グウェェェェル・キャンプ・オンライン   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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8話で颯爽とスレッタのピンチに駆けつけるグエル先輩もおまけコーナーのぐえきゃんも最高でしたね!


ぐえきゃん 1

 

 ソロプレイヤーグエル。

 その名はかつてアインクラッド解放隊の一人であり、25層攻略をきっかけにギルドを脱退。以降ソロプレイヤーとして攻略組の一人としてデスゲームであるソード・アート・オンライン内に知れ渡る有名プレイヤーの一人だった。

 

 だが同時に彼はもう一つの側面がある。

 それは彼個人をよく知るものにしか知らないもの。

 グエルとはどんな人物か?

 ある者は傲慢な男と言うだろう。

 ある者はリーダーシップに優れた兄貴肌と言うだろう。

 ある者は意外に教養がある人物だと言うだろう。

 ある者はその戦闘力は攻略組でもトップだと言うだろう。

 

 そしてきっと誰もが、最後にはこう言うのだ。

 

 グエルは―――キャンパー、だと。。

 

 

 

~しゅくふく!~

 

 

 

「やった……やったぞ……!」

 

 アインクラッド74層フィールド。

 そのある一角にてグエルは歓喜に震えていた。

 両手にあるのはドロップされたばかりの肉の塊。

 

「ラグー・ラビット! 激レア食材だぜ……!」

 

 それは数あるソード・アート・オンライン内の食材の中でも、現在最もレア度の高い食材だった。

 商人に売れば高い値段で売れるだろう。

 

「くくく……攻略ついでに5日間探し回った甲斐があったぜ……」

 

 彼は聊か強面の、しかし確かに整った顔を破顔させ笑う。

 ウィンドウを操作し、アイテムボックスに収納。

 愛用の武器である斧槍『ダリルバルデ』を担いでベースキャンプに向かう。

 その最中、

 

「―――なにぃ!?」

 

 見つけたのは、本日二体目のラグー・ラビットだった。

 こんな幸運そうそうあるものではない。

 何が何でも狩り、肉を手に入れなければとグウェルは思った。

 彼はハルバードを使うパワー型プレイヤーではあるが、しかし同時にソードスキルというシステムに頼りきりではない熟練のプレイヤーでもある。

 ラグー・ラビットの足は速く、警戒心は高い。

 まだ気づかれていないが、気づかれてしまえばすぐに逃げてしまうだろう。

 その逃走速度は敏捷極振りのプレイヤーでも早々追いつけない。

 狩猟用に用意したスローイングナイフを握り、

 

「きゅう!」

 

「あっ」

 

 グエルのではない、誰かのナイフがラグー・ラビットに突き刺さった。

 

「……………………」

 

「おー、当たった当たった。ラッキー」

 

 呆然とそれを見ていたグエルの前に現れたのは暢気な声の黒尽くめの少年。

 

「………………キリト」

 

「!? ………………なんだ、グエルか」

 

 攻略組のソロプレイヤー。

 SAO内では知らぬ者はいない『黒の剣士』キリト。

 

「いよっ。久しぶりだな。73層の攻略以来か? こんなとこで……あ、これ?」

 

「それだ。……まぁ仕方ない。俺はもう一匹狩ってたからな」

 

「へぇ。さっすがキャンパー」

 

「ふん。褒めても何も出ないぞ」

 

「いやそんなつもりじゃなかったんだけど……」

 

 苦笑するキリトに尊大にグエルは胸を張る。

 彼とは第一層からの仲であり、何度も共闘した仲だ。

 

「これから街に行くところか?」

 

「あぁ、そのつもりだったんだけど……グエルは?」

 

「俺は自分のキャンプでその肉を食べるつもりだ」

 

「へぇ」

 

 キリトの黒い眼が輝いた。

 それにグエルは肩を竦め、

 

「一緒に喰うか?」

 

「行く行く!」

 

 

 

~しゅくふく!~

 

 

 

 74層のフィールド、先ほどの場所から少し離れた森の中の開けたところにグエルのキャンプはあった。

 地面に突き刺さった旗を中心に円形にテントやタープ、焚火台や机が置かれている。

 本来、フィールドでアイテムを放置しておけばモンスターに壊されたり、他のプレイヤーに取られていてもおかしくないのだが、秘密は旗にある。

 

「おー、久々に見たなキャンプフラッグ。便利だよなぁ」

 

「あぁ。39層で手に入れて長いが、これのおかげで迷宮区でもフィールドでもキャンプができるというわけだ」

 

 レアアイテムキャンプフラッグ。

 突き刺した箇所から半径五メートルほどを安全地帯とするもの。

 モンスターやオレンジプレイヤーは立ち入れず、確認している限りではグエルしか持っていないものだ。

 

「いいよなぁ。俺の持ってる旗は結局5層からアイテムボックスで腐ってるよ」

 

「ふっ……仕方あるまい。そういうこともある。さてと……早速飯を作るか。腹は減っているか?」

 

「ペコペコ」

 

「よぅし」

 

 不敵な笑みを浮かべ、キャンプ内の調理用机にグエル自身が捕まえたラグー・ラビットの肉や香辛料、いくつかの野菜やバケットを出現させる。

 

「ラグー、なんていうくらいだから煮込みと……やはりシンプルに焼きたいな。それでいいか?」

 

「おー。俺料理スキル上げてないし。スキル上げれば簡単らしいけどな」

 

「―――――ふっ」

 

 彼は笑みを濃くした。

 

「え? 何?」

 

「甘いなキリト、俺は前までの男ではない――――!」

 

「何そのテンション」

 

