シン・ウルトラマン  夕陽に咲く花   作:へびのあし

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美しいもの

週末。

ヒナは毎週土曜日、アカデミーの寮から家へ行く。

そこで一晩泊まって、家族三人でゆっくり過ごすのだ。

 

無論、血のつながった家族ではない。父も母も幼馴染の凄腕のスパイで、二人とも子供を相手にした任務が専門、しかも犬の扱いの訓練もばっちり。つまりは、ヒナの両親になるために生きているような人たちだ。

ヒナたちは本当に仲の良い家族で、みんな心から大好きだと草原の真ん中で叫べるくらい。

 

「雪だよ!」

「そうねぇー。ヒナちゃんのほっぺたみたいに白い。」

 

ふわふわのピンクのマフラーに首を埋めながら、母はうふふ、と笑った。

空は灰色の雲が立ち込めていて、それなのに地面は真っ白に光り輝いていた。

土の道も、その脇に生える街路樹も、ポツリポツリと立ち並ぶ商店の赤い屋根も。どこまでも広い田んぼや畑も。

 

一面の雪景色。

ただ、ひたすらに白い。

ヒナたちは今、手を繋いで図書館へ行こうとしているところだった。

 

「…すげえなぁ。」

 

父も、メガネの奥の茶色の瞳を細めて、微笑んだ。薄茶のオーバーコートのポケットに手を突っ込んで、ハア、と白い息を吐く。しばらくして、父はヒナを振り向いて言った。

 

「…なあ、俺はちょっと先に図書館に行ってくるよ。仕事の関係で調べ物が必要でさ、けっこう時間掛かると思うから。お母さんとヒナちゃんは雪で遊んでていいよ。」

「まあ、私はもう子供じゃないわ…っていうかおばさんよ!」

「何言ってるんだ。きみはティーン並みの体力があるじゃないか。」

 

父は笑いながら、ヒナにだけ見える角度に顔を傾けて、さりげなくパチリ、とウインクをしてみせた。

 

「じゃ、よろしく頼むよ。」

「ええ〜。」

 

母と二言三言取り交わし、家の住所の確認を取る。

いよいよの去り際に父は、ぎゅ、とヒナを抱き寄せて、耳元で囁いた。

 

「……思う存分ママに甘えてごらん。」

「うん。」

 

それだけ言うと、何事もなかったかのように父は離れた。手を繋いで見送るヒナと母に向かって手を振って、早足でどこかへ行ってしまった。

 

しん、と静かになる。冷たい銀世界の中、だんだん紫に青ざめる唇を舐めて、ヒナは母を仰ぎみた。

父はああ言ったが、寒さに弱い母はきっとすぐにどこかの家や店へ入って温まろうとするだろう、とヒナはみていた。暖房を求めてカフェなんかに入ろうとしたら嫌だなあ、と思いながら、母の目を見上げる。

 

母は、ハア、とため息をついた。

いつもふわふわのうさぎさんスリッパとマフラーを家の中で身につけている母だ。この気温の中で雪遊びは苦行だろう。案の定、母は手袋で覆われた手で顔を覆って、空を仰ぎ見る。

 

数秒後、すとん、と母はその手を下ろして振り向く。

……次の瞬間、何かの決意にメラメラ燃える、真紅の炎を映した瞳がヒナへ向いた。

 

「……よし、決めたわヒナちゃん。雪だるまとかまくらと雪うさぎと雪ピアノと雪風神雷神様作って遊び倒してやりましょう。」

「お、お母さん!?」

「何を隠そう、私は元・雪アート大会のチャンピオンよ!」

「へ、へえ。」

「さあ、空き地でも公園でもいいからとにかく行くわよ。ついてらっしゃいな。」

「はぁい。」

 

普段大人しく優しい母が、燃える。控えめに言って豹変、いや、もはや別人であった。

雄々しく拳を天に突き上げる母を見て、ヒナは母の幼少がどんなものだったか、何となく推しはかれてしまうような気がした。

 

