グウェェェェル・キャンプ・オンライン   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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SAOのキャンパー

 

 闘技場。多くの観客。対峙する二人。

 『血盟騎士団』団長『神聖剣』ヒースクリフ。

 『攻略組』ソロプレイヤー『黒の剣士』キリト。

 ソードアート・オンラインにおける二人のトッププレイヤーにしてユニークスキル持ちが向かい合う。

 決闘だ。

 それぞれの目的があり、そのために剣を交える。

 その光景を、ユニークスキルホルダーであるグエルは見据えていた。

 至極、真面目な、ただ真剣さを帯びた顔で。

 自分で淹れたコーヒーを手に。

 

「どうする……キリト・ブラッキー」

 

 

 

~しゅくふく!~

 

 

「それがまさか負けてKOBに入ってラフコフの残党に襲われて撃退して結婚するとはなぁ……」

 

 アインクラッド22層、そのある湖の畔。

 煌めく水面を遠い目でグエルは見ていた。

 言葉通り。

 キリトはヒースクリフとの戦いに負け、さらには殺人ギルドの残党に襲われたが結果的には兼ねてよりの想い人であったアスナと結婚をした。

 殺されかけたら嫁を手に入れた、というのは釣り合うかどうか難しい所だろう。

 それでも弟分に等しいキリトの結婚は喜ばしいものだ。

 アスナだって知らない仲ではない。

 ゲームで、仮想世界だとしても、二人の想いは本物だから。

 

「祝福するぜ……」

 

「グエル」

 

「なんだ……?」

 

「後ろを見ろ。ついでに現実も」

 

「……」

 

 言われて振り返る。

 いたのは苦笑気味のキリト。

 笑いをこらえているようなミト。

 そしてアスナ。

 真剣な、凄みのある顔のアスナだった。

 亜麻色の長髪、動きやすそうなセーターの美少女。

 彼女は真っすぐにグエルに指を突き付けて叫んだ。

 

「―――――決闘よ!」

 

 なんでそんなこと言われたかと言えば。

 別に大した話ではないのだ。

 結婚祝いにグエルはキリトとアスナの新居に訪れた。

 ついでにそのうちとか、いつかとか、生き渋っていたミトも一緒に。

 新婚にお邪魔をするのかはどうかと思ったが、二人は快く招待してくれた。 

 そこまではよかった。

 だが、キリトとグエル。二人のホルダーが集まれば当然ユニークスキルの話になる。

 そんな時、キリトが零したのだ。

 グエルと食べたキャンプ飯がSAOで食べたもので一番おいしかったと。

 そしてミトもまたそれに頷いた。

 一番とは言わなかったが―――認めるのが癪だったので―――それでもキャンプ飯を褒めた。

 そこで納得できなかったのはアスナである。

 アスナはユニークスキル持ちではないしても、料理スキルをカンストさせたSAOにおける一流の料理人と言っていい。

 そして彼はキリトを深く愛しており、ミトも親友だと思っている。

 そんな彼女は自分以上の料理人を認められるわけもなかった。

 今では丸くなったとはいえ、極度負けず嫌いなのだ。

 故に決闘である。

 

「……ふっ、本気かアスナ?」

 

「えぇ! キリトくんとミトの舌を満足させるのはこの私よ!!!!」

 

「アスナさーん? 俺はアスナのご飯に満足してるけど……」

 

「私も別に……」

 

「二人は黙っていて! これは! 私の誇りを掛けた問題よ!!」

 

「えぇ……?」

 

「いいだろうアスナ! この俺! ソロプレイヤー攻略組の! ユニークホルダーの! グエルが相手をしてやる!!!」

 

 

 

 

 

~しゅくふく!~

 

 

 

 

 

「アスナの勝ちで」

 

「アスナの勝ちね」

 

「っしゃ!!!!!」

 

「馬鹿な……!?」

 

 勝負は呆気なく決まった。

 

「そんな……結婚祝いにミトと探してきたラグー・ラビット級のレア食材、ソテー・ダックを特性スパイスで仕上げたというのに……!?」

 

「あ、それは本当にありがとうグエルさん」

 

「あぁ、いいんだいいんだ。――――だが何故!?」

 

「グエル……何も言わずに食べてみろ」

 

「!?」

 

 キリトが差し出したのはチキンサンドだ。

 そう、ただのチキンサンドに見える。

 バンズ、茶色のソースが絡まったチキン、レタス。ごく普通のサンドイッチ。

 ユニークスキルで作ったカモ肉のバーベキューが負けるはずがない。

 そう思いながら、一口。

 

「――――!? こ、これは!?」

 

「そうよ……グエル。それがアンタの敗因よ……」

 

「あぁ……グエル。アンタのソテーもめちゃくちゃ美味かったぜ。カモ肉の風味をしっかり味わえた……カモ肉とか初めて食ったけど」

 

「あ、じゃあ今度作ってあげるねキリト君」

 

「マジ? 楽しみだなぁ」

 

「こ、このソースは――――Soy sauce!? TERIYAKI!?」

 

「無駄に発音がいいわね……」

 

 そう、即ち醤油。それによって作られた照り焼きチキン!

