ひとりちゃん法廷に立つ   作:あるいてごろりと

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コンビニのレジと監視カメラについて

レジは2つ
天井には、それぞれのレジの真上よりやや中央寄りに監視カメラが設置されている。
カメラは、それぞれのレジ周辺を少しだけ斜めからの視点で録画している。
これには、現金を収納するキャッシュドロアとそこからお金を出し入れする店員の手元が見れるようにするため。
2つのレジの間には、スタッフルームへと入れる右開きのドアがある。
後藤ひとりが事件時に使っていたのは、お客から見て左側のレジ。


最終パート 後藤ひとりの判決

 

 

 

「お姉ちゃーん、どうして透明な板の向こうにいるの?」

 

警察がここにいるように言ったからだよ。

 

「ふ~ん。

おとーさんとおかーさんは、なんで泣いているの?」

 

わたしがしばらく帰らないからだよ。

 

「おとまりするんだ?

ふたりもそっちにいきたーい!」

 

ふたりは来たらだめだよ。お父さんとお母さんのそばにいてあげて。

 

「えー、それならお姉ちゃんも家で一緒にいようよー。」

 

だめ。

帰ったときに遊んであげるから待っていなさい。

冷凍庫にあるわたしのアイス、食べていいから。

 

「わーい!お姉ちゃん、帰ってきたら絶対遊ぼうね!約束だよ?」

 

・・・・・・。

 

「お姉ちゃん?」

 

うん、約束。

わたし、絶対に帰ってくるから。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

9月18日 午後4時8分

地方裁判所 第1法廷

 

 

 

カッ

 

 

 

裁判長が木槌を叩いた。

 

「それでは、審理を再開します。

被告人、準備はよろしいでしょうか?」

 

裁判長が後藤さんに呼びかける。

 

「はっ・・・はい。」

 

後藤さんの返事を聞いて、裁判長は頷いた。

 

「被告人、身体をリラックスさせて下さい。

発言は、ゆっくりで構いません。

では・・・、お願いします。

証言を。」

 

「はっ・・・い。」

 

 

 

 

証言開始

~被告人が伝えたいこと~

 

 

 

 

「わっ、わたしは事件の日に・・・花京院さんの姿をした人から店外で話をしないか、と誘われました。」

「スターリーのお客さんみたいで、わたし達のバンドのファンだとも・・・。」

「嬉しくってついていきました。チケットもその時渡しました。」

「あ、あの人・・・チケットを目の前で握りしめました・・・。それは地面に投げられて・・・。」

「その人の手が、わたしの顔の横の壁に叩きつけられました。」

「バ、『バンドを辞めろ。それと投稿サイトに自分のギターをたたき割る動画を出せ。』

『もちろんお前のアカウントでだ。やらないなら、仲間の関係をぐちゃぐちゃにしてやる。』と、言われました。」

「さ、最後に・・・ガラスの製品を渡されて会計しろと・・・。」

「わたし・・・、頭の中は言われた言葉ばかりで・・・。」

「・・・わ、割れる音が聞こえて、レジでその製品を落としたことに気が・・・つきました。」

「うっ・・・・・・。」

 

 

 

 

後藤さんの声が止まってしまった。

 

「被告人・・・?」

 

裁判長がたまらず声をかける。

 

「・・・だ、大丈夫です。

ち、ちょっとえづきそうになっただけ・・・です。

ま、まだ・・・終わってません。」

 

裁判長が頷いた。

 

「・・・では、続きを。」

 

真宵ちゃんは両手の指を絡めて握りしめ、小さく声を出す。

 

「頑張れ、ひとりちゃん。」

 

僕も同じ想いだ。

 

 

 

 

証言続行

~被告人が伝えたいこと~

 

 

 

 

「そ、その時に後ろから『バンッ』という、扉の閉まるような音が聞こえました。」

「わたしは、そのあと通報されました・・・。」

「警察の人が、来るまでの間、気持ちを落ち着かせようとしてスタッフルームに行きました。」

「びっくりしました。さ、札束が私のバッグの中に入っていて・・・。」

「他のお客さんが来たので、気が動転したままレジに行きました。」

「ま、またスタッフルームに行くと札束は無くなっていました。」

「そのときは、幻覚かと思っていました・・・。」

「ジャージは、勤務時間中はバッグの中に入れています。」

「当日、出かける前に家で鏡を見て確認したので、その時には穴は開いてなかったです。」

「終わり・・・です。」

 

 

 

 

言い終わると後藤さんは、証言台の手すりにもたれかかって深呼吸をしている。

表情はかなり辛そうだ。

 

よくぞ、よくぞ言い切った。

僕は、自分が拳を強く握りしめていることに気づいた。

隣の真宵ちゃんは、瞼と口元に力が入り瞳がうるんでいた。

 

「・・・被告人。」

 

裁判長が重たく口を開く。

 

「はっ、はい。」

 

後藤さんは、手すりにもたれかかった状態で顔をあげて返事をする。

裁判長は、目をつむり首を左右に振った。

 

「・・・いえ、失礼。

通報後にスタッフルーム内に入ったのはなぜでしょうか?」

 

「は、はい。

バッグの中にある写真を見て元気をもらうためです。」

 

「ほう、写真ですか。

どのようなものか聞いても?」

 

裁判長が後藤さんに尋ねる。

 

「え、ええ。

アーチスト写真というもので、たくさんバッグの中に入れていました。」

 

「たくさん・・・ですか?」

 

後藤さんは頷く。

 

「お、同じ写真を200枚ほどです。」

 

「にひゃっ・・・!」

 

裁判長が驚いた声を出す。

何かデジャヴだ。

裁判長は、咳払いをする。

 

「ごほんっ。

成歩堂くん、質問はいいでしょうか?」

 

「はい、十分です。

ありがとう、後藤さん。」

 

「いっ、いえ。

お、お願い・・・します。」

 

「ええ、引き受けました。」

 

後藤さんは、息を整えてふらふらと被告人席に戻って行った。

再びラバーソールが証言台へと立つ。

裁判長が、ラバーソールに声をかける。

 

「証人。」

 

「ああ?」

 

ラバーソールはぶっきらぼうな態度を取る。

 

「被告人の証言は、告白ではなく脅迫であると十分捉えられる内容でした。

その上、一部では先程成歩堂くんが発言したスタッフルーム内の状況とも一致しています。

何か、弁明はありますか?」

 

ラバーソールが目をつむって腕を組み、首を傾けて考えている。

真宵ちゃんが僕の方をちらりと見る。

 

「なるほどくん、これで終わるかな?」

 

「いや、まだだよ。」

 

「え、どうして?」

 

「やつはまだ共犯者であることを認めていない。」

 

「あ、そっか。」

 

「それに、何か違和感がある。」

 

「違和感って?」

 

僕は、黙って考えている様子のラバーソールを見る。

 

「少し前よりおとなしくなってないかな?」

 

真宵ちゃんも彼に目を向ける。

 

「あー、確かに。

でも、それはひとりちゃんの証言が予想外でこたえたからじゃないかな?」

 

「そうだといいけど・・・。」

 

ラバーソールの目が開き、首を戻す。

考えがまとまったようだな。

 

「そうだなぁ。

聞きたいことがあるぜ。

今のガキの話によぉ。

”俺”はどこに出てきたんだ?」

 

ここは、野放しにはできない。

僕は机を叩く。

 

「ラバーソールさん!

先程の弁護側の指摘と被告人の証言を照合すれば、スタッフルーム内にあなたが入ったのは明らかです!!」

 

ラバーソールが困った顔ではにかむ。

なんだ、あの感じは・・・。

 

「判断した理由は、扉の音とジャージの穴だろ?

1つずつ言うけどよ。

スタッフルームから外へ通じる扉は元からカギはあいてたんだよな?

だとすれば、店のやつが外出したときにわずかにでも開いたままになっている可能性はあるわけだ。

そうなると、風でタイミングよく音を立てて閉まったのかもしれねぇじゃねぇか。」

 

御剣が割って入る。

 

「しかし、金庫にあった現金は被告人のバッグに一度入っていた。

スタッフルーム内に入ったことは言い逃れできまい。」

 

ラバーソールはうんざりした顔をしている。

 

「人が話しているんだから、最後までちゃんと聞けよ。

大体、その金の話だってよ。

”誰”がやったんだよ?」

 

やつの言葉に御剣が続けて言う。

 

「その場にいて金庫の現金を運び、なおかつあのようなジャージの穴を開けられた人物は証人しかいないだろう!」

 

「そうか?

あのガキの話じゃあよ、穴が開いていないことを確認したのは家を出る前だろう?

つまりは、コンビニに行く途中で開けられた可能性だってあるだろうよ。」

 

「し、しかし、コンビニ外であのような穴を開けられるタイミングなど、ないのではないか!?」

 

ラバーソールが冷静な表情で口を開く。

 

「いやー、そうでもないぜ?

あのガキがどっから来たのか知らねぇが、例えば電車とかなら機会はいくらでもあるだろ?

そうそう、言ってなかったけどよ。

俺も事件の日に、コンビニに行った時の車はレンタカーでさ。

その前に、電車に乗ってんだよね。」

 

なっ・・・。

何を言い出すんだやつは。

根拠もないことを淡々と語り出した。

はっきり言って無茶苦茶だ。

だが、やつの狙いが分からない。

 

御剣がやつの話を聞いて、言葉を返す。

 

「いい加減なことを言わないでもらおうか。

これ以上の言い訳は見苦しいだけだと思うが?」

 

ラバーソールは、なおも焦りを見せない。

 

「いやー、ほんとなんだよ。

どこだったかねぇ。

何せ、日本に来て日が浅いからなぁ。

乗った時間だってコンビニに行ったときより、前の時間だったのは間違いないんだけどよ。」

 

御剣が机を叩く。

 

「証人、ふざけないでもらいたい!」

 

「いやいや、ふざけてないし大真面目だよ、俺は。

あっ、そうだ。

駅構内の監視カメラで調べてくれねぇかな?

世田谷区内にある電車を全て調べればわかるだろう?

それに、ガキのジャージの穴を調べたいなら、外でそいつが映っている監視カメラを探すべきじゃないか?

そこに映っている時点ですでに穴開きかもしれないだろ?

それが見つかれば、俺は身の潔白を証明できたわけだ。」

 

裁判長が、考えている様子だ。

 

このとき僕は、ラバーソールが法廷所内の壁にある掛け時計を見てニヤリと笑うのを見た。

時間は、午後4時30分を過ぎていた。

 

「あっ!」

 

「ど、どうしたの?なるほどくん。」

 

真宵ちゃんが僕の声に驚いて尋ねてくる。

 

「やつの考えが分かった。」

 

「えっ・・・?」

 

「午後5時までに終わらなければ、この裁判は次回に持ち越しになる。

監視カメラを調べてほしいなんて時間がかかることを言っているのだから、なおさらそうなりかねない。

 

それと、今のやつの発言には事態をひっくり返すような力はない。

きっと、もう打開する策は無いはずなんだ。

なのに、これだけ無駄に話を続けて次回に持ち越そうとしているのは・・・。」

 

真宵ちゃんがピンと来た表情をした。

 

「それって、観念したから次の裁判が始まるまでに”逃亡”しようっていうこと!?」

 

「うん。

そうとしか思えない。」

 

ラバーソールはスタンドをまとって、変装ができる。

いくらでも大衆に溶け込むことができるのだろう。

 

「ずるい!

ひとりちゃんが、あんなに頑張って証言したのに・・・そんなの卑怯だよ!」

 

真宵ちゃんが頬を膨らませてラバーソールをにらみつける。

やつは、弁護側には見向きもしていない。

 

今のあの冷静な様子は、逃亡することを腹に括ったからではないか。

まずい、このまま証人を逃がしては後藤さんの判決がいつになるか分からなくなるかもしれない。

いや、むしろそれが狙いか!?

それに、一般人を装ったラバーソールの存在は、考えるだけでも危険な予感がする。

最悪、自分の優位性を崩した後藤さんに報復するのかも。

絶対に、阻止しなればならない。

 

僕は目を閉じて、考えを巡らした。

思い出すんだ。

今までの証拠品を。

今までの証言台に立った者の発言内容を。

どこかにあるはずだ。

残り20分と少しでこの裁判に勝訴する道が。

後藤さんの証言は、立証するのに必要な散らばったパズルを大分埋めてくれた。

あと必要なピースは・・・、ラバーソール自身の痕跡という一つだけ。

どんなに小さなものでもいい。

それがやつだと判断できるものであれば、パズルは完成する。

この裁判は終わりを迎えることができる。

その一かけらを求めて、僕は思考する。

 

ラバーソールは、これまで突きつけた発言を”確かじゃない”からという理由でしのごうとしていた。

唯一、認めたのは監視カメラのケーブルにあったスタンドで捕食した断線跡。

スタッフルーム内にも同じような痕跡はないだろうか。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

「真宵ちゃん、質問があるんだけど。」

 

「どうしたの?」

 

「例えばだけど他人のバッグの中身を見て、200枚の同じ写真が入っていたらどう思う?」

 

「うーん。

ひとりちゃんには悪いけど、正直引くと思うなぁ。」

 

真宵ちゃんが苦笑する。

 

「その話に加えてスタンド使いが写真200枚という、もはやスタンドと言ってもいいほどの超常現象らしからぬ物を見たらどれぐらい引くかな?」

 

「結構な物言いだね、なるほどくん。

その例えだと、見た人が知らなきゃスタンドから攻撃されてるかと思って慌てて後ずさりするかもね。」

 

「僕もそう思うよ。」

 

確実にそうであってもらいたい。

見ると、裁判長とラバーソールの会話は終わりを迎えようとしていた。

 

「ううむ、正直発言内容は苦しいですが。

確かに、被告人のジャージの穴は、事件当日のいつどこで開いたかはっきりとは分かっていません。

しかし、証人。

調査をしてあなたが駅にいないと判明したとき、それとレンタカー会社に問い合わせてあなたが車を借りていないと報告を受けた場合、あなたの発言は信用性を無くすことになりますぞ?」

 

ラバーソールは、晴れやかな表情をしていた。

 

「ああ。それで構わねぇよ。

どうぞ、みっちり調べてくれ。」

 

僕は、机を叩いた。

裁判長が、突然の行動に驚く。

 

「な、成歩堂くん。どうしたのですか?」

 

「裁判長!それ以上の調査に意味はありません!

弁護側は、この場で犯行を示す証拠品を提示します!」

 

裁判長が目をパチクリとさせる。

しかし、真剣な表情にすぐに戻った。

 

「・・・分かりました。

では、掲示してください。

犯行を示す証拠を。」

 

僕は胸を張って答える。

 

「それは・・・『カメラ』と『靴跡』ですよ。」

 

「『カメラ』と『靴跡』・・・ですか?」

 

裁判長がピンとこない様子で問いかける。

 

「はい、説明します。

レジからスタッフルーム内に入るとき、右側手前には金庫。

左側手前には、荷物置き場がありました。

今までの証言や証拠から推測するに、犯人は最初に金庫に向かい、その後現金を抱えたまま荷物置き場にいったはずです。」

 

ラバーソールが、声を荒げる。

 

「おいおい、だから俺がそこにいたっていう証拠はねぇだろうが!!

靴跡だって、誰かも分かっていないだろうがよ!!」

 

「証人、弁護側は別に『犯人』としか言っていない。

それとも、キミが荒ぶる理由があるのだろうか?」

 

御剣が腕組みをして、ラバーソールを制する。

 

「・・・クソが。」

 

僕は説明を続ける。

 

「後藤さんのバッグに現金があったことを考えれば、逆はないはずです。」

 

「しかし、成歩堂くん。

その犯人の動線とカメラに何の関係があるのですか?

スタッフルーム内には、監視カメラはないですよね?」

 

僕は頷いた。

 

「ええ、確かにスタッフルーム内にはカメラはありませんでした。

ですが、その日だけ・・・スタッフルーム内をわずかにカメラで映す環境ができていたのですよ。」

 

これはハッタリにすぎない。

なにせ、確認したものではなく推測で言っているのだから。

だが、胸を張っていよう。

 

「そ、その環境というのは・・・。」

 

裁判長が尋ねる。

 

「矢張は証言台で言っていました。

レジからスタッフルームに入るドアを少し開けていた・・・と。」

 

御剣が僕に対して口を開く。

 

「それは・・・レジ側にあるカメラがドア付近を通った犯人を録画したということか。

少し開いたドアの隙間から!!」

 

その言葉に僕は頷き、話を付け加える。

 

「それと、犯人が扉の前に残したと思われる『靴跡』ですが、かかとの部分は金庫側を向いています。

つまり靴の先端は荷物置き場を向いていた証拠です!!」

 

ざわざわと法廷所が騒ぎ出す。

 

 

 

カッカッカッ!

 

 

 

「静粛に、静粛に!!」

 

裁判長の言葉の後に、ラバーソールが発言する。

 

「成歩堂龍一よぉ。

つまり、金庫から荷物置き場に直進したときに店内の監視カメラに映った、と言いたいんだろう?

けど、ちょっと左を見ればドアが開いている様子なんて視界に入るんだからよぉ。

その犯人とやらの肩を持つわけじゃねぇが、それを知っててドア付近を直進するような馬鹿はいないんじゃねぇか?

『靴跡』だってドアの前についたのは違う日にちかもしれねーよな。

それに、その『靴跡』はもしかしたら犯人のものかもっていう予想でしかないんだろ?」

 

ラバーソールの余裕の表情は崩れない。

やつは少し開いたドアに気づいていたのか。

そして、もしかしたらその隙間から誰かに見つかるかもしれないとやつは考えた。

恐らく、ドアを閉めるのは店内の監視カメラに録画される可能性を考慮してためらわれたはず。

そうなると、やつは金庫から荷物置き場に行く際、ぐるっと迂回して通ったのだろう。

距離をあけて通れば、ドアの隙間から一瞬姿が見えたとしても目立たない。

そうなると確かに、ドアの前には『靴跡』はつかない。

その時は、だが。

 

「ええ、その通りです。」

 

その言葉を聞いて、ラバーソールは呆れたような表情をして言った。

 

「第一、お前らは先の話で俺がスタッフルーム内でスタンド使って靴跡を消したって言ってたろうが。

言っていることがおかしいんだよ!」

 

「ラバーソールさん、順番にいきましょう。」

 

僕は続けて言う。

 

「まず、カメラに映し出されたのは金庫から荷物置き場に向かったときではありません。

順序を追って説明しようと思ったのでそこから話をしましたが。

カメラに映し出された、そのタイミングというのは・・・。

犯人が後藤さんのバッグに現金を入れて逃げ出し、再び取りに戻ったときです。

そして、『靴跡』がついたのもね。」

 

「は・・・?」

 

ラバーソールがなんだそれはとでも言いたげな声を出した。

僕は御剣に声をかけた。

 

「御剣、荷物置き場にあった後藤さんのバッグの中身だけど。

知らない人が見て、同一の写真が200枚あったのを見たらどう思うだろうか。

仮に見た人が・・・、スタンド使いだとしたら?」

 

御剣は少し考える。

 

「そのような超常現象とも言うべき事態なら・・・、敵のスタンド攻撃と想定してその場を離れるだろうな。

いや、不意を打たれたのなら後退するだろうか。」

 

僕は頷いた。

 

「犯人は現金を回収するときに、バッグの中にある大量の同一写真を見た。

驚いた犯人は、荷物置き場から大きく一歩でも後退したとしようか。

さらに、不意を打たれて靴底を覆うスタンドがわずかに解除されたとする。

もちろんかかとの部分がね。

その引き下げた片足の着地点には何があると思う?」

 

御剣はハッとした。

 

「スタッフルームのドア・・・。

だから、かかとの跡は金庫側を向いていた。

そして、その瞬間に映しだされたということか!!」

 

「なっ・・・なにぃいい!?」

 

御剣の言葉を聞いたラバーソールが驚きの声を出す。

どうやら、やつが想定していなかったことらしい。

裁判長が僕に尋ねてくる。

 

「成歩堂くん。

レジ側のカメラに映し出されたということですね。

その犯人の足が。」

 

「はい。

そのカメラはしっかりと捉えました。

犯人の靴・・・。」

 

僕はラバーソールに向けて人差し指を突きつけた。

 

 

 

 

「世界に一つしかない黄色い靴がね!!」

 

 

 

 

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

ラバーソールが苦しい声を上げた。

御剣が係官に声をかける。

 

「今すぐパソコンを用意してモニターに映し出すんだ。

レジ側の監視カメラの映像記録を!」

 

 

 

準備が出来、大きなモニターに事件当時レジを録画していたカメラの映像が映し出される。

レジ側のカメラは2つだが、今モニターに映された映像は後藤さんが立っていた方のレジのものである。

 

オインゴに通報されたのちにレジに立った後藤さんがモニターに現れた。

彼女は一度スタッフルーム内に入り、真っ青な顔をしてレジに戻ってきている。

脅迫ののちに通報もされた上に、バッグに入った現金を見て困惑しているのだろう。

後藤さんは、ドアに一度も手をかけた様子はない。

もはや、ドアを閉めるなんて考えすら彼女の頭の中にはなかったのだろうな。

その画面の右端っこを見て御剣は焦りの表情をした。

 

「な、成歩堂・・・。

この監視カメラは・・・、2つのレジのややあいだ寄りに設置されている。

斜めから被告人が立つレジを映すこのカメラには・・・。

 

映っていない!

右開きのドアが壁となって、隙間が見えない!

スタッフルーム内の様子が少しも分からないぞ!」

 

御剣の声を聴いたラバーソールが安堵の表情をする。

 

「くっくっくっ・・・。

どうやら当ては外れたみてぇだなぁ!

成歩堂龍一!!

 

どんな妄想話を始めたかと思ったらよ、随分間抜けなオチを用意したもんだなぁ!

時間をここまで無駄にしてくれてよぉ。

・・・俺は今、決めたぜ。」

 

やつは笑いながら、目の色を変えた。

何か狩りでもするケモノのような、凶悪で鋭い目つきだった。

ラバーソールがチラリと後藤さんに目を向けた。

彼女は、その目つきにびくりっと身体が反射する。

 

「あのガキのバンドはどこでやっているんだったっけなぁ。

確か・・・、『STARRY』って言ったか。

いつかは分からねぇが、客としてそこに行ってやるよ。

ただし・・・、もし俺に気に食わねぇ態度をとりやがったらよ。」

 

ラバーソールは不敵な笑みを浮かべた。

 

「くっくっくっ。

『お客様に不快感を与えたで賞』、ねぇ・・・。

こーんな法律聞いたことねぇよ!

客が不満を言えば死刑だなんて、店側に人権なんてあったもんじゃねぇよな!

だが、せっかく作ったんなら有効活用してやるぜぇ!

俺は出されたものは無駄にしない主義だからな!!

 

毎月のようにその店から、絞首刑行きの罪人が出るかもしれねーけどよ。

俺は別に悪くはないよなぁ!

なんせ、そういうルールだからよ!

 

おっと、これは犯罪予告なんかじゃねぇ。

正義執行の宣告ってやつだ!

よりよい国を作って行こうぜ!!

 

ガァーハッハッハッハッ!!!」

 

 

 

ラバーソールは、大きく笑い声を上げた。

先程のやつの言葉に、真宵ちゃんが悔しさに耐えきれずうめき声を出す。

御剣が唇をかみしめる。

イトノコ刑事が両手を力強く握りしめている。

後藤さんは身体がガタガタと震えていた。

彼女たちだけではない、法廷所内の誰もがその言葉に戦慄したことだろう。

 

見たくない。

彼らや彼女らのそんな姿は見たくない。

こんな悪が蔓延る姿は見たくない。

だから、僕はやつに告げる。

 

「ラバーソール。」

 

「あぁ?」

 

やつは勝ち誇った表情をしていた。

時刻は午後4時50分となっている。

 

「どうやらあなたは・・・。

 

また1つ、

 

『勘違い』をしているようだよ。」

 

ラバーソールはため息をつく。

 

「どうしようもない状況に頭がおかしくなったのか?

妄言しか吐かないようならさっさとこの裁判は閉めた方が良いな。」

 

「確かに。

この裁判はもうじき終わりを迎える。

ただし、あなたの『勘違い』を正してからだ。」

 

「・・・なに?」

 

裁判長が慌てた様子で僕に聞いてくる。

 

「な、成歩堂くん。

なんですか、その『勘違い』とは。」

 

「彼の姿はレジ側からのカメラに映し出されています。」

 

「なに馬鹿言っているんだ?

やっぱり、頭がおかしくなったんじゃねぇか。」

 

ラバーソールの言葉のあとに、裁判長が尋ねる。

 

「そ、それは反対側のレジにある、もう1つの監視カメラのことでしょうか?

しかし、そちらはお客側から見て右側にあたりますが、

スタッフルームの扉が右開きであるため、より位置が悪いですぞ?」

 

僕は、首を振った。

 

「そのカメラでもありません。

事件の日・・・、通報後に後藤さんがレジ対応をする時だけは、あったのですよ。

 

"3つ目"のカメラがね。」

 

「な、なんだと!?」

 

ラバーソールが再び驚きの声を上げる。

ざわざわと法廷所内が騒ぎ出す。

 

 

 

カッカッカッ!!

 

 

 

「せ、静粛に!静粛に!!

成歩堂くん、時間がありません。

次の証拠品の提示を最後とします。

よろしいですね?」

 

裁判長の言葉に僕は頷いた。

 

「構いません。

次でこの事件は幕を閉じるのですから。」

 

裁判長が頷いた。

 

「それでは、示してください。

その証拠品を。」

 

ラバーソールは、緊張の面持ちで僕の言葉を待っている。

 

「それは、オインゴの持つ『携帯電話のカメラ』ですよ。」

 

「け、携帯のカメラ・・・ですか?」

 

裁判長の聞き返しに僕は頷いた。

 

「ええ。

オインゴは、通報後にレジ対応をしている後藤さんの様子を携帯のカメラで録画していました。

そのカメラは水平で当然レジ側に向けてました。

ドアの隙間は十分見える位置と角度のはずです。

そして、何よりタイミング・・・。

犯人がドアの隙間から見える位置に足を出したのは、バッグに入れた現金を取りに戻ったときです。

つまりそれも・・・。」

 

 

 

「通報後に後藤さんがレジ対応をしているときです!!」

 

 

 

「な、な、なぁぁぁぁっぁああ!?」

 

 

 

ラバーソールの困惑する言葉を聞いたのちに、御剣が呼びかける。

 

「イトノコギリ刑事!

今すぐにオインゴがいる留置所から、携帯電話を押収するんだ!」

 

裁判長が首を振った。

 

「それは出来ません、御剣検事。

時間は残り5分。

成歩堂くん、残念ですが・・・。」

 

「ぐっ・・・!」

 

御剣が歯がゆい思いをした顔をする。

僕は首を振った。

 

「いいや、その必要はないよ御剣。

裁判長。

係官にここのパソコンで、ある動画投稿サイトを開いてもらうことを要望します。

その動画投稿サイトの名前は、『オーチューブ』です!」

 

 

 

 

その動画は、コンビニで矢張と見たものだった。

 

「こ、これは・・・。確かにスタッフルームのドアが少し開いている様子が分かります。」

 

裁判長がモニターに映し出された画面の右端の様子を語る。

レジでは、挙動不審な態度を取る後藤さんが震える声で接客している。

 

『あっ、いらっしゃいませ・・・。ああああたたたたあたたたああ。』

 

「動画を止めてください!」

 

僕は係官に呼びかける。

動画が一時停止される。

 

「映っている・・・。」

 

御剣が声を漏らす。

 

「な、なるほどくん・・・。」

 

真宵ちゃんが、瞳を潤ませて僕を見る。

僕はというと、内心ホッとしていた。

 

「裁判長、確認の通りです。」

 

裁判長は頷く。

扉の隙間からは、黄色い靴が出ていた。

ご丁寧に『YT』と描かれている靴が。

ラバーソールを見ると、顔から汗を流し荒く呼吸をしていた。

 

「フゥー・・・、フゥー・・・。

ち、ちがう・・・。これは・・・俺じゃ・・・。」

 

「異議あり!」

 

僕は彼の言葉を制した。

 

「あなたは言いました。

今履いている靴は、特注した世界に1つしかないものだと。

これ以上の言い逃れは出来ません。」

 

僕は人差し指をラバーソールに向かって、突き出した。

これで、終わりにしよう。

 

「あなたの犯行は暴かれたのですよ。

皮肉なことに、あなたの仲間であるオインゴの手によってね!!」

 

ラバーソールの額に血管が浮き出てくる。

その込められた怒りは、大口開けて放たれた。

 

 

 

 

「へ、ヘマしやがってぇぇぇぇぇぇ!!

あ、あの・・・馬鹿があああああああああああああああ!!!

 

 

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 

イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!

 

 

ンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!

 

 

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!

 

 

 

 

その叫びは、やつがオインゴと共犯者であると証明するに十分な言葉であった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

証言台に後藤さんが立つ。

彼女に裁判長が声をかける。

 

「後藤ひとりさん。

アルバイトは今後も続けるのでしょうか?」

 

「い、いえ・・・。

あ、あんなことがあったので、もう辞めようかと・・・。」

 

裁判長がうーむと考えている。

 

「それは残念です。

・・・失礼ですが、あなたは人より少々内気であるように見えます。」

 

後藤さんがしゅんとしている。

 

「はっ、はい。

す、すみません。」

 

裁判長が首を振った。

 

「アルバイトを選ぶときも、躊躇したかもしれません。

しかしだからこそ、あなたは人より大きな勇気を持ってそれに臨みました。

それは素晴らしいことです。

どうか誇ってください。

あなたの踏み出した1歩は、今後人生の大きな糧となるはずです。」

 

裁判長がニコリと笑った。

 

「あ、ありがとうございます。

(せ、1000歩ぐらいかと思ってた・・・。)」

 

後藤さんが返事をすると、裁判長が頷く。

 

「それでは、後藤ひとりに対する判決を言い渡します。」

 

 

 

 

      無     罪   

 

 

 

 

法廷所内が歓喜の声で彩られた。

裁判長が木槌を叩く。

 

 

カッ

 

 

「では、本日はこれにて閉廷。」

 

 

 

 

閉廷した法廷所で、傍聴席にいる空条さんが僕に向かってきた。

 

「弁護士さんよ。

俺はラバーソールを刑事さんと一緒に連れていく。

檻の中なら、やつのスタンドを持ってしても出られないだろう。」

 

「はい。空条さん、この度はありがとうございました。

おかげで、後藤さんの無罪判決を得ることが出来ました。」

 

「本当にありがとうね、空条君。」

 

「ああ。」

 

僕と真宵ちゃんが一礼をすると、空条さんはイトノコ刑事とラバーソールのいる元へと歩き出した。

 

 

 

 

 

ラバーソールは、承太郎を見ると口元に笑みを浮かべた。

 

「トイレ以来だなぁ、承太郎先輩。

なぁ、ここにはシンガポールのときのような水はねぇ。

つまり、俺の無敵のスタンドはお前には負けねぇ。

そうだろ?」

 

「・・・何が言いたい?」

 

「ゲームは止めだ!

お前をぶちのめせばよぉ!

俺は、このまま逃げれるってことだろうが!!」

 

ラバーソールがイエローテンパランスを体から出してくる。

 

「スタープラチナ ザ・ワールド!」

 

承太郎がスタンド能力を発動し、時が停まる。

スタープラチナは、イエローテンパランスの本体であるラバーソールのあごに一発拳を当てる。

拳を当てられても、ラバーソールの表情に変化はなかった。

それは、時の止められた空間に対応できないためだ。

承太郎は、ラバーソールに語る。

 

「お前は負けたんだぜ。

弁護士さん達やあのガキの『覚悟』にな。」

 

そして、時は動き出す。

 

「かぺっ!?」

 

あごに打撃を受けたラバーソールの脳が揺れ、白目をむく。

倒れる前に、承太郎はその身体を支える。

 

「い、今何が起きたッスか?」

 

イトノコギリ刑事の問いに、承太郎は答えた。

 

「いや、大したことじゃないぜ。

それより、この大男を担いでくれ。

どうやら、おやすみの時間らしい。

新しいベッドに運んでやんな。」

 

「ウ、ウッス!!」

 

イトノコギリ刑事は、係官を呼び数人で気を失ったラバーソールを護送車へと運んでいく。

承太郎もそれに続こうとした。

 

「・・・?」

 

彼の頭上からひらひらと舞い落ちる光があった。

承太郎は、それを手のひらで受け止める。

それは、綾里千尋が放った緑光の最後の一かけら。

エメラルド色に輝くその光を見て、仲間の1人を思い出す。

 

承太郎はジョセフ・ジョースターから聞いていた。

宿敵、ディオ・ブランドーの時を止める能力に気付きそれを暴くため、花京院典明は『エメラルド・スプラッシュ』を放ったと。

今回の裁判、彼を思い出すこの光が真相を暴くのに一役買った。

 

もしかしたら、花京院に化けた悪人をあの世から彼がとっちめに来たのだろうか。

いや、この光はそうではない。

そんな能力をあいつは持っていない。

承太郎は、頭では分かっていながらもつぶやかずにはいられなかった。

 

「終わったよ、花京院。」

 

そう告げると、エメラルド色の光は眠るように消えていった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

9月18日 午後5時36分

地方裁判所 被告人第1控え室

 

 

 

 

「やったね!なるほどくん!!

一時はどうなるかと思ったけど、最後にはスカッとしたよ。」

 

真宵ちゃんが元気に僕に語りかける。

 

「ほんと、無事に終えれて良かったよ。」

 

「あっ、でもなるほどくん怪我してるでしょ。

無事じゃないよ。

しばらくは安静にしていなきゃね。」

 

「そういえば、そうだった。」

 

緊張感が抜けて、また少し痛みが出ている。

頬なんか明日には結構腫れるんじゃないだろうか。

僕がげんなりしていると、後藤さんが声をかけてきた。

 

「あ、あの弁護士さん。

こ、この度は・・・ありがとうございました。」

 

「うん、お疲れ様。

頑張ったね。」

 

僕の言葉を聞くと、後藤さんはもじもじとしだした。

 

「わ、わたし・・・守りたかったんです。」

 

「守りたかった?」

 

「は、はい。

妹と約束したんです。

裁判を終えて家に帰ること。

その約束を守ることができました。

それと・・・。」

 

後藤さんがスゥーっと息を吸った。

 

「弁護士さんの名誉を守りたかったんです。

・・・今までだって弁護士さんはきっと頑張って何度も依頼者を救ってきたと思います。

わたしのせいで、その積み重ねてきたものに傷をつけたくなかった。

あなたの姿を見て、みっともなくても証言しようと思えたんです。

改めて、ありがとうございました。」

 

ペコリと頭を下げる後藤さん。

 

「証言台に立つきみは立派だったよ。

こちらこそありがとう、後藤さん。」

 

「あたし、あのときのひとりちゃん見て泣いちゃったな。

バンド応援してるよ、頑張ってね。」

 

「は、はい。」

 

後藤さんは、相変わらず目を合わさないままだったが、ニコリと笑ってくれた。

突然、控え室の扉が開く。

 

「あれ、御剣検事だ。」

 

真宵ちゃんの視線の先には、御剣がいた。

 

「・・・・・・。」

 

御剣は、僕の前で立ち止まり無言でいる。

 

「・・・・・・。」

 

僕も向こうの出方が分からずに無言でいる。

 

「・・・成歩堂、何か言え。」

 

「えっ?」

 

「前にも言っただろう。

苦手なんだ、セケン話。」

 

そういえば、そんなこと言ってたな。

 

「・・・ありがとう、御剣。

きみが裁判を続行しようとしなかったら、勝訴を得ることはできなかったよ。」

 

「ど、どういたしまして。」

 

「うーん、やっぱりハリアイがないなぁ。」

 

真宵ちゃんが物足りない顔をしている。

 

「ム・・・やっぱり苦手だ。」

 

真宵ちゃんが御剣検事の肩をバシバシ叩いている。

やれやれ・・・。

 

「あ、あの・・・そういえばもう今日から帰れるんですよね?」

 

後藤さんが僕に尋ねてくる。

 

「うん。大丈夫だよ。」

 

ホッとした表情をする後藤さん。

そんな彼女に真宵ちゃんが声をかける。

 

「ねぇねぇ、ひとりちゃん。

実は私、ひとりちゃんの動画アカウント知ってるんだ。

オーチューブで『トノサマン』のOP演奏見たよ。

ギターかっこ良かったな!

動画紹介にあったけど、ひとりちゃんの彼氏さんってどんな人?」

 

「ゲロゲロォ―――――!!」

 

後藤さんが吐しゃ物を床にまいた。

 

「え?後藤さん!!」

 

「な、なにがあった!?」

 

「わー!ひとりちゃんが虹色の液体を吐いた!!

ちょ、ちょっとみんな!雑巾とバケツと水を持ってこよう!!」

 

「あ、あの・・・わたしも。」

 

「ひとりちゃんは、液体垂れ流し状態だからじっとしてて。

ほら、いくよ2人とも!」

 

僕と真宵ちゃんと御剣は、後藤さんを控室に残して廊下にでた。

真宵ちゃんは、早歩きのままで僕に語る。

 

「けど、ほんとに動画で見たひとりちゃんの演奏かっこよかったんだよ。

ねぇ、なるほどくん。

今度、一緒にライブハウスに行ってみない?

結束バンドを見たいな。」

 

「うん、僕も興味あるよ。

後藤さんにいつチケットを販売するか聞いてみようか。」

 

「うん!」

 

「わ、私もいいだろうか。」

 

御剣が聞いてきた。

ロックに興味があったのか、なんか意外だな。

 

「え?ま、まぁいいけど。」

 

「すまない、助かる。」

 

「さてさて!早く道具一式借りてひとりちゃんの所へ戻らないとね!」

 

 

 

ライブハウスか。

怪我をなるべく早急に治さないといけないな。

どんな曲を演奏するのだろうか。

楽しみで待ち遠しい。

早くその日が訪れてほしいと思う。

後藤さんと、彼女の仲間たちが奏でるロックが聞ける日を―――。

 

 

 

 











次回は、逆転裁判メンバーのみのエピローグを持ってして完結と致します。
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