グウェェェェル・キャンプ・オンライン   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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12話でマスク・ド・プロスペラの下に向かうスレッタに、
グエルがジェターク寮総出で改修したダリルバルデ・リペアで助けに入るシーンは最高でしたね!!


あと一歩、彼女に踏み出せたなら

 

 ホルダーグエル。

 何のホルダーかと言えば、彼はソードアート・オンライン内において極めて希少なユニークスキルホルダーである。

 『神聖剣』のヒースクリフ。

 『二刀流』のキリト。

 『キャンパー』のグエル。

 現在グエル自身が知る限り、3人だけのホルダー。

 ヒースクリフのそれは有名な話であるし、キリトのそれは以前共にキャンプをした時に聞いた。

 二人との違いは戦闘に関しては全く役に立たないという点だ。

 だが、それでもグエルは気にしない。 

 それでもグエルはホルダーであるのだ。

 

 

 

~しゅくふく!~

 

 

 

「うおぉぉぉぉ……こんな……こんなことが……やはりあったのか……!」

 

 アインクラッド第20層フィールド区。

 虫系モンスターが多いその階層でグエルは手に入れたアイテムに震えていた。

 

「ヤンガーコーン! 虫系エネミーに対抗するように自走するトウモロコシ! こいつぁそこそこレアな出現率にも関わらず、大して使えるドロップもなければ食材としても小さなトウモロコシしか落とさず料理にも使えない……」

 

 だが、と。

 グエルはドロップしたばかりの数粒のトウモロコシを天に掲げた。

 

「今なら解る! 俺のキャンパーのスキルなら、このトウモロコシの使い方が……! こうしちゃいられねぇ! もっと必要だ!」

 

 彼は手際よくドロップをアイテムボックスにしまい、同行者に声をかけた。

 

「ミトォ! 乱獲だ!」

 

「……………………なんで付き合ってるんだ私は」

 

 紫の衣を纏い、短い鎌を手にした少女―――ミトは深い溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

「やっぱすげぇよミトは……」

 

「黙れ。なんか馬鹿にされている気がする」

 

 グエルキャンプにて。

 集めたトウモロコシをコトコトと牛乳、生クリーム、香辛料と似こむグエルはミトへの賞賛を口にし、彼女は憮然とした表情で切り捨てた。

 

 ミト。

 ソロプレイヤーであり、低階層を中心に活動する防具・装飾品屋を営む少女だ。

 ただし低階層を中心に活動するにもかかわらず、攻略組最前線に匹敵するレベルとプレイヤースキル、さらには自作の武器防具によって度々難易度の高いボス攻略に助っ人として現れる実力者でもある。

 グエルにしてもその実力とアイテム作成能力に関しては一目置いており、彼の武器『ダリルバルデ』はミトが作ったものだったりする。

 

「全く……貸し1よ。次は私とレベル上げ付き合ってもらうからね」

 

「あぁ、勿論だ。いつも通りだ」

 

「いつもはこんな所で食材集めに乱獲とかしないでしょ……ったく」

 

 グエルとミトの付き合いは長い。

 第一層からボス攻略は行っていたし、かなり早い段階から最前線を離れながらも時折彼は彼女のレベリングに付き合っていたからだ。

 ある理由から目立ちたがらない彼女にとって、最前線でフォローしてくれるソロプレイヤーというのは希少なのだ。

 

「それで? なんか変なユニークに目覚めたっていうけど。料理してるけど」

 

「料理してるんだ」

 

「それは解るわよ。いや意味わかんないけど。突っ込むの疲れるから聞かないし」

 

「ふっ……俺も仕組みは知らんからユニークスキルのおかげとしか言えないがな」

 

「あっそ」

 

 気だるそうに頬杖を突く彼女は興味なさげだ。

 グエルはミトのそういうところを気に入っていた。

 

「よぅし、できたぞ。コーンポタージュだ!」

 

「粉末ならともかく、キャンプでコーンから作るもんなの? 私全然知らないけど」

 

「いや俺もキャンプはこっちで始めたから知らん」

 

「こいつ……」

 

 二人の前に深底のスキレットが置かれ、その中には濃い黄色のスープがある。

 グエルがアンガーコーンからその高レベルのSTRで力任せに潰し、しっかりと越して生クリーム等と合わせまろやかにしたもの。丁寧にクルトンまで入っている。

 

「……ごくり」

 

 ミトが生唾を飲む。

 確かに、これまでSAOで食べたものよりはるかに匂いが良い。

 

「いただきます!」

 

「……頂きます」

 

 とろみのついたスープを口に含む。

 

「…………うまっ!」

 

「ふふふそうだろうそうだろう。いや美味いなこれは」

 

「腹立たしいけど、コーンの乱獲した甲斐があったわね……」

 

