ひとりちゃん法廷に立つ   作:あるいてごろりと

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法廷所内の各席の配置について

法廷所入口となる扉を手前とした場合、
左右の壁際に高座の傍聴席
傍聴席からやや中央よりの左側に弁護側の席
同じく中央よりの右側に検察側の席
中央奥の壁際に高座の裁判官席
中央からやや入口よりに証言台
さらに入口近くの左側に被告人が座り、
その右側に証人が座る

被告人と証人の近くには、係官が配置


法定パート5

「らばーそーる・・・さん?

いえろ・・・?」

 

裁判長が証人の名前とスタンド名を聞いて戸惑っている。

裁判長は、どうにも横文字に弱い。

 

「言っただろう?

ラバーソールが俺の名前だ。

『イエローテンパランス』がスタンド名な。」

 

ラバーソールは、繰り返し教えたあとに黄色い粘性物質・・・、

つまりは、イエローテンパランスを体表で動かしている。

法廷所内は、ざわざわと騒ぎ出し始めた。

 

 

 

 

カッカッカッ!

 

 

 

 

「静粛、静粛に!

ラバーソールさん。

あなたは何のために花京院さんの姿をしていたのですか?」

 

「なんのためって・・・?

うーん、そうだなぁ。」

 

ラバーソールは、顎に手を当て首をひねった。

 

「証人、早く答えていただきたい!」

 

御剣が机を叩いてせっつく。

 

「検察側の言う通りです。

証人には、噓の無い答弁を求めます。」

 

裁判長の催促に焦りもしないラバーソールがニカリと笑い答えた。

 

「それはアレだよ。

『コスプレ』だ。

コ・ス・プ・レ。」

 

「こ、コスプレだと!?」

 

御剣が面食らった反応をする。

 

「そう、コスプレ。

ジャパニーズ文化ってやつだ。

俺の中では、話題沸騰で大人気なんだぜ?

日本の『花京院典明』はよぉ。

この国に来たら、まずやってみたかったのがそいつのコスプレなんだよなぁ。

まぁ、一回見てくれよ。」

 

ラバーソールが、顔にイエローテンパランスをまとう。

徐々にイエローテンパランスの色と形が変化していき、花京院さんの顔になる。

 

「な、なんの真似だ!」

 

御剣が遊んでいるであろうラバーソールに激昂する。

その言葉に動じない彼は、懐からさくらんぼを取り出して口にくわえた。

何をするつもりだ?

 

「これが『花京院典明』なんだぜぇ。

レロレロレロレロレロレロレロレロレロ。」

 

ラバーソールが舌の上でさくらんぼを転がし始めた。

法廷所内はあっけにとられる。

 

「なるほどくん、あれ・・・噓だよね?」

 

真宵ちゃんが僕に確認をとる。

 

「もちろんそうだよ。

空条さんの仲間があんなふざけたことをするはずがない。」

 

写真で見た花京院さんからは、上品な印象を受けた。

あのように食べ物で遊ぶことは、絶対にしない。

 

「やっぱり、あの人は花京院さんを馬鹿にしたいだけなんだね。

ひどい・・・。」

 

真宵ちゃんに限らず、僕や御剣など空条さんを知る人たちがラバーソールを軽蔑の

眼差しで見つめる。

 

花京院さんの姿を取っていたラバーソールが、イエローテンパランスを解除して再びその顔を見せた。

 

「なんだ?

どいつもこいつもしけた反応しやがってよ。

もしかして、今のが花京院の真似じゃないとか思っているのか?

言っとくが、人を見かけで判断するもんじゃねぇぜ?」

 

「確かに、見かけを偽る者は言うことが違うな。

偽物らしい、実に遠回しで臆病極まりない印象操作の手口だ。」

 

御剣が挑発をする。

 

「検事さんよ・・・、法で守られた安全な国だからって言ってもよ。

あんまり度が過ぎると痛い目見るぜぇ!

このビチ〇ソがぁ!!

おおっと、これはジョークだぜ、ジョーク。

安心安全な国でもやりすぎは良くないもんなぁ。

ガァーハッハッハッハッ!!」

 

豪快に笑うラバーソール。

こんな茶番は早く終わらした方がいいな。

 

「裁判長!