とにもかくにも、結果オーライだ。

“母と雪遊びができる“。

ヒナは棚から降ってきたような思わぬ幸せに、にんまり笑った。

 

—————びっくりするほど乗り気になった母は、びっくりするほどすぐに遊び飽きた。

 

 

「……うぅ、寒さが骨身に堪えるわ。」

 

あり得ないくらい壮絶に精巧な雪ピアノと雪風神雷神様の間に座り込んで、母はブルブル震えていた。

唇は紫色。真っ白に血の気のなくなった顔を、ギギギとヒナの方へ向ける。

 

「……ね、ねえヒナちゃん?ち、ちょっとばかしさ、ささ、さっき通り過ぎた八百屋のおばちゃん家にでも…」

「やだ!」

 

ヒナはぴょん、とジャンプして母から離れた。こちらは雪山一つと雪だるまを二つ作っただけで、全く遊び足りない。それに何よりおばちゃん談義なんて楽しくない。

…とはいえ、さすがに真っ青になって震える母もかわいそうに思った。ちょっとは気を使わないと申し訳ないような気持ちになって、ヒナは振り向いた。

 

「ねえ、お母さん。運動すればあったかくなるよ。…例えばね。」

 

ヒナはくるりと周囲を見渡すと、近くに落ちていた木の枝を拾ってきて、地面に一本線を引いた。

 

「ここから走りはばとびしてー、」

 

そう言いながら、母の方を見る。そして、よーいどんの格好をすると、さっき自分で作った雪山のほうに狙いを定める。二、三歩後ろに下がると、助走をつけて、えいっと地面を蹴った。

 

「ジャーンプ!」

 

両腕を広げて、空を向く。あはは、と笑いながら、雪の山に飛び込む。

ボフン、と軽い音がして、真っ白な三角形はぐしゃぐしゃに潰れた。雪の布団は冷たくて、けれどもなんだか柔らかい。ぴょん、と起き上がると、全身雪まみれになっている。

ヒナは幸せでいっぱいのいちごジャムみたいな気分で、母の方を振り向いた。

 

「ねえ、お母さん。とっても楽しいよ!雪だるまさんもまだ二人いるし、たくさん作ってたくさん飛び込もう!」

 

きっと嬉しそうな表情を見せてくれるだろう、と思っていた。困ったような、それでいて喜びと幸せの詰められた宝箱のような、母親が子供に向ける特別な眼差しを、と。

けれども、違った。

強い意志の篭った真剣な目で、母はヒナを見ていた。

 

「…ヒナちゃん。」

「………ん?」

 

母は、ゆっくりと立ち上がって、ヒナの目の前まで歩いてきた。緑色の手袋に包まれた手を取って、しゃがむ。

 

「これから、大事なお話をするね。」

「う、うん。」

 

母は満足そうに微笑むと、そのままぎゅ、と体を引き寄せると、くるりとヒナに後ろを振り向かせた。

ヒナの背中が、母の温かい胸にふわりと押しつけられる。

 

戸惑うヒナ。

母はただ黙って、人差し指を上げると、ヒナがつくった雪だるまへ向けた。ちょっと頭が歪んで、手の代わりにくっつけた木の枝も、短すぎて何だか鼠の髭のようになっている、小さくてかわいい雪だるま。

 

「ねえ、あれ作るの難しかった?」

「そりゃあ、まあ。」

 

母は次に、雪うさぎを指差した。

こちらはちょうどいい葉っぱが見つからなくて、耳を無理やり雪で作った、変なかまぼこみたいな白い塊。

 

「雪うさぎちゃん、どのくらい頑張って作った?」

「えっと、すごく…かな。下手だけど。」

 

母は頷いて、次に、自分で作った雪ピアノと雪風神雷神様を指差した。

サイズは小さいけれど、まるで本物みたいに精巧な雪細工。

 

「どう?あれ作るの簡単そう?」

「絶対無理です。」

「うふふ、安心した。私だってめちゃくちゃ頑張ったんだからね。年の功ってのもあるし。」

 

