ひとりちゃん法廷に立つ   作:あるいてごろりと

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探偵パート1

 

9月16日 某時刻

世田谷区 北沢エリア 某コンビニ前

 

僕は真宵ちゃんと犯行現場を見に行くことにした。

理由は、監視カメラの確認と店長への聞き取り調査である。

後藤さんが脅迫されている映像がキャッチ出来れば、無罪判決に大きく踏み出すことができる。

 

「ねえ。ねえ、なるほどくん!見えてきたよ。」

 

真宵ちゃんが高いテンションでコンビニを指差す。

若者が集まる街ゆえか、真宵ちゃんもここに来てからずっとアゲアゲである。

カレー屋があるだの、古着屋があるだの、路上ライブをやってるだのと彼女の沸き上がる欲求に、僕はついていくのがやっとである。

一回り年下の彼女の歩行速度は、それに反比例して僕の体力を下げていく。

現在、肩で息をするというのを身をもって体感している最中だ。

 

 

・・・まだ25歳なんだけどな。ジムでも通った方がいいだろうか。

 

 

息1つ乱れない真宵ちゃんは仕事であることをわきまえているのか、店があることを口には出せどそれをしたい・行きたいと言わないのは感心する。

次の裁判に備えなければならないとしっかりした意思を持っている証拠だろう。

彼女が助手で良かったと思う。

 

僕の十代はどんなだったかな?

 

懐かしき彼女がくれたピンクの手編みのセーターで、テンション舞い上がっていたな。

うん、僕も若者らしい感性を振りかざしていたようだ。

その後の裁判で、弁護士の千尋さんに大迷惑をかけてしまったことを思い出す。

自分を弁護してくれる方の足を引っ張りまくりであった。

 

 

・・・うん、真宵ちゃんの方が数段上の大人だな。

 

 

「なるほどくん、聞いてるの?」

 

ハッとすると、真宵ちゃんが僕の顔をジッと見ていた。

いかんな、ボーっとしてしまった。

 

「あぁ、ごめん。コンビニに着いたんだっけ?」

 

「そうだよ。今から調査をするのにそんな様子じゃ、重要なことを見逃しちゃうよ?」

 

「気を付けるよ。真宵ちゃんがそうやって言ってくれるから助かるな。」

 

「なるほどくんは将来絶対、尻に敷かれるだろうね~。」

 

真宵ちゃんはニヤニヤしながら言った。

うーん、結婚できるかどうかは置いといて否定はできない。

 

 

 

コンビニの自動ドアが開き、中に進むと客は1人しかいなかった。

その人は、学ラン姿と身長から恐らく高校生と予想がつくが、異様なのはその盛り上がった筋肉である。

学ランがパツパツになるほど肥大した筋肉は、見る者を圧倒する。

 

「あれ?あの人・・・。」

 

真宵ちゃんがその学生を見て呟く。

 

「どうしたの?」

 

真宵ちゃんは不思議そうな顔をしている。

 

「あの人にとんでもない悪霊がついているように見えたんだけど、何か違うんだよね。

あの学ランの人に付き従っているようにも見えるし、悪い気はないみたい?」

 

彼女は霊媒師である。

自分はそんなに霊力は強くないと普段言っているが、こういった話を聞くと彼女の能力が常人より抜きん出ていることを確信する。

 

「あっ、そうだ。なるほどくんに以前渡した勾玉があるよね?」

 

真宵ちゃんが名案を思い付いたような表情をした。

勾玉・・・、綾里本家に代々伝わるというお守りの石である。

その石の効果は、相手が隠している秘密を暴き出すことができるというものである。

僕もこの勾玉には、随分と助けられてきた。

そのため、いつも何となく胸ポケットに入れて持ち運ぶようにする習慣がついていたので、今日も持参している。

僕が勾玉を取り出すと、真宵ちゃんはそれを受け取り霊力を込めた。

すると、淡い緑色の光を放ち始めた。

 

「はい、これ持ってあの人を見てみて。」

 

勾玉を受け取り改めて学生を見てみると、その男の隣には奇妙な人物がいた。

筋骨隆々の体躯に黒い髪の男が浮遊しているのである。

肩当て以外の上半身は裸で、下だってふんどしのようなもので隠してあるだけだ。

 

「ま、真宵ちゃん・・・。あれはいったい・・・?」

 

「なんだろうね~。悪霊じゃないなら、守護霊とか?」

 

どんなご先祖様だろうか。

悪い人じゃないなら、ご利益が筋肉で得られそうだ。

だから、あの学生もムキムキなのだろうか?

 

「おい、そこの2人。」

 

学生が僕らの視線に気づいて声をかけてきた。

まずいな、面倒なことにならなければいいけど。

 

「はっ↑、はい。」

 

声がちょっと裏返ってしまった。

 

「何見てるんだ?俺は見世物じゃないぜ。」

 

学生はギラリと睨みつけてきた。

シンプルに怖い。

ポケットに小銭が入っていたことを思い出していた。

ピョンピョン飛んでお金を渡すことになるかもしれない。

 

「す、すみません!

