幼馴染が主人公っぽかったので俺はライバル枠に収まることにする   作:アウグスティン

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活動報告の方に感想にあったifルート置いておきました。
一週間くらい前ですが……。
ポケカが悪いよポケカが。


10話

 いつになくしっかりと目を覚ました。そうしてまず真っ先にカーテンを開ける。

 そんな習慣は持っていないのだが、今日は特別だ。

 空はまだ薄暗いものの天気は良さそうである。よかったよかった。めでたい日なんだ、天気もいいに越したことはない。

 

 ゲームにおいてはだいたいどの世代においてもトレーナーズスクールという施設があった。ガラルにはあったっけ? なかった気すんな。

 ともあれ序盤の方の街で開かれていることの多いこの施設は、その名の通りにトレーナーを育成するためのものであり、タイプ相性や状態異常など、ポケモンというゲームの基礎知識を教えてくれる場所だった。

 

 まあ慣れたプレイヤーにとってはあまり意味のある施設ではなかったかな。塾みたいなサイズの建物がポツンと立ってるだけで、ストーリーに絡んでくることもなかったし。

 

 しかしここパルデアでは違う。

 今日から俺が転入することになっているトレーナーズスクール、オレンジアカデミーは超巨大だ。

 文字通りのマンモス校、もといマンムー校。幅広い年代を生徒として迎え入れているトレーナー養成校だ。

 そのデカさたるやアカデミーを中心に街が出来ているほどである。学園都市かな? 

 

 なんか何ヶ月か前に教育体制を一新するためとかで教職員を総入れ替えしたらしいし、きっとより新しく、より楽しくなった学園生活が待っていることだろう。

 期待を胸にベッドでぐでーっと眠りこけるパモの体を揺する。

 

「起きろーあーさだぞー」

「ぷゃぁ」

 

 奇妙な鳴き声とも言えない声を上げた。

 すっかり馴染んで野生の欠片もない姿である。

 セグレイブとの戦いの後、俺はこいつを旅に誘った。友情かなんかが芽生えたと思っていたのは俺だけではなくパモもそうだったようで、快く提案を受け入れてくれて今に至る。

 しかしまあ気持ちよさそうに寝やがって。

 お腹に顔を埋める。柔らかな毛並みと薄く残るシャンプーの香りが、すぅ〜はぁ〜。

 

 起きたパモがモゾモゾと俺の手から逃れようと藻掻く。バチンと寝ぼけたまま俺に電気を流してきた。

 

「あ痛ぁ!」

 

 可もなく不可もなし。いつも通りの威力である。不調がないようでなによりだ。

 

 パモも起きたので準備をすることにする。

 リュックの教科書を確認し、アカデミーの制服に袖を通す。腰にはホルダーを巻いて、大事に飾ってあったモンスターボールの埃を払って取り付けた。

 よぉし、どこからどう見てもポケモントレーナーだ。ホルダーがスッカスカなのはご愛嬌。

 

「もう着替えてきたの? 気が早いわねぇ」

 

 リビングに向かうと母にそう言われた。

 

「そりゃあもう楽しみすぎて眠れないくらいだからね。準備はバッチシ」

「それじゃあついでに髪も整えておいで」

「あ〜い」

 

 電気で逆立った髪を直す。超パルデア人2ってとこかな。これの手入れも慣れたものだよ。

 飯食って、歯磨いて、朝の雑事をこなして時間を潰す。

 時計の動きが妙に遅く感じられたが、ともあれ約束の時間が近づいてきた。同時期に転入するネモと一緒に登校することになっているのだ。

 

 早めに出ろとネモに言われていることだし、そろそろ出発しようか。荷物を持って立ち上がる。

 

「じゃ行ってきます!」

「レト、ちょっと待って……はいこれ、入学祝い」

 

 何かを頭に被せられる。取って見てみるとオレンジ色したキャップだった。

 おお! 帽子だ帽子! 主人公っぽさあってテンション上がるなぁ、これ! どっち向きで被ろうか。

 

「そんなに気に入った?」

「超気に入った! 大事にするよ」

「あはは、うん。そうしてね。じゃあ改めていってらっしゃい、気をつけてね」

 

 帽子を前向きに深く被る。パモが肩に飛び乗った。

 

「落ちんなよ」

「パモっ」

「オーケー、しゅっぱ〜つ!」

 

 ■◆■

 

 コサジの小道に出ると遠くに人影が見えた。見慣れた黒髪だけれど服装が違うな、誰だろう。

 

「あ、レト! おはようござ……じゃなくておはよう!」

「おはよう」

「パモ」

「パモもおはよう」

 

 ネモ、ネモか? 前髪だけ緑だしネモだよな。

 服違うのは、そりゃそうか。俺だって制服着てるもんな。男女どっちもズボンなのか。

 

「口調どうしたんだ? 学校デビュー?」

「ポケモントレーナーになるのに敬語のままじゃ締まらないかなぁ、と思って」

「なるほど。似合ってるよ」

 

