誤:スタークの力は圧倒的で、元13番隊隊長の一心が卍解してもその力の差は覆ることはなかった。
正:スタークの力は圧倒的で、元十番隊隊長の一心が卍解してもその力の差は覆ることはなかった。
誤:虚ならではの体型変化で、身体に増やして た50の目。
正:虚ならではの体型変化で、身体に増やした50の目。
誤: 銀城は月島を指差した。
正: 銀城は井上を指差した。
今後とも精進させていただきます。
色が抜けていくような。
あらゆる神経が、その音に支配される錯覚を伴う、絶命の喘ぎ。
巨体は生きようと足掻く。
死から逃げようと踠く。
身体の外へ、逃げ出したいと、切実に。
「うおおおおおおおおォォォォォォ!?」
「…無様が過ぎるぞ、ヤミー。」
ウルキオラは帰刃の力に任せて、虚閃(セロ)にてヤミーの右腕を断つ。
帰刃したヤミーの皮膚は易々と切れるものではないが、ウルキオラにとっては簡単なことだ。
「此処まで暴れておいて1人も殺せてないじゃないか、ゴミめ。藍染様が見てたら処刑モノだぞ。」
「…ぐ…!」
片腕が取れて初めてヤミーは自身の生存を実感し、我を取り戻した。
突然にヤミーを襲った、食われる痛み───おそらくは、何者かの卍解だろう。
あの時感じた冷徹な霊圧の持ち主を───殺さなくてはならない。
ヤミーはそう思った。
「…許せねぇ。俺は許せねぇ…!ゴミ共が、カス共が…!!」
「ぼーっとするな、ヤミー。帰刃を解除しろ。その図体では次にどこが食われるか分かったものではない。」
「…黙って、引けっつーのかよ…!!」
「さっきの俺の話を聞いていなかったのか?お前はゴミだ。鎖結と魄睡…藍染様からそこを狙えと言われていただろうが。」
「……。」
ウルキオラの指摘に、ヤミーは黙ることしかできない。
ヤミーの打撃は破壊力こそあったが、死神達は皆急所を守って行動していたため…攻撃を当てたとしても誰も殺すことができていなかったのだ。
「そのせいでお前は、誰1人殺せぬ第10十刃(ディエス)の名に相応しい活躍となった。同情するよ。…帰刃を解け。」
ウルキオラがヤミーに忠告する。
「…これ以上の無様は許さん。十刃の実力に傷が付く。」
「…わかった。」
ヤミーの身体が縮退する。
天を覆う巨大な怪物は、惨めな敗北を喫した。
瓦礫に隠れ、死神は息を吐く。
「……ふ、ぅ……。」
秀忠だ。
初剥色の能力───霊子の咀嚼。
それを行い…なんとかヤミーに重傷を負わせることができた。
「………。」
だが、失った霊力は戻らない。
初剥色の能力は、あくまでも噛み砕くだけで、霊子の吸収はしないからだ。
秀忠の身体が、徐々に崩れ落ちていく。
「…秀忠。」
「…しろ、ぞめ…。」
霊子の欠乏により、秀忠は自身の身体を保つことですら難しくなっている。
指先から崩壊していく身体。
天を仰ぐばかりだ。
「………すまない。」
「いいよ。…あなたの力になれて、よかった。」
かつて拾われた命は、すくすくと育った。
影に覆われた苗木を、日の光に当てた者達によって。
木は大きく根を張って、天へ届かんと枝を伸ばし。
届かずして、実を残す。
「…ぐっ!私の『愛(アモール)』が通用しないとは…!随分と無粋な方だ…!」
「生憎と愛なんかを語れる身分じゃないんでね!」
虚化した黒崎一護が、帰刃したゾマリ・ルルーを圧倒する。
膨大な霊圧から放たれる霊子の斬撃───月牙天衝。
それの連打は、確実にゾマリの逃げ道を塞ぎ、彼の余裕を奪っていった。
(彼の月牙天衝とやらは、私の鋼皮(イエロ)ですら易々と打ち破る威力…まともに受けてはマズイというのに…!)