証人にスタンド能力の説明を要求します!」

 

裁判長は頷いた。

 

「証人、あなたの持つすたんど能力について説明してください。」

 

ラバーソールは、淡々と進行していく流れにつまらなそうな顔をした。

 

「興が冷めちまうな・・・。

このイエローテンパランスの能力はよ。

『変装』と『絶対的な防御力』だ。

それに・・・。」

 

ラバーソールの言葉がピタリと止まる。

 

「それに?」

 

裁判長が続きを促す。

ラバーソールは、傍聴席に座る空条承太郎を見て舌打ちをした。

 

「チッ。

・・・『捕食』だ。」

 

ラバーソールの発言に御剣が追及する。

 

「証人、『捕食』とはなんだ?

出し惜しみをしていたようだが?」

 

御剣がラバーソールを見下げるようにして発言した。

その言葉に、やつはギロリと御剣をにらみつける。

 

「何度も言わせるなよ、検事さんよ。

何ならここでお前をスタンドの餌食にしてもいいんだぜ?」

 

 

 

カッカッカッ!!

 

 

 

「証人、物騒な発言は控えるように。

それとすたんど能力の説明の続きをしてください。

裁判所の適法な命令に従わないことは、『法定侮辱罪』にあたりますぞ。」

 

ラバーソールは、心底めんどくさそうな顔をした。

 

「・・・ったくよ。

法で守られた安全ってのも窮屈で仕方がねぇや。

はいはい、分かったよ。

『捕食』は文字通り、このイエローテンパランスで食っちまうことだ。」

 

「何を食べるんですか?」

 

僕の質問に、ラバーソールがニヤリと笑う。

 

「生き物だよ、生き物。

全ての生物をじっくりじゅわりといっちまうのよ。

エネルギーを吸収するんだが、それを応用して攻撃を防いだりもできちまうんだぜ。

その上、熱も冷気も効かねぇ。

まさに、弱点の無い無敵のスタンドよ。

何だったら、味わってみるか?

成歩堂龍一よぉ。

くくく。」

 

随分、機嫌よくしゃべるもんだな。

 

「いえ、結構です。

その生き物を捕食するという能力。

突き詰めれば、『有機物』を吸収するということですね?」

 

にやけるラバーソールの表情が一瞬、固まった。

 

「・・・何でもいいだろうがよ。」

 

「証人、弁護人の質問にしっかりと答えるように。」

 

裁判長の指摘にラバーソールは舌打ちをする。

 

「チッ。

・・・そうだよ。」

 

やはり、そうか。

 

「なるほどくん、なんで分かったの?」

 

真宵ちゃんが尋ねてくる。

 

「僕が少し前に目覚めたあと、トイレに行ったんだ。」

 

「え!?」

 

彼女が驚いた表情をしていた。

あのトイレはしばらく使わないって言ったばかりだしな。

 

「ごめん、もよおしていたからそこはどうしようもなかった。」

 

僕の正直なトイレ事情を聴いた真宵ちゃんは両手を顔の前で振った。

 

「謝らないで、なるほどくん。

あの時は参事がトイレだったから行ってほしくなかっただけで、人の生理現象についてどうこう言うのもアレだし、それは仕方ないよね。

それでトイレがどうしたの?」

 

「トイレルームには、倒れた個室トイレのドアがあってさ。

そのドアの中心部にはえぐられた跡があった。

あとで、空条さんに聞いたらやつのスタンドがやった、って言ってたんだ。

今のスタンド能力の説明を聞いてあれだったのかと思ったんだけど、加工された木材を生き物と捉えるのは少し無理があるよね。」

 

「うーん。

確かに、何か違和感があるね。」

 

「そう。

ラバーソールが意気揚々と話をしたのは、そこまでなら大丈夫だと思っているからだ。

”なぜあれだけ能力の説明をしたのか”ではなく、

”どうしても他に隠しておきたい部分があった”んだよ。

僕の指摘が当たるかどうかは、やつの反応を見るまでは分からなかったけどね。」

 

「やー、手馴れてきましたなぁ。」

 

その褒め言葉を素直に受け取りたいけど、

これは僕だけのものではない。

 

「千尋さんのやり方を真似ただけだよ。」

 

真宵ちゃんは僕の表情をうかがったが、

ニコリと微笑んだ。

 

「うんうん、そっかそっか。」

 

何か納得したらしい。

謙虚な発言が自虐ではないか確認したのかな?