 普段との雰囲気がだいぶ違っていて違和感あるけれども。

 

「ありがとう。後は実力がついてくれば」

「ははは。がんばれ」

 

 それは自分でなんとかしてくれ。

 

 アカデミーはパルデア最大の街、テーブルシティに建てられている。

 俺の故郷であるコサジタウンからは二つ隣の街だ。道なりに走っていって南一番エリア。隣町に繋がる道でもある。

 少し離れるだけで生態系はガラリと変わるもので、ご近所さんたちとはぜんぜん異なる顔ぶれが揃っていた。

 

「見てコダックだよコダック! かーわいいなぁ」

 

 例え火の中水の中。水遊びするポケモンたちにじゃれつこうと川めがけて突き進む。

 

「これから学校なんだから水に入ろうとしないでください」

「はい」

 

 決意表明から数分、もう敬語が出てきたネモであった。

 ゲームならどれだけ寄り道しても問題ないだろうが残念なことにここは現実だ。さすがに水場に突撃するのは辞めておいたほうがいいかもしれない。

 泣く泣くこの場で戯れることを諦める。

 

「あ、ププリン」

「レトー」

「はい」

 

 たしなめられた。

 いやまあ、日頃ふざけ倒しているだけで、これでも俺は転生者。見た目通りに子供というわけではない。

 俺がフラフラと寄り道していくことを考慮して早く来いとネモは言っていたんだろうけれど、間に合うと思っているからふざけているわけで。

 時間がないなら寄り道はしないって。たぶん。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 お、ラルトスだ。人気あるのも納得の見た目、遠目にも愛くるしい。

 黄色いわんこは確かパピモッチってやつだ。パンの犬とかすげぇポケモンだよ。

 黒いウパーもいる。こんな近くにも住んでたのかドオーの進化前。

 

「……ふぅ……ふぅ……」

 

 あっという間にすれ違って、後ろに流れていくポケモンたちを目で追う。

 そうこうしている間に隣町、プラトタウンだ。鮮やかな石造りの家が並んだ、小さいながらも華麗な町である。

 

「ぜぇぜぇ……」

「大丈夫か? ネモ」

「だいじょうぶ……だいじょうぶ……だいじょうぶじゃない」

 

 ポケモンセンターに立ち寄り、備え付けの椅子に座るネモ。

 体力ないなぁ。

 オレンジアカデミーは寮があるから毎日この道を登下校するわけじゃないけども、確かパンフレットによればアカデミー自体、前世準拠ならヤバげな立地にあったはずだ。

 果たしてネモは通い続けることができるのだろうか。

 というかもしかして出発時間を早めたのって、ネモ自身の体力が理由だったのだろうか。

 

 ネモが復帰してくるまで時間かかりそうだな。さて。

 

「よーしよしよし」

「わんわん!」

「はっはっは。そこはパピって鳴いとけよ」

 

 犬だぁ。思ったより犬だよこの黄色。なんかパンの匂いもするし。ちょっと齧ってもいいかな。

 わしゃわしゃとパピモッチを撫で回しているとパモが肩から飛び降りて、こちらを見上げてくる。回復したらネモが呼びに来るだろうし、このまま遊んでやることにした。

 

 ■◆■

 

「おまたせ」

「意外と早かったな」

「そんなことはないですけどね」

 

 ネモもとりあえず動けるようにはなったみたいだ。屈んだ状態から立ち上がる。

 

「ぷぷりる?」

 

 俺の動きを追ってププリンが顔を上に向ける。そうしてそのまま後ろに転がった。

 

「あはは。気をつけろよ〜」

 

 笑いながらププリンを立たせてやる。パモを肩に戻して道の先に向き直った。

 

「さあもうひとっ走りいこうか」

「……うん」

「荷物持とうか?」

「お願い」

 

 プラトタウンの中を通り抜ける。道は二本あったが、どちらもテーブルシティへと繋がっている。

 緩やかで長い坂道を登り切ると大きな門が見えてきた。

 

「やっと……テーブルシティについた!」

「お疲れ様〜」

 

 ギシギシと門が開いていく。

 どっかに人がいるのか、この古めかしい見た目で自動ドアなのか。

 ともあれ目的の街に到着した俺たち。

 さあ、後は。

 

「パルデア最大の街の反対側まで行って長ーい階段登ったらアカデミーだぞ」

 

 門からまっすぐ、歴史ある街並みのそのまた先に、遠く見えるのは一際大きな城のような建造物。

 遠目にも結構高いところに建っている。

 ちなみにエスカレーターやエレベーターはないらしい。




「一緒に冒険しよう!」
「パモ」
「ヤダ! 聞こえなかった! 一緒に冒険しよう!」
「パモ」
「うなずいてくれるまで負けない! 一緒に冒険しよう!」
「パモ」
「え! 俺たち相棒だよね!?」
「パモ」
「相棒!?!?」
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