始解がモロ滅却師な席官さん   作:K+#ガソ林

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第13話

 浦原達が用意した時間遡行の鬼道にて、本来より2日早く秀忠達が空座町に到着した時には、戦況は佳境に至っていた。

 

 それぞれの霊圧が極限まで高まり、いくつかの破面は帰刃(レスレクシオン)をも解禁した。

 

 帰刃とは死神で言う卍解の様なもので、斬魄刀と一体化することで破面になる前の自身に回帰、強大な力を得る。

 

 特にヤミーは自身が第0十刃(セロ)であることを明かし、その力を解放。

 

 際限なく巨大化し、結界を一撃で粉砕。鉄裁が結界を修復し、仮面の軍勢が縛道で補強することで何とか人間の魂魄を吸われない様にしている。

 

「限定霊印まで…解除されている…?」

 

「ど、どうなってるんだ…?」

 

「どーでもいーこと気にせんでええで。とりあえず、あのデカブツ止めてくれや。」

 

「───卍解!大紅蓮氷輪丸!!他の奴らは任せたぞ!松本!」

 

「はい!」

 

 日番谷冬獅郎はあまりの緊急事態に思考を止め、破面を倒すことを優先した。

 氷の翼を展開し、氷雪系最強の名を冠す力をヤミーへとぶつけようと飛び立つ。

 

 事態は、ヤミー対日番谷、仮面の軍勢、浮竹。

 ウルキオラ対京楽。

 

 残った者達の中で攻撃範囲が広い阿散井や松本はヤミーへ。

 攻撃範囲が狭い綾瀬川と斑目はウルキオラへ、それぞれ向かっていった。

 

 

「隊長、僕達はどうしますか?」

 

「……。あのでかい破面を狙おう。足の部分を攻撃すれば、貢献できるはずだ。」

 

「ハッ!面を上げろ───侘助!」

 

 瞬歩で空間を駆ける秀忠とイズル。

 視界の4割を常にあの破面の身体が占有している状況だ。

 秀忠は攻撃されている結界へと目を向ける。

 

(…あの結界…破面に魂魄を吸わせないことを重視しているみたいだな。)

 

 よく見れば、霊子が表面に付着している。

 外界と内界を霊的に分断する結界なのだろう。だが、その代わり物理耐性に関しては相当脆くなっているはずだ。

 

「吉良副隊長、俺はあの結界回りに行くことにします。デカブツの足元への攻撃は任せました!」

 

「了解です!ご武運を!」

 

 瞬歩で方向転換をし、破られている結界の補強に行こうとした時であった。

 巨大な岩壁とみまごうばかりの───巨大な破面の"尾"が秀忠達に襲い掛かる。

 

「っ───。」

 

 咄嗟に霊子の弾丸を吉良に当てて軌道から抜けさせる。

 秀忠にできたのはそれくらいであった。

 ヤミーの攻撃の巻き添えになり、秀忠は遥か後方へと吹き飛ばされる…!

 

「…隊長───!?」

 

 

 滅却師の能力、霊子による身体の補強によって、なんとか一命を取り留めた秀忠であったが、負傷は壮絶なものであった。

 鎖結と魄睡はなんとか守ることができたが、全身の骨は折れ、家屋に突っ込んだ影響で片目は抉れている。

 

「………すまん…。やられ、た。」

 

 秀忠は尚も立ちあがろうとしていた。

 こんな序盤で倒れていたら、隊長として任された意味がないと、そう思い自身を奮い立たせる。

 

『今後の尸魂界を支える樹木となれい。無理は通してナンボじゃ。』

 

 あの総隊長から期待されたのだから。

 今まで日陰に押し込められてきた秀忠が、隊長として頑張らせてもらっているのだから…!

