幼馴染が主人公っぽかったので俺はライバル枠に収まることにする   作:アウグスティン

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3話

 地面に座って木にもたれ掛かる。するとたちまちにわちゃっと野生のポケモンたちが集まってきて取り囲まれた。

 懐かれたもんだ。何が面白くてやってくるんだか。

 タマンチュラの糸玉をグニグニと揉んでやる。癖になる弾力だ。ぴょこんと飛び出た糸の一本ですら切れない強度なのに、どうしてこうも手触りがいいのだろう。

 

 さすがにそんな詳しい説明は図鑑にないので、いつか知れる日を楽しみにして本を開く。

 ゲームとは違い料理がミニゲームでも面白要素でもなくて生活に必須である以上、ポケモントレーナーになったとて、なんでもかんでも好きだからで捕獲するわけにはいかない。

 

「爪痛いから頭の上はやめてくれ」

 

 頭頂に止まったヤヤコマを払い除ける。鳥ポケモンだけあって爪が鋭い。ひっかく覚えないくせして着実にダメージを与えてくるんじゃねぇよ。

 肩に飛び移ったヤヤコマがピリリリリとさえずる。ASMRかな? すべてを許そう。

 

「ビビヨンいるのか、この地方」

 

 話を戻して、実際トレーナーになるとしたら育てるポケモンの数は絞らないといけない。

 今見つけたビビヨンは見た目も綺麗だし、強い戦法も確立されている。

 が、現実でオーバ戦法はマジで顰蹙を買いそうだな。

 

「アーマーガア、サーナイト系統……馬鹿なキノガッサがいるだとこの地方」

 

 やっぱり強いのかお前は。

 いやでも催眠は。……クリア後のやりこみ要素的なバトルのための施設とかなら許されるかな。

 

「なにか悩みごとですか」

「お、ちょうどいいところに来たな。キノガッサってどういうイメージ?」

「はい?」

「キノガッサってどういうイメージ?」

「ええと……キノガッサというとキノココの進化系のポケモンですよね? かわいいポケモンだと思いますよ。進化したらこんな姿になるんだ〜ってびっくりしましたが」

「悪いイメージとかないの」

「? いえ別に」

 

 対戦が発達していないのか害悪ムーブが嫌われていないのか、単にネモがポケモンバトルに詳しくない可能性もあるな。

 

「どうしたんですか、急に」

「トレーナーになったらどんなパーティーを組もうかなって図鑑とにらめっこしてたんだよ」

「なる、ほど? そうだ、でしたらわたしの家でバトルを観ませんか? 録画してあるのがいくつかありますので」

「マジ? 行く行く」

 

 図鑑を閉じて立ち上がる。

 いやぁ楽しみだ。うちにテレビなかったからな。

 親のスマホロトム借りて見るのもだいたいは癒やし系だったし。

 ズボンの土を払っていると双葉を回しながらハネッコが飛んできた。

 

「あー。なんだ、遅れたけど構って、てか」

「ハネ〜」

 

 足元に降りたかと思えばズボンを咥えてひっぱり始める。

 ちょっと頭を撫でてやって、それで終わりにしようかと思ったのだが、どうにも違うらしい。

 

「ごめんネモ。先にこっち済ませてくる」

「わかりました。この子たちと遊んでまってますね」

「オーケー、すぐ戻るよ」

 

 ネモに手を振ってハネッコを促す。

 パタパタパタとハネコプターで飛びながら先導するハネッコに小走りで付いていく。

 俺になにをさせようというのか。

 少し走らされるとハネッコが数匹集まっていた。

 

「なんだ、ハネッコ祭でもやって──」

 

 中心に横たわっていたのはポケモンだ。オレンジ色をした、確かパモという名前のポケモン。

 それが傷ついて倒れていた。

 

「え、ちょ、どういう……た、助ければいいのか?」

 

 困惑しながらも駆け寄る。なんだ、どうすればいいんだ。手当て、家にキズぐすりあったよな。

 俺が近づいたことに気づいたのかパモが威嚇を始める。

 

「ええと、触っていいか? 治療しないと」

「うるる……!」

 

 しゃがんで、ゆっくりと手を伸ばす。

 ──ガブッ

 

「いっ、った!」

 

 パモが噛みついてきた。急いで手を引く。指からは血が出ていた。ペッと血を吐き捨てるパモ。

 

「お前やりやがったな! ちょっと待ってろよ! すぐ戻ってくるからな!」

 

 傷のない左の指をパモに向けて、そう言い残し、俺は急いで家に戻る。道中ネモに呼びかけられた気がするがとりあえず無視した。

 裏庭の物置を漁って軍手を引っ張り出す。靴を脱ぎ捨てて家にあがり、薬箱を開いてキズぐすりを探す。

 

「おかえり。怪我でもしたの?」

「俺じゃない。怪我したポケモンがいたから……あ、使っていい?」

「いいわよ、早く行ってあげなさい」

 

 許可を貰ったのでスプレーを持ち出す。走りながらブカブカの軍手を付けた。

 猛ダッシュでパモのところへ戻る。

 道中ネモに呼びかけられた気がするがとりあえず無視した。

 そしてハネッコの囲いを抜けようとしているパモを怒鳴る。

 

「ハーッハッハッハ、ほうら防具をつけてきてやったぞお前! これでもう噛みつきは効かな痛い痛い痛い!」

 

 軍手の上から貫通してダメージを与えてくる。キズぐすりを吹きかけようとするものの、暴れて話にならない。

 滅茶苦茶元気じゃねぇか。仕方ない。

 

「ハネッコたいあたり」

「……。ハネッ?!」

「ハネッコたいあたり」

 

 一瞬戸惑っていたが俺の指示通りにハネッコは動いてくれ、パモをどついた。

 ぱむぅ、と断末魔をあげてひんし状態になるパモ。

 ヨシ。

 さて、治療するか。

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