GATE━Alchemist━   作:華風鱗月

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GATE━Alchemist━に付いて活動報告書きました。時折何かしら活動報告するかもです


ホウ素

「足止めって…何を言っているんだセレステラさん!?」

「何って言葉の通りですよ。騎馬兵の侵攻を押し留めなければ避難出来ていない民間人が犠牲になってしまう。それは絶対に阻止しなければならない」

 

 イタミが信じられないと言わんばかりに叫ぶが元々何処か開けた場所で時間稼ぎするつもりだったんだ。ただそれが何時援軍が来るか解らない状況か、30分間だけ時間を稼ぐかの違いなだけなんだ。

 

「それはそうだけど…!確かにセレステラさんは何か特殊な力を持っている。だけどだからって一般人にそんな事させられる訳が…!!」

「ただの一般人なんて私、言ってませんよ?」

「え…?」

 

 軍服の胸ポケット部分に入れてある証明手帳を取り出してイタミに見せる。手帳には【アメストリス軍 中央司令部所属 エイド・セレステラ少尉】と俺の顔写真と共に記載されている。

 

「これでも私、軍人の少尉なんです」

「ぐ、軍人…」

 

 正直何故か日本語が通じているが文字は全くの別。日本語とは違うアルファベットに似た文字を使うアメストリスの文字はイタミには読めないだろう。それでも俺が只の一般人じゃない事ぐらいはわかる筈。

 

「大丈夫ですよ。私だって貴方と同じ軍人なんです。引き際だって分かっていますし無理だと思ったら直ぐに撤退しますよ、死にたくはないですから」

 

 そうはにかみながら告げる。

 

「でも…!いや…分かりました。時間稼ぎは任せる!」

「ハイ。任せてください」

 

 イタミは何か言いたそうにしていたが彼の中でも合理的に考えれば奴等の足止めは必須。そしてそれが出来るのは錬金術が使える俺が適任だと解っていたのだろう。認めてくれた。

 

「だけど絶対に無理だけはしないでくれ…!」

「えぇ、わかってますよ」

「それじゃあ…セレステラさん携帯はあります?」

「ん?携帯…ですか?お恥ずかしながら…」

 

 携帯なんてハガレン世界にはまだ無かった。基本は公衆電話がメインだったからな。持ってないとイタミに伝えると小さく溜め息を付いたあとカバンの中から平たい塊を差し出してくる。

 

「これは?」

「俺の携帯。時間を稼ぐったって時間が解らなきゃ意味が無いだろ?皇居に着いたら1度電話をする。そこから30分経ったら防衛線が敷けていようが無かろうが電話するから。着信が来たら直ぐに撤退してくれ」

 

 そう言ってイタミは俺の手を取って携帯を持たせてくる。一応懐中時計は持っているが戦闘中に一々時計を確認する余裕なんて無いから助かる。

 

「分かりました。携帯は必ずお返しします」

「絶対だぞ?」

 

 彼から借りるこの携帯、多分だけど彼は純粋に30分後に連絡を入れる為に渡したんだろう。だけど俺にとってはコイツは必ず生きなければならない理由になった。携帯を返さなければならないのだから。

 

 軍人になって何度か紛争や隣国との小競り合いの戦闘に参加した事がある。そこで得た経験だが戦場では生き残らなければならない理由がある奴は高い確率で生存できるという事だ。

 

 理由は何でもいい。結婚する、親の誕生日が近い、デートの約束。何だったらムカつく上官の顔面に1発くれてやる!なんて言った奴も居たし、そいつ等はほとんどの奴が生き残った。

 

 前世だとこういうのは死亡フラグなんて言われてたが現実じゃ違う。生きなければいけない理由がある奴は生きようと藻掻いて、死に抗って、運を手繰り寄せる。

 

 これから万単位の軍勢相手に単騎で時間稼ぎをしようとする馬鹿にとってこの携帯はまさに命綱だ。

 

「皇居前広場がこの大通りを真っ直ぐこのまま進めばある。視界に捉えればそこで防衛線を敷いている筈だから直ぐにわかる筈だ」

「分かりました。携帯から皇居の場所まで…ありがとうございます」

「それじゃ頼んだぞ!」

「えぇ」

 

 イタミは少し不安そうにしながらも振り返り彼が指し示した皇居の有る方向へ走り出した。さて…!

