ありふれてないミュータントは世界最強 作:アメコミ限界オタク
でもそこまでの書き留めはあるんでもうちょい待って。
地上世界に来てから数ヶ月。
今では廃棄された工場での生活や、隅っこ暮らしならぬ路地裏暮らしもまた、板について来た。ホームレスの先輩方ありがとう。
おかげで俺は元気です。
そして今していることは、それは……。
カタカタカタカタ。
パソコンのキーボードを叩く音が仮拠点のひとつである段ボールハウスのBGMになっている。
あの日の後、俺を作った研究所の残骸を調べていたら奇跡的に無事だったサーバーから俺に関するデータや計画について調べてみた。
端末やキーボードが無かったのでアクセスには電子機器をハッキングする能力を使った。
そこに保管されていたデータによると計画の名前は『ウエポンオメガ』と言うこと。
そしてオメガ計画の目的はより強く、より素早く、より優秀で、より大規模で、より高い能力を持つミュータントの遺伝子を集めてひとつに纏める。
そうすることでオリジナルより強力な力で多才なパワーを誇る最強の人造ミュータントである『ウエポンオメガ』を造り出し、そのミュータントから自由意思を奪い、超人兵器として利用することにある。
なるほど。
俺は兵士ですらない、兵器扱いだったのだ。
オメガ計画は元々は普通の人間を強化人間である超人兵士に変えるためのウエポンX計画と同一企画だったそうだが、最低限人道には配慮していたX計画と違い、オメガ計画はその最低限の配慮すらない。
計画がどこかでより効率と利益を求めた悪意のある誰かの手に渡り、歪められたようだ。
或いは、オメガ計画は最初から悪意しか無かったのかも知れない。
どちらにせよ俺にとって重要なことは、計画がまだ続いていること。
そして俺と同じようなウエポンオメガがまだ造られていることもな。
当面の俺の目標は、俺の弟や妹にあたるオメガたちを解放すること、オメガ計画を潰すことのふたつだ。
ちょうど盗んできたログには、他の研究所にデータを送信した履歴が残っていた。
ちゃんと履歴消しときなよ、と思って送信日時を見たら俺が暴れる直前の時間だった。
……消す余裕が無かったようだ。
まあ消されたところで、飛躍的に能力が成長した今の俺なら現実改変や時間の巻き戻しもできるから、履歴の復旧も楽勝だろうから意味はないか。
その送信履歴を電波探知で辿って行くと、この付近のオフィス街に一般企業に紛れた研究所があると判明した。
立地的に人体実験などはしていないようだが、そういう実験を行っている各研究所の研究データが必ずここに送信され、整理保管されている重要拠点だ。
ここのデータを盗めば必ず俺の欲しい情報が手に入るはず。
俺はテレポートでビル内に侵入する。突入先はビルのサーバー室。
俺が侵入した瞬間、警報が鳴り響いてサーバー室に侵入者がいると知らせる。
これも想定内のことなので慌てず騒がず、サーバーのひとつに手をかざして能力を使う。
すると電波や電気信号を通して俺の脳内にサーバー内の情報が直接インプットされていく。
俺の侵入にはもう気付かれているはずだが、武装した警備員が突入してくるまでに70秒はかかる。
そして俺が全ての情報を盗むまでに1分もかからなかった。
監視カメラに向かって中指を立てて舌を出して挑発してから即テレポートで逃げる。
その10秒後、アサルトライフルを構えた警備員が突入する頃にはサーバー室はもぬけの空だった。
「いや~、ここまで上手く行くとはね~」
拠点の廃工場でひとりで祝杯をあげている俺、オメガ89。
飲んでるコーラはその辺のコンビニで買ってきたもの。お金は偽造したキャッシュカードで払った。カードはニセモノでも電子マネーはハッキングで作った本物だからバレることはない。
情報を整理するためにノートに書き出す。
まず、オメガ計画は89号(俺)が誕生するまでに俺と同じ遺伝子を持つ88人が造られたが、いずれも人の形を保てない異形や生存能力に欠けた個体(産まれてすぐに死んじゃった個体)を含めて失敗作の山が重なっていた。
それは大量のX遺伝子を無差別にかき混ぜたせいで起こる互いの遺伝子への拒絶反応であり、遺伝子レベルの喰い合いが働いた結果起きる遺伝子異常だと。
89番目に産まれた俺はそういった遺伝子異常を克服。そして全てのX遺伝子に眠る力を完璧に引き出すことでオリジナルになったミュータントすら超える力を発揮し、俺だけの固有能力の発現にすら至った唯一無二の成功例にして現時点での最高傑作であること。
そして俺の成功例を元に、次々と〝妹たち〟が造られていること。
以上が今回判明したオメガ計画の大まかな流れだ。
そして妹たちについてだが、女にしたのはキチンとした理由があるようだ。
ミュータント能力の起源となるX遺伝子。
そのX遺伝子は父親側からの遺伝でのみ、親から子どもへと継承されていく。
完全な父性遺伝だ。
万が一制御下を離れて暴走し、自分たちの知らぬところでX遺伝子を蒔いたりするケースを想定すると子どもに遺伝せず、〝そういうこと〟をしたらすぐに分かる女の方が管理しやすい、という理由から意図的に女の子のオメガを作ることに腐心しているようだ。
ここからいちばん近い研究所だと○○キロ離れているが、テレポートが使える俺なら関係ない。
先ほどのデータ保管施設のデータ泥棒も直ぐに俺の仕業だと発覚する。
やつらにとっても貴重な財産である『妹たち』が〝廃棄処分〟されるようなことは無いだろうが、俺が気になっていた自我を奪う例の首輪に関する情報が無いことも気がかりだった。
あれもオメガ計画の産物なのか、計画とは関係無いのか。それすら分かってない状況だからな。
もし首輪がウエポンオメガ専用の物でないなら他のミュータントや人類に使い、奴隷兵士をいくらでも量産可能ということだ。
そうでなくてもセンチネルや戦闘ロボットの軍隊が待ち構えていることは考えてる。現に俺のいた研究所では軍隊顔負けの規模の大戦力だったからな。
俺の能力を知っているやつらが、防衛対策に手を抜くとも思えない。
よって、ここからはスピード勝負になる。
やつらが俺を倒せる戦力を整えるか、俺がそれより先に妹たちを救出するかの勝負だ。
俺は祝杯をそこそこに切り上げて、テレポートで次の襲撃に移る。
待ってろまだ会ったことのない妹たちよ。いま助けに行くからな。
センチネル
大抵はターミネーターやモビルスーツのような人型ロボット兵器。
マーベル世界ではアンチミュータント兵器として造られた兵器は全部ひっくめてセンチネルと呼ぶらしい。
その種類は幅が広く、ロボット、パワードスーツ、サイボーグ、ナノマシン、兵器型と様々。
大きさも人間サイズや高層ビルサイズ、分子サイズと規格が別れてる。
作者的には映画やコミックで大好きなミュータントを虐めまくってるのがムカついてるので89号のかませ犬兼サンドバッグ係になってもらった哀れなロボットたち。
ガラクタのスクラップめ!(CV玄田哲章)
首輪
ウエポンオメガの自由意思を奪う奴隷化の道具。割りと簡単に壊れる欠陥品。
妹たち
89号の成功から遺伝子を安定させる技術が確立され、量産・管理がしやすく新規に造られたされた改良型ウエポンオメガ。
能力的には89号に劣るが、オメガレベル相当の能力を持つ。
『妹たち』と呼んでいるが、実は血の繋がりは一切ない。