そして、最後に母は、ヒナが飛び込んで崩したばかりの雪山を指差した。

ぐしゃぐしゃになって、積み重ねた富士山型の見る影もない。

母は温かなため息を吐いて、ヒナに問いかけた。

 

「………ねえ。あれを壊すのって、難しかった?」

「いや、簡単だよ。」

「どうしてだと思う?」

「え、そりゃあ…飛び込むだけだもん。」

「そうね。」

 

母は黙って公園を見回した。

ブランコや滑り台で、子供たちが遊んでいる。犬の散歩に来た人が、ベンチで休憩

している。ポツンポツンと生えている大きな樹が、真っ白な雪に埋もれかけていて、中にはつららが下がっている部分もあった。

まるで透明なクリスタルのようで。家具屋さんに入って憧れた真っ白な絨毯や、天井から下がる宝石付きのシャンデリアのようで。それは、本当に——

 

(————きれい…)

「きれいよねぇ。」

 

母が、ニコニコとヒナの目を覗き込んでいた。

 

「壊すのは簡単。作るのは難しい。」

 

母はぎゅうっと、ヒナの体を抱きしめた。母の髪の毛がヒナの顔をくすぐる。母がいつも使っているバラの香水が、ほのかに香った。

 

「美しいものを破壊から守り、美しいものを新たに作り出すこと。」

 

母の暖かさが、ゆっくりと体中に浸透してゆく。

 

「わかるかな?ふふ、まだ難しい?」

 

母は、どこまでも慈愛に満ちた瞳でヒナを見つめ、微笑む。

 

「私たちの命って、そういうことのために使うものよ。」

「……うん。」

 

 

思えば、この日がヒナの誓いの日だったのかもしれない。

自分は何のために生き、何のために死にたいのか。

核たる自分がなければ、ヒナはとっくに抜け殻になっていただろう。

 

成長して、自分というものを考えるにつれ、ますますその実感は増していた。

親がいない。

ただスパイになるために優秀な、遺伝子だけの存在。

ずっと不安だった。

 

“自分“とは何なのか?

“私“は何のために生きればいい?

 

「“私“とは、“個“であり、同時に“全体の一部“でもある。宇宙の全てを流れる天地自然のエネルギーがここを満たしていてね、それが私たちを作ってる。だから、たとえ誰かが海に手を入れて水を囲って、両の拳の中に閉じ込めた場所を“ここは俺の水だ!“と主張したとしても、それが海水の一部である事実は変わらないみたいに私たちもただ自然の一部であり、その一部としての責務は……」

「お母さん、話が長い。」

「うぇ?!も、もうちょっとで終わるから!わーダメダメ行かないで後生だからあと五分は待って!」

「却下します。もうそれで三十分は待った。」

「ああ〜ヒナちゃん!」

 

母は、その点しっかり“自分“というものを持っていた。絶対にブレない。いつも信念に従って生きていた。

だからこそ、それをヒナに教えることができた。別に、母の考え方は数ある考え方の一つだったのだろう。後にヒナが本を読むようになると、実にたくさんの人生哲学があるのに驚かされた。

 

それでも。

核となったのはあの母の笑顔だった。

ヒナにとって、彼女が人生の師であり、生き方の鏡だった。

 

“雪だるまの誓い“

———ヒナが勝手にそう呼んでいる、自分だけの決意。

 

「美しいものを破壊から守り、美しいものを新たに作り出すこと。」

 

 

それだけは、いつまでも忘れない。

いつか自分が、この命を終える時まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

『————キミ、やっぱり面白いね。』

「私は全然面白くないわ…。っていうか、いつまで続けるなのよ…ソレ。」

『永遠に。』

「嘘ぉ!」

『じゃあ少なくとも百万年。』

「それでも長すぎ!」

 

ヒナは困惑していた。いや、はっきり言って呆れていた。

無論、ジャックに対して、である。

脳内に響く声は取り憑かれた当初、確かにですます敬語調だった。ところがどうだろう、ヒナがとあるアニメを見たその次の日から、なぜか口調がその中のキャラクターの一人に変わってしまったのだ。