それを表情で判断できるなんて真宵ちゃん恐ろしい娘!

 

「成歩堂くん、能力についての質問はもういいでしょうか。」

 

裁判長が僕に確認をとる。

 

「問題ありません。

それでは裁判長、弁護側は証人に証言を要求します。」

 

裁判長は頷いた。

 

「いいでしょう。

どのような証言をしてもらいますか?」

 

「証人には、事件当時の自身の行動について話してもらいます。」

 

僕の言葉を聞いた裁判長はううむ、と考えこんでいる。

 

「成歩堂くん。

しかし、それはきっと先の証言と同じ内容ですぞ?」

 

「構いません。

証人が話してくれればそれでいいのです。」

 

ラバーソールが、おどけてWhy?のジェスチャーを取っている。

 

「成歩堂龍一よぉ。

意味がわからねーなぁ。

そんなことをしても時間の無駄じゃねーのかぁ?」

 

「証人はただ当時の状況を話せばいい。

あとは・・・我々が、正しい道をたどるだろう。」

 

御剣がラバーソールの意見を制するように言った。

 

「・・・ふん。

いいぜ、分からねぇようならもう一度話してやるよ。

このビチ〇ソどもがよぉ!」

 

「証人、あまり乱暴な言葉は・・・。

こ、こっちを睨まないでください。

それでは、早い所証言をお願いします。」

 

裁判長が、その場を逃れるようにしてやや早口で言った。

 

 

 

 

証言開始

~事件当日のラバーソールの行動~

 

 

 

 

「と言っても中身は何も変わらねーぜ?」

「俺はコンビニ西側の駐車場に車を停めた。」

「車から降りるときに、チケットを踏んづけたな。」

「一度、車の辺りをプラプラ歩いてまた戻ったんだよ。」

「黄色い靴の感触を味わって満足したからな。」

「そのあとは車内で、あの2人の告白シーンを見ただけだ。」

 

 

 

 

「・・・やはり、今までと同様の証言でしたな。」

 

「だろう?

だから、言ったんだよ。

こんな証言に意味はねぇってな。」

 

裁判長の言葉に、ラバーソールは同調する。

 

「成歩堂くん、よろしいですか?」

 

「はい。」

 

僕の返事を聞いた裁判長は頷いた。

 

「それでは、始めてください。

尋問を・・・。」

 

 

 

 

尋問開始

~事件当日のラバーソールの行動~

 

 

 

 

「ラバーソールさん、あなたは車を降りてプラプラと歩いてたそうですが・・・。」

 

「ああ、そうだよ。

それがどうしたんだよ、おい。」

 

僕は机を叩いた。

 

「その時に監視カメラのケーブルを断線したのではないですか?」

 

「なっ・・・!

・・・どうやったって言うんだよ?

そのケーブルの断面は、ペンチやニッパーで切ったものでもないんだろ?

適当言ってんじゃねぇぞ、あぁん!?」

 

感情を込めて強気の発言をするラバーソール。

しかし、僕は極めて冷静になっていた。

 

「あなたのそのスタンド・・・『イエローテンパランス』は、有機物を捕食する能力を持っています。

有機物、つまりは炭素を含むものなら捕食対象は生物に限ったことではありません。」

 

御剣が資料を手に取り、目を通しながら説明する。

 

「監視カメラのケーブルの構造は中心部から、電気を伝える『導体』、導体を覆い事故を防ぐ『絶縁体』、その絶縁体の保護をする『外皮』の3つの素材で出来ている。

導体には銅やアルミニウムなど無機物が使われるが、絶縁体や外皮の材質はゴムやプラスチック・・・つまりは有機物が使われている。

よって、証人のスタンドの捕食対象となるわけだ。

残った細い導体は、子供用のハサミでも切れるだろう。

恐らく車内にでも取ってあった工具かハサミを使ったものと思われる。」

 