 疑問符を浮かべたキリトを置き去りにして。

 グエルの握るナイフが閃いた。

 手際よく肉を煮込み用、グリル用に切り分け、それぞれ下味をつけて別ける。

 鍋には彼特性の『ジェターク・コンソメ』と水、切り分けた野菜をぶち込みシンプルなスープとして火にかけた。

 グリル用は野菜と共に鉄串にさし、やはり特性の『ジェターク・スパイス』を振りかけて炭火へ。

  

「良い肉はシンプルに食う! それがキャンプの基本だ――――おっと、珈琲も飲むか?」

 

「いやちょっと待て!?」

 

 あっという間に調理を終えて火入れに入り、同時進行で珈琲まで淹れ出したグエルにキリトが突っ込んだ。

 

「グエルさん?」

 

「なんだ、キリト」

 

「SAOの料理ってそんな感じでした?」

 

「ふっ……言っただろう。俺はかつての俺と違うと」

 

「ほんとに違うことあるか?」

 

「実はだな」

 

「おう」

 

「俺は―――――ユニークスキル、『キャンパー』に目覚めたんだ」

 

「………………………………えぇ?」

 

「ふっ……驚いたことだろう」

 

「いや……うん。なにがびっくりってキャンパーなんてユニークスキル用意してる茅場晶彦にだよ。普通に生活スキルとして実装しろよ……」

 

「それはそう。残念だがユニークだ」

 

「………………うぅん…………効果は?」

 

「料理工程を実際に行う。どうも味覚伝達が精細になるらしく、現実の料理に近い感覚で味の調整ができるんだ」

 

「…………………………」

 

 凄い微妙そうな顔をするキリトだった。

 さもありなん、というべきか。

 仮にキリトが『キャンパー』のスキルに目覚めても、全く使えなかっただろう。

 

「なんだかなぁ」

 

「問題はないだろう。上手い飯が食える」

 

「確かに」

 

 しばらく唸っていたキリトを横目にして料理が出来上がる。

 ラグー・ラビットのスープとバーベキュー。

 

「おぉ……いい香りだ……」

 

「ごくり……た、確かにいつもより匂いを強く感じる気がするな……」

 

「…………頂きます」

 

「…………頂きます」

 

 しばし、男二人が肉を食らう音だけがキャンプ内に広がった。

 言葉はない。

 男のキャンプにそんなものは無粋なのだ。

 食べ終わり。

 

「―――――グエル」

 

「あぁ」

 

「間違いなく、SAOで食ったもので一番美味かった」

 

「ふっ……その言葉で十分だ」

 

「あぁ……」

 

 固い握手が男たちの友情を深めた。

 命がけのデスゲームにしばし癒しは必要である。

 

「珈琲……飲むか?」

 

「あぁ……頂くぜ……」

 

 余韻に浸って、ハードボイルドでも気取っているのか二人とも無意味にゆっくりと喋る。

 そんな機能SAOに勿論ないのだが、二人はお互いが劇画タッチに見えた。

 

「キリト……」

 

「あぁ……なんだ……?」

 

 グウェルの淹れた珈琲は『キャンパー』によって香りが高い。

 応えつつ、キリトは優雅に珈琲に口を付け、

 

「最近、アスナとはどうだ?」

 

「ぶぼはぁ!?」

 

 優雅さとはかけ離れた勢いで噴出した。

 

「汚いな」

 

「な、何言ってるんだよ、アスナ? なんだよ急に、突然よ!」

 

「ふっ……俺には解るぜ、キリト。好きなんだろ? 彼女のことが、な」

 

 劇画タッチを維持したまま、グエルは笑う。

 

「べ、別にアスナのこととか全然好きじゃないんだが!?」

 

「キリト!!」

 

「なんだ!?」

 

「言っておくが……そんな勢いで全然好きじゃないとかいって好きじゃなかったことなんてこの世には存在しない!!!」

 

「うるせぇ!!! なんだその勢いは!!!!!」

 

 開眼グエル。

 魂の叫びにも聞こえた。

 

「アスナは……そりゃ確かに昔はコンビを組んでいたけど今じゃKOBの副団長、『閃光』様だぜ? たまに会いはするけど、そういうのじゃ……」

 

「青いな、キリト。青の剣士だな」

 

「やかましいわ。えぇい、俺のことより、グエルはどうなんだよ」

 

「俺か?」

 

「そうだよ。アンタこそどうなんだ?」

 

「ふむ……特にないな。俺に釣り合う女がいれば、俺のものにするだけだ」

 

「うわかっけ……それどんなのだ?」

 

「ふむ……」

 

 問われ、グエルは少し空を見上げた。

 

「そうだな……俺はやはりおしゃれな男だからな。田舎臭いのはダメだ」

 

「あ、NGを上げてくのね。それで?」

 

「オドオドしたのもだめだ。イラつく」

 

「はっきり言うなぁ」

 

「背の高い女もダメだ」

 

「言い方」

 

「それにこんなデスゲームをやらされているんだ。ゲームができる、もっと言うと強い女もういいかなとなる。SAOの強い女は癖が強いからな……」

 

「まぁ……それはそう」

 

 SAO女性陣が聞けばキレそうなことをグエルは口にし、キリトは数人の知り合いを思い浮かべつつ同意した。

 

「あと俺はついつい言い過ぎることがある。口喧嘩もしたくないし、すぐに煽る様な女はごめんだ」

 

「そりゃそうだ」

 

「ふっ……俺の望みなんてこの程度さ」

 

「まぁまぁ高いぞー」

 

 なんてことを言いながら。

 数年後、SAOをクリアし、鉄と銃の世界にて今言ったまんまの少女と出会い、決闘の果てにプロポーズをすることになるのをグエルもキリトもまだ知らない。

 

「あ、ラグー・ラビットの肉余ってるからアスナのとこに持っていけよ。要らないとは言わないだろう?」

 

「…………………………貰うよ」

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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