 

「やめなよ。秀忠。」

 

「!…白染。」

 

 突然に現れた白染が、秀忠を引き止める。

 今の秀忠は自身の身体を霊子を使って操っている状態だ。

 その状態で戦えば、確実に容態は悪化するし、敵からの攻撃をひとつでも受ければ死ぬだろう。

 

「今の秀忠には、勝てないんだよ。50年…いや、100年先でも難しいかもしれない。」

 

 白染は戦力を分析して、冷静な判断を秀忠に告げる。

 これは、あの巨体の破面…ヤミーだけの話ではない。

 ウルキオラも、スタークも、グリムジョーも、果てはゾマリやザエルアポロが相手だとしても…秀忠は何も出来ず死ぬ。

 

 黒崎一護達への援護に徹していても…確実に殺される。

 

「…でもよ。俺の全開の力なら…あの時の双殛の…燬鷇王。アレ、斬魄刀100万本の威力なんだろ…?アレに穴を開けたように…。」

 

「その力を使えば、君は死ぬ。」

 

「いいじゃないか…。死んでも。続くものがいる…。それが、護廷の───。」

 

 白染は、秀忠の頬を思い切り殴りつけた。

 

「───甘ったれるな!!」

 

 秀忠の血が、周りへと飛び散る。

 

「…考えろ!死にに行くだけじゃないだろ!何が出来て、何が出来ないのか…考えろ!考え無しが!!」

 

 もう一撃。

 秀忠は顔面で受け止めた。

 

「…私は、君の力なんだ。君が引き出さなきゃならないんだ。」

 

 肩を怒らせ、呼吸を繰り返す白染。

 

(…染影。)

 

 痛みで目覚めたのは、いつ頃だろう。

 心の軋みを感じたのは。

 かつての相棒を思い出す。

 

(お前と、似てるな…。)

 

 頭に浮かぶ相棒を振り払って、秀忠は白染を見る。

 白染も───秀忠の力なのだ。

 

「…やっと、私を見たね。」

 

「…遅くなった。ずっと、お前のことを見ていなかった。」

 

「いいよ。早いくらいだもの。私は、あなたの力。あなただけの力───。」

 

 白染の力が引き出される。

 滅却師の力ではなく、秀忠自身の、斬魄刀の力が。

 

「名を呼んで。私の名は───。」

 

「塗り潰せ…白染…!!」

 

 

「おやおや。私と同格のスピード…敵ながら、天晴と言いましょう。」

 

「…ハッ!敵のこと褒めてる暇があるなんてな!随分と余裕そうだな、破面!」

 

「ええ。実際に…余裕ですので、ね!」

 

 黒崎一護はゾマリ・ルルーの速さに翻弄されていた。

 ゾマリは破面一のスピードを持ち、破面の歩法、響転(ソニード)を駆使して一護以上のスピードを出し、一方的に攻撃されるばかりだ。

 

 右、左、後ろ、下、右…。

 一護は全方位から絶え間なく浴びせられる攻撃を弾くが、それまで。

 反撃には至らない。

 

「双児響転(へメロス・ソニード)…終わりですね。」

 

(2人に、増え───がっ…!?)

 

 ゾマリが持つ特殊能力。

 双児響転(へメロス・ソニード)…響転に特殊なステップを加えることで、自身を2人に見せる技術である。

 

 一護は急に2人に分身したゾマリへと対応しきれず、痛恨の一撃を喰らってしまう。

 

「ぐあっ…!」

 

「おいおい、何やっとんねん。」

 

「…平子…!」

 

「…増援ですか。」

 

 一護の前に平子真子が立ち塞がる。

 ゾマリは戦闘態勢を崩さない。

 

「あのデカブツも相手せないかんのに、子守までやらせるなんてな、浦原さんはとんだ鬼畜やでな…。…!?」

 

「…ほう…!」

 

 不意に───巨大な霊圧が…弾ける。

 

『情けねぇなぁ。一護…。』

 

 空座町の瓦礫の中から一つ。

 そしてもう一つは、自身の背後からだ…!

