幼馴染が主人公っぽかったので俺はライバル枠に収まることにする   作:アウグスティン

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11話

 息も絶え絶えなネモを引っ張るようにして階段を登りきる。ファンタジーRPGで出てきそうなトンガリ屋根のお城のような校舎だ。

 見慣れない顔だからか、ネモが疲弊しているからか、多少視線を集めながらパモをボールに戻して校舎へと入った。

 

 正面玄関からすぐのところにあった受付で校長室の場所を聞いて向かう。転入にあたって、なにやらやることがあるらしい。

 転入なんて前世含めても初めての経験だから知らないんだが、こういうのって校長直々にやるんだなと少し驚いている。

 

 重たそうな木製の扉を開けると、白髪のおじいさんが座って待ち構えていた。

 資料で見た校長だ。スラリとした体格にメガネをかけたやり手っぽい老人である。もっと言うなら頭脳派の黒幕っぽい容姿。

 

「おや。来ましたか」

 

 優しげな声の彼は椅子から立ち上がるとこちらへ向かってきた。

 

「ようこそ、オレンジアカデミーへ。あなた方を歓迎します。早速ですが事前にお渡しした教科書などは持ってきていますか?」

「はい。カバンの中にちゃんと入ってますよ。ほらネモ。荷物返すぞ。持てるか?」

「大丈夫、ありがとう」

「仲がいいようで何よりです。さて、実は他にもう一つ、これから入学するあなた達に渡さなくてはならないものがあるのです」

 

 そう言うと校長は三つのモンスターボールを取り出した。さすがに室内でポケモンを出すことはせず、ボールを机に並べる。

 

「アカデミーに入学する生徒にはポケモンを渡す決まりとなっているのです」

 

 くさねこポケモンのニャオハ。

 ほのおワニポケモンのホゲータ。

 こがもポケモンのクワッス。

 

「みずがもではなくて?」

「クワッスさんはこがもポケモンですよ。この中から一匹、パートナーとなるポケモンを選んでもらいます」

 

 屈んでボールに目線の高さを合わせる。

 おぉ~、御三家だ。パルデア地方の御三家! 

 ボールのカバーからうっすらと姿が見えているが、どの子もかわいいなぁ。悩ましい! 

 

「あの、校長先生」

「どうかしましたか?」

「わたし、この子を連れているんです」

 

 モンスターボールを取り出すネモ。え。

 

「お前いつの間に」

「あはは。後で勝負しようね」

 

 クスクスとこっちに笑いかけると、ネモは校長に向き直る。

 

「それで、この子のお世話だけで今は手一杯なので遠慮します」

「わかりました。レトさん、あなたはいかがですか?」

 

 それアリなのか。

 しかしどうしたものかな。いやもうネモを無視して誰か一匹連れていきたいところではあるんだけど。

 しばらくはパモだけでってのも悪くはない。

 

「ちなみにここで貰わなくても、また後でってできます?」

「ええ、構いません」

「三回貰いに」

「それはダメです」

 

 残念。

 

「じゃあ俺も遠慮しときます。絶対、絶対にまた迎えに来ますから」

 

 名残惜しいが後回しにすることにした。

 ネモが隣でこの子に集中したい、みたいなこと言ってるのに、じゃあ俺は貰う〜、とは言えないって。

 校長がモンスターボールをしまう。

 あ〜、見えなくなっちゃう。

 

「それでは教室の近くまで案内しましょう。ネモさんはA組、レトさんはB組です」

 

 ■◆■

 

 放課後。

 割り当てられた寮の自室で、遊びに来たネモとのんびりおしゃべりをしていた。

 

「ほいこれ、合鍵。で、授業初日どうだった?」

「わたし持ってきてないや、また持ってくるね。授業ね、すっごく楽しかった!」

 

 ネモのクラスはゆったりした生物教師が担任をしているらしく、ポケモンの話が聞けたのだとか。

 

「なにそれ楽しそう。いいなぁ」

「レトのクラスはどうだったの?」

「こっち? こっちはこっちですごいのが担任やってるよ。全身あちこちに伝説のポケモンのアクセサリーつけた歴史クラスタ」

 

 古代のポケモンについては造詣が深そうであるし、その辺りの話は聞いてみたい。

 

「なんか俺とは別方向の変人って感じ」

「あっ、変人の自覚あったんだ」

「はっはっは、上等だお前表出ろポケモン勝負だ!」

「いいよ! やろうか!」

 

 ボールは持ってきていたらしく、俺たちはそのままグラウンドに直行する。

 放課後ということもありグラウンド、というよりかはバトルコートには結構人が集まっていた。しばらく見物しながらコートが空くのを待ち、とうとう俺たちの番である。

 両端に立って向かい合う。

 

「初めてのポケモン勝負。わたし負けないからね」

「お前に俺が倒せるか? ネモ」

 

 ベルトからボールを外す。

 なんて言って俺も対人戦はこれが初めてだからなぁ。楽しんでやろう。

 パモにデレデレしてたし、かわいい系が好みと見た。候補は何匹かいるが、さあて何で来るか。第一候補はハネッコ。

 

「いけっ、パモ!」

「おいで!」

 

 ネモがボールを投げる。閃光が伸び、格納されていたポケモンが姿を現した。

 

「スナバァ!」

「ばぁ〜」

「おまっ、フザケンナよォ!」

「絶対に負けたくないという強い思い!」

「全力の身内メタやめろお前ェ!」

「『おどろかす』攻撃!」

 

 もう十分驚いとるわい。

 

「あぁぁ! 噛め噛め! 噛みつけ! お前のアゴを見せてやれ!」

 

 人生二度目となるポケモン勝負。

 俺はまたしてもでんきタイプ連れてじめん相手に戦う羽目になった。

 こいつ後でしばく。

 

 ■◆■

 

 思ったより苦戦しなかったな。

 目を回すスナバァとほとんど無傷のパモ。じめん技を使えないってのもあったが、それ以上に動きが読みやすかったというのが理由だろう。

 

「くぅ〜、負けたぁ。やっぱレトは強いなぁ」

「ちょっとトレーナーとして先輩だからな。まだまだ負けてあげない」

「『かみつく』なんてまだ使えないと思ってたのに」

「ご飯はちゃんと噛むよう躾けてたからな」

 

 パモには活躍した褒美に後で美味しいものでも用意してやろう。

 

「次は勝つからね!」

「ははは、百万回返り討ちにしてやるよ」




レト「先生、そのアクセサリーってどこで売ってるんですか? 伝説や幻のポケモンモチーフのって見たことなくて」
担任「ほう? どれがわかる?」
レト「全部わかりますよ。カントーのフリーザーに、アローラのカプ・コケコにルナアーラ。マーシャドー」
担任「貴様、なかなか博識だな」
レト(主にポケモンについて早口で話している)
担任(主に歴史について早口で話している)

クラスメイト(またクラスに変なのが増えた)

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