9月18日 午前12時00分
地方裁判所 男性側トイレ
ぼくの名前は成歩堂龍一。
成歩堂法律事務所で所長を務めている。
綾里真宵は、事務所の唯一の従業員にして助手である。
御剣怜侍は、子どもの頃からの友人で、正義感の強いそいつは今や検事となった。
現在ぼくは裁判の真っ只中である。
後藤ひとりのやらかしたとある事が発端となり、彼女に弁護を依頼された。
裁判が進む中で発覚したのだが、彼女を通報した証人の花京院は、実はエジプトから日本へやって来た『スタンド使い』のオインゴであった。
彼の巧みな変身術には、その場にいた誰もがさぞ驚いたことだろう。
それと御剣怜侍の口から出た『共犯者』の可能性・・・。
裁判は一度休憩を挟み、あと十分後に再び始まる。
審議の内容は、やはり『共犯者』についてだろう。
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あの時、その存在を問われたオインゴは笑みを浮かべてこう言った。
「さてな?
それが俺の知り合いって証拠でもあるのかよ?」
この発言には、皆ぐうの音も出なかった。
そりゃそうだ。
第一、その者はわざわざこの裁判に関わってくることもないだろう。
その直後、携帯電話の着信音が法廷内に鳴り響いた。
電話に出たイトノコギリ刑事は驚きの声を上げる。
御剣怜侍を見た彼はこう告げた。
「後藤ひとりの裁判に証人として名乗り出たい者がいるッス。
いるッスけど・・・、その人は・・・。
゛花京院 典明゛を名乗っているッス。」
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その後、裁判長の意向で証人喚問の許可が下った。
それにしても・・・何を考えているのだろうか。
死んだはずの花京院を名乗った狙いは・・・。
法廷ではそれを解き明かしていくことになるのだろうか。
っと、こんな感じかな。
ぼくは廊下を歩きながら考えることを一度やめて、立ち止まった。
ポケットを探ると携帯電話が入っていた。
画面を開くと『やっぱり矢張』の着信履歴がものすごく入っている。
何となく眺めていると今も着信が入ってきた。
サイレントマナーモードの携帯からは音も振動もなく、その者からの着信を画面で伝えてきた。
興味本位で通話ボタンをスライドさせる。
「やっと出たな成歩堂!!
さっき久しぶりに売上金額の精算しようとして気づいたんだけどよ!
何度確認しても金庫の金がなーーーーー」
プツリと電話を切る。
9月18日 午前12時2分
地方裁判所 被告人第1控え室
「2人とも、お待たせ。」
部屋の隅でデレデレしている後藤ひとりと、彼女と話をする綾里真宵に声をかけた。
ぼくの姿を認めた後藤ひとりがトコトコとこちらによって来る。
その表情は限界まで緩み切っているようにも見える。
・・・以前見た姿とはえらい違いだな。
「あっ、弁護士さん。
この度はありがとうございました。
わ、私の無実も決まったようなものですし、もう帰れますよね?」
後藤ひとりは笑顔で言い出した。
何を言っているんだこの女は。
自分たちを残してそれはあんまりな発言だろう。
「君はまだ無罪判決を受けていないんだから残らないとダメだよ。
それに人に依頼をしておいて、その態度はあんまりなんじゃないかな?」
ぼくの言葉を聞いた後藤ひとりはビクリとする。
恐怖で怯えるような目をしてガクガクと震えだした。
「ご、ごめんな・・・さい。
わ、私・・・身勝手な事を言ってしまって・・・。」
全く持ってその通りだ。
もっと反省してほしいぐらいである。
気がつくと、綾里真宵がぼくのすぐそばに来ていた。
ジッとぼくの顔をうかがっている。
「・・・なに?」
「うーうん、別に。
ただ結構な物言いだなって思っただけ。」
「依頼人だからって特別扱いはしないよ。
それに彼女だって1日とはいえ働いた身なんだから、それ相応の扱いをするのが社会人の礼儀だよ。」
ぼくは当たり前のことを彼女に言い、説き伏せようとした。
「うん、そーだね。
その意見はわかるよ。
・・・ただ、ひとりちゃんだってひどい目にあったばかりなのに、その言い方は心がないよ。」
彼女はぼくに背を向けると、部屋の隅でうずくまる後藤ひとりの手を取って歩き出した。
その行先は、法廷所の扉と反対方向である。
「どこに行くんだい?
時間はもう10分もないけど。」
ぼくの問いかけに彼女は苦虫を噛み潰したような表情をする。
「お手洗い。
心だけじゃなくデリカシーもないね。」
後藤ひとりを引きずるようにしてさっさと歩き出してしまう。
何だあれは。
全く、腹立たしい。
これから仕事をしなければならないこっちの身にもなってほしいもんだ。
まあいいか。
今は先のことを考えないとな。
ぼくは証人がする今後の言動について、考えを巡らした。
係員から裁判が再び始まる呼びかけがあった後に、ようやく彼女らは戻ってきた。
綾里真宵は、ぼくを見るなり頬を膨らませて睨みつけてきた。
おお、怖い怖い。