ありふれてないミュータントは世界最強 作:アメコミ限界オタク
訓練開始から2週間ほど経過。
俺は訓練に出る傍ら、ハジメの武器開発に協力していた。
「それで銃の設計図はこんな感じだ。パワードスーツはこっち」
神の使徒としての能力がクラフトや技術工作に全振りされているのか、ハジメは俺が持つ知識を教えると、異常な速さで飲みこんだ。
まるで新品の乾いたスポンジが水を吸収するかのようだ。
やはり戦闘チートが無いだけで、神の使徒は全員チートのようだ。
「協力してくれるのはありがたいんだけど……なんでそんなに詳しいの?」
ハハハ、こちとら学習装置であらゆる学問や技術についての知識を直接インプットされてるからな。武器や兵器については最優先に詰めこまれたから当然のように知っているとも。
「それじゃ、俺は訓練出るから」
行ってら~、と俺を送り出すハジメ。
訓練場に行くと、妹たちが檜山たち小悪党組をボコボコにしていた。
3対4と小悪党組の方が数で勝っているにも関わらず、一方的な戦いになっている。
「しゃくねつ食らえ~」
「ちょっと頭冷やそうか」
「しゃおらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
三者三様の掛け声と共に、それぞれが得意技で檜山一味をボコボコにしてる。
「熱い!熱い!!!」
「ごぼごぼごぼっっ!! ごぷぅ!?」
「痛っ!?痛ぇ!!やめてくれぇ!!」
檜山一味ABCはそれぞれが炎に巻かれ、頭を水で覆われて窒息し、ヒョウカにマウントを取られた上で殴られている。
リーダー格である檜山は魂が抜けたように、ボケっと突っ立ってそれを見てる。
……は? どゆこと? どういう状況だこれ。
「あ、お兄ちゃん!」
アクアが俺を見つけて嬉しそうに小走りで寄ってくる。……檜山一味の返り血を顔につけたまま。
マンガに出てくるサイコパスかおめーは。
「顔、顔拭け」
ごしごし。
渡したタオルで顔を拭くと、アクアは俺に向かって言う。
「お兄ちゃん、あのね、檜山くんたちが襲ってきたの!」
「焔も襲われたぞ~」
「アタシもだぁぁぁぁぁぁあ!!!」
妹たちから詳しく話を聞くと、どうやら檜山たちはここ二週間で強くなって調子に乗り、妹たちよりも強いから襲える、つまり、昔返り討ちにされた屈辱を返せる、と勘違いしたようだ。
しかも、妹たちのステータスプレートが未だにバグってるのを『弱いから数字化できないだけ』と都合良く考えていたようだ。
なんてバカなやつらだ。
それが俺の最初にパッと浮かんだ感想だった。
「おい、檜山と愉快な仲間たち。今の話は本当か?」
「うぐっっ、嘘だ……。 俺たちはステータスも表示できないほど弱っちいそいつらに訓練をつけてやろうとしただけなのに……」
ていてい、と脇腹を軽く蹴りつつ檜山の仲間たちに聞くと、檜山たちは訓練をつけたのだと主張する。
まあテレパシーでここ数分の記憶を探って檜山たちの言ってる主張は嘘だと分かったけどな。
本音では、自分たちの方が妹たちよりも強くなった(※勘違い)から今度こそ好き放題できる、と勘違いしてその気になったっぽい。
今まで相手にされなかった鬱憤とハジメに構ってる分の逆恨みも含めて、徹底的に辱しめてやろうとしたようだ。
周囲にクラスメイトがいないこの状況なら、逆に返り討ちにしても文句を言われる筋合いはないし、檜山たちがお得意の嘘をついたところで、後から出てくる証拠などなんとでもできる。
「あっそ。それで、俺の妹たちに悪さしようとした罪を償う覚悟はできたか? 返事は聞いてないから歯ぁ食いしばれよ」
俺は一方的に宣言すると、拳を固め、檜山の胸ぐらを掴む。
手加減はするから安心して殴られると良い。
「ひぃぃぃぃぃ!!やめてくれぇぇぇぇ!!お前らもなにか言えよぉぉぉお!!」
檜山は自分の仲間たちに助けを求めるが、仲間は全員気絶してるか、気絶したふりで誤魔化してる。
だんまり決め込んでるなこれは。
全員ぶっ飛ばすからそのまま大人しく順番待ちしてるように。
「やめない」
俺が拳を振り下ろそうとすると……。
「何やってるんだ!?」
その声に俺はバイオハザードのゾンビ気取りでゆっくり振り替える。
そこにいたのはやはり、あの男、天之河光輝だった。他にも愉快な仲間たちである坂上と八重樫も一緒だ。 ……おい待て、白崎はどこだ?
「いやぁ、誤解しないで欲しいんだけど、俺は檜山を殴ろうとしていただけだ」
「なにをどう誤解しろと!?!? ……ってそうじゃない! なにをしてるんだ!」
ナイスツッコミ。
「檜山たちが俺の妹たちを襲って返り討ちにされた。 で、今は俺が檜山たちを制裁しようとしてるところだ。邪魔をするな」
「檜山たちが悪いことをしたからって、それはやりすぎだろ!!悪いことをしたなら謝ればいいし、許すべきだ!」
普通の人間の世界なら、そうなんだろうな。
でも俺はやめない。人間じゃないし。
まずは1発目だ。拳を振り抜く。
「ぎゃふんっ!!」
檜山が悲鳴をあげる。
本当にぎゃふんって言うやつ初めて見た。
「やめろ!!」
「やめない!!」
もう二度と、悪さできねえ体にしてやる。
天之河は殺意すら感じる目で俺を睨むが、坂上は俺と天之河、どっちにつけばいいのか分からずに狼狽えているようだ。
待たしても膠着状態。面倒だな。
またテレパスとエンパスで強引に場を納めるか?
「ねえハク、ここは光輝の言うとおり、あなたが退いてくれないかしら」
そう思っていると、八重樫が天之河に助け船を出す。
そして俺にこっそりと耳打ちしてくる。
「……あなた達が嘘をついてるとは思ってないけど、見たところ檜山達は罰としては充分なくらい傷ついてる。これ以上やったらあなたが悪者になるから大人しく退いてくれない?」
「分かった、そういうことなら退こう」
八重樫は一見すると天之河の味方をしてるようで、実のところ完全に俺たちの味方のようだ。
「天之河よ、ここはお前に譲ってやる。感謝しろよ」
檜山を解放すると、腰を抜かしたように崩れ落ちる。まだ1発しか殴ってないのに。
俺は妹たちに撤収を告げ、その場を去ろうとすると、天之河に止められる。
「待て! 檜山たちに謝れ!やりすぎだ!」
「やなこった。くたばれ檜山」
「くたばれ~」
ついでに唾を吐き捨て、中指を立てて挑発する。
「こら!お行儀悪いことしないの!」
ぽか、ぽか。
アクアが俺と俺の真似をする焔を軽く叩く。
去り際に天之河が何かしてこないかと警戒していたが、何も起こらずに撤収できた。
恐怖の裏に、憎悪に満ちた感情をマグマのように滾らせている檜山については警戒が必要だな。次、面倒を起こしたら監視もつけるか。
さて、ハジメの工房の方はどうなってるんだろうか。楽しみだ。
「ようハジメ~。オモチャの具合はどうだ?」
「差し入れにクッキー焼いてきたよ!ここに置いておくから後で食べてね!」
アクアを連れてハジメの工房に行くと、銃やパワードスーツの原型がもう完成していた。
流石、錬成師は仕事が早い。
そして先客の姿もある。
「あ、アクアちゃんとハクくんも南雲くんに用があるの?」
「おう白崎か。この銃もう使えるのか聞きに来たんだ」
ハジメは白崎となにか話していたようだが、銃を手に取り、俺に渡してくる。
銃の種類はリボルバー。
コルトパイソンに近い見た目だが、若干違うハジメオリジナルの銃。
弾数はオーソドックスな6連発。
「うん。もう使えるはずだよ。テストはまだしてないけどね」
なら俺がテスターをしてやるか。
「的はどこだ?」
ないなら能力で作るけど。
「そこにあるのを使ってよ」
ハジメが指差した方を見ると、人型や動物の形に切り抜かれた木製の板が置いてある。
ご丁寧に板を立てるためのつっかえ棒も用意して、準備は万全のようだ。
「ありがてぇな。じゃあ使わせて貰うぜ~」
俺はそれだけ伝えると、的を持って出ていく。
バンバンバン!
銃弾はきちんと真っ直ぐに飛び、的を破壊する。そして漂う火薬の燃焼する匂い。
最高だな。
この分だとパワードスーツや例の動力炉が完成するのも直ぐだな。
剣と魔法の世界で銃やアイアンマンスーツがあれば、ハジメには向かうところ敵無しだろうな。
そう言えば、性能実験としてハジメも迷宮に来る予定なんだっけな。
「zzz……何気にハジメンがいちばんのチートかもね~」
「かもな」
この銃があればハジメもそこそこの戦力になるだろう。
ハク
妹たちに悪さされそうになって割りとブチギレ。次があったら檜山を消そうと思う程度には。
焔、アクア、ヒョウカ
檜山一味が襲ってきたから返り討ちにした。
フルボッコだドン!
檜山一味
檜山以外はフルボッコ&話を聞いた治癒師一同から治療をボイコットされた。哀れ。
天之河光輝
檜山一味の話を信じて肩を持つ。
ハクのことが嫌い(無自覚)な上に、人はそう簡単に悪さしないと思いこんでるからしゃーない。
ついでに言うと妹たちは兄に逆らえず、嘘を言わされていると思いこんでるため彼女たちの襲われた発言は無意識でノーカンにしてる。
坂上龍太郎
ハクに対して嫌悪感は無いため、今回のトラブルでは中立の立場。
親友を信じたいけど檜山一味とオメガ兄妹の主張をどちらも鵜呑みにしなかったので実は結構賢い。
八重樫雫
天之河の味方に見せかけた伏兵。
全面的にハク側の味方。
白崎香織
ハジメ一筋。今回のトラブル?知らんな。
ハジメとの会話の内容は原作にもあった例の迷宮入り前夜の会話。
南雲ハジメ
原作のリンチイベント神回避。
やっぱり恵まれてる。
迷宮にはあくまで武器の性能実験のために行く予定。
原作でも迷宮はちょっとした力試し感覚だったから神の手による強制参加でええやろ。