「さて、ラバーソールさん。

あなたのスタンドで電源ケーブルを捕食した場合、どんな断面ができるのでしょうか?」

 

御剣の説明を聞き、僕の問いを受けたラバーソールの額には汗が滲んでいた。

 

「ケーブルなどすぐに用意できるだろう。

証人、何だったらここで検証してもいい。

お付き合い願おうか?」

 

御剣の言葉にラバーソールが怒りを滲みだす。

 

「テ、テメェら・・・。

だがよ、監視カメラは動いていたんだろ?

通電中のケーブルの導体をハサミで切断すれば感電するはずだ。

コンビニ入り口でビリビリしびれている男がいれば、いくらなんでも店内のやつらだって気付くはずだろう?」

 

ラバーソールの言葉を僕は否定する。

 

「いいえ。

あなたはそれを回避出来るはずです。

ラバーソールには、エネルギーを吸収する能力があります。

加えて、熱も冷気もきかない。

それにあなたはこうも言いました。

『弱点の無い無敵のスタンド』と。

そうなれば、イエローテンパランスに電気は効かない上に、そのエネルギーすら吸収されることは容易に想像できます。

方法としては、刃先をスタンドで纏って切ればいいだけのことです。

それと・・・。」

 

「なんだぁ?」

 

間をおいたために、ラバーソールがじれったそうに聞いてくる。

 

「あなたがなぜ、電源ケーブルの切断面が普通でないことを知っているのでしょうか?」

 

この言葉を聞いてやつは、明らかハッとした表情をしていた。

 

「そ、それはよ・・・。

あれだ、駐車場から見たんだよ。」

 

これを聞いた御剣が言葉を挟む。

 

「証人は先の証言で、電源ケーブルの状態については分からなかった、と言っていた。

なぜ、ケーブルの様子が分からなくて断面が分かるのだろうか?」

 

「ぐっ!」

 

ラバーソールがうめき声を出す。

 

「それと、もう1つあります。」

 

僕が言葉を付け足した。

 

「な、なんだ!?」

 

僕の言葉を聞いたラバーソールが動揺する。

 

「オインゴは最初の証言で、おにぎりの陳列棚から店外にある監視カメラのケーブルの断線を見たと言いました。

すぐにその位置からは、カメラは見えないということで訂正しましたが、あの発言は不自然です。

恐らくですが、彼がおにぎりの陳列棚から外を見たのは事実だったのではないでしょうか?

そして、彼にはそのすぐあとにケーブルが断線されることは分かっていた。

なぜなら、監視カメラのケーブルを断線する役割を持った人物が、入口近くで彼の合図を待っていたからです!」

 

 

 

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

 

 

 

ざわざわと法廷所内が騒ぎ出す。

 

 

カッカッカッ!

 

 

「な、成歩堂くん!

それは、証人とオインゴさんが共犯者であることを示す内容ですぞ!」

 

僕は頷いた。

 

「ええ、そのつもりです。」

 

裁判長はううむ、とうなったのちに証人へと意見を求めた。

 

「証人、弁護側と検察側の意見はあなたが店外に設置してある監視カメラのケーブルを切ったであろう、十分な根拠があるように思われます。

それに、オインゴさんと共犯したであろうことも。

弁明はできますか?」

 

裁判長の催促に、ラバーソールはさらに額から汗を流す。

 

「く、くそおう!

・・・そうだ。

俺は監視カメラのケーブルを切ったんだ。」

 

「そうなると、あなたは罪を認めたことになりますよ。」

 

裁判長の言葉を聞いて、やつの呼吸が少し荒くなる。

 

「フゥー、フゥー・・・。

ああ、仕方がねえ。

認めるぜ。

ただしよ・・・。

罪は1つ、だ。」

 

ラバーソールは、ニヤリと笑みを浮かべた。

1つ?

