幼馴染が主人公っぽかったので俺はライバル枠に収まることにする 作:アウグスティン
忙しくてしばらく離れていたら再開の機会を見失いまして……。
更新止まってる間に文章力が落ちたような、前からこんなもんだったような。
カツカツとはしごを伝って物見塔を登る。塔自体の古臭さとは反対にしっかりと手入れされており、足場としては申し分ない確かな感触がある。
二段重ねの漏斗みたいな塔のてっぺんまで来れば、辺りを見渡すには十分な高さだった。
「おお〜っ」
パルデア十景が一つ、オリーブ大農園。
起伏の激しい地形に間隔を開けて広がるオリーブの木たち。それらにぐるりと囲まれて人間の街がある。
あれがセルクルタウン。ひときわ大きな白い建物がポケモンジムだろう。
「初めてのジム、胸が踊るな!」
「パモ!」
「ミニ〜」
「ようし行こう!」
景色の観賞には向かない性分だ。
ひょいと落下防止用の出っ張りを乗り越えて塔から飛び降りる。地面スレスレでスマホロトムに掴まり安全に着地。
登るのは若干面倒だったが、降りるのは楽でいい。
ゴツンと俺の頭を一発小突いたロトムが懐へと戻る。服の上からロトムを撫でつけ、俺たちは道に戻った。
■◆■
街を区切るように積まれた石垣や、黄土で建てられた家々と、サークルという意味があるにしては四角いセルクルタウン。
コサジやテーブルとは随分と街の様相は異なっていた。
ジム以外で気になるものといえばやはり一風変わったツリーハウスだろう。物見塔から見たときには生い茂る葉っぱに隠されてわからなかったが、大木を支柱にして巻き付くように木で階段が組まれている。
大木の根本には店が建っていた。
ツリーハウス自体がこの店、パティスリー『ムクロジ』の飲食スペースであるらしい。パティスリーってなんだろう。
螺旋階段を登っていけば一段目の踊り場に辿り着く。クモの巣みたいな模様の広い空間で、花壇を中心に机と椅子が設置されている。
ひらひらと花の上を蝶のポケモン、ビビヨンが舞っていた。風土によって翅の模様が変わる綺麗なポケモンである。
目の前のビビヨンたちが持つピンクと緑の翅はファンシーな模様と呼ばれる種類の柄だ。
これ確かゲームだとレアな柄じゃなかったっけ。
パルデア柄だったんだ、この色。
馴染み深い我らがパルデア図鑑は見栄を張っていたわけではないらしい。
コフキムシはともかくとして、野生のビビヨンを道中見た覚えはないし、生息地もズレていたはず。誰かのポケモンなのだろうか。なんとなく力強さを感じる。
「あまいミツとかあればよかったんだけどなぁ。ケチャップとかマヨネーズとか舐める? 舐めないか」
翅を見せびらかすようにくるくると回るビビヨンたち。
もうちょっと見ていたいな。なんかムクロジで買ってくるか。
一度階段を降りて店に並ぶことにする。さっきはちゃんと見てなかったから気づかなかったけど、店のガラスもクモの巣柄だった。
「あら〜、アカデミーの学生さん。はじめましてよね?」
前の人が捌けて俺の番がくる。ショーケースを眺めていると、おっとりした雰囲気の店員が話しかけてきた。
「ええ。初めまして」
「ジムに挑みにきたのかしら。宝探しの時期だものね」
「ビビヨ……あ、はい。そうですそうです。これが初挑戦なんですよね〜」
そんな話をしながらオススメだというあまいみつのケーキを注文する。
手際よくケースから取り出す店員。ほのかに甘い香りが漂ってくる。
「ジムならもう一時間もしたら開くわよ〜」
「おぉ。時間調べてなかったから助かります」
当たり前だけどゲームと違って、二十四時間営業じゃないポケモンジム。時間はついてから合わせればいいや、と思っていたが待ち時間がそれなりにあって助かった。
トレイに載せられたケーキを受け取る。
「ところで店員さん。強そうですけどひょっとして上にいたビビヨンのトレーナーですか?」
「そうよ〜、かわいいでしょう。ビビヨンちゃん」
「とっても! あの子達は触っても構いませんか?」
「えぇ。優しくお願いね」
「はぁい」
許可も取ったところで階段へ戻り、踊り場の空いていた席に座る。
一緒に渡されたスプーンは店のものだから俺が使うとして、カバンから二本、自前のスプーンを取り出す。
ケーキを掬い、肩口へと持っていく。目を輝かせたパモは慌てたようにスプーンに食いついた。よっぽど美味しいらしく、スプーンごともぎ取られてしまう。
「もっもっも」
「こぼすなよ〜。ほうらミニーブ、出ておいで。おやつだよっと」
ミニーブをカバンから取り出して隣の席に座らせる。
「はい、あーん」
一口分取り分けたケーキをミニーブに差し出す。ぬぼーっとしていたが、すぐそこでパモが食べているからだろう、これが食べ物だとわかったらしくパクンと咥える。
目を白黒させながらもごもごと口を動かすミニーブ。ゆったりさはどこへやら、小さい足で俺の周りを駆け回り始める。
「こーら、周りに迷惑かかるだろ」
走るミニーブを捕らえて膝に乗っける。まだバタバタと足を動かしていた。
初めて食べた、とかもあるんだろうがこれは期待しかない。
いざ実食、とろりと垂れる蜜が溢れないようすくい上げる。
「……いやあげないよ? 俺も食べてみたいんだから」
キラキラした目を向ける二匹を無視して口に運ぶ。
「おぉ、美味しい。食レポはできないけど」
口の中で……え〜、あ〜、甘くて美味しい。
うん。うまいうまい。
二つ目、三つ目とジムバッジ手に入れたらご褒美として買いに戻ろうかなって思うくらいにはグッド。
はよこっちにも寄こせとばかりにアピールするパモたちとともに甘味に舌鼓を打つ。
一人と二匹分の量じゃなかったな。ちょっと少なかったかも。
物足りなさはあるものの、それはそれ。十分いいおやつだったしそれに、俺はまだ何もやっていない。買い足すならせめて勝ってからにしよう。
ジムの受付時間を調べるとまだ余裕があった。
よしじゃあビビヨンと戯れてくるか。
きゃー、ビビヨンちゃ〜ん。でっかい虫なのにこんなキュートなの世界が歪んでるでしょ。
■◆■
案の定、受付開始時刻をしばらく過ぎてからジムを訪れた俺。
「ようこそセルクルジムへ! 挑戦者のお名前を登録します」
タブレットに名前とトレーナーカード記載のIDを入力する。
「では手持ちのポケモンを登録します。モンスターボールをこちらへどうぞ」
「はい、これと。あと……あれ……?」
手持ち登録されたボールがない。この子はうちの子だったはずでは?
おかしいな。モンスターボール無くしでもしたかな。
仕方ないので空のボールをミニーブの前に差し出す。
「とりあえずこれに入る?」
そう言うとボタンに触れて大人しくボールに入るミニーブ。
よしよし。問題なく使えたな。
「じゃあこれも登録をお願いします」
「野生のポケモンを街中で連れ歩くのは危ないので、今後はやめてくださいね」
「あ、はい」
???「トレーナーだ! トレーナーだよね!? ねぇトレーナーでしょきみ!!」