彼女の適応能力が高いのか、それとも、ただ単に影響されやすいだけなのか。

 

『ボクは文化が大好きだからね。…なんていうか、色づいて見えるのさ。漫画とかアニメとか、とっても魅力的だ。』

 

ふふふ、と怪しく笑ってみせるジャック。どうやら某宇宙人マスコットの口調をコピーしたらしい。

一人称は『ボク』である。

ため息が出てしまう。辞書からそのまま取り出したような言葉を並べ立てる今までの喋り方とは、別の意味で違和感がすごい。宇宙人はよっぽど暇でお花畑な頭を持っているのだろう。

呆れるヒナに、ジャックはおかしそうに語り出した。

 

『こういうのは君たちのような現地人と仲良くなるきっかけにもなるしね。まさに『一石二鳥』だろう?』

「まったく、どこで覚えてくるのよ。そういう故事成語。」

『辞書を丸暗記さ。ついでに言えば、すでに世界各国の中央図書館を制覇済みだよ。』

「うそお!どうやって?」

『簡単だよ。データベース化して情報を一気に取り込む。以上。』

「非常識な…」

『外星人に常識は通用しないよ。無論、ボクは出来るだけここの常識に合わせようと努力するけどね。ほら、“郷に入っては郷に従え”。』

「…ふん。あなたが常識的になるのは一生無理よ。トランプの遊び方1000通りを1000人の人間相手に敢行する計画を立てるとか、一体どうしたらそんな時間の無駄を考えつくのか!目立たないように頑張ってたのに、お爺ちゃんお婆ちゃんに奇異の目で見られちゃったじゃないの……」

『……ボクへの鬱憤を晴らしてる大事なときに水をさして悪いんだけどさ、ヒナちゃん、そろそろ日が暮れちゃうよ?』

「え。」

 

ヒナが我に帰る。

一瞬、自分がどこにいるのか忘れかけていた。

自分の目の前にあるのは、色とりどりの着物だった。紺色に鹿子まだらの着物、華やかな赤の振袖、クチナシ色に小さな白の水玉の散った浴衣、作務衣、などなど。

そして今まさに自分が腕に抱えていたのは、雪の結晶の舞う水色の浴衣だった。

 

『それに決めたんだろう?早く貰っちゃいなよ。』

「うん。」

 

今頃、日本の政府関係者が必死になってヒナを捜索しているだろう。

総理大臣とコンタクトし、身体検査を終え、緩い…と見せかけてガチガチな監禁状態だったはずのヒナは、今置き手紙を一つ残して脱走していた。無論、ヒナも考えなしに最悪のタイミングで出てくるようなことはせず、自身の処遇も決まって最も落ち着いた状況での行動である。

しかし、ヒナはかつての人生で経験したことないほど最高に人を混乱に陥れる、もとい大迷惑をかけている自覚があった。

 

『フフフ、君も随分と大胆になったようだね。』

「うるさいよ。」

『“七日だけ、「西寺ヒナ」に自由な時間をください。お土産もって帰ってきます“、かい?いいねぇ、ボクは君の成長に感動したよ。』

「心にもないことを。」

『酷いな。本気だよ。』

「…まあいいけど。約束は忘れないでよ。ここの人たちに不審な気持ちを抱かせないように。緊急事態以外は乗っ取り禁止。」

『わかってるさ。』

 

そして、そんなヒナがいるのは「ど田舎の桑畑農家の老夫婦の家」だ。よもや警察も公安も予測できないだろう。本当に、適当にテレポートして、電車やバスを適当に乗り継いで、川を渡り、山を越えて、人の匂いをたどってテクテク歩いて行った先に見つけた古民家。そこの親切なおじいさんとおばあさんの家に上げてもらった。五日間が終わったら、東京へと戻って観光する予定だ。

 

