始解がモロ滅却師な席官さん   作:K+#ガソ林

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第12話

 限定霊印。

 莫大な霊圧を持つ隊長格が、現世に訪れる際に付与されるものだ。

 

 霊圧を周囲に放出して虚を刺激しないように、霊圧を本来の2割程度に抑える機能がある。

 これを解くためには、尸魂界の許可が必要になる。

 

 

 秀忠達が現世に訪れる数時間前であった。

 

「店長!大変です!!虚圏から6体もの大きな霊圧が…!!」

 

「…鉄裁さん。時間操作、空間転移の鬼道をお願いします。…藍染惣右介。この空座町を王権にする気か…。」

 

 鉄裁の焦りは尋常なものではない。

 まさに世界が滅ぶ寸前と言っても過言ではない状況だからだ。

 隊長格を凌ぐほどの大きな霊圧の塊がこちらに向かってきている…!

 

「アタシがあと2日後に此処にくるはずの尸魂界の死神達が出てくる穿界門の位置を固定しますんで、そこの部分に時間遡行の鬼道を。また、市民達の避難、その後は転界結柱の配置もお願いします。」

 

「了解です!」

 

 鉄裁がさまざまな鬼道を行使して破面達の襲来に備える中、浦原はうるるとジン太に指示を出す。

 

「うるる、ジン太。あなた達はこのリストに載ってる人たちを全員此処に集めてください。…これを渡しておきます。」

 

「…なんだ?これ。」

 

「強制転移陣です。触れさせればこちらまで直行のやつですね。よろしくお願いします。アタシはその間に黒腔の出入り口を操作するんで。」

 

「は、はい!」

 

 うるるとジン太は走り出す。

 黒崎一護達を探しに…。

 

「さて、限定解除印も穿界門の場所に仕込んでおきますか。」

 

 

 空座町の人々はリストに載っていない人員以外は全て鉄裁の手により空座町の外部へと飛ばされていた。

 浦原喜助の判断により、戦える力を持った人々のみが今この空座町に集まっている。

 

「…本当かよ、浦原さん。」

 

「ええ。3時間後にはアタシでも太刀打ちできないような破面が現れます。」

 

「いや、俺が言いたいのは…俺の親父までなんで集められてるんだよってことだよ!!」

 

「俺が死神だからだ…。隠していて悪かったな、一護。」

 

 黒崎一護は愕然とした。

 常日頃からおちゃらけていて、まるで頼り甲斐がない自身の父親が…真剣な表情をしている…!

 

「…真咲の件は、悪かった。俺はその時…ある理由で力が使えなくなっていたんだ。すまねぇ。」

 

「…あの時言ったろ。親父。…俺があんたを責めたりしたら、おふくろに怒られちまうよ。」

 

 過去、一護の母親…黒崎真咲は虚によって殺された。

 一心が万全でさえあれば、虚を倒すことも可能であったのだ。

 一護は自身の胸をドンと叩く。

 

「理由が言えねぇってのも、事情があるんだろ?…俺は気にしねぇよ。親父。」

 

「…感動っすね。」

 

「……ありがとうな。一護。あと浦原、感動って言うんなら水刺すなよ。」

 

 浦原はわざとらしくヨヨヨと泣いた。

 その後、すぐ真剣な顔に戻る。

 

「此処に集まった皆さんにやっていただきたいのは…破面の足止めです。」

 

 全員の顔が引き締まった。

 黒崎一護、井上織姫、茶渡泰虎などの現世組は疑問を呈する。

 

「…でも、死神達がくるまでの時間稼ぎにしろ、俺たちじゃ足りねぇんだろ?」

 

「俺にもわかる。…とても強大な霊圧だ…。」

 

「…なんか、覚醒とかしないかな。私。」

 

「織姫サンならあるかもしれないですね。…まぁ、黒崎サンの言うとおりで、今回は彼らにも手伝ってもらうことにしました。」

 

 ぞろぞろと現れたのは、銀城空吾達完現術者と、浮竹十四郎率いる死神、そして一般滅却師、ロバート・アキュトロンであった。

 

 ロバートが薄く笑みを浮かべ、朽木ルキアと共に一護達に挨拶する中、浦原は銀城の戦う意思を確認する。

 

「協力してくれますよね?銀城サン。」

 

「…ああ。浮竹と京楽と話し合って、随分と視野が広がったぜ。狙うべきは綱彌代だがなんだかの家だったなんてな。…協力してやるよ。浦原。俺だって元々は死神代行だ。」

 

 銀城空吾は過去の仲間が綱彌代時灘に殺されたらしいことを、京楽春水から聞かされることで浮竹達と和解していた。

 

「…誤解が晴れて良かったッスねぇ。」

 

