13話を投稿させて頂きます。
今話の語り手は、ぼっちちゃんではありません。
夜の時刻は冬ではないかと思える程に肌寒い日々だけど、朝日が昇った時には少し暖かくなっていて、外に出れば舞い散る桜の花びらが私の近くまでにひらひらとそよ風に流されるままに落ちて来ていたから、それを掴んだ私はもう新しい春が訪れて来たんだと感じると共にあることを思い出していた。
それは、私の思い出の中に在る小学校に上がった頃の話。
あの時も桜の花びらが落ちて来たところから、私は春の訪れを感じながらも私はとある場所へと向かって行った。
と言っても、私一人ではなく、小学校の集団登校の班のリーダー鳩ヶ谷おねーさんと一緒だったのは幼かった私でも記憶に残っている。
そうして、私はしんちゃんの家に着いたけど、先ずは班のリーダーである鳩ヶ谷おねーさんが先に入っていったことも覚えている。
そこで、鳩ヶ谷おねーさんは、
「おはようございます!!アクション小学校6年1組、そして地区別集団登校B町13地区班長の
とみさえさんに伝えていた。
それを聞いたみさえさんは「きょうからおせわになります。」と丁寧に返していた。
それを聞いた鳩ヶ谷おねーさんは、ウチの班は10年連続で遅刻者を出していないという伝統を守りたいとみさえさんに言うと、みさえさんは焦りながらしんちゃんを呼びに行った。
……でも、数分経ってもしんちゃんが現れないことに苛立っているのか鳩ヶ谷おねーさんは足をパタパタさせていた。
それを見た私は、自分から前へ出ることにした。
「私!呼んでくるー!!」
「あっ!コラ、ふたりさん!!」
自分から前に出る。……それは、しんちゃんの家に勝手に上がり込むことでもあった。
それを見た鳩ヶ谷おねーさんは私を止めようとするけど、私としてはこのまましんちゃんと一緒に並んで歩く時間が少なくなるのが嫌だからという自分勝手な理由だったけど、幼い私は無遠慮に上がり込んで行った。
「みさえさん!お邪魔します!」
「って、え?…ふ、ふたりちゃん?」
勝手に上がり込んだ私を見たみさえさんは私に困惑するけど、そんなことはお構いなしにズカズカとしんちゃんの居る部屋へと入る私。
……いや、まだ小学生だったからこんな行動が取れたのだろうから許して欲しい。……今にして思えば、物凄く恥ずかしい。
「みさえさん!私が時間割りどおりに入れますから、しんちゃんにご飯を食べさせてください!!」
「…う、うん?……ふたりちゃん。しんのすけの教科書が何処に有るか知ってるの?」
「はい!全部知ってます!!」
「……そ、そう。(……何で知ってるんだろう?)」
こうして、しんちゃんの教科書が何処に有るかを知っている私にみさえさんは不気味さを感じながらもしんちゃんにご飯を食べさせていた。
「……色々ありましたが、では、きちんと整列して下さい!!出発します!!」
そうして、私としんちゃんが一緒に小学校に行けるようにしたのであった。
――――鳩ヶ谷おねーさんを先頭に並んで歩いていた私は前に居るしんちゃんに話しかけるだった。
「今日から小学校だね。」
話の内容は当たり障りの無い話題。通うことになる小学校の話題だった。……そうして、しんちゃんも私と同じクラスだったら良いなと言おうとしたとき、
「いやー、これでは先が思いやられますな。」
としんちゃんは返すのであった。
そのため、しんちゃんの声に反応した鳩ヶ谷おねーさんは「こっちのセリフです!!」と叫んでいた。
