幼馴染が主人公っぽかったので俺はライバル枠に収まることにする   作:アウグスティン

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5話

 最初の方はなんとか撫でようとしては弾かれていたネモもずいぶん大人しくなった。

 部屋にあるポケモンの本を読んでは、不意にパモへ絡みにいく。そして拒否られる。

 

 そんなことを繰り返しているうちに日も落ちてきて、窓からは夕焼けの光が射し込んでいる。

 いい加減ネモを帰らせないと、ということで俺が送ることになった。

 

「うぅ、結局触らせてくれませんでした」

 

 肩を落としたネモと並んで道を歩く。

 

「しゃーないしゃーない。ママも懐かないって言ってたしね」

「残念です。かわいいのに」

「わかる、めっちゃかわいいよね」

 

 さすがは暫定偽ピカ枠のポケモンというべきか。

 でもどうなんだろう。電気だしネズミポケモンだしでピカ枠だと思うんだけど、進化するらしいんだよなぁ。

 ピカチュウ以外で進化するピカ枠なんていなかったはずだから別物なのかな。

 かわいいし、どうでもいいか。

 

「レトはいいですね、ポケモンたちに好かれて」

「羨ましいだろー?」

「くぅぅ、羨ましいです!」

「ははは」

 

 子供らしく素直な反応を返すネモ。

 ネモの家まではわりと近い。駄弁っているうちにもうデカい柵が見えてくる。

 いやほんと豪邸だな。ゲームだと微妙に強くて賞金いっぱいくれるおぼっちゃまとかおじょうさまとかが出てきそうなお屋敷である。

 

「わたしもいつかポケモントレーナーになって、自分のポケモンと旅をしてみたい」

「いいんじゃないか。楽しそうで」

「なれると思いますか?」

「いけるいける。ネモは凄いトレーナーになるって当たると話題の俺の勘が言ってる」

「どこで話題なんですか、それは」

「俺の心の中」

「あはは」

 

 トレーナーになるのはそう難しくない。ポケモン連れてりゃポケモントレーナーだしな。

 それを仕事にできるほど成り上がるのが死ぬほど厳しいというだけで。

 家庭環境もあるし、ネモはまあまあ強くはなれそうだよな。知らないけど。

 

「じゃあまたな」

 

 手を振って、屋敷の前で別れる。

 それにしても旅か。ジムはあるんだよな、この地方にも。バッジを集めてチャンピオン目指して、ってか。

 ゲームのようには勝てないんだろうな。主人公はあっさり勝つけれど、だいたいは途中で脱落する設定だったし。

 夢のある話だ。ネモがいいところまでいったら祝ってやろう。

 

 ■◆■

 

 これが何かの物語だったら、しばらーく傷を癒すためにパモはうちに滞在するんだろうが、三日もすれば完治してしまった。

 してしまったはおかしいか。完治した。いいことだ。

 その間、短いながらも濃ゆい出来事がいろいろとあった。

 

 例えば「ようし風呂だ風呂! あれ? パモって濡れて大丈夫なのか?」とみんなが入った後、最後に風呂場へとパモを連れて行ってやったりした。

 シャワーで湯を出すところを見せてみるが、逃げなかったので問題はないのだろう。

 そう判断し、傷口に気をつけながらそっと洗ってやる。やはり汚れていたのかだいぶ泡立った。

 

「パモっ」

「はっはっは、気持ちい──いった、バチってきた!」

 

 くすぐったそうに身をよじるたびに、ビリっと静電気が走るのは難点だ。なんとか人間が地面タイプになる方法はないのだろうか。

 人間も戦闘経験積んでレベルを上げたら進化しないかな。……地面になったら呑気に風呂入れねぇわ。

 

 それで風呂からあがってパモを乾かしたらもうやることもなくなった。ダラダラ弄るようなスマホロトムもゲームもない。

 さっさと寝ようとしたのだが、最初にそこへ寝かしたからだろう、自室に戻ると即行でパモにベッドが占拠されてしまった。

 

「パモさん、パモさーん」

「……ぱむ」

 

 くるんと体を丸めたまま眠たそうな返事をするパモ。

 仕方ない。持ち上げて少しずらしスペースを作る。

 ワクワクでベッドに潜り込んだ瞬間にパモがぴょんとベッドから降りてしまった。そそくさとベッドの下に陣取ったパモに呼びかける。

 

「ベッドの上の方が寝やすいよ〜」

 

 ぺちっと鼻にネズミパンチを食らった。

 しくしく。押入れから掛け布団を出して床に敷いてやる。

 

「せめてこっちで寝な」

 

 初日は夕方までダラダラしていたこともあり、こんなところだった。

 で、次の日。

 一夜過ごしたパモはもうほとんど全快していた。

 早い早い。ストーリー性もクソもないって。

 

 ともあれこの日はなんとビックリ。パモに触れることに成功したのである。ちょいちょい持ち上げてはいたけれどそうではなく、少しだけど撫でることができたのだ。

 俺がではないが。ネモでもない。ご飯を用意していた母が、だ。

 

「餌か! 餌なのか結局! このいやしんぼめ! 俺もラムあげようとしたじゃん!」

「パモパモっ!」

 

 懐かなくていいとは言ったけれど、俺以外に懐かれるとこう、微妙な気分になる。

 それで、あとはそう。お使いの最中のことだ。

 メモを見ながら食材を買い揃えた帰路で、グルトンがまとわりついてきた。トコトコ足元をうろついては、ついてこいと言わんばかりに離れて何度も振り向いてくる。

 すわ、また怪我したポケモンか。と、ついていってみると、そこは巣のようで、グルトンはコツンと鼻で小突いてこちらに青い木の実を転がした。

 

「オレン? なんだ俺にくれるのか?」

「グル」

「……? もしかしてパモにか」

「グルっ」

「おぉ〜う、いい子だなぁお前。任せとけ、バッチリ渡してやるからな」

 

 この日の俺のおやつはグルトンへのお礼として消えた。

 

 そうして迎えた最終日、とうとう別れの時がきた。とうとう? そうでもないか。

 昨日来られなかったネモは名残惜しそうにしていた。

 

「元気でな。これお土産」

 

 モモンの実を持たせてパモを見送る。

 

「元気になって本当によかったです」

 

 しゃがんだネモにパモがためらいながらも近づいていく。ネモは驚いた様子だったが、恐る恐る手を伸ばした。

 

「ほわぁ……」

「お前俺以外にばっかり懐くんじゃねーよ」

 

 ママン以上に絡み少なかったろうが。

 俺も撫でようとしてみると、ひらりとパモが身を躱す。

 おのれぇ。

 なんて思っていると、ころころと楽しげに笑ったパモがやり場を失った俺の手にすり寄ってきた。

 それからモモンを咥えて走り去っていく。

 頭をかいてため息をついた。

 

「お前ふざけんなよ、まったく」

「こんなに早くお別れだなんて」

「そうだな。って俺も昨夜へこんでたんだけど」

「……けど?」

「いや、こいつご近所さんだよなって」

 

 そう言って、しれっと見慣れた近場のポケモンたちに混ざって生活を始めたパモに指をさした。

 会いに行けるアイドルポケモンである。




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