(…破面達を死神と戦わせるための釣り餌だったッスけど、戦力としても期待できるなんて…いい拾い物、しましたねぇ。)

 

 元々の浦原の予定としては、破面に対抗する死神を用意するための呼び水としての価値しかなかった銀城であったが、此処にきて彼の戦闘力を利用できると聞いて安堵していた。

 

 何故此処まで銀城達への扱いが荒いのかと言えば、月島秀九郎の存在だ。

 

 彼の完現術を使えば、間接的に敵の過去を知ることができる。そのため、浦原が切られた場合は用意している切り札を知られてしまうかもしれない。単純に月島を警戒してのことであった。

 

「いや〜扱いづらい困った方々でしたが、協力してくれてありがとうございます。」

 

「歯に衣着せぬ言い方だね。喜助。」

 

「げえっ!?月島サン!?」

 

「安心してよ。切るつもりはないさ。」

 

 月島と浦原が談笑する影で、浮竹は銀城に疑問を呈していた。

 

「彼、月島は人に従う男のようには思えないが…どうやってるんだ?銀城。」

 

「…過去に、虚から助けてからだな。あいつを…。」

 

 破面がくる直前であるというのに、過去の話に花を咲かせる二人であった。

 

 

「クソッ!なんだこの壁!決まった方向にしか行けねぇぞ!!」

 

「おそらく藍染様が言っていた浦原喜助…彼の影響でしょう。」

 

 破面達は黒腔を開こうとする。

 自身の欠落を埋めるために。

 奪うために。

 

「…巨大な霊圧が三つ。他は有象無象のゴミだな。」

 

「…?おい、ウルキオラ。人間どもの霊圧がないぜ。俺の探査神経(ペスキス)の精度が悪いからか?」

 

「いや、当たっている。この空座町に凡百の人間の霊圧はない…。ただ…。」

 

 黒腔が開き、破面達は現世へと足を踏み出す。

 

「そうだな。結界の外…そこにはたくさんの人間がいる。」

 

「なるほど。死神にしては考えたな。だが、スタークが居る以上、意味がないことだ…。」

 

 視界の中の青空にかかる黄色い網目。

 浦原喜助による縛道を使った結界である。

 大気中を漂う霊子を使い、六十ほどの結界を重ねて編まれた巨大な円柱にして、空座町を包む防壁であった。

 

 

「皆さん…破面が来ました!迎え撃ってください!結界が破れたら破面が外にいる人間達の魂魄を吸いに行くはずです!」

 

「店長!転界結柱の動作に後15分ほどかかります!」

 

「…15分!15分気を引いてください!任せましたよ皆さん!」

 

 

 浦原商店から強大な霊圧が飛び出す。

 限定霊印を解かれた隊長格二人、浮竹十四郎と京楽春水だ。

 

「霊圧がでかいのが遠巻きにこちらを見ているな。ヤミー、行くぞ。ついて来い。」

 

「おう!頭ん骨割ってぶち殺してやるぜ…!」

 

 次いで、黒崎一護、銀城空吾が霊圧を放出する。

 

「…でけーのがヤミーに取られちまったからな。俺はそこそこので我慢してやるか…!」

 

「グリムジョー殿。この私も観戦させていただきたい。あなたの獣性を学ぶことで、私にも何か進化があるかもしれませぬからな。」

 

 最後に月島秀九郎、黒崎一心達がその力を解放した。

 

「俺だけ戦わないってのなんだし…ちょっと寄ってくか。」

 

「やれやれ、我らがプリメーラに目をつけられるなんて…不運な奴らだな。」

 

 ウルキオラ、ヤミー対浮竹、京楽。

 グリムジョー、ゾマリ対一護、銀城。

 スターク、ザエルアポロ対月島、一心。

 

 浦原と鉄裁は紅姫や縛道を使って結界が破れないように、結界の装甲の加工を続ける。

 

「…うまくやってくださいよ。皆さん…。」

 

「なんや此処におったんか。浦原さん。」

 

 だがそこに近づく影が一つ。

 

「…平子サン。」

 

「人が死ぬんやろ?なら、俺らも頑張るで。」

 

 空中の影が増えていく。

 高度な瞬歩はまるで、時を止めて移動したかのような錯覚を浦原に与えた。

 空中に佇む無法者。

 元隊長四人、平子真子、愛川羅武、六車拳西、鳳橋楼十郎。

 元副隊長三人、猿柿ひより、矢胴丸リサ、久南白。

 元鬼道衆副鬼道長一人、有昭田鉢玄。

 仮面の軍勢は彼ら八名で構成され、誰もかれもが虚化を習得し…強大な戦闘力を誇る。

 

「平子!アタシは人が死のうが何だって気にせんぞォ!!」

 