 彼女にしては珍しく純粋に感心しながらスープを口にした。

 しばらくの間、コーンスープを飲む音だけが二人の間に流れる。

 

「……御馳走様、素直に感動したわ」

 

「それはよかった」

 

「最初からデフォルトで設定しておけよ茅場晶彦って感じだけど」

 

「わはは。珈琲飲むか?」

 

「えぇ」

 

 珈琲も勿論ユニークスキルでシステムを介さずに淹れる。 

 

「そういえば」

 

「うん?」

 

「キリトとアスナ、コンビ復活したみたいだな」

 

「……………………へぇ」

 

 きゅっ、と。

 受け取ったマグカップを握る手に力が籠った。

 

「ま、やっとって感じじゃないかしら。元鞘よね」

 

「ふむ」

 

「なによ。私がメンヘラしてキレるとでも?」

 

「ちょっとは思った」

 

「アンタねぇ」

 

 憮然としたミトにグエルは苦笑し、そしてミトは息を吐いた。

 もう終わったことを思い返すように。

 

「…………今更よ。もう随分昔のことだし」

 

「キリトのことは嫌いだろ」

 

「嫌いよ、あの男」

 

 口端を歪めながらミトは笑う。

 

「もしも」

 

 彼女は目を伏せる。

 

「もしも()()()……後一歩、あの子に踏み出していたのなら」

 

 口にするのはもしもの可能性。

 一歩踏み出して。

 彼女を助けに行ったのなら。

 

「彼女の隣にいたのは私だった―――――なんて、言うつもりもないわよ」

 

 肩を竦めて彼女は苦笑する。

 

「あの二人は、なんというか。二人でいるべきよ。私やアンタがどうしようと、二人で並んでいるの似合っている? ううん、違うわ。自然……そう、自然なのよ。解るかしら?」

 

「あぁ、なんとなく」

 

「そう、よかった」

 

 グエルは頷き、ミトは小さく笑う。

 

「だから、私はたまにあの子を助けるので十分なのよね。アスナがキリトともう一度コンビを組むのなら、喜ぶべきことだわ。あいつは嫌いだけど、あいつ以外にアスナの隣にいるのは許せない」

 

「屈折してるなぁお前」

 

「うるさいわね。色々あったのよ」

 

「そりゃあ、今生きてるSAOプレイヤーで色々なかったやつなんていないだろう」

 

「アンタは……そうね。25層で色々あったし」

 

「まぁな。ただ、俺は……ある意味じゃあ、今の方が気楽っちゃ気楽かもしれん」

 

「こんなデスゲームの中なのに?」

 

「現実にいた頃は、他人の期待に応えようとするだけの人生だった」

 

 短く、切り捨てる様な言葉だった。

 それ以上は話したくない、というよりもそうとしか言えないからそう言っただけ、という感じ。

 

「それが今じゃ、自由……とは違うが。生き延びる為に、命を謳歌している。不幸中の幸いというやつだ」

 

「楽しく生きることの代償がデスゲームってのはちょっと重すぎるわ」

 

「確かにな。誰も死なない学園生活とか送りたかったよ」

 

「学園生活は基本誰も死なないわよ……」

 

「急に戦争が始まったり……」

 

「男子の授業中の妄想?」

 

「俺だけじゃなかったのか……!?」

 

「知らないわよ」

 

 呆れつつ、ミトは立ち上がる。

 

「やれやれ。考える暇もないけど、帰ったら帰ったで大変そうね」

 

「ふっ……俺はデキる弟がいるからな。俺がいなくてもうまいことやってくれているだろう」

 

「それは嬉しいのかしら、オニイチャン」

 

「当然だ」

 

「ふぅん、いいけど。それじゃあ次は私に付き合ってもらうわ。73層あたりでレベル上げよ。それと今回みたいな料理が食べられるなら、付き合ってあげてもいいわ。でもコーンスープはもういいかな。美味しかったけど」

 

「ふむ。好きじゃなかったか?」

 

「宅配のピザみたいなのがいいわ。結構好きなのよ」

 

「あぁ。悪くない。いいだろう。次のボス攻略には来るか? それこそ今頃キリトとアスナが見つけてるかもだが」

 

「あの子が呼んでくれたらね。キリトがいるなら必要なさそうだけど。ま、武器や防具のメンテはしてあげる」

 

「頼む」

 

 グエルの武器『ダリルバル』はミトが作ったもの。

 そして彼女手製の武器は変形機構を持つ特別製だ。

 知る限りではミトとグエルしか使いこなせないピーキーなものである。

 なんなら、彼女の方がユニークスキル持ちではないのだろうか。

 なんか5層あたりから鎌の変形と鎖を使っていたし。

 

「やっぱミトはすげぇよ……」

 

「黙れ」

 

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