 日本人はみんな大好き照り焼きソースだったのである!

 

「そう、それが貴方の敗因よグエルさん! 確かにシステム的な味の許容を超えた貴方の料理は強烈! でも、SAOに閉じ込められて2年! 誰もが食べたいと願った照り焼き味! この郷愁に勝るスパイスはないの!!!」

 

「くっそおおおおおお!! この大豆加工食品に支配された農耕民族どもがああああああああああ!!!」

 

「アンタ、どこ出身よ」

 

 

 

 

~しゅくふく!~

 

 

 

 

「改めて結婚おめでとう、キリト、アスナ」

 

「ありがとうグエルさん。お祝いに来てくれて嬉しかったわ」

 

 決闘が終わればノーサイド。

 互いの立場を賭けたわけではなく―――ある意味アスナの意地が掛かっていたが――元々敵対していたわけでもないので当然だ。

 キリトは二人を見てニコニコと笑い、ミトは呆れ気味だった。

 

「コーヒーを淹れよう。これは俺がやってもいいか、アスナ?」

 

「勿論。私はどっちかって言うと紅茶派だしね」

 

 そして四人で湖の前でマグカップを握る。

 

「ありがとね、ミト。来てくれて。正直来てくれないかと思った」

 

「そっ……そんなこと、ないわよ?」

 

「グエルさんと一緒に来たのも意外だったよ。何気に仲いいんだ二人」

 

「え? 全然」

 

「えぇ……?」

 

「なぁ、キリト」

 

「うん?」

 

「ぜ、全然なんて好きじゃねーし!」

 

「うおおおおおお!?」

 

「うるさいわよキリト」

 

「どうしたの?」

 

「あはは! いや、何でもないよ! グエル! ちょっとこっち来い!」

 

「いいだろう!」

 

「なんで偉そうなのあいつ」

 

「さぁ」

 

 二人から離れた所にグエルを連れたキリトの顔は赤い。

 

「お前……! お前………………恥ずかしいからやめてくれ」

 

「くくく……俺の言った通りだろ?」

 

「あぁ……全くだ。あんなセリフ、絶対好きってことだよな」

 

「あぁ!!」

 

「はっずいなぁ」

 

 ぱたぱたと、そっぽを向きながらキリトは手で顔を仰ぐ。

 

「だがまぁ、安心したよ。結婚は驚いたが、それでも……あぁ、よかった。お似合いだ。何度でもおめでとうと言わせてくれ」

 

「グエル……へへっ、さんきゅーな」

 

 こつんと男二人は拳を突き合わせた。

 

「次はグエルの彼女探そうぜ」

 

「俺に見合う女がいないのが問題だな」

 

「SAOをクリアするのとどっちが速いか賭けるか?」

 

「へぇ、おもしろい。お前は何を賭ける?」

 

「現実で飯をおごるとか」

 

「ほう、悪くないな。だが……そうなると、かなり俺が有利だ」

 

「へぇ、自信あるのか?」

 

「というか、現実に婚約相手がいたからな」

 

「…………………………はぁ!?」

 

「と言っても、家同士で決まった相手で別に仲がいいわけでもない。SAOがあってどうなっているかもわからんし」

 

「まじかー。お前マジでお坊ちゃまなんだな」

 

「ふっ……褒めるな」

 

「いや、まぁ、褒め……褒めてないわけではないけど……」

 

「キリトくーん! グエルさーん! いい加減戻ってきなよー! デザート食べよー!」

 

「おー、今行くー! グエル、戻るか」

 

「いいだろう」

 

 並んでアスナとミトの下にキリトとグエルは戻っていく。

 デスゲームで、仮想世界だけれど、今この時の楽しさは街がなく本物だった。

 ゲームではあるが、遊びではない。

 SAOを作った茅場晶彦はそう言った。

 悔しいが、それは真実だ。

 誰もが遊びではなく本気で生きているのだから。

 

「しばらくは休暇だけど、ちゃんとSAOもクリアしないとな」

 

「だな。なに、問題ない。俺は未来を信じているからな」

 

「へぇ、どんな未来だ?」

 

「誰も死なない! 平和な! こうして愉快なキャンプができる祝福に満ちた未来だ!!!!」

 

 

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