 

「ラバーソールさん。

どういう意味でしょうか?」

 

「ふん、成歩堂龍一よぉ。

俺がやったのは、監視カメラのケーブルを切ったということだけだ。

ついおいたが過ぎたのよ。

しかし、俺が単独でやったことだ。

店内からの合図なんて知らねぇな。

もちろん、お前の言ったその絵空事に、根拠は違和感以外ないんだろう?

テキトーぶっこくんじゃねぇよ。

だから、俺がやったのは1人でしたケーブルの断線だけよ。

つまりは、その後の2人の告白自体は何も変わらねぇ。」

 

やつはあくまで共犯者ではないと、白を切りたいらしい。

その上、自身への刑は軽いもので済ませようとしている。

ここで終わらせはしない。

 

「ラバーソールさん。

1つ聞きたいのですが、そのあとも店内には入っていないのですね?」

 

「そう言っているだろうが!

なめたこと聞いてんじゃねぇぞ!

この田ゴ作がァー!!」

 

大きな声に若干ビビってしまう。

 

「しょ、証人!

ですから、乱暴な言葉はやめてください。」

 

やつは裁判長の顔など見もしない。

 

「な、成歩堂くん。

証人の証言では、店内に入っていないと言っていました。

事実、店内の監視カメラには彼の姿が映っておりませんぞ。」

 

「裁判長、監視カメラの映らない所が店内には二か所あります。

1つはお手洗い場、もう1つは・・・スタッフルーム内です。」

 

裁判長が驚いた声をあげる。

 

「成歩堂くん、あなたは証人が鍵のあいたスタッフルーム内に入ったと思うのですね。

それは何故でしょうか?」

 

矢張がカギを開けたまま外出したのは、あいつの証言にあった通りだ。

 

「真宵ちゃん、矢張のやらかしたぽかは何だっけ?」

 

「ええと、スタッフルームの外に出る扉と金庫のカギをかけなかったことだね!

あと、レジ側の扉も少し開けたままだって言ってたよ。

あたしは、バイト初日のひとりちゃん置いて外出したのもぽかだと思うよ。」

 

改めて考えてもオープンすぎだろ。

そして、真宵ちゃんの意見にも同意だ。

裁判長の質問に僕は答える。

その理由は1つしかないはずだ。

 

「金庫にしまってあった現金、ですよ。」

 

金庫にカギがかかっていなかったのは、たまたまかもしれない。

けれど、ラバーソールの顔がかすかに歪んだのを見た。

裁判長が僕に口を開く。

 

「し、しかし証人の靴はライブチケットに跡を残すような状態でした。

そのような靴で店内に入っては、そこら中靴跡だらけになるのではないでしょうか?」

 

「そ、そうだ!

言っておくが、このお気に入りの靴を脱いだ、なんて野暮な考えは口に出すんじゃねーぞ?」

 

裁判長の言葉を聞いたラバーソールがそれに乗っかった。

それについては、答えは容易に想像できる。

 

「いいえ、その靴は履いたままですよ。

ただし、靴の裏面にスタンドを貼り付ければいいのです。」

 

僕は続けて言う。

 

「あなたの身につける衣服にスタンドの能力である捕食は作用しないみたいですね。

靴底だって同様でしょう。」

 

僕に続いて、御剣が語る。

 

「コンビニの店内のタイルは、セラミックス・・・無機物で出来ている。

よって、スタンドが床面に触れても影響は無いと思われる。」

 

「ラバーソールさん。

あなたは痕跡を残さないようにしてスタッフルーム内へと入った。

それはうっかりなどではありません。

何か良からぬたくみを持って侵入したのです!!」

 

「フゥー、フゥー・・・。

な、なるほどう・・・。

 

フゥー、・・・ふん。」

 

指摘に明らか動揺をしたラバーソールは、急に落ち着きを取り戻した。

 

「結局のところよぉ。

お前が言ったのは、靴跡という証拠を残さないためにスタンドを使ったということだろう。

それじゃあ、足りねぇな。

おい、検事さんよ。

立証のために必要なものはなんだったけなぁ?」

 

余裕の笑みで御剣に話しかけた。

 

「・・・証言、それに物的証拠だ。」

 

「そうかそうか!

