正:大気の塵と変わった。
誤: 大気の散りと変わった。
正:零番隊の修多羅千手丸
誤:0はの修多羅千手丸
見えざる帝国は、その機能の半分を停止…壊滅状態に至っていた。
『J』のキルゲ・オピーは、完全虚化を成し、死をばら撒く暴力装置と化した黒崎一護と、自身の真の力───元第3十刃の力を解放したネル・トゥに敗北し、殺害される。
直属部隊の狩猟部隊もキルゲの後を追う形で死亡。
聖兵は開戦前にいた兵力の内、5割が死亡、3割が捕虜となり、戦意を維持できず逃走。
また、聖十時騎士団である『G』、リルトット・ランパードと、『Z』、ジゼル・ジュエルが、捕虜となっていた聖十字騎士団の2人、ミニーニャとキャンディスの身の安全の保証と引き換えに離反。
涅マユリ、朽木白哉、日番谷冬獅郎の三隊長に協力し、『E』、バンビエッタ・バスターバインを打倒した。
残りの聖十字騎士団はユーハバッハ自身と、ユーハバッハの親衛隊を除けば、12人。
そのような危機的状況でありながら───親衛隊は何も行動せず、ユーハバッハとの連絡もつかずにいた。
前線にて戦場を俯瞰するユーグラム・ハッシュバルトは…滅却師が斜陽にあることを理解している。
「…死神側の隊士は6割程度削ったと言えど、これでは敗北と変わらない。」
滅却師とて、全く何もできなかったわけではない。
仮面の軍勢は完全沈黙。
また、護廷十三隊の戦力を、浮竹十四郎と京楽春水、更木剣八、卯ノ花烈等の数名へと追い詰めることに成功した。
故に、彼我の戦力の差としては同等ではあるのだが…今回は、あまりに損耗が大きすぎる。
「…それで、何のようだ。バズビー。」
ハッシュバルトの背後に立つ男の名は、バザード・ブラック…通称バズビー。
ハッシュバルトのかつての友人であり、今は上司部下の関係だ。
そんな彼が、石田竜弦と石田雨竜、ロバート・アキュトロンの3人を連れ、ハッシュバルトへと視線を向けている。
「…覚えてるか。ユーゴー。俺たちが誓った…復讐を。」
「……。」
昔、ハッシュバルトとバズビーは共に、ユーハバッハの一団に住居を燃やされ…家族を奪われた。
その時、彼らは誓ったのだ。
どちらかがユーハバッハの側近となり、隙を見て彼を殺すと。
「どうなんだ?」
「…謀反行為は、死罪だぞ。」
ハッシュバルトは冷徹な視線を向ける。
無感動な虚無の瞳。
最優の従者たらんとするその振る舞いは、完全無欠の騎士を連想させる。
「バズビー、死神達の殺戮に戻れ。お前の能力なら、残存戦力の撃退も容易だ。」
「おいおい、俺の後ろにいる仲間が誰か…わかんねぇのかよ。」
「……本気のようだな。」
石田親子と、最速の滅却師…。
これでは、ハッシュバルトも迂闊には手が出せない。
「バズビー…。どうするんだ?」
「突っ切る!」
「…ハァ…。わかった。」
「それでは殿はお任せを…。」
雨竜達は飛廉脚を使用し、ハッシュバルトから逃げ去る。
が、ハッシュバルトは彼らを追うことはしなかった。
「…バズビー。無謀なことを…。」
雨竜達が向かうのは、死神達が集合している所。
後で死神は殲滅する。ならば何も変わらない。
「物事の順序が一つ変わろうが、結果は同じだ。」
8時間が経った。
『V』、『The Visionary(夢想家)』、 グレミィ・トゥミューが更木剣八、卯ノ花烈と交戦。
卯ノ花が死亡すると言う凄絶な結果であったが、何とか撃退することに成功する。
グレミィが死亡したことで、彼の創造物である滅却師、同じく『V』、Vanishing Point(消尽点)のグエナエル・リーが消滅する。
『W』、『The Wind(紆余曲折)』のニャンゾル・ワイゾルは銀城空吾、月島秀九郎と交戦。
