時雨「提督……そんな、嘘だよね」
時雨「行かないで」
時雨「一人は寂しいよ」
時雨「……」
時雨「…………」
◇壱日目
マルフタマルマル
目が覚めた
嫌な夢を見ていた気がする
ここは……
病室だ
そうか……帰って来られたんだ。
僕ら1YB3Hは
ブルネイからスリガオ海峡に出撃して、そして……
任務を完遂した。
山城は…
みんなは無事なのかな
今すぐ確認したいけど
全身が鉛のように重くて動かない
提督のおかげで、あの夜を越えられたんだ
提督……今すぐ会いたいよ
◇弍日目
マルナナマルマル
目を覚ますと、最上が心配そうに僕の顔を覗いていた
どうやら艦隊のみんなは無事帰投することができていたみたいだ
僕の体は……大丈夫
なんとか歩くことならできそうだ
山城と扶桑は損傷が酷くて、しばらく入渠みたいだけど…
でも良かった…
「時雨はまだ安静にしてなきゃダメだよ」
提督に会いに行こうと支度をしているところ、最上に引き止められる
「それに、提督に会いに行くなら皆揃ってからの方がいいでしょ?」
…と最上が続ける。
確かにそうだ……山城と扶桑も提督に会いたがっているに違いない
僕だけ抜け駆けは良くない……よね。
二人の入渠は明朝頃には終わるみたいだ
明日、提督に会えるのが楽しみだな
提督に直接お礼を言わないと…
◇参日目
マルキュウマルマル
司令室にて
提督は泣きながら僕らを迎えてくれた
提督は本当に優しいんだね
でも提督の涙を見ると
僕も悲しくなっちゃうよ
涙ぐみながら提督は
僕のことを抱きしめて、頭を撫でながら
優しい言葉を掛けてくれた
久しぶりに感じる、
提督の温もり……
提督の匂い……
提督の感触……
できることなら、ずっとこうしていたいな…
山城、扶桑、最上、山雲、朝雲、満潮……
そして提督
みんな僕のかけがえのない家族だ
でも、僕が病室で寝ている間、お見舞いに来てくれなくて
少し…寂しかったんだよ
提督は忙しいから、仕方がない……よね
◇四日目
イチハチマルマル
食堂へ向かう道中
気がつけばに司令室へ立ち寄っていた
提督が「どうした、時雨?」と頭を撫でてくれる
えへへ……
「提督も、無理しちゃダメだよ…」
ボクはそう言って、
不機嫌そうにこちらを睨む大淀を尻目に、司令室を後にした。
やっぱり提督の顔を見ると安心する
ずっとずっと……そばにいたい…
何となく提督が元気が無い気がしたんだけど…
気のせいかな
◇伍日目
今日、港に見慣れない黒色の船が止まっていた
大本営の重鎮と呼ばれる人物も何人か見かけた
一体何の用だろう
そういえば僕が病室にいたときも
窓からあの黒い船が見えていた気がする…
もしかして提督がお見舞いに来てくれなかったのって…
いや、来れなかったのって……
……
気のせい……だよね…
おもむろに卓上のみかんに手を伸ばし、
一房(ひとふさ)口にほうばる
治りかけの口内の傷口に染みて少し痛かった
そうだ今度、提督にも持って行ってあげよう
提督もみかん、好きかな…
◇六日目
フタサンサンマル
一日中