「あーよしよし、藍染と戦う時は破面も敵におるんやから気にすんなや。大事の前の小事ってやつや。リハーサルか?」

 

 暴れるひよりを抱える平子。

 全く緊張感がないその姿は…逆に深みを感じさせる。

 浦原は今でさえ、破面達の刺々しい霊圧をひしひしと感じているというのに…。

 

「結界の警備は任せろ。傷一つつかせやしねぇさ。」

 

「ヘェェ〜ンスィーン!」

 

「白(ましろ)その掛け声やめろ。気が緩むだろうがよ。」

 

「私と羅武殿は北の方へ守護に回ります。他の方はどうされますか?」

 

「んじゃ俺とひよりが東、ローズとリサが南、拳西と白は西やな。」

 

「西だけにってか!?ぶほほほほ最高に面白くねぇな!!」

 

「あまり人の名前に文句を言うものではないよ。羅武。まぁ僕の名前の面白さには負けるけど…。」

 

「喧嘩売ってんのかテメェら…。」

 

「やめろやみっともない。アタシはもういくわ。あんたらも早くせぇよ。」

 

 転界結柱───。

 それの展開を目指して、彼らは戦う。

 

「夜一サン。」

 

「どうした?喜助。」

 

「…アタシは少し、この町に残らせた滅却師の説得に行きます。ここ、守っといてくださいね。」

 

「え?…おい!喜助!…もう居らんか。仕方がない。虚閃(セロ)の相殺でもするかのう!」

 

 

 虚圏にて。

 

「藍染惣右介…何故このように強引な行動に出た?偵察も出さず、始めから本戦力を出すとは…。」

 

「話ヲ聞ク限り、オ前ハ計画性ヲ大事ニスルト聞イテイタが。」

 

 第2十刃(セグンダ)、バラガン・ルイゼンバーンと、滅却師エス・ノトは藍染惣右介の行動に疑念を呈していた。

 藍染惣右介は語り始める。

 

「崩玉と私は既に融合し、圧倒的な力を得た。故に、前哨戦は必要ない。空座町襲撃はただの陽動だ。」

 

「…陽動と言ったか、藍染。ならばお前は王鍵を必要ないというのだな。」

 

 王鍵とは、霊王宮に侵入する際に必要なものであり、空座町のような重霊地と十万ほどの魂魄を使用して作り出すものだ。

 

 これがなければまず、結界に阻まれて霊王宮に入ることすらできない。

 

「材料を変えるだけだよ。重霊地はここ、虚圏で事足りる。魂魄は尸魂界で集めてきてもらった。…出てきなさい。ギン、要。」

 

「ご紹介に預かりまして、市丸ギンです。よろしくお願いしますわ。」

 

「東仙要だ。」

 

「…陛下が、表ニ出ルコトヲオ許シニナッタと?オ前達ノ活動ニ協力シタト言ウノか…?」

 

 黒腔から魂魄を抱えてきた二人に、エス・ノトは質問する。

 何故ならば、ギンと要が活動するためには見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)からの協力が不可欠だからだ。

 

「あ、ハイ。快く承諾してくれましたわ。ほいこれ、魂魄玉です。」

 

「司令通り10万ほど集めてきました。」

 

「ありがとう、ギン、要。それでは早速取り掛かろうか。」

 

(陛下ハ…本気ノ様ダな…。)

 

 エス・ノトは少し状況を悲観していた。

 死神、藍染惣右介の霊圧は彼らの王にあたる滅却師、ユーハバッハにも比肩するのだが…。

 

 それだけでは、ユーハバッハが警戒するほどの0番隊には勝てないだろうと、何となく感じていたからだ。

 

(…何カアルト言ウノか…?コノ男ニ…。)

 

 

 尸魂界にて。

 流魂街に合った大量の魂魄が一夜にて消失する事件が起きる。

 その際、調査に赴いた隊員は何の痕跡も見つけることができず、原因不明と片付けるしかなかった。

 

 また何かが起こるのか…狛村左陣は不安に思う。

 日番谷隊長と秀忠仮隊長が現世へと赴いたばかりであるのに。

 

「…儂には力が、足りん。」

 

 彼の親友である東仙要。

 彼は藍染惣右介の側につき、尸魂界を害すことを目的とした。

 自身が力あるものであれば。

 自身が彼の見る世界を変えれるほどの力があれば、止められたかもしれない。

 

「…また、黒腔か。」

 

 尸魂界に警報が鳴り響く。

 隊長招集である。

 残る隊長は一番隊、二番隊、四番隊、六番隊、七番隊、十一番隊、十二番隊の七名のみ。

 

 果たして、藍染惣右介を止めることはできるのか。

 

 

「───私が天に立つ。」

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