月島の能力にて、足元に罠を仕掛けたと言う過去を挟み込まれ、串刺しにされて死亡した。
『I』、『The Iron(鉄)』蒼都。
『ϛ』、『The Viability(生存能力)』シャズ・ドミノ。
『S』、『The Super Star(英雄)』マスクド・マスキュリンの三人は、阿散井恋次以外の副隊長を戦闘不能に追い込み、席官を圧倒。
現在、浮竹十四郎、京楽春水、黒崎一心を相手に交戦中。
『B』、『The Balance(世界調和)』ユーグラム・ハッシュバルトは王の帰還を待つ。
断界にて、二年を過ごした滅却師の王の到来を。
バズビー、ロバート、竜弦、雨竜とキャンディス、ミニーニャ、リルトット、ジゼル、バンビエッタのゾンビ達滅却師は、死神達に投降し、同じ部屋に押し込められていた。
「あのマユリってやつ、ブッコロさねー?」
「キャンディス。抑えて抑えて。」
「この状態だってまずいことにゃ変わりねーが、最悪とは言わんだろ。バンビエッタのバカをゾンビにできたこと含めてな。」
「あうー。」
「可愛い…。黙ってると可愛いですよね。バンビちゃん…。」
「───!伏せろ!皆!」
その時、見えざる帝国の影が解かれ、瀞霊廷へ死神達と滅却師達が浮上する
いきなり影から抜け出せたことに、彼らは驚きを隠せなかった。
だが、呆然は束の間…死神達は瀞霊廷ヘの帰還が叶ったことに喜び、負傷者の救助を行おうとする。
「い、いそげ!4番隊隊舎に隊長達を運べ!治療経験のある者はいるか!?」
「私やったことあります!手伝います!」
4番隊は既に壊滅状態ゆえ、治療できる者すらいない状態で…隊長、副隊長達は皆重体。
唯一、負傷を逃れた阿散井恋次が統率を取ることで、何とか救命活動を開始できているが…無事治療を完了出来るかと言われたら、微妙なところであった。
「お困りのようっスね!この薬液、使ってみてください!」
「あ、浦原さん!」
浦原喜助が駆けつけ、医療品を提供する。
その医療品とは、塗りつければ自動で霊子の縫合を行う薬液であり、みるみるうちに隊士達の外傷が治っていく…。
「こ、こんなモン、どこで…。」
「虚の粉末を混ぜ込みました。」
「はァ!?」
「虚の超速再生する性質を利用して、外傷を無理やり直してるんス。自我をうっすくすれば宿主を侵食することもありません。…多分。」
「多分じゃねーっスよ!」
和やかとはとても言えないが、談笑で盛り上がる彼らの元に、隠密機動が状況を知らせに来る。
「失礼します。阿散井副隊長。報告です。京楽隊長達が滅却師達を倒したとのことです。」
「…や、やった。これで後は霊王宮にいる藍染だけか…!」
「ですが、様子がおかしく…。天から巨大な光が滅却師を包み込み、それに吸い込まれて消滅したらしいのです。」
「…!阿散井サン!光の柱が!」
「なんだって!?」
聖別の光が、瀞霊廷にも入り込む…!
浦原は、光に包まれると滅却師が吸い込まれて消えるという仮説を立て、捕虜達が集まっている部屋へ向かって駆け出した。
「…今すぐ捕虜の滅却師にこの薬液を塗り付けます!虚の因子と結合すれば、吸い込まれないかも知れません!」
「ま、待ってくれよ!浦原サン!」
「そうだヨ。浦原喜助。お前が捕虜に対応することはない。」
浦原喜助を引き止めたのは、涅マユリだった。
突然に現れたので、皆自身の目を疑った。
「ここにいる私は、いわゆるホログラムというやつだヨ。浦原喜助、既に虚の因子を寝返ってきた滅却師共には組み込んでいる。現に、今も彼らは元気だ。」
「…なるほど。───いや〜さすがマユリさんですね!よっ!最強科学者!」
「…ふざけるんじゃないヨ。」
(マユリ隊長が、本気で怒っている…!!)
