なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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やはり悲劇は美しい


ふふふ

「じゃあ、とりあえず全員一度引き受けてみて駄目なら地下に放り込んで記憶飛ばしてから返すって事でいいか?」

 

 暫くあれやこれやと話し合った結果、そんな感じで方向性が決まった。

 それと同時に艦娘の増加に併せて深海棲艦も幾らか増やすことになった。

 増やすのはまたワ級って思うだろうが、残念。

 今回は戦力的な目的で重巡以上の大型艦が対象なんだ。

 因みに南方棲戦姫は会議の前に帰ってるぞ。

 

「んじゃまあそんな感じで後はローテーションの見直しぐらいか?」

 

 ラムネ片手に議題はないかと振ってみるとちび姫が手を挙げた。

 

「くちく、ひなはどうしたの?」

 

 ちび姫の質問に陽菜がいないことに気付く一同。

 

「今更気付くとか酷くねえか?」

「陽菜って空気読みすぎるっていうか騒がしい時と静かなときが極端だからさ」

 

 頬を掻きながらそうぼやく木曾に確かにとは思う。

 陽菜の奴、騒いで良い時はとことん自己主張するくせに誰かが寝てたりとか少しでも静かにする必要があるとマジで人形みたいに微動だにもしないから居ることさえ気づかないことあんだよな。

 

「兎も角。

 陽菜なら横須賀に行ったぞ」

「それって人類救済の一環で?」

「……まあな」

 

 理由が理由だけにかなり複雑なんだがな。

 

「陽菜の奴、横須賀でぼっちにされてる大和の救済をしたいって着いていったんだよ」

 

 大和の名を口にした途端北上と千代田の表情が消えた。

 

あいつ(・・・)、横須賀に居るの?」

「そいつじゃなくて後任のだ。

 山城と鳳翔は知ってるよな?」

 

 千代田から漏れた絶対零度の声を訂正して二人に振ると鳳翔は複雑そうに山城は怪訝そうにそれぞれ肯定した。

 

「知ってるけど栄転じゃなかったの?」

「あの娘は前任の咎を背負わされていたのですか…」

 

 二人の反応に北上達の険が緩む。

 

あいつ(・・・)じゃないならただの八つ当たりになっちゃう…か」

「だからなんとかしたいって陽菜が言い出してな。

 長門の強い薦めもあったから大丈夫だろう」

 

 陽菜自身同位体からのヘイト管理が云々とか言ってたから真面目に意義深いみたいだったし。

 その時なんでか長門から邪な気配を感じた気もしたけど気のせいだよな?

 その後は今後の流れを確認したり改めてホ級とワ級を紹介したりといった細々したことをやって会議は終わりとなった。

 

「ふぃ~、終わった終わった~」

「鈴谷。あまりはしたない真似は止めなさいな」

「ところでアルファがさっきからいあいあとか言い始めてるけど大丈夫なの?」

「これはもう古鷹が責任もって何とかしないとだね」

「なんとか……わかりました。

 えっと、大丈夫アルファ? バイドルゲン飲む?」

『昼間カラナニヲイッテル古鷹!?』

「あ、復活した」

「アレッテドウイウイミナノカナ?」

「シラナクテイインジャナイ?」

「…ソウダネ」

「尊氏、夜間哨戒に行きますよ」

「マカセテ」

 

 一部聞き捨てならないなんかがあった気もするけど平和な様子で銘々に雑談などしつつ夜間哨戒や入渠なんかにそれぞれが向かう中俺は春雨を呼び止める。

 

「春雨」

「どうしました?」

「実はな…」

 

 元帥というか大本営の意向を伝えようとして、あまり聞かれてもいい気分ではないだろうと思い直す。

 

「ちょっと話があるんだが部屋に行ってもいいか?」

「?

 わかりました」

 

 不思議そうに首をこてんと傾けながらも春雨は応じ俺は春雨の部屋に向かった。

 部屋に入ると目に付くのはフェンスの付いた介護用のベッド。

 最初は床擦れしないようにって初めての介護に必死こいたっけ。

 

「イ級さん、お話っていうのは?」

「そうだった」

 

 少し前からの春雨の回復にしみじみしていた俺は気持ちを切り替え春雨に向き直る。

 

「春雨、お前はこの先どうしたいかって考えはあるか?」

「……」

 

 その問いに春雨はその意味が分かりかねると眉を寄せた。

 

「勘違いする前に先に言っとくけど、別に邪魔になったとかそういうんじゃなくて、折角動けるようになったんだし目的というかやりたいこととかあれば何か考えようかなって思ってさ」

 

 ヘタレというなかれ。

 これから話すことで気分が落ちること請け合いなんだから少しでも希望を見いだしたいんだよ。

 そんな俺の願いが届いたのか春雨は俺の言葉に少し考えた後でぽんとてを叩いた。

 

「じゃあ、希望とは少し違うかも知れないですが、私、白露姉さんたちに逢いたいです」

 

 そう笑顔で願いを口にした春雨に俺は世界の悪意というものを本気で垣間見た。

 明るい話題で希望をどころか、これから話す内容からして絶望突きつける結果になるじゃねえかド畜生。

 