ただ、それまでは緑が綺麗で虫のたくさんいる古民家で、のんびりさせてもらう予定だ。ヒナが家事や畑仕事を手伝う代わりに、寝床と三食を提供してもらっている。ヒナはそれだけで満足だったし、それでもちょっと申し訳なかった。いきなり転がり込んできた女子高生を、何も言わずに世話してくれる。なんと優しい良い人たちなのだろうか。

 

ところがである。

二日目の晩、ヒナが着物に興味があることを知ったおばあさんが、衣装箪笥のある部屋へ連れてきた。花の娘時代の晴れ着がたくさん、日の目を見ずに眠っている。好きなものを何でも貰って下さいとのこと。最初は遠慮したが、おばあさんの目力に押されて親切に甘えることにした。

 

そして。ちょうど、幼い頃の雪の日の思い出に浸りながら、着物の絵柄を選んでいたのである。

今着ている竹の模様の浴衣と合わせて、これで二枚目になる。

 

前回は、問答無用で呉服屋へ突入したジャックが選んだ。ならば、今回はヒナが選ぶ番だ。

あの時はジャックに「祭りに行きたかった未練」だの何だのと勝手に脳内をぐちゃぐちゃ掻き回されて、さすがに腹を立てた。けれども、ヒナに抗う力はない。普段はヒナの人格が表に出されているから忘れそうになるが、この体の最高主導権はジャックにある。

まあ、今は、あれでよかったのかもしれないと思っている。強引にでも“自分“と向き合う機会をくれたから。

ジャックのおかげで、見ているつもりで見えていなかった自分の心を、直視することができたから。

 

「あの、これ頂いてもいいですか。」

「ええ、ええ。似合っとるよぉ。」

 

隣の部屋にいるおばあさんへ、選んだ着物をもってゆく。おばあさんはにっこり笑って、それは従姉妹のお姉さんから譲ってもらったものであることや、初めて着付けした時に初めてお化粧をし、失敗したアイシャドウのせいでタヌキそっくりになってしまったことなどを次々に話してくれた。

その間、おばあさんはヒナが出した着物を片付ける。着物が手際よく畳まれ箱に仕舞われてゆく様子は、とても美しかった。

 

「あんたも綺麗ねえ。従姉妹の姉さんもお人形さんみたいだったけど、あんたは雪の妖精じゃあなかろうかい。」

「あは、まさかぁ。」

「そうねえ。しっかし、ほれ、鼻筋もすうっとしとるしさ。えくぼちゃんがこんなにかわいい。お団子がこんなに似合う子も初めて見たよぉ。」

「おばあさんだって。こんなに割烹着姿がかっこいい人は初めてですよぉ。」

「ふっふ。ありがとうねえ。」

 

脳みその片隅で、ジャックが何やらニンマリしている気配が感じられる。

いつもならちょっとムッとするところだ。けれども、今日は許そう、とヒナは思った。

 

その夜、縁側から外へ出かけた。

庭の木々の間を通って、広い畑へ歩いてゆく。

びゅうう、と夜風が顔に当たる。背後で、ゴウゥン、と木々の揺れる音が響いた。

静謐。

躍動。

ここは古民家。文化が細々息づく場所。香るのは、人と山と作物と動物と、命の匂い。

 

「あは。」

 

星の光が煌めいている。

こんなにも宇宙を近くに感じる。

こんなにも人間を強く感じる。

生命が、月のうさぎと共に跳ねるように生きている。

 

「あはは!」

 

バレリーナのようにくるりと一回転して、ヒナは走り出した。両手を広げて、驚いた小動物が転がるように走り出すのも、ジャックがオヤ、とニヤけるのも構わずに駆けてゆく。どこまでも。どこまでも。

 

「あはっあははは!」

 

全力で笑う。

生まれて初めて、解放された気分だった。

ヒナは今、人生で一番幸せだった。

 





おばあさんは親切にも、ヒナちゃん向けのアニメを見せてくれたようです。
ジャックの口調の元ネタは、一体なんでしょう?(なお、ハーメルンで作品の個別投稿蘭があるくらいには有名アニメな模様)
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