鋼皮(イエロ)。
破面が持つ防御手段であり、十刃にも数えられるゾマリの鋼皮は並大抵の破面を凌ぐほどの硬度を持つ。
帰刃までしているというのに、此処まで一方的にやられるとは───。
「何故だ!何故『愛』が効かんのだ…!」
ゾマリの帰刃…呪眼僧伽(ブルヘリア)は、目で見た対象を部分的に支配することができる能力だ。
足を見れば足を支配し、腕を見れば腕を支配する。
虚ならではの体型変化で、身体に増やした50の目。
それらがまったく効果を成さない…!
「『愛』ってのは、お前が俺に飛ばしてくる霊圧の事か?…悪いな、食っちまってんだよ。」
「…私の能力が…喰われている…!?」
「そぅら!月牙天衝!」
「くっ…!」
5発の月牙天衝がゾマリに迫る。
避けようとするが、視界の端に…さらに月牙が見える。
逃げる先に月牙天衝が…"置かれて"いる。
「詰みだぜ───破面。」
「…。」
もはやこれまで。
虚閃を打ち、最後の抵抗を試みる。
出力は負け、速さも負け、知能までもが負けた。
ならば弱者に与えられるのは死だ。
「無限装弾虚閃(セロ・メトラジェッタ)。」
第1十刃の霊圧だ。
コヨーテ・スタークは銃を使う。
高過ぎる霊圧を───弾丸に閉じ込めて、決して暴発させないように。
千を越える虚閃が月牙天衝を相殺する。
「…新手か。」
「俺たちは撤収する。…俺たちを追う前に、横にいる奴を気にかけといた方がいいぜ。」
「…!死神…。なるほどな、あの妙ちきりんな奴が言ってた『愛』ってのは、そういう能力か…!」
一護の横に倒れているのは、平子真子であった。
ゾマリの帰刃の能力…『愛』を受け、全く動けなかったところにスタークの虚閃を何十発も被弾してしまった。
瀕死の重症である。
「…スターク殿、申し訳ありません。このゾマリ・ルルー。しくじりました…。」
「気にすんな。初めから陽動だって話だからな。」
「…陽動…?」
黒腔が開く。
結集する破面達。
「ああ。陽動だ。」
転界結柱。
4つの柱で囲った空間と別の空間を入れ替えることができる鬼道であるが、今回の戦いでは全く音沙汰がなかった。
それは何故かといえば、ヤミーにより破壊されたからだ。
結界を突き抜けた拳は、迷彩を施され透明と化していた柱を破壊していた。
「店長!黒腔から破面達が引いていきます!」
「…よ、よかったぁ〜。」
しかし、浦原達からすれば、既に転界結柱が壊されてしまったから死ぬ気で頑張ってくれと死神達へ言うこともできなかったため、十刃達の撤退は都合が良いものであった。
今回の戦いでヤミーは1人として死神を殺せなかったが、別に戦死者が出なかったわけではない。
「…月島。」
「すまねぇ…。」
黒崎一心と月島秀九郎、そして途中から加わった石田竜弦らは、十刃のスタークとザエルアポロと交戦。
スタークの力は圧倒的で、元十番隊隊長の一心が卍解してもその力の差は覆ることはなかった。
「………。」
黙り込む一心。
人間である月島は、死神と違って一定の量の出血があれば死亡する。
スタークの1000を越える虚閃を捌ききれず、全身を貫かれて死亡した。
「双天帰盾…!『私は…拒絶する!!』」
しかし、井上織姫の完現術…『盾舜六花』の時間を巻き戻す能力により、月島は再生する。
みるみるうちに治っていく月島を見て…あまりのことに目を見張る銀城と一心であった。
一心の口から自然と、彼が抱える呆然の情がこぼれ落ちる。
「…人が…生き返った…。」
「…あれ。…なんだい?これ。さっきまで虚閃に囲まれてたんだけど。」
「…お前、死んでたんだよ。甦ったんだ。」
「銀城…。」
「こいつ…いや、井上にお礼言っとけ。」
銀城は井上を指差した。
「井上さん…。ありがとう…。」
「…えっ!いや、あの…。」
「俺からも言っておくぜ。月島を助けてくれてありがとな。井上…。」
「…よかった。」
自分は、当然のことをしたまで。
そう言おうとした織姫の意思は、銀城の笑顔にかき消された。
