幼馴染が主人公っぽかったので俺はライバル枠に収まることにする 作:アウグスティン
倒れたパモが縮み、あっという間に手のひらサイズになった。
掬い上げてみると明らかに軽い。見た目相応の小動物のような重量だ。
ポケモンには小さくなる能力があるとされているが、実際に目にするのはモンスターボールからの出し入れを除けば、これが初めてだ。
すげぇ、どうなってんだ。マジでちっちゃくなったよ。
不思議な生き物すぎる謎生態はさておいて、静かになったパモにキズぐすりを吹きかける。
さすがに不思議生物といえ、ゲームみたく元気の欠片や塊じゃないとひんし状態から復帰できないなんてことはないだろう。
それだと野生のポケモンがどうやって回復しているのかわからなくなるし。
荒かった息が少しずつ落ち着いてくる。
少し考えて、とりあえず俺はパモをこのまま家に連れ帰ることにした。
「後はこっちでなんとかしとくよ。教えてくれてありがとう」
ここまで連れてきてくれたハネッコをひと撫でし、そーっとパモを持ち運ぶ。
帰り途中、なにやらいじけているネモを拾いながら家へととんぼ返りした。
「上がって上がって」
「お、お邪魔しまーす」
客人用のスリッパを出してネモの足元に転がす。
一応「ただいまー」と母親に声だけかけて、手を揺らさないようゆっくりと階段を上がった。
「おかえり、ってあらネモちゃん。いらっしゃい」
「お邪魔します。あ、入ってよかったですか?」
「えぇ、もちろん。レトは……あ〜、面倒くさい子でごめんなさいね」
「あはは〜」
二階の自室に入り、ベッドの上にパモを下ろす。
外で放置するよりかはこの方が安全だろう。むしろ危険なのは俺の方だな。
起きたらまた襲ってくるかな。
防御、防御。軍手よりかは分厚くないとだよな。
押入れの布団を体に巻き付けていると、コンコンとドアがノックされた。
「入ってもかまいませんか?」
「誰に遠慮してんだよ」
「じゃあ遠慮な……えと、なにをしてるんです?」
部屋に入ってきたネモが引き気味に尋ねてくる。
「パモ対策。また攻撃されるのは嫌だなぁって」
「また?」
「うん、また」
血の滲んだ軍手をひらひらと振ってみせた。
■◆■
「あ、起きた」
母の愛ある拳骨を食らった頭を押さえながら俺は言った。ネモにチクられて、ここまでの経緯を話したらゴツンとやられたのである。
これ以上アホになったらどうしてくれるんだ。まったく。
ともあれ目を覚ましたパモは一瞬混乱したように辺りを見渡した後、こちらに向かって牙をむき出しにした。
「だから言ったでしょう。この子は……レトには懐かないのよ」
ポンポンと肩を叩かれる。
うん? ……あぁ〜、うん。なるほど。パモが起きる前に「人を嫌っているんだと思う」みたいなことを母は言っていたが、そういう方向性なのか。
どうするか、どうもしなくていいか。
ベッドの側にしゃがみこんで目線を合わせる。
「別に懐かなくってもいいよ。ただ心配だから治療だけはさせてくれないか。どう?」
「うるる」
唸るパモ。じーっとしばらく見つめていると、諦めたようにクルンと丸まった。
よし勝った。
「ママ、こいつしばらく部屋に置いてていい? ちゃんと面倒はみるから」
「え、えぇ……。言うことを、聞き入れた?」
「よっし。しばらくよろしくな、パモ」
伸ばした手はこちらを見もせず叩かれた。
悲しい。ちょっとくらい懐いてくれてもいいのよ。
「その子に構うのもいいけど、レトの手当てもしないとね」
「はぁ〜い」
ポケモン世界の治療といえば、ポケモンセンターに連れていって『テンテンテテテン』のメロディーと共に一瞬で完全回復するイメージがある。
実際この世界の医療技術はそれに近い。というよりかは人間含めて生物がありえないほど生命力に満ちている、と言うべきか。
俺の方の手当てはすぐに終わった。
なにせキズぐすりを吹きかけたら、目に見えてというほどではなくとも、しばらく注意が逸れてるうちに薄く皮が張っていたのである。
そうか、俺はスーパーパルデア人だったか。
パモは俺より傷は深いようだったが、こちらも近いうちに治ることだろう。いいことだ。
この共同生活もそう長続きはしなさそうである。
モソモソと消毒液代わりのラムの実をかじりながらそんなことを考えた。
「口の中にカオスフィールドが展開されてるわ。……マズぅ」
「……ぱむぅ」
「俺のもあげる。重症でしょ?」
満面の笑みと善意への回答は爪だった。
ラムのみ
からい、にがい、しぶい、すっぱくない。
でもあまい。
知らないけどたぶんまずい。
甘味で誤魔化そうとしてる薬のイメージ。