 

「1丁頑張りますか!」

 

 奴等が来るであろう方向に向き直って気合を入れる為に両頬をパチン!と軽く叩く。取り敢えず騎馬兵の動きを誘導する為に壁と制限させる障害物を作らなきゃな。

 

 腰のポーチに手を入れて2枚の正方形の形をした紙を取り出す。錬成陣の描かれた2枚の紙を地面に置いてその上に手を翳す。この紙は緊急時等に一々錬成陣描いてる暇無くね?と言う思考の元編み出した簡易錬金術セットだ。

 

 国家試験で錬金術の精度が甘いなんて言われて落とされたがそんな俺でも得意と言うか、他の錬金術師には出来ない唯一無二の特技がある。それは複数の錬金術同時使用だ。

 

 錬金術は使用する際に物体をきちんと【理解】し、それを【分解】して最後に【再構築】させるプロセスがある。その工程の最初の理解の部分で少しでも理解度が低かったり別の事に意識を割いてしまうと失敗したり中途半端な物が出来てしまう。

 

 だが俺は2つの事を同時に思考する並列思考(マルチタスク)を長い訓練の末に習得。そのおかげで錬金術の同時使用を可能とした。今回は両方共に地面…と言うよりはコンクリートだな。コンクリート属性の物同士だったから簡単だがMAXまで集中力を高めれば焔と氷結の錬金術の全く異なる属性の錬金術も同時使用出来る。

 

 両手の錬金術を発動する。

 

 右手の錬金術では歩道から少しずつ二車線道路の真ん中まで少しずつ近付く様に壁を作り出す。馬のスピードを考慮してかなりの距離の壁をを作っていく。

 

 左手の錬金術では侵攻速度を落とす為に棘を道路内に、と言ってもびっしりと作るのでは無くスピードを落とせば余裕で避けれるぐらいにする。これで馬のスピードを遅くする事が出来る。

 

 しかし…さっきは気が付かなかったけど錬金術の範囲とスピードが強くなってるな…いや当然か。そもそも錬金術は地下深くに存在する地殻変動のエネルギーを利用する物。それを俺が居たアメストリスではお父様が大量の賢者の石で蓋をする形で配置、エネルギーの供給を制限していたんだ。

 

 それが無くなった今、俺の錬金術は範囲とスピードが格段に強くなってる。コレは嬉しい誤算だな。

 

「よし!これで一先ずは良いとして、次は…」

 

 地面に置いた紙を回収後、地面を錬金術で開いて道路下に張り巡らされた水道管を太陽の下に晒す。意外と浅めに貼られてんな…取り敢えずハシゴを作って水道管に近付いて先程壁と棘を作り出した錬金術の紙とは別の紙を水道管に貼り付ける。そして錬金術を発動してパイプを道路の上まで伸ばし巨大な放水口とバルブを創る。

 

 道路に上がった後は開けた穴をもとに戻すついでに道路脇に空いた排水口を埋めてバルブを回す。

 

「ぐぅ…!自分で作っといて何だがかったいなこれ!?」

 

 ガッチリと締まったバルブを開こうと力を入れているのににピクリともしない。ひいては引っ張るように開けようとしてるのに…軍人として鍛えてるのにピクリともせず額に血管が浮き出るレベルで力を篭める。お?少し動いた…うおっ!?

 

「ガボボボボボ!?」

 

 や、やばい!水が顔面、と言うか気管の中に!?

 

「ゲホッゲホ!?オブぇ…!ゼーハーゼーハー…!し、死ぬかと思った!!」

 

 バルブが一気に開いたせいで尻もちを付いたのだが場所が悪かった。放水口の目の前に転けたせいで顔面に大量の水が直撃し水の勢いのせいでゴロゴロと転げ回る。

 

 これ絶対エド達が居たら飽きられてた…「何やってんだよエイドさん…」って絶対。

 

「よっこいしょ、あーもう服がびっちゃびちゃだよ。暑かったから良かったけどさ」

 

 濡れ鼠になってしまったが真夏だったから結果オーライ…と言うことにしよう。うんそうしよう…はぁ。

 

 溜め息を付きながら放水口を見るとドバババ!と水が出続け、道路脇の排水口も埋めたお陰で道路は全体的に水浸しになって行っている。

 

「ヨシヨシこのまま水溜りになってけ〜っとその間にアレも作るか」

 

 コンクリートを中身が空洞になっている壺に作り変える。そして中に今も溢れ続ける水を左手の氷結の錬成陣で分解、酸素と水素に分けて中に入れて閉じる。この作業を複数回行って適当に配置していく。

 

 

「さて後は…」

 