「……どうしたんですか?」

 

 落ち込む俺を不思議がる春雨に俺は腹を括る。 

 

「…春雨。

 大本営は艦娘の深海棲艦化を完全否定することにしたんだ」

「……」

 

 大本営が春雨を艦娘として認めていないという遠回しな俺の言葉に春雨は目を大きく開いて俺を見た。

 すごく心苦しいが今更後に引くわけにもいかない。

 だから、俺は苦しい気持ちに蓋をして話を続ける。

 

「深海棲艦化だけじゃない。

 宗谷と酒匂、深海棲艦から艦娘に生まれ変わった艦も存在を否定している」

 

 自分だけでなく宗谷と酒匂まで否定するという言葉に春雨が声を震わせながら絞り出した。

 

「どう…して?」

「その話を聞いたときは俺だってふざけんなって思ったよ。

 だけど、そうしないと銃後に下った艦娘に害が及ぶと言われたら何も言えなかった」

 

 艦娘と深海棲艦の双方がどちらにもなりうる存在という情報が広まれば、事実を知らないものは彼女達を深海棲艦と同じ『化物』と見なしてしまうだろう。

 そうなればこれまでに深海棲艦によって犠牲になった遺族のやり場のない怒りの矛先は何処に向くか。

 今でさえ数は多くはないが穏健過激問わず政治家にまで艦娘を人外の存在として排しようとする団体は確認されており、もし大本営が春雨の存在を容認すればそれらの台頭を許すばかりか有りもしない吹聴が蔓延し、最終的には解体された元艦娘や彼女達の子供達までもがそういった迫害の憂き目に晒される危険があった。

 無知の悪意から多くの艦娘を守るため大本営…いや、元帥は春雨を切り捨てることを選んだ。

 全てを説明し終えると春雨は小さく俺に問い掛けた。

 

「…大本営は私をどう扱うんですか?」

 

 当然の疑問だよな。

 血を吐きたいのを堪えて俺は元帥の言葉を口にする。

 

「艦娘に擬態進化した新型深海棲艦。

 艦種は姫級駆逐艦。名前は『駆逐棲姫』とすると」

「駆逐…棲姫…」

 

 そう言葉にした春雨に謝りたい気持ちのまま口を開こうとしたが、何故か春雨は小さく笑った。

 

「ふふ、いつのまにかイ級さんより偉くなっちゃいました」

 

 俺でさえそれが必死で繕ったものだと分かってしまう笑顔に俺は叫びたい激情を捩じ伏せ呆れたふりをした。

 

「なんだったらこの島のリーダーも任せようか?」

「それは嫌です」

 

 笑顔を消して即答しやがったぞこいつ。

 

「ああ、そうかい。

 っと、なんだかんだで随分話し込んじまったな」

 

 時計を確認すれば21時を過ぎている。

 そう振ると春雨もそうですねと言った。

 

「すみませんイ級さん。

 少し疲れたので私はこのまま休ませてもらいます」

「わかった。おやすみ春雨」

 

 そう言って俺は部屋を出る。

 そして部屋の入口から動かず俺はクラインフィールドを展開して春雨の部屋に簡易的な防音処置を施した。

 そしてそう経たず俺の無駄に良い聴覚が部屋の中から微かに響く春雨の啜り泣く声を捉えた。

 

「アルファ」

 

 俺の呼び掛けに廊下の奥からゆっくりと現れるアルファ。

 

「落ち着いたらゆうだちを寄越す。

 悪いがそれまで春雨を見ていてやってくれ」

『ワカリマシタ』

 

 俺の頼みに応じ見えないよう配慮してアルファは亜空間に入っていく。

 それを見届けてから俺は言う。

 

「今回は多目に見るから、本人が口にするまで顔には出すなよ」

 

 そう言うと複数の足音が遠ざかっていく。

 レーダーで確認はしてないがどうやら殆んどの奴等が盗み聞きしてたみたいだな。

 

「…ほんと、なんでこんなことになったんだ」

 

 壁の防音を増強しようかと無関係な事を考えながら、やりきれない気持ちを吐き出すため俺はそうごちた。

 

