリ隊長。ありがとうございます。」

 

「待ってくれたまえヨ。秀忠仮隊長。」

 

「涅隊長、うちの秀忠にまだ何かあるのでしょうか。」

 

 技術開発局で砕蜂と秀忠、涅マユリは対談していた。

 すでに浦原喜助が取り付けた発信機を取り外したようだが、マユリはまだ秀忠に用があるという。

 

「その斬魄刀を見せたまえ。あと解剖も。」

 

「斬魄刀はいいんですが、解剖は…。」

 

「ナニ、回道があるだろう?傷つけやしないヨ。」

 

「涅隊長、あなたは自身の隊の隊士に爆弾を仕込んだと聞き及んでいます。秀忠は任せられません。」

 

「…頭が硬いねぇ。私は隊長と隊士の扱いは間違える気はないさ。…よし、解析完了。」

 

 涅マユリは、秀忠の斬魄刀の解析を一度の瞬きもしない間に完了した。

 圧巻の技術である。

 

「滅却師50%、死神49%、虚1%。どうしたら斬魄刀内の力の傾向がこんな風になるんだネ?」

 

「俺の魂魄自体が、200年前の虐殺で死んだ滅却師の集まりだからだそうです。そう斬魄刀から聞きました。」

 

「なるほどネ。半虚を混ぜたらこんな風になるのか…。今後の参考にするヨ。あと、秀忠。確かお前は今までの始解と卍解ができなくなったらしいネ。」

 

「はい。」

 

「始解はできなくても、力は使えるはずだヨ。滅却師の力は消えちゃいない。今後もサンプルを取りたいからネ、是非とも鍛えてくれたまえヨ。」

 

「話は終わりでしょうか?失礼致します。」

 

「砕蜂隊長…君はせっかちだネ。だけど引き止める理由もない。帰っていいヨ。」

 

 

 技術開発局から帰路に着く砕蜂と秀忠。

 砕蜂はずっと顰めっ面でいた。

 警戒レベルを上げている証だ。

 

「砕蜂隊長、なぜそこまで警戒を…。」

 

「私の話を聞いていなかったのか?涅隊長は先の朽木ルキア処刑事件において、体内に爆弾を入れた隊士を、旅禍を仕留めるために差し向けている。」

 

「…たしかに、そう言った話は…。」

 

「隠密機動は常に貴重な情報を持っている。瀞霊廷内の警備情報などをな。そのような者達が捕虜にされ、情報を抜き出されたりなどしたら敵わん。」

 

「…涅隊長は、12番隊隊長ですよ…?」

 

「浦原喜助と同じように、私はやつも信頼していない。お前も警戒しろ。いいな?」

 

「はい。了解しました。」

 

「それでは私はまだ仕事がある。ここで解散だ。職務に励めよ。」

 

「ありがとうございます。砕蜂隊長。」

 

 

 朝。

 2番隊隊舎で目が覚める。

 今まで怒涛の状況だったが、やっとゆっくりできるのだ。

 二度寝しよ。

 布団に潜り込んだその時だった。

 

「…だ、だれ…お前…。」

 

 白い長髪に、赤い目をした白い着物を纏う少女が、布団の中で寝息を立てていた。

 虚の気配がしたので、斬魄刀を抜こうとするが…ない。

 斬魄刀がなかった。

 …秀忠は、この状況に覚えがある。

 

「これは…具象化。」

 

 斬魄刀が自身の形を現実に出す。

 それが具象化だ。

 

「んん…ん。あれ、起きたんだ。秀忠。」

 

「…白染…なのか?」

 

「うん。白染だとも。私こそ君の本当の斬魄刀だよ。」

 

「なんで具象化を…。」

 

「私が君の話を聞いていないとでも?…隊長になるには、卍解が必要なんでしょ?」

 

「…まさか。」

 

「そう、まさか。」

 

 白染は妖艶に薄い笑みを浮かべ、秀忠へと語る。

 

「あなたの力で、私を倒してみなさい。…できないとは言わせないからね。」

「…ふぅ…。」

 

 秀忠は覚悟を決める。

 どうせ遅かれ早かれ、こうなる未来だったのだ。

 

「でも、まずは朝ごはんだ。」

 

「やったー。」

 

「…白染、飯食べんの?」

 

「な、食べちゃいけないっていうのかい!?」

 

「わかった。ちょっと待ってろ、な。」

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