 その後も色々と時間稼ぎとしての罠を作成、設置を続けて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くすると軍服の胸ポケットに入れていた携帯から着信が鳴る。どうやらイタミは無事皇居に着いたらしい。ここから30分間、耐え切れば俺の勝ちだ。

  そしてイタミの携帯の着信音と同時に地響きが鳴って振動が地面から感じ取れる。

 

「来たか」

 

 距離のせいで豆粒みたいに小さいが騎馬兵の姿を視界に捉える。まだ距離はあると言うのにここまで振動が来るって事はやっぱり相当な数が居るなこれ。

 

『隊長!前方に青い服を着た男を確認!ガーラン歩兵長の言っていた特徴と一致しています!それと罠らしき障害物多数!どうしますか!?』

『速度を落とし、障害物を避けながらこのまま突撃しろ!下手に立ち止まれば何も出来ずに奴の魔法の餌食だ!』

『了解!総員速度を落としつつ突撃!!』

 

 おっと?やっぱ警戒して速度落とすか、まぁ遅くしても無駄なんだけどさ。

 

「それよりちょっと言ってみたいセリフと言うか技名が有るんだけど思い出せない…何だったかなぁ?」

 

 大勢の馬がコチラに向かって来ている中そんな事を独りごちる。普通ならその迫力にビビるんだろうけどさ、紛争とか何回も経験したせいでなんとも思わない。それよりも某海賊漫画のキャラの技なんだけどさ。何だったかなぁ?こう、周囲一帯を凍らせる…あっ思い出した。

 

「ふぅ…馬については可哀想だけどお前らの飼い主が先に手を出したんだ。スマンが死んでくれ」

 

 水道管から伸ばしたパイプから大量に放出され、踝部分にまで水位が上がった水にしゃがみこんで左手を浸ける。そして錬金術を発動!

 

 

氷河時代(アイスエイジ)!ってね?」

 

 次の瞬間、直接水に脚を踏み入れていた馬達が凍結し動かなくなる。馬の最高速度が約70キロだから普通に速度を落としてもかなりの速度を出せる。

 

 ここで問題。特定の物体が別の物体を固定せずに上に載せた状態で一定の速度で移動している途中、その物体が急停止すると上に載せた物体はどうなる?

 

「答えは前に飛んで行くんだ」

 

 誰に出した訳でも無い問題の答えを自分で答えると、馬に乗った兵士達が慣性の法則で前に吹っ飛んでくる。

 あ〜ぁ、あんな重そうな鎧着込んでたせいで強く打ち付けられてるよ。しかも何人か運が悪いのか障害物としてしか期待してなかった棘に刺さってる奴もいるし。

 

『お…おのれ…!詠唱も無しに魔法を使うなど化け物め…!!打ち倒してくれる!!』

 

 他の兵士よりも鎧が若干豪華な(恐らく隊長だな)が、未だに体を地面に強打して激しい痛みが有るだろうに立ち上がって手にしていたランスと盾を構えて突撃してくる。けどさぁ…

 

「ごめんけどそこに這いつくばっててよ」

 

 右手の指を鳴らして焔の錬金術を発動。すると突撃して来ていた隊長さんの右足付近が爆発を起こし足が飛んで行き、爆発を合図に他の場所でも連鎖的に爆発が起こっていく。

 

 うわぁ!?な、何が起こって…ぐわぁ!

 俺の足がぁ! 

 いてぇ…!いてぇよ…!右腕がぁ…!!

 な…何も見えない…!!目が見えなくなっちまった!?

 

 うーん…足止め用に殺すより負傷メインの為に威力下げた筈なんだけど…過剰威力になっちまった。うわ腕とか足が無くなる奴も居るけど、爆破の中心に居たのか腹が弾けとんでる奴もいる…地獄絵図だなこりゃ。

 

「まぁこれも自分達が襲って来たせいだし因果応報ってことで。それじゃ第二ラウンドと行こうか」

 




前回までは帝国兵の言葉orエイドの言葉が通じない描写として文字をぼやけさせてましたが、一々設定するのが面倒&読者の皆さんへ不親切だと思いまして今回からはそのまま書きます。

ネタバレ…にはならないと思いますが言葉が通じる様になるのは特地に行ってからだと認識していて下さい。

今後の展開において、GATE世界の日本にハガレンの漫画がある世界線と無い世界線、両方を考えて居るのですがどちらを書くか決めかねているのでアンケート致します。

  • GATE世界にハガレン漫画がある展開
  • GATE世界にハガレン漫画が無い展開
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