「それと、しんのすけくんとふたりさん。私語は慎むように。」
それだけでなく、私達の班長でもある鳩ヶ谷おねーさんにそう言われると、私はしんちゃんと話すことができなくなり、しんちゃんに「同じクラスだと良いね。」が言えなくなるので、それだけで私は寂しさを感じるのであった。
……話せなくなったけど、それでもしんちゃんの後ろ姿を見ながら、そして少しでも長く並んで歩けるのであれば、それはそれで良いなと思えた。
そうして、私はしんちゃんの後ろ姿を見ながら、私としんちゃんの初めての出逢いを思い出していた――――。
――――――――
――――
それは、私がお父さんの会社の都合で、地元の金沢区から春日部へと引っ越すことになり、おねーちゃんは違う中学に転校。そして、私は前の幼稚園と友達だった“まちちゃん”と“はるちゃん”の居ないふたば幼稚園に通うことになった。
……周りに知っている子が居ない。
それだけで、こんなにも心苦しく、心細い物だったとは思わなかった。
それだけでなく、私は“人の痛みが分からない子”だったために、その心細さと心苦しさを乗せた言葉をよく周りの子達に言っていた。
……つまり、あの時の私は人の癇に障ることを平然と、それも隠すことなくストレートに言う子供だったのだ。
このまま育てば、私のおねーちゃん……後藤ひとりという私の自慢のおねーちゃんに『おねーちゃん、ひとりも友達居ないもんねー。』とか言って笑い飛ばす酷い子になっていたと思えるほどに。
それ故に、私は目を付けられることになる。……要はイジメの標的にされたのである。
私は今まで、人の悪意というものに晒された経験が無かったがために何故そうなるのか分からなかった。だから、私はどう対処すれば良いのか分からず、ただ黙って受けるしかなかったから、私は「もう、ふたば幼稚園に行きたくない。」とつい言ってしまった。
……でも、それを聞いたお父さんとお母さんが悩んでいるのを見ていたら、どうにかして行かないとダメだと思ったから、私は頑張って通い続けていた。
……けど、苦しい気持ちは変わらなかったから、私は精神性の腹痛でふたば幼稚園のトイレに行ったのであった。
そうして、私がおトイレから出たとき……、
「オイ、何か臭くねーかぁー?」
「コイツがおトイレから出て来たからじゃねえのー?」
と私を嘲って来たのである。そう言われた私は……逃げるしかなかった。
「待てよー、おトイレマーン!!」
そうして、反応を面白がった子達は私を追いかけて、
「「よっ、おトイレマン!!」」
と言って嘲るのであった。私は女性なのに、おトイレマンというのはおかしな話だけど、子供はそういった違いは気にしないのだろう。
……でも、そう言われた私は相手を上手く言い返す頭が無かったので、精々おトイレマンじゃないって言い返すぐらいしか出来なかった。……けど、その反応を面白がった子達は直ぐにおトイレマンだのと言い返され、私は思わず悔しくて、悲しくて涙を流して……その場から逃げるように走り去るしかなかった。走り去って、木陰に隠れて、ひとりで泣くしかなかった。
……何で私ばかりこんな目に遭うんだろうとすら思って、そんな無情な世界を恨んでいた。……そんなとき、
「いーなー、カッコイイな~。おトイレマーン!!」
私は、しんちゃんと初めて会う。
……おトイレマンはカッコイイと言いながら、それを聞いた私は、
(え?……なっ、何?コイツ?)