瀞霊廷に戻ってきた京楽春水は、目を細めて天を見上げた。
「…山爺…。」
山本元柳斎の霊圧は、どこにも感じ取れない。
霊王宮にて。
藍染惣右介と零番隊の戦いは、5時間にも及ぶ長期にも及んだ。
事の顛末を簡潔に記すとしよう。
第2十刃、バラガン・ルイゼンバーン。
第3十刃、ティア・ハリベル。
第9十刃、アーロニーロ・アルルエリ達が零番隊の5人のうち1人、二枚屋王悦の居城とする零番離殿…鳳凰殿を強襲。
アーロニーロは、封印されていた中級大虚の斬魄刀…已己巳己巴(いこみきどもえ)を自身の帰刃、喰虚(グロトネリア)で咀嚼し、吸収。
その後、彼は無限に増殖することができる能力を獲得し、霊王宮を荒らし回る。
第1十刃、コヨーテ・スターク。
第4十刃、ウルキオラ・シファー。
第10十刃、ヤミー・リヤルゴの3名は、零番隊の修多羅千手丸と交戦。
第5十刃、ノイトラ・ジルガ。
第6十刃、グリムジョー・ジャガー・ジャック。
第7十刃、ゾマリ・ルルー。
第8十刃、ザエルアポロ・グランツの4名は零番隊の麒麟児天示郎、曳舟桐生と交戦。
藍染惣右介、市丸ギン、東仙要の3名は兵主部一兵衛と交戦していた。
戦況としては、崩玉によって無限に近い霊圧を得た藍染が、兵主部一兵衛の斬魄刀の能力を霊圧で無効化。
また、霊圧に任せた鬼道の連発により、兵主部一兵衛は敗北した。
「…おぬし、どのようにして、このような力を…?」
「簡単だとも。崩玉に強烈な生存本能を読み込ませ、進化を促したのだ。具体的には…このように。」
藍染が取り出したのは、王鍵だ。
兵主部一兵衛はそれを見て、藍染がやったことを察した。
「…なるほど、王鍵を作る際に起こる、莫大な霊子の圧縮、整形…その中に自身を【巻き込ませた】ということかのう。」
「ご明察だ。まなこ和尚と呼ばれるのも当然だな。」
「あん時、めちゃくちゃ焦りましたけどね。藍染隊長、のほほんとした顔で生還してきましたけど。」
(…死すら乗り越えるとは。藍染惣右介、貴方ならば、本当に…。)
王鍵は重霊地と魂魄を、零番隊隊員の骨という微小な単位に圧縮することで作られる。
藍染はその圧縮を体験、生存本能によって生き延び───神の如き霊圧を放つ存在へと、進化したのであった。
「ではな。」
破道の九十、黒棺。
それの8重展開。
流石の兵主部一兵衛でも耐えきれず、大気の塵と変わった。
状況は最悪を極める。
零番隊の各場所で隊士達が敗北していた。
無限に増殖するアーロニーロを切り伏せる隙に、ハリベルの能力である水流に呑まれ、窒息する王悦。
ほぼ無限に向けられる虚閃に耐えきれず、死亡する千手丸。
グリムジョーとノイトラに注視しているうちに、ザエルアポロとゾマリの搦手によって体の自由を奪われ、斬殺される麒麟児と曳舟。
交戦して2時間も立たないうちに、零番隊は壊滅した。
だが、そこに現れたのは山本元柳斎重国。
彼は零番隊士として認められており、王鍵を手にしているため、この窮地に間に合うことができたのだ。
「───兵主部一兵衛ぇ!!」
「うぉ〜い。久しぶりじゃのう。元柳斎。」
「戯け!霊王の守りは貴様らの仕事じゃろうが!何故こうも簡単にやられておるんじゃ!」
まず、零番隊士達の名を呼び、彼らを復活させる。
零番隊士達は零番離殿が本体であり、それが壊されない限り、名前を呼ばれることで何度でも復活できるのだ。