 

「…やべぇ。抑えられ、ね、ぇ…!!」

 

「…一護、虚に飲まれたんか…。…しゃーない奴や。」

 

 仮面が、一護を支配する…!

 

『俺が代わりに…手本ってやつを見せてやるよ。』

 

 

 朽木ルキアと井上織姫、茶渡泰虎にロバート・アキュトロンは石田雨竜の家へと走っていた。

 

 石田雨竜の父…石田竜弦の協力を仰ぐために…。

 空座総合病院へと赴いた井上達は、胸を神聖滅矢で刺され、倒れる雨竜と───その身体を見下ろす竜弦の姿を目撃した。

 

「…!!」

 

「………。」

 

 朽木ルキアと石田竜弦はそれぞれ自身の武器を手にかけようとする、その時だった───。

 

「いやっ!死んでないから!!これ!そう言う修行なんだよ!!」

 

 石田雨竜が立ち上がった。

 ルキア達は一瞬呆然とするが、状況を飲み込み、安堵のついでに石田へと飛びかかった。

 

「石"田"ぐう"ぅ"〜"ん"。良がっだぁぁぁ〜…。」

 

「不思議だな、傷もない…。」

 

「僕も不思議だよ。」

 

「私が加減を誤るはずがないだろう。」

 

「…滅却師…石田竜弦…!」

 

 竜弦が発言し、場に緊張が戻る。

 ロバートは竜弦へと目配せした。

 冷徹な眼差しが、竜弦を捉える。

 

「…そう警戒するな。私も今回の事変の解決に協力してやる。」

 

「ほ、本当か!」

 

「ああ。この緊急事態で、あの黒崎の奴まで参加しているのなら、私一人逃げることもできん。」

 

 雨竜は信じられない様子で自身の父親を見上げる。

 雨竜の父、竜弦は滅却師であると同時に、滅却師に対して「金にならない」などと反感を示し、自身の力を疎ましく思っている…そのような人間であったはずなのに。

 

 今の竜弦の背中からは、何がなんでも何かを守ると言う強い意志が伝わってくる。

 

 何を守るのかはわからない。

 ただ、彼のその背中は…きっと、雨竜にしか見せることはないだろう。

 

「…話は済んだようですな。若人達。素晴らしい(グッド・インディード)。」

 

「ロバートさん…そういえば、あなたは何故此処にいるんですか?あなたはただ、尸魂界から逃げてきただけなのに…。」

 

「雨竜殿。私はどうせなら若い芽たちの…新しい世界の担い手の助けになりたいのです。力がある私にはそれができる…。この理由では、不十分でしょうか?」

 

「…ロバートさん…。」

 

 ロバート・アキュトロンは目を細め、薄く笑う。

 何度も繰り返した、演技であった。

 

 

「ちくしょおおおおオオオオッッ!!!!!」

 

 ヤミー・リヤルゴは憤慨する。

 

「潰れろッ!!潰れろッ!!潰れろォォォォォォォォォッッ!!!!!」

 

 何度割っても修復する壁に。

 何度叩いても、起き上がってくる死神(虫ケラ)に。

 

「死ねええええェェェェェ!!!」

 

 怒れば怒るほど、彼は大きく、強くなる。

 際限なく湧く水壺の如く、溢れる力は本能がままに暴発を続ける。

 だが、突然に彼の探査神経は、冷たき霊圧を捉えた。

 

 本来ならば、気にすることもない矮小な霊圧。

 しかし、その霊圧は今のヤミーに冷や水をかけるような…。

 刃で首を断たれた光景、死の暗闇を連想させた。

 

 

 指先にも満たぬ小さな蚊が、殺しの刃を持つと聞いて、逃げられるような臆病者は、果たして何人いるだろう。

 

 

「卍解。」

 

「『初剥色』(そめのはくしき)。」

 

 霊圧を喰らう。

 貪り食らって、大きな顎へ。

 大きな顎は、さらに喰らう。

 指から掌。

 掌から腕。

 腕から首へ。

 命脈を断つ。

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