しんちゃんのことを心の中でコイツ呼ばわりして、警戒しかしなかった。
というより、あの時は普通に煽られているとしか思えなかった。……だって、嫌いなおトイレマン呼ばわりされれば、誰だって嫌いになるとは思う。
「……な、何か用?……からかいに来たの?」
そのため、私は初めて会ったしんちゃんにイライラとして、つんけんとした態度で接するのだった。
「ねぇねぇ、キミキミ。どうしたら、おトイレマンになれるの~?ねえ、教えて教えて~!!」
それだけでなく、あの時のしんちゃんは私におトイレマンになる方法を教えて欲しいと何食わぬ顔で聞いてきた。
今、正直に言えば、あの時の私はしんちゃんのことが嫌いだった。……というよりも、イジメられて嫌いな人間ばかりだったから、しんちゃんのことも無条件で嫌いになったのだ。
「……そんなの簡単だよ。幼稚園のトイレに行けばすぐにそう言われるよ。……でも、私みたいにイジメられたくないでしょ?なら、辞めといた方が良いと思う………アレ?」
でも、私はしんちゃんに対して、イライラの感情をぶつけつつ、そして投げやりな態度でそう返すと、既にしんちゃんが居ないことに気付いていた。……もしかしてと思った私は、直ぐにあの子を探すのであった。
何故かは分からなかったけど、必死で探してしまっていた。
別に、前の幼稚園で友達だったまちちゃんとはるちゃんみたいに仲が良い訳でもないし、私にとってギターばかりをやっているおねーちゃんや愛犬のジミヘンのような存在でもない。
……だけど、何故かは分からないけど、何故か私はしんちゃんを探し回っていた。
「とりあえず、コイツもおトイレマンだな?」
「ああ、おトイレマン二号だ!!」
すると、既にトイレの前で、あの子は……しんちゃんはおトイレマン二号と言われ、からかい……いや、イジメの標的にされている所を見てしまった。
止めないといけないと思った。先生を呼ぶべきだと思った。けれど、報復されると思うと、足が竦んで動けなかった。
ただ、イジメられた時のことを思い出してしまって足が前に進めなかった。
私の足は恐怖に負けて、前に出れなかった。けど、あの子……しんちゃんは、
「おおっ!おトイレマン二号!!ありがとう、そう呼んでくれるんだね!?」
「「うええええ!!手を洗えよきたねぇな!!」」
イジメが苛烈になることを恐れている私とは対照的に、おトイレマン二号と呼ばれることに全く気にしていないようだった。
……バカらしい。それを見た私はそんなことを思いながら、彼等と離れるように距離を取るようにトボトボと歩くのだった。
……もう、まちちゃんとはるちゃんが居ないこの幼稚園には行きたくない。そんなことを考えていたら、
「ワーハッハッハッハ!!!」
あの子、しんちゃんが変な被り物と多分トイレットペーパーをマフラーに仕立てて、走り回っている姿を見た。
……本当に何やっているんだろう?としか思えなかった。
「おトイレ、おトイレ、おトイレマ~ン!白いマフラー靡かせて~、白い便器に跨った~~オラは正義のおトイレ~マ~ン!!」
だけど、おトイレマンと呼ばれることに嫌悪感しか抱かなかった私とは対照的に、しんちゃんは恥ずかしがることなく、みんなの目の前でおトイレマンを正義の味方のように言っていた。……いや、言ってくれていた。
「ワーハッハッハッハ!!!」
そうして、しんちゃんがおトイレマンをやっている時に、それを見た人は、
「しんのすけの奴、何やってんだ?」
「ホント、バカみたい。」
と言っていた。……だから、私は言おうとした。私を助けてくれるためにやってくれたんだと……けど、あの時の私にそれを言う勇気が無かった。
精々、嵐に怯えてる弱い生き物のフリをして、その嵐が過ぎ去るのを待っていることしか出来なかった。
だから、私は何も言えなかった……。下ばかり見るように俯くしかなかった……。でも、
「なんだか、カッコイイ!」
という声が聴こえたから、私はつい反応してしまい、顔を上げてしまった。………すると、
「おトイレマン二号!ただいま、参上!ヘーイ、みんな、おトイレ行ってるか~い?ぶっといのやってるか~い?」
顔を上げた先には、しんちゃんの呼びかけに幼稚園の男児達は「おーっ!」と反応していた。
……何時の間にか、おトイレマンという嘲笑のために創られた存在は、私の目の前で正義の味方へと変貌していたのだ。その光景を見た私は衝撃しか感じなかった。感動しか感じなかった……。
「よ~し!なら、おトイレに向かって突撃――――!!!!」
そうして、しんちゃんの……いや、正義の味方となったおトイレマン二号の号令に従って幼稚園の男児達はトイレへと一斉に向かって行った……。
「バッカみたい。おトイレマンなんて………。」
「そうよー。やーねー、お下品だわ。」
だけど、男児達には人気でも、女児達には冷たい反応しかなかった。
……だから、私は言おうとした。『違う、おトイレマンと言われた私のために頑張ってくれたんだ。』とみんなに説明しようとするけど、私が“人の痛みが分からない子”と幼稚園の子に言われたことを思い出したため、しんちゃんを助けようとする言葉を出すのが怖くなって、私は一言も発することができなかった。
「ハイヨー!!黒磯ーーーー!!!!」
すると、もう一人の子のあいちゃんが、
「美少女戦士!おトイレウーマン参上!!」
(お…おトイレウーマン!!?)
トイレットペーパー……いや、白いリボンだと思う物を新体操のリボンの様にくるくる回し、黒磯さんが持ち上げているお台に乗りながら、おトイレウーマンと名乗って、参上していたのだ。
そのことに私は衝撃を受け、固まっていた。
「あいは……あいはしん様のお仲間です~♡……黒磯!」
「ハイ!」
「Let's Go~!!」
あいちゃんはそう言うと、黒磯さんが持ち上げているお台の上に乗りながら、颯爽とおトイレに向かって行った……。
「か、かっこいい……。」
私は、そうボソッと呟いてしまった。……それ故に、
「あたしも、おトイレウーマンになる!!」
ある一人の女児が……いや、隠さなくても良いだろう。ネネちゃんがおトイレウーマンになると言って、トイレへと向かって行った。
「あたしもー!!」「あたしもー!!」
それを見た女児が、一斉におトイレに向かって行った。それを見たイジメっ子達も、
「「オーイ!俺達もトイレに入れてくれー!!!」」
おトイレに向かって行った……。
それを見ているだけしか出来なかった私、すると、
「オーイ!初代おトイレマーン!!みんなに紹介するから、こっちに来て~~。」
しんちゃんに手を掴まれた私は、「えっ?」と言っていた……と思う。
そして、しんちゃんに手を掴まれた私は、その手を払いのけることもせず、ただ掴まれた手に導かれるままにしんちゃんの後ろに並んで歩いていた。
「……あ、あの、しんのすけ……って言うの?」
だからなのだろうか、私は初めて、このふたば幼稚園で園児の名前を聞いた。……初めて、この子の名前を知りたかった。
「おっ?そうだゾ〜、オラはしんのすけと言うんだゾ〜?」
「!……そ、そうなんだ。」
そうして、しんちゃんの名前を聞いた私は、
「……あっ………ありがとう…………。」
しんちゃんに掴まれた手とは別の手を自分の胸辺りまで近付けるとギュッと握りながら、小さく微笑んで、小さく……しんちゃんの耳には届かない声で感謝の言葉を口に出していた。
そして、小さい微笑みと言葉とは対照的に私の心臓の鼓動は私のおねーちゃんのギターの様にかき鳴らされていた。
「え~、ではみんなに初代おトイレマンを紹介したいと思います。ふたりちゃん、どうぞ。」
そうして、すべり台の上まで連れて行ってくれたしんちゃんに初代おトイレマンと紹介されたけど、一つも嫌な思いをすることなかった。……そして、私はしんちゃんの隣に居て、しんちゃんのお陰で正義の味方になった"おトイレマン"として私は立っていた。
すると、おトイレマンとして現れた私を見たみんなは、拍手でもって出迎えてくれていた。
「……え、えっと、……た、ただいまご紹介に預かりました……初代おトイレマンの…後藤ふたりです。」
私がそう言うと、みんな「いーぞー!おトイレマーン!!」と言ってくれた。……だから、私は、
「……えっと、えっと、僕達…私達……おトイレマンはおトイレに行きたくなったら何時でもおトイレに行けて、また恥ずかしくておトイレに行けない人達を助けましょう!」
そうして、しんちゃんのことを思い出しながら、
「……それが、正義の味方のおトイレマン……なのです!!」
しんちゃんのことを横目で見ながら、おトイレマンが正義の味方であると言えた。
こうして、私は"おトイレマン"として暫くは有名になり、人の痛みが分からない子と言われなくなっていって、そしてイジメられることも無くなった。
ぼざろを最初見た時、結束バンドで活躍するぼっちちゃんとは対照的にふたりちゃんはどうなるんやろ?と考えていた時にしんのすけと同じ5歳児であることに気付きました。
最後に炎神の剣さん、しやぶさん、you94さん、ヒルドルブさん、高評価ありがとうございます。