「藍染惣右介は…儂が、カタをつける…!」
「…本気のようじゃな。じゃが…敵の力を見誤るなよ。元柳斎。」
「…今のやつの力は承知の上、参る───。」
山本元柳斎は残火の太刀を使用し、藍染惣右介へと切りかかった。
余波でザエルアポロ、ノイトラの片腕が千切れ、アーロニーロの大半が消滅する。
「残火の太刀、北…天地灰尽。」
「やっと本気の山本元柳斎か。待ちくたびれたよ…。破道の九十九、五龍転滅!」
九重に重ねた破道の九十九。
それも、今の藍染の霊圧から放たれた…下手すれば三界の境界を破壊するほどの一撃だ。
だが、山本元柳斎は最強の死神。
あらゆるものを燃やし尽くす。
今回、山本元柳斎重国が取った戦法は極めてシンプルだ。
天地灰尽を、四方に向けて打ちまくるというもの。
これならば、鏡花水月の能力で幻覚を見せられていても対処できる。
「ぬォォォォォォォォォ!」
「…儂らの零番離殿まで燃やしてくれるなよ。元柳斎。」
十刃は混乱状態だ。
ハリベルの帰刃、『皇鮫后(ティブロン)』と、大量のアーロニーロ達の能力の一つ、始解『捩花』による大量の水と、バラガンの帰刃、『髑髏大帝(アロガンテ)』で炎を老いさせることで減衰させ、なんとか影響を少なくしている状態だ。
現に今もアーロニーロは十刃達の盾となり死亡している。
「助ケテ!」
「お前の能力が便利だから悪ぃんだろ。盾になってろ。」
グリムジョー達はあんまり役に立てないので、虚閃を空に向けて打って相殺に貢献していた。
「グワァァァァァァァ!?」
「ウワァァァァァマタ僕ガ死ンダ!」
だが、流石の攻撃力を誇る山本元柳斎でも…藍染惣右介には勝てない。
撃ち合いの始めは、藍染の破道を打ち破ってダメージを与えていたのだが、それゆえに生存本能を取り込んだ崩玉が藍染の力を増す。
天地灰尽ですら火力不足という、驚愕の状況へと至っていた。
「…残火の太刀、東───旭日刃。」
故に山本元柳斎は…鏡花水月対策でもある天地灰尽を解除。
全ての炎を刀に封じた最大火力形態、旭日刃で藍染惣右介へと襲い掛かる。
「山本元柳斎、君の覚悟は受け取った。───私を、更に進化させてくれ!」
空を埋め尽くす大量の黒棺を避け、弾き、壊して進む。
護廷の鬼が───帰ってきた。
(───まさか…一心の坊主の真似を、この儂がするとはのう。)
これから放つ奥義は、正真正銘───山本元柳斎の必殺技だ。
尸魂界が確実に破壊されるような───そのような一撃。
針の穴を通すような緻密な条件を越えた…今の状況だからこそ、その一撃は解禁される…!
「───月牙、天衝ーーッ!!」
月牙天衝。
元10番隊隊長の黒崎一心が扱う奥義。
白打と鬼道の合わせ技が、砕蜂達が使う【瞬閧】というのなら、斬術と鬼道の合わせ技が【月牙天衝】だ。
山本元柳斎が出せる全ての威力を───千年の歴史を、この一太刀に籠める…!
黒き神、剣を構え、白き者を切って、裂き分ける。
白き者は笑い、笑って溶け落ちて───。
溶け落ちながら、刃を握る。
黒き神は───恐怖する。
「藍染惣右介…!」
「───ありがとう。山本元柳斎。」
藍染惣右介は、この瞬間…あらゆる霊たるものを超えた。
何故ならば、彼の霊力は…彼を除いた【尸魂界全体】と同等以上。
尸魂界全体より、藍染惣右介1人の魂魄の方が重い。それが事実だ。
「それでは、さようなら。」
炎は舞って、散り散りに。