幼馴染が主人公っぽかったので俺はライバル枠に収まることにする 作:アウグスティン
「さっきは負けちゃったけどキャンプをして元気いっぱい! ぼくのポケモンと勝負だー!」
誰かに負けたっぽいトレーナーを再びキャンプ送りにしつつ、先へと進む。
道中ちょいちょい見かけるご飯を食べたり、ポケモンセンター目がけて走ったりして回復を図ろうとしている子らは俺と同じように宝探しの題材にジム巡りを選んだ同期なのだろう。
しかし流石は世界中からトレーナーが集まるらしいオレンジアカデミーの生徒といったところか。
出会うだいたいのトレーナーがすでに戦闘不能だったような気もするが、それはそれとして戦った何人かはそれなりに優秀だった。
読みが上手く働かないんだよなぁ、指揮役が付くだけでほんと厄介になるものだ。
意気揚々と俺が最強ぐらいの気持ちで出てきたのだが、存外やり甲斐があるな。
まあそんなことは置いといて、ポケモンだポケモン。
一面茅色の大草原、そこには見慣れたハネッコやヤヤコマ、つい先程構い倒して感電したメリープ、ひっそり隠れてじっとしているヒマナッツなどたくさんのポケモン達がいた。
「おぉ、ムックルだムックル!」
見かけたそいつらに思わずテンションが上がる。
ダイパではお世話になった小鳥だ。そらをとぶ、きりばらい……は必要ないか。パルデアでひでんわざの話聞いたことないし。なんかリメイクでは使わされた気がするけど。
数匹のムックルたちは群れをなして地面をちょこちょこ飛び跳ねている。
「ムック!」「ムック!」「クルクル!」「ムックル!」
図鑑にやかましいと書かれるだけあって、非常に賑やかである。なんかこの中から一匹連れて行くって可愛そうだな。
少し離れた位置から彼らを見守る。
家族なのかな、羽を繕ったりすり寄ったり。
かわいい。そうか、一家全員捕まえればいいんだ。空のモンスターボールを構える。
……、……。……いや、飼えねぇわ。
ぐぬぬ、仕方ない。今は見逃してやる。
ゲームみたいに片っ端から捕まえられたらなぁ。と、手にしていたボールをバッグにしまう。
名残惜しいがジムも気になるし、ネモがどこまで行ってるのかも気になる。きのみを何個か投げ渡し、踵を返した。
「っと」
足元にいた小さなポケモンを慌てて避ける。危ない危ない、踏んじゃうところだった。
スボミー、じゃなくてミニーブか。
オリーブのポケモンだ。オリーブの実みたいな体の上には、葉っぱとオリーブの実が追加でもう一つ付いているお得ボディ。
近くでわちゃわちゃやっていた俺のことは意に介さずぼーっと虚空を見つめている。
「大丈夫? 当たってない?」
「ミニ〜」
平坦な鳴き声をあげる丸っころ。ふむ。
「よいしょっと」
ラクダのコブみたいに頭のオリーブに栄養を貯め込むらしいこの子は、抱えてみると小さな見た目に反した意外な重量がある。
頭部の葉っぱを撫でてみる。反応は薄い。本当の植物であるかのように、いや本当に植物ではあるんだけどね。これが激しい喜びも深い絶望もない植物の心というやつか。
めちゃくちゃ元気だったハネッコとはだいぶ方向性が違うな。これはこれで良き。
しばし足を止めてミニーブを撫で回す。甘いオリーブの匂いが漂ってきて心が落ち着く。
あ〜、旅が進まねぇ。
これ俺宝探しの期間中にどこまで進めるんだろう。
「パモ!」
「あと十分だけ! 十分だけ浸らせて!」
はよ進めとパモに怒られてしまった。お前も構ってやるから許してほしい。
たぶんこうやってツッコミ入れてもらわないと、本気で進捗が死んでしまうからな。ストップがかかったら素直に応じることとしよう。
なんて立ち止まった俺たちのところへ、近くにいたポケモンたちが集まってくる。
「一匹につき十分だっけ?」
ペチっと肉球でしばかれた。
■◆■
アカデミーに通い始めてからはこうして野生のポケモンと戯れる時間も減っていた。
そう日付が空いたわけでもないが、今までが息を吸うように草むらに繰り出していたからか、久々という感じだ。
ミニーブを地面に置き、大きく伸びをした。
気分爽快、心なし体調も良くなったような気がする。
集まった子らをひとなでし、ミニーブをバッグにしまう。
草原を抜ければセルクルタウンだ。
気力はばっちり。さあ一息に行ってしまおう。