常に顰めっ面をしているこの男に、こんな顔をさせる程の大事な人を助けたのだ。
大したことをしていないと言うのは───失礼に当たるだろう。
ロバート・アキュトロンは破面の撤退を静かに見つめる。
石田竜弦が黒崎一心を庇い、スタークへと立ち向かう姿が彼の脳内に焼き付いていた。
『───私たちは、共に医者だろう。』
生者を助けるに貴賎はないと、彼は言う。
「生者を、か。」
彼が所属する見えざる帝国の理想は、生と死の無い世界だ。
滅却師が支配する世界を望む者も一定数いるが、ロバートはこの、生と死の循環…即ち、現世と尸魂界の枠組みを破壊しようと目論んでいた。
「生も死も無い世界を望むのは、傲慢なのだろうか。」
現世で死んだ者は尸魂界へ行き、尸魂界で死んだ者は霊子となって現世へと行き、誰かの魂を形作る。
「……。」
しかし…。
あの死に際の、無限とも思える虚閃と、神聖滅矢の拮抗は…神業と呼んで然るべき偉業であった。
スタークとの交戦で石田竜弦は死亡したが、最後まで乱装天傀(らんそうてんかい)を使用し、黒崎一心と共にスタークへと抵抗していた。
「…死があればこそ、生があると言うのか…?」
この後、ロバートは酷く驚くことになる。
井上織姫の完現術で石田竜弦が生き返ったのであったから…。
秀忠は死亡した。
死神は死亡しても本来、一定の時間死体が残るはずであるのだが、秀忠は全て外部へと放出してしまったため、風のように立ち消えた。
初剥色のデメリットであり、メリットでもある…魄睡の弁を喰い、外すことによって、放出できる霊力を増やす能力のために…秀忠の霊子は放散してしまったのだ。
こうなっては井上織姫の能力でも癒すことはできない。
「…秀忠仮隊長…。」
吉良イズルは、秀忠の斬魄刀の目の前に立っていた。
血の池に刺さる、純白の刀。
「…ありがとうございました。」
命令に従って、斬魄刀をヤミーに当て…侘助の能力によって彼の重量をどんどん増やしていった吉良であったが、運悪く目をつけられてしまう。
逃げられない…そう感じて、意を決して全身全霊で刀を振った。
恐れはあった。
恐れがあったことに安心し、死ぬことに恐怖しながら死ねたことに───誇りを持った。
だが、その時、秀忠の卍解がヤミーに炸裂する。
巨体は動転し、吉良のことなどお構いなしに痛みに悶えたのであった。
端的に言えば、吉良は秀忠によって命を救われたのだ。
「…。」
二週間程度の付き合いではあるが、秀忠は人との揉め事を極端に恐れるような死神であることが、吉良にはわかっていた。
何も求めない。
二番隊の隊花、翁草の花言葉だ。
彼には、人と同じように何かが欲しいという時があるし、何かを求めて歩き回る時だってある。
だが彼は、別に手に入らなくても良いと言う。
人と競り合うくらいなら、と。
今ある繋がりが、失われるぐらいなら、と。
繋がりを失うことを恐れるような。
そのような、死神だったのだ。
「…隊長。」
曇天が、雨に変わる頃。
…血が───斬魄刀を取り囲んで…螺旋を描き出す…!
「───え?」
突然のことに…吉良は反応できない。
秀忠の斬魄刀は緑色の光を放つ。
完現光(フルブリンガーライト)と呼ばれる、完現術を使った際に生まれる光と似たような輝きだ。
「い、いったい、何が───!」
「…またか。無理ばかりしおって。」
光無く。
色無く。
音無く。
何もわからない。
なにも、わからないのに。
なにかが、つたわってくる。
「現世で霊力を失えば、このように放散し死ぬ…。分かったな?秀忠。二度とこのような真似はするなよ。」
なつかしい、声だ。
「私が叩き起こされるなんて状況は、本来ならあり得ぬはずなのだ。私はお前が元々持っていた力であると言うのに…。」
久しぶりだな…染影。
「斬魄刀を媒介に、お前を作り出す。」
…白染は、どうなる…?
「しばらく使えなくなるが、我慢しろ。私の力も…お前の身体を作り出すために使うから使えなくなる。」
…世話をかけるな。
「まったくだ。」