 

~~~~

 

 

 信長の名を受け数多の深海棲艦に対しバイドツリー防衛艦隊に属した深海棲艦達は遅滞防御を敷き全力掃射の雨を降らしていた。

 

「ネライヲツケルヒツヨウハナイ!!

 ウテバアタル!! トニカクウチマクリナサイ!!」

 

 陣頭指揮を執る改型フラグシップのル級の怒号そのままに狙いもあったものじゃない砲撃と雷撃の散布は吸い込まれるように一発の外れもなく有効打を黒い波に浴びせていくが、しかし砲撃に撃沈する艦に見向きもせず黒い波の進攻は緩む気配さえ見えなかった。

 

「ヤツラハイッタイナンナノヨ!?」

「シラナイワヨ!!」

 

 ほぼ不死身と言って差し支えない深海棲艦にだって薄くとも死への忌避はある。

 それに加え闘争本能に由来する連携に中る意思の疎通に回避や撤退といった戦術行動も行うのに、自分達が戦っているあれらの侵攻にはそれらの何物も省みない不気味さがあった。

 なにが沈もうが何を沈めようが関係ない。

 ただただ進み殺し壊す。

 バイドの憎悪とも違う、狂気さえ怖じ気付く異常さだけを掲げ奴等はバイドツリーへと艦首を向け進み続ける。

 

「クソッ、コレジャジリヒ……」

 

 戦線の放棄も視野に入れるべきと信長が居るバイドツリーの根元へと視線を送ったル級はちょうど真上を通過する瑞雲の姿を捉えた。

 

「カンムスノスイバク?

 ドコノイノチシラズドモガ!?」

 

 警告を無視し誇りなき狩場に足を踏み入れた愚か者はと確認しようとしたル級の真横を日向が突っ切る。

 

「オマエッ…」

 

 死にたいのかと言いかけたル級だが、猛獣の如き凶笑を刻み突貫する姿に絶句してしまう。

 

「艦載機を放って突撃……これだ。

 これが航空戦艦だ!!」

 

 4基の砲門が轟音を轟かせながら迫り来る戦艦を粉砕し余波が近くの数隻を傾かせる。

 

「っは、」

 

 消し炭と化す敵の姿に日向の貌に獣が浮かぶ。

 そのまま直進した日向は腰に差した刀の鯉口を切り抜きざまにバランスを崩していた一隻を両断。

 更に返す刀で唐竹に割ると凶笑のままに吠える。

 

「どうした?

 私はここに居るぞ!!」

 

 そう叫び更に雷巡の胴を泣き別れにさせると砲と刀を手当たり次第に振るい屠る日向。

 

「メチャクチャダ…」

 

 なんとかに刃物という表現が相応しい日向の殺陣に誰かがそう漏らしてしまう。

 その思わぬ横槍は同時に敵の侵攻を妨げ僅かにだが注意を引き付けていた。

 

「…シャクダガシカタナイ」

 

 気違い染みた戦闘狂振りは兎も角、乱入が自分達の目的を進めた事実。

 それを無視し見殺しにするのはル級のプライトが許さなかった。

 

「ヤツニセッカンスル。

 エンゴシロ」

 

 近くの艦に命じ日向に近付くル級。

 日向は群れなし迫り来る深海棲艦に対し砲と刀だけで捌けなくなり始めていたが、なお揺るぐことなく吠える。

 

「その程度か?

 数を揃えただけで私の首を獲れると思うな!」

 

 前から牙を剥く一隻の脳天に刀を突き刺し絶命させると刀を抜く勢いのままに反転しながら4基の砲を順次掃射し迫り来る深海棲艦を爆炎の塵へと変える。

 そのまま更なる獲物を狙い定めようとした日向だが、爆炎の煙を割り一隻の重巡が飛び出してきた。

 

「っ!?」

 

 重巡は千切れかけた腕を振りかぶり艤装を日向に叩きつけようとするが、割って入ったル級の足刀が重巡の胴を切り裂き吹き飛ばす。

 そしてル級と日向は互いを認識したと同時にお互いに向け砲をそのまま放った。

 放たれた砲弾は顔のすぐ側を通過しその後ろから襲い掛かってきていた艦を打ち砕いた。

 

「……」

「……」

 

 二隻は無言で視線を交わすとほぼ同時に反転し双方の背中を庇う体勢で攻撃を開始。

 味方からの支援砲撃も加わり二人に戦いながら会話を挟む程度の余裕が生まれた。

 

「ナニヲシニアラワレタ?

 ココハタダノカンムスガクルトコロデハナイゾ」

 

 言外に死にたいのかと問うル級に日向は牙を剥く笑みを浮かべ宣う。

 

「私は戦艦だ。

 戦艦として好きに戦い、理不尽に沈む。

 その為に此処に来た」

 

 そう宣う日向にル級はまるで私たちのようだと思った。

 

「ナラバイドツリーニムカエ。

 ソコニワタシタチノセンソウヲフミアラシタテキガイル」

「バイドツリー? 世界樹の事か?」

「ソウダ」

 

 日向の問いを肯定しル級は日向の背から離れ先程の日向の様に大立ち回りを始める。

 

「イケ!」

 

 背を押すル級の砲声に日向は海面を蹴りバイドツリーへと舵を切る。

 無論行かせまいと妨害しようと進路に割り込もうとするが、日向の道を切り開くため他の艦達が身を呈して防壁を成し一直線に開かれた道をただ真っ直ぐ日向は駆ける。

 

「オマエナラアルイハ…」

 

 ル級の呟きが聞こえた気がしたが、日向は振り返らずバイドツリーへと向かった。




今回は真面目に難産でした。

深海棲艦化を扱おうと思ったからにはやはり艦娘と深海棲艦の関係は切り離せないとひたすら納得出来るよう努力してこのザマとか…

後携帯先行に当選したのも理由…げふんげふん。

次回は戦闘描写ましましの予定。
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