じゃぁ、見せるか聞かせてくれよぉ。

俺がスタッフルーム内に入ったか、金庫の金を盗んだという証拠をよぉ!」

 

「・・・ラバーソールさん、あなたは勘違いをしています。」

 

「な、なんだと?」

 

「僕らは監視カメラのケーブルの断面から、あなたがスタンド能力を使用したことを特定しました。

そして、あなたはそれを認めた。

それさえ認めれば、もう済んだものと思っているのかもしれません。

現状、スタッフルーム内で靴跡を残さないためにスタンドを使用したことは立証できていませんから。

しかし、もう一つあるのですよ。

スタンド能力を使用したと思われる跡がね。」

 

「なにぃ!?」

 

「成歩堂くん、ではその証拠品を提示してもらいましょう。

それはすぐにここで受理できるものでしょうか?」

 

裁判長の言葉に僕は頷いた。

 

「ええ、可能です。

なにせ、肌身離さず身につけているものですから。

被告人がね。」

 

「ひ、被告人がですか?

それは一体・・・。」

 

「彼女が着ているジャージです。」

 

「ジャージ・・・?

どういうことだ?」

 

御剣が疑問を口にする。

 

「彼女が着ているジャージの襟もとをご覧ください。」

 

一同の視線が自分に集まったために、後藤さんはあたふたしている。

 

「ふむ。

なにやら大きな穴が開いているようですな。

これが何ですか?」

 

裁判長の言葉に僕が答える。

 

「その襟もとの穴は不思議なものです。

切ったわけでも引きちぎったわけでも焦がしたわけでもない。

まるで・・・先ほど話に出た監視カメラのケーブルにできた断面のようです。」

 

あれは後藤さんの裁判初日に控え室でした会話。

彼女は自身のジャージを指して言っていた。

『いつの間にか襟もとに穴が開いていた』と。

 

「勤務時間中は、コンビニの制服を着ているためそのジャージはスタッフルームの荷物置き場にありました。

犯人は、何か理由があってその襟もとに触れてスタンド能力を使用したのでしょう。」

 

僕の言葉を聞いた裁判長が訝しげな顔をする。

 

「・・・しかし、成歩堂くん。

どうして証人がそのジャージの襟もとに触れたのでしょうか?

それと何故すたんど能力は発動したのでしょうか?

説明を求めます。」

 

「はい。

後藤さんのジャージは、彼女のバッグに入っていました。

犯人は金庫の金を盗んだのちに、恐らく荷物置き場のバッグには彼女の財布があるだろうと目をつけたのでしょう。

そのバッグに片手を入れる際に、ジャージに指先が触れたものと思われます。」

 

「ふむ。

すたんど能力は何故発動したのですか?」

 

「音を聞いたのでしょう。」

 

「音?」

 

裁判長がキョトンとした。

 

「ええ。

被告人は、脅迫されてレジに戻ったのちにガラスの製品を落としました。

そのときの、甲高い音がスタッフルーム内にいる犯人の血流を一気に跳ね上げました。

ジャージの襟もとに触れたまま、スタンドはそこで無意識に発動したんです。」

 

「で、でたらめ言うんじゃねぇよ!!

そんなクソみてえな話進めたって意味ねぇだろうが!!

その話は止めだ!!」

 

裁判長が首を横に振る。

 

「証人の意見を却下します。

弁護人、続きを。」

 

「ジャージの素材はポリエステル、有機物です。

スタンドの捕食対象となります。

スタンドで彼女のジャージの襟元を食い破ったあと、音に驚いた犯人はバッグに現金を突っ込んで一度逃げ出しました。

後藤さんは、扉が閉まるような音を聞いています。

それと、通報後に彼女はスタッフルームへと入り自分のバッグに大量の金があるのを見ています。」

 

「ちょっと待てよ、成歩堂龍一!

そんなジャージの穴なんか虫食いに決まっているだろうが!!

扉の閉める音だって、何かの聞き間違いだろうよ!」

 

ラバーソールが抗議する。

 

「虫食いの穴は簡単に視認できるほど、あそこまで大きくはならないでしょう。

それと、扉の閉める音が聞き間違いだと言うのなら教えてください、その根拠をね。

あなたも現場近くにいたのですから、その音を聞いていたとしてもおかしくないはずです。」

 

「ぎぃっ!

・・・そこまで言うなら聞かせてみろよ、『証言』をよ。」

 

ラバーソールが一瞬ひるんだのちに、強気の姿勢を見せた。

・・・これはまずいな。

 

「知っているんだぜ?

証言台で発言しなければ、ただのおしゃべりになっちまうってよぉ。

今話したようなお前とあのガキの会話の内容なんざ、証言にもなりゃしねぇんだよ!」

 

「なるほどくん、この流れって・・・。」

 

真宵ちゃんが僕に不安な表情を見せる。

彼女がそう思うのも無理はない。

 

「うん、このままだと後藤さんが証言台に立つことになるな。」

 

僕らがこう話していると裁判長が口を開いた。

 

「成歩堂くん、突然色々と話が出ましたが、私は事実の究明のためにも被告人から証言をするべきだと判断します。

いかがでしょうか?」

 

「・・・・・・いや、その。」

 

「ど、どうしたのですか弁護人!

なせ、急にそんなにしおらしくなるのですか!?」

 

僕と真宵ちゃんは悩んでいた。

後藤さんが証言すること自体は良い。

むしろ、事態が好転する可能性だって大いにある。

しかし、彼女が証言台に立ったとき・・・。

 

僕は留置所で、彼女から聞き込みをしたときを思い出した。

僕の額からは汗が流れ出ていた。

 

後藤さんが泡を吹いて証言どころじゃなくなったらどうしよう。

 

「弁護人・・・、このままでは告白されたということで判決を下さねばなりません。」

 

見ると、ラバーソールがニヤニヤしている。

ぐっ、やつは後藤さんの性格まで理解しているのか。

僕と真宵ちゃんが何か案を出そうと、頭を抱えているときだった。

 

 

 

 

「ま、待った!」

 

 

 

 

後藤さんは被告人席から立ち上がり声を出した。

 

「わ、わたし・・・話します。

じ、事件のあった日のことを・・・全て。」

 

「後藤さん・・・。」

 

「ひとりちゃん・・・。」

 

後藤さんは、一瞬だけこちらを見て頷いた。

目は合わなかったが、僕と真宵ちゃんの間ぐらいに視線があったと思う。

どうやらやる気らしい。

 

「なっ・・・。」

 

ラバーソールがあっけに取られている。

 

裁判長が頷いた。

 

「それでは、被告人。

御剣検事と取りまとめたのちに、証言をお願いします。」

 

「は、はい。」

 

後藤さんは、頷いた。

 

 

 

後藤は震えていた。

ライブでも緊張するが、今回人前に立つのは自分の命がかかっていることだ。

自身の発言によって、これからも人生を歩めるかが決まる。

仲間との練習やライブだって、一歩間違えれば二度とできないかもしれない。

 

 

(そんなのは、絶対に嫌だ!!)

 

 

気持ちを胸中にて吐露したのち、後藤は最近関わりを持った弁護士や霊媒師、検事達の顔を思い浮かべる。

もし死刑判決を受ければ、彼らの努力も水の泡になる。

後藤は、胸に手を置いてギュッとこぶしを握った。

 

休憩が終わり、裁判が再び始まる。

彼女は意を決して、証言台に向けて足を踏み出す。

 

(心臓の音がうるさい。)

(のどがカラカラだ。)

(でも、引き下がるわけにはいかない。)

 

少し前には無かった、強い決意を持ってして―――

 

 

 

 

後藤ひとりは法廷に立つ。

 

 

 

 













突然描くショートifストーリー。

『ぼっちちゃんと呼ぶ、緊張しいのなるほどくん』


ナルホド
「(言うんだ、言うんだ~。
バイトと
ギターを今後も頑張るためにも
ぼっちちゃん頑張って証言してって言うんだぁ~!)」


ナルホド
「バッ!ギッ!ボッ!」


キタ
「突然のヒューマンビートボックス!?」ガタッ

マヨイ
「傍聴席からツッコミが!?」
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