ありふれてないミュータントは世界最強   作:アメコミ限界オタク

3 / 10
第三話

 

 

核シェルターを転用して造られた巨大施設内では、怒号と銃声が絶えず響く地獄になっていた。

 

「89号だ!オメガ89が攻めてきたぞ!!」

 

「例の逃げ出した兵器だ!捕まえても殺してもいい!!賞与がたっぷり出るぞ!殺せ!!」

 

バイク乗りの日本ヒーローを模したパワードスーツ型センチネル・アイアンライダーを装着した軍隊上がりの傭兵たちが侵入者……つまり俺を攻撃する。

 

アイアンマンのリパルサー技術を盗んで造られたリパルサーレイが嵐のように殺到するが……。

 

「効かん」

 

それに対して水を切るように、手を振り払う動作をする。

たったそれだけでリパルサーレイの弾道は曲げられ、俺を避けるために曲線を描く。

 

それは超強力な電磁場によるエネルギーの波長制御。リパルサーやブラスターによる攻撃は完全に無力化できるバリアだ。

 

その動きは、まるでビームが自分の意思で俺を避けたように錯覚するほどごく自然な軌道だった。

 

『撃て!!撃ち続けろ!!やつを90号の元に行かせるな!!!』

 

続けざまに対人用小型ミサイルが一斉射されるが俺はテレキネシスでミサイルを止め、ハッキングでミサイルの爆破を防ぐ。

ダメージはゼロ。

 

警備チームは逆にテレキネシスでスーツの内部構造を破壊されて無力感されるか、ハッキングされて仲間を攻撃させられるかの二択となっていた。

 

全体放送で武装職員に命ずる所長はこの状況を把握していないのか、こう続ける。

 

『やつを殺した者には500万ドルの賞与もくれてやる!!! なにがなんでもやつを通すな!!』

 

「命あっての物種だ!」

 

「カネよりも命の方が大事だ!」

 

まだ無事な警備兵の行動も、職務放棄して逃げ出すか、武器を捨ててホールドアップするかの二択だった。

 

降伏した敵のひとりにオプティックブラストの光弾を構えて脅す。

 

「90号だ、ここにいるだろ? 90号はどこだ!? 言え!!」

 

口止めされている警備兵は中々口を割ろうとしない。喋った場合の罰則が恐ろしいようだ。

 

「ならこうしてやる」

 

俺はそいつの頭を掴むと、テレパスでそいつの心に侵入する。

その男の記憶の中にある90号に関する記憶と情報を奪うと意識を奪ってから解放してやる。

 

ついでにここで働いてる間の事を全て忘れて貰った。

 

「ここか……」

 

大勢の警備兵を薙ぎ倒してようやく90号の隔離部屋に到着した。

扉を壊して突入すると、金属製の首輪を付けられた女の子が虚ろな目で待ち構えていた。

 

やはり自我を奪われているようだ。

 

『90号、目の前の少年を殺せ』

 

赤い髪をたなびかせ、90号は全身に鎧のように炎を纏って突撃してくる。

背中から翼のように2対の炎を生やして推進力にすることで初速の時点で音速を超える速さを実現してるようだ。

 

そのタックルを避けてカウンターで首輪を壊そうとするが、硬くて壊せなかった。

計測上、緑の巨人や雷神や黙示録の魔人以上のパワーを誇る俺が壊せないほどの強度。

相当頑丈な物質で出来ているな。

 

熱を吸収できて頑丈な金属といえば……。

 

「ヴィブラニウムか」

 

『ご名答、流石はお高い学習装置を使っていただけの事はあるな』

 

所長も余裕を取り戻したようだ。小馬鹿にしながらも俺の推測に拍手する。

 

90号を中心に放熱が起きてるせいで、空気が焼けるように熱い。というか、コンクリートで出来ているシェルターが放射熱で溶けてるほどだ。

この体には溶鉱炉の中を裸で泳げるレベルの超高熱耐性があるから平気だが、それが無ければこの場にいるだけで即死だ。

 

「落ち着け妹、お兄ちゃんが何とかしてやるからな、少しだけ我慢してくれ」

 

なんとか宥めようとするが、妹はそれを聞かずに再びタックル。

今度は避けずに正面からバリアで受け止める。

バリアに激突して弾かれる妹を即座にテレキネシスで捕獲し、ベアーハグで捕まえる。

 

火力を上げてなおも暴れる妹に対し、テレパスで強制的に能力と意識をシャットダウンさせる。

 

ヴィブラニウムの分子構造を解析すると、分子結合の信じられないほどの硬さと柔らかさのバランスにびっくりした。

 

硬さと柔らかさのバランスが金属としてこれ以上ないほど理想的だ。

力で壊すことに拘ると苦労しそうだ。

なら腕力以外の方法を使うか。

 

分子操作能力でヴィブラニウムの分子結合を引き剥がし、首輪を解錠する。

 

『!?!? バカな! そんなバカな!!』

 

所長もこれには予想外だったようで、俺の能力に驚愕する。送信されたデータには無かった能力だもんね。

 

ふははは!どういう理屈かは知らんが!自我を得てから超能力が大幅に強化されて止まるところを知らんのだよ!!

 

「これでよし、もう大丈夫だぞ妹よ」

 

テンション爆上がりで調子に乗りまくる。

 

「ぇ、あ………う……」

 

若干引いてる妹こと名前はまだない90号。

 

どうやらこの子も自我を得たばかりで動揺してるようだ。

安心させるために頭を撫でてやると落ち着きを取り戻す。髪の毛さらさらで猫耳も生えてるじゃん。ちなみに人間の耳もちゃんとついてる。

すげえ。なんかよくわからんがすげえ。

 

「そんじゃ、兄ちゃんはまだ仕事が残ってるからちょっと待っててくれ」

 

妹を残して主任の元へテレポート。

 

「ひっ、やめ……」

 

「死ね」

 

命乞いしようとする主任の首を掴んで電撃を流す。

電気椅子の数百倍の電流と電圧で瞬く間に燃えカスとなった主任の肉体は灰となり、ポロポロと崩れ落ちる。

 

「じゃ、帰るか」

 

またテレポートで妹の元に戻ると、俺はあっけらかんと言い放つ。

 

「……ど、ど、こに、か…かえるの?」

 

たどたどしい言葉ではあるが、妹はきちんと質問してくる。良い子だ。

 

「俺たちの家だ」

 

家族が増えるよ! やったね俺!

 

新しい兄妹になった90号を連れて工場に戻ると、能力で作って設置してた風呂で身体を洗ってやる。

 

「ほら、ちゃんと頭と身体洗うぞ!暴れるな!」

 

「う~、いや! や~!」

 

子どもかッッッ!!

 

イヤイヤ期のように、あるいは猫のように風呂を嫌がる妹を強引に風呂に入れる。

だってこの子、風呂入ってない猫みたいな匂いしてて結構匂うからな。

 

流石に女の子が不潔で臭うのは不味いだろ。

 

妹の世話をするのも兄の仕事ということで体と頭を洗ってやる。

 

「明日は別の研究所襲ってくるからな~」

 

そんな形で今日から俺たちの兄妹を救う日々が始まったのだった。

 

「あ、そうだ、俺たちの名前も考えないとだな~」

 

「?」

 

小首を傾げる妹の頭を撫でてやると喉を鳴らして心地良さそうに目を細める。

そのまま顎の下も撫でると、そのまま寝落ちする。

 

「おやすみ、焔」

 

「ほむら……?あたしのなまえ?」

 

「そう、焔。炎の能力者だから焔だ!」

 

頭を撫でながら「焔」と名前を聞かせると、焔はえへへ、と笑いながら眠りについた。

 

ふはははは、ぐっすり眠るといい。

 

俺も明日に備えて眠りにつく。

 

明日からは戦争の日々が待っているのだから。

 

 

 

 

 

 





オプティックブラスト
Xメンのサイクロップスの眼からビーム。
破壊力抜群でアダマンチウムとヴィブラニウム以外はなんでも壊せる。
太陽光さえあれば無限に撃てるうえに拡散・曲射・誘導となんでもあり。


オリキャラで89号の妹。
炎に関することならなんでもできるオメガレベルミュータント。猫耳で赤い髪と金色の眼をした美少女。
性格は極度の面倒臭がりで風呂嫌い。好きが有れば日向ぼっこしながら昼寝してる。


緑の巨人や雷神や黙示録の魔人
ハルク、ソー、アポカリプスのこと。
カタログスペックでは89号はこの三人より腕力がある。
ただし、アメコミに置けるカタログスペックはあてにならないのでこの三人と腕相撲して必ず勝てる保証はない。特にハルクはその時の気分次第で強さの変動が激しいのでなおさらあてにならない。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。