あなたの隣の方が公然わいせつ罪にあたる格好をしていたものですから、つい凝視してしまいました。

すぐにここを離れますので、どうかご容赦ください。」

 

僕はクルリと身をひるがえし、真宵ちゃんの手を引いて足早に立ち去ろうとした。

 

「待ちな。」

 

僕がゲッと思いつつも、首を彼に向けると驚いた。

隣の人がアロハな全身夏コーデに様変わりしていたからだ。

肩当ては服に収まらないためか外されている。

 

「誰が公然わいせつ罪だって?」

 

あれっ?おかしいな。

さっきまでは、男祭り真っ盛りの格好をしていたはずなのに・・・。

 

「すごーい!あたし早着替えって初めて見たよ。」

 

真宵ちゃんがやや興奮気味に目を光らせている。

彼女もこう言うのであれば、やはり隣の人は元々裸だったのだろう。

しかし、いつの間に着替えたんだろうか。

っていうか、ほぼ全裸だったのに『着替える』という表現であっているのだろうか。

肩当ても服の一部なら間違いはないのかな。

うんうん唸っている僕は、目の前まで近づいていた彼に気がつかなかった。

 

「おまえも”スタンド使い”か?」

 

目の前におっかない顔をした学生がこちらの顔を覗いてくる。

僕はビビッて口をあんぐりと開いていた。

スタンド使いってなに?

車持ってないから、使ってないですけど?

 

目の前の強面の学生が教習所に通う姿を想像したら、何だか可笑しくて吹き出してしまった。

やばい、僕は小学生の頃によくあったが、教師に叱られているときに笑っちゃっていたタイプだ。

 

「ヤロウ・・・。」

 

怒ってる 怒っているよ なるほどな

季語はない。

 

やばいやばい、こんなくだらないことを考えている場合じゃない。

頭が真っ白になった方がまだ穏便に済ませられそうなのに、変なことばかりが脳内を駆け巡る。

 

「ちょっと待って!」

 

真宵ちゃんが僕と彼の間に割って入る。

ああ、真宵ちゃん。なんて頼もしいんだ。

君の背中がとても大きく見えるよ。

 

「あまり脅すような態度だと話が進まないよ!」

 

学生は、僕から真宵ちゃんに視線を移している。

しかし、彼女は一歩も引くような態度を見せない。

 

「・・・おい、女。名前はなんて言う?」

 

「綾里真宵!18さい!あと、人に名を聞くときは自分から言ってよね!」

 

真宵ちゃんって、心臓ステンレスでできているの?

良くそこまで啖呵をきれるもんだ。

 

「18・・・、年上か。その態度、まるでおふくろを相手にしているようだぜ。

・・・空条承太郎だ。」

 

「そう、よろしく空条君。さっき言っていた”スタンド使い”ってなに?」

 

「スタンドっていうのは、パワーや精神の塊のことだ。

それらは人の形をしていたり、動物に無機物だったりとさまざまなんだが、何かしらの超常現象を持っていて自身と他者に良くも悪くも影響を与える存在だ。

”スタンド使い”っていうのは、それを扱う者のことだな。」

 

「なんであたし達が”スタンド使い”だと思ったの?」

 

「例外もあるが、スタンドは”スタンド使い”にしか見えねえものだ。

それと、”スタンド使い”同士は引かれ合うとも言われる。

俺の前に立ったあんたらはそれじゃないかと勘繰ったわけだが、どうやら違ったみたいだな。」

 

「あたしは霊媒師だからね。そういった類のものは普通の人よりは見えると思うよ。

そのスタンドっていうのは、初めて聞いたけどね。

それで、あなたはここに何しに来たの?

買い物にしては、あなたの隣の人は壁や天井を探っているように見えたけど。」

 

僕は何となく気づいたのだが、隣の人がいなくなっている。

どうやら空条さんの意思で出し入れできるらしい。

空条さんは一瞬、ふっと笑ったように見えた。

 

「さっきも話したが、”スタンド使い”は引かれ合うものだ。ちゃんとはわからねぇがな。

このコンビニには何かがある気がして中を伺ったんだが、店員1人いやしねぇとはな。」

 

確かに言われてみれば、どこにも店員の姿が見当たらない。

静まり返った店内の空気は、どこか不気味な様を表していた。

先程のスタンドの話を聞いていたためか、変な緊張を感じゴクリと唾を飲み込む。

 

「あそこが怪しいぜ。」

 

空条さんが指差す先には、レジの向こう側のドアであった。

そこには、『staff room』と書かれたプレートが下げられていた。

 

3人でドアの前に近づく。

「店員が中で倒れていたかもしれないから」とか、異常事態を理由にあげれば、もしものことがあっても問題ないだろう。

空条さんがドアノブに手をかけて回す。

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

「開けるぜ。」

 

キィィィっとドアを開けた先には大きな机があり、その上にいくつものモニターが並んでいた。

僕たちに背中を向ける人物は、こちらに気づいていないのか一心不乱に画面を睨んでいた。

 

「おい。」

 

空条さんがその人物に声を掛ける。

あれ?あのとがった頭髪には見覚えがあるな。

声に振り向くその人物は、何度も見た顔をしていた。

 

「お~!成歩堂じゃねぇか!ちょいちょい。ここの部屋は入っちゃダメだぜ?」

 

事件の影にやっぱり矢張。

いつも同じようなタイミングで表れるこの顔には少々げんなりした。

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