幼馴染が主人公っぽかったので俺はライバル枠に収まることにする   作:アウグスティン

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6話

 パモを拾う前に俺はネモとポケモン勝負を見る約束をしていたらしい。

 まるで記憶にないがネモが言うのならそうなんだろう。

 指定された昼過ぎの時間帯にネモ家を目指して家を出る。天気は良好、道すがら日向ぼっこしているであろうハネッコを一目見ていこうと寄り道を選んだ。

 

 いつもの草むらの方へと歩いていくとなにやら賑やかな声が響いてくる。

 身を隠しながら覗いてみると子供たちがはしゃいでいた。

 知らない顔だけど、たぶんご近所さんなんだろうな。

 うん……なんか、近寄りがたいな。

 ポケモンを追いかけているようだが、乱暴に扱っているようにも見えない。わざわざ出ていって俺がなにかしなきゃいけないような状況でもないだろう。

 そうと決まれば逃走逃走、はやく離れよう。

 

 ■◆■

 

 正門を抜けた俺は思わずキョロキョロと辺りを見渡す。実際に足を踏み入れたネモの実家は想像を超える威容を誇っていた。

 うわぁ、広。敷地内に花壇が広がってるよ。いくらでもポケモン飼えそう。

 語彙力なくなるわ、これが経済格差か。

 花壇を抜けて、これまたきれいに装飾された扉にたどり着く。ステンド……グラス? これ玄関だよな。

 インターホンがあったのでおっかなびっくり押してみる。

 

「はーい」

 

 大人びた声音の返事があった。ネモのお母さんだろうか。

 あちこち宝石つけた人とか出てきたら面白そうだな。

 すごいのが出てきた時のため身構えていると、ガチャリと扉が開きエプロンをつけたおばさんが出てくる。

 ネモのお母さん、じゃないよな。似てないし。というかもしかして。

 

「あぁ、お嬢様のおっしゃっていたレト様ですね」

「あっはい」

 

 使用人かぁ。

 

「お嬢様がお待ちしております。こちらへ」

「あっはい」

 

 言われるがままに付いていく。なんか高そうな絵とか装飾品とかいっぱい飾ってる。パルデアの骨川家かな、税金すごそう。

 緊張しながら使用人さんの後ろを歩いていると、パタパタと足音を鳴らして廊下の先からネモが走ってきた。

 

「いらっしゃい!」

「あぁ、ネモ。よかったわマジで、広すぎて緊張してたんだよ」

 

 ホッと胸を撫で下ろす。ネモは使用人に礼を言ってから、俺の手を引いて部屋に引っ張っていく。

 

「んジャカパーン! シアタールームへようこそ!」

 

 両手を大きく広げて自慢げにネモが笑った。

 

「テンション高いな! いやすごい部屋だけども」

 

 でっかいスクリーンが上から垂らされていて、柔らかそうなソファーがその手前に並べられている。

 ネモは手慣れた様子でリモコンを操作してスクリーンに映像を映し出す。

 

 世界観の違いをひしひしと感じているよ。

 ポケモンがどうとか関係ない、もっと現実的な違いを。

 ネモがソファーに座り手招きする。俺も隣に座った。

 

「うーん、どれがいいでしょうか?」

「まったく知らないからなぁ。オススメは?」

「最近あったポケモンリーグ戦とかどうでしょう」

「そんなのあったんだ。じゃあそれで」

 

 カーソルを合わせてネモがボタンを押す。

 再生された映像の最初の方をいくらかスキップして、勝負の直前まで進める。現場が映ったモニターの横には人が立っていて、勝負の様子を解説していた。

 

 四天王の一人らしい緑の長髪と挑戦者の男は少し会話してポケモンを繰り出す。

 

「ナマズンとはまた渋い……」

 

 水、じゃないな。地面の方専門か。ダイパのキクノを彷彿とさせるな。

 解説によるとこの四天王の人はチリという名前らしい。

 対する挑戦者の先発は、確かオリーヴァというポケモンだったはず。葉っぱのリースみたいな容姿のままに草・ノーマルのポケモンだ。

 俺と違い四天王のことを知っていたのだろう。ちゃんとメタってきてる。

 

 とはいえ苦手タイプを出されるのは統一パの宿命みたいなものだ。

 それらへの対策は万全ということだろう。ナマズンを落とされながらもふぶきで削り、二匹目のバクーダで撃破していた。

 

 一進一退の攻防。やや挑戦者有利といった戦況か。

 追い込まれたチリが五匹目に繰り出したポケモンはドオー。パルデアのヌオーだ。

 泥のような茶色をしたドオーにチリがどくどくを指示する。可愛いおっとりとした鳴き声とは裏腹に、盛大にぶち撒けられた猛毒は回避する隙もなく相手を蝕む。

 

「あー……いいんだ、これ」

 

 さらりとどくまもを始めた四天王を見て、思わず呟く。

 関西弁、もといコガネ弁の熱血お兄さんかと思っていたらとんでもない奴だった。

 パルデアではこれアリなんだ。

 

「あ、ほらレト。ここからが見どころですよ!」

「見どころ?」

 

 ドオーがゴルダックを毒殺したところである。次に挑戦者が繰り出したのは色違いのキリンリキ、じゃなくてリキキリン。

 弱点をつけるエスパータイプのポケモンだ。

 このまま一発ぶん殴って終わりのような気もするが。

 

『ドオー! 隆起せぇ!』

「お? おぉ?!」

 

 黒いモンスターボールのようなものをチリが取り出す。光がそこへ集まっていき、ボールが輝く。

 ポンとドオーの頭上へ光を放り投げる。

 ドオーが結晶に包まれた。光に呼応するように生えてきたきらびやかな結晶はたちまち砕け散り、ドオーの体を覆う。

 

「なになになに! なんか光ってる! ガラス細工になった!」

 

 頭に宝石の大地が形づくられる。煌めくドオーはリキキリンの目からビームを耐え、じしんで反撃した。

 

「あれはテラスタルっていうんですよ」

「へぇ〜! どういう効果なんだ?」

「え? え〜と……え〜と」

「やっぱ後でいいよ」

 

 そう、後にしよう。今は難しいことは考えず、この勝負を楽しみたい。

 有効打を失ったのだろう、等倍での殴り合いを始める。

 ドオーはその耐久力と技構成でしばらく持ちこたえていたが、とうとう挑戦者側のテラスタルによって打ち倒される。

 カシャン、と結晶が粉々に飛び散った。

 

 感嘆の息が漏れる。

 いつもなら短い手足で這いずるナマズンやドオーに気を取られていたんだろうが、集中してしまった。激しい戦いとテラスタルの光に。

 数分の解説と休憩が入り、四天王の二人目が顔を見せる。

 勢いそのままに挑戦者は四天王を突破していき、ぬらりひょんの孫みたいなチャンピオンに敗北した。

 

 五戦合わせて二時間くらいの映像だった。

 いいものを見た。あるいはとんでもなく悪いものを。

 これはダメだよ、猛毒だ。

 俺もやってみたい。画面のこっち側じゃない、向こう側でポケモンたちと一緒に戦ってみたい。

 抗いがたい熱に浮かされていた。




リーグの再戦が無いのを、勝負が盛んな他地方では四天王やチャンピオンが一周目の挑戦者には手加減してるけど、そうでもないパルデアではあれが全力って設定を考えてたんですが
初手レベル90のキラフロルでステロするオモダカがDLCで追加されたら困るので一旦保留。
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