幼馴染が主人公っぽかったので俺はライバル枠に収まることにする   作:アウグスティン

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明けましておめでとうございます(遅)


7話

「俺と一緒に最強を目指さないか」

 

 簡単に触発された俺は翌日、早速ポケモンの勧誘に来ていた。

 まだボールも持っていない俺だが共に旅する仲間を探すくらいのことはしていてもいいだろう。なんて思って草むらに繰り出したわけだが。

 

「ぐるぐる」

「あんま乗り気じゃないかな?」

 

 この間木の実をくれたグルトンを見かけたので声をかけてみたものの、あまり反応はよろしくない。まあこの辺はゲームで言えば序盤の町ってレベル帯だ。

 そこまで勝負が好きなわけじゃないんだろう。

 

 この子を誘うのは諦めて、もはや定位置のようになった木の根本へと向かう。座った俺の足に、トコトコと付いてきたグルトンが乗っかった。

 撫でてやると目をトロンとさせて、すぐに寝息を立て始める。

 これはなかなかなかなか大変だな。仲間集めが進む気がちっともしないぜ。

 

 身近なところに戦いたがりのポケモンがいなさそうってのもあるが、図鑑を見る限り魅力的な子も多いんだよなぁ。

 この間見たドオーやリキキリンだってビジュアルがよかったし、あのキリンリキが進化した姿ってだけでなんかもう面白い。

 尻尾に頭を食われて進化ってなんだよ。あ……ヤドキング……、なんで前例があるんだ。

 ポケモンの層の厚さを感じるな。

 

 まだ見ぬパルデアのポケモンたちに思いを馳せていると、次第に見慣れた奴らが集まってくる。

 

「お〜、なんだ? 俺と旅してくれるのか?」

 

 タマンチュラは知らないが、ヤヤコマはファイアローの進化前だし、ハネッコは風に流されて旅をするポケモンだ。

 一緒に居てくれるってんなら心強い、心づよ、心。

 

「あ、ちょこら、集まっ、集まりすぎ! 重いって!」

 

 じゃれつく攻撃。レトは倒れた。

 見かけよりは力のある俺だが、体格の問題で支えきれずに押し倒される。

 宙に羽ばたいて避難していたヤヤコマが頭に降りてきた。もう好きにしてくれ。

 

「懐いてくれるのは嬉しいけど加減しろよ、潰れちゃうだろ」

 

 トドメになった二匹目のグルトンを持ち上げる。わりと重いんだよな、こいつら。

 足をパタパタさせるその子を横におろしてやった。

 

「あっ! トレーナーのひとだ!」

 

 と、声が聞こえてきた。

 寝そべったまま声の方へ顔を向ける。なにやら子供たちがはしゃいでいた。

 トレーナーってのはポケモントレーナーのことか。俺も一目見ようと辺りを見渡す。

 

「ねえねえ、この子たちさわっていい?!」

 

 なんでこっち来んだよ、トレーナーのとこ行けよ。

 

「別にいいけど蝶よりも花よりも優しく扱えよ」

 

 ポケモンたちを子供らに預ける。なんだか見たことのある三人組だな。昨日この辺で遊んでた奴らか? 

 麦わらを被ったむしとりしょうねんの幼体みたいな子。タマンチュラに惹かれるのかしゃがみこんで視線を合わせている。

 グルトンを抱えてふらつくこいつは短パン履いてるからたんぱんこぞうの幼体だろう。

 ハネッコを抱きしめているのは……ポケモンごっこの幼体、かな。幼女のキャラが他に思いつかなかっただけだが。

 どういう集まりなんだろうか。ご近所付き合い? 我々ハブられてる? 

 

 まあそれはいいや。

 

 そんなことよりもトレーナーだ。知り合いって呼び方じゃなかったし、見た目でわかるはず。ベルトにモンスターボールぶら下げてるとか。

 

「……いねぇ」

「なにかさがしてるの?」

「トレーナーの人」

「? ちょっと待っててね」

 

 そう言ってちびっ子はハネッコをおろし、首から下げていたポーチを漁り、手鏡を取り出す。ピンク色した子供用のおもちゃだ。

 

「はい」

「これをどうしろと」

 

 鏡に中の世界でもあるのだろうか。ファンタジーやメルヘンが有り得る世界だし。

 いろんな向きに傾けながら鏡を覗き込んでみる。当然のように変わった現象なんて起こりはしない。俺の顔が映るだけだが、こうしているうちに一つ思いついた。

 

「もしかしてトレーナーの人って俺のことか?」

 

 前もやった気がするな、このやり取り。そんなトレーナーに見えるのか俺。

 

「え? ちがうの?」

「違うよ。こいつらはみんな野生のポケモンだ」

「かむ?」

「噛まない噛まない」

 

 少女に抱えられてゆるゆるな表情になっているハネッコに手を伸ばす。

 パクっとハネッコが俺の指を甘噛みした。

 

「ぎゃあ! 噛まれた!」

 

 面白半分で悲鳴をあげてみる。

 

「ひゃああっ!!」

「はっはっは」

 

 投げ出されたハネッコを受け止めた。あむあむと喰まれ続ける指を引き抜く。

 

「う、ぉぉおお! や、やるのか! やるのか?!」

「か、かかってこーい!」

「あっはははは」

 

 ファイティングポーズをとる少年たち。

 よくわかっていない様子で口をモゴモゴさせるハネッコ。

 笑い転げる俺。

 後でめちゃくちゃ怒られた。

 

 ■◆■

 

 長い付き合いになるかと問われればそんなことはない。

 俺は初対面の相手とはそれなりに話せるが、知り合ってからはうまく話せなくなる男。なんとなく波長が合うネモとの会話でマシになりつつあるものの根っこは変わらない。

 ネット上の知り合いと通話しながらとか、そういうのはやらないタイプのゲーマー。

 また草むらで見かけてもこっちから声をかけることはないだろう。

 

 なぁんて思っていたんだがポケモンが俺のところに来ちゃうせいでこいつらも寄ってくる。砂糖になった気分だ。

 でも外を出歩くのを控えない辺り、俺も楽しんでいるんだろうよ。

 

「今日は昼過ぎから雨ロト〜」

「はいは〜い。早めに切り上げて帰ってくるよ」

 

 雨だって言われても出かけるくらいだしな。

 理由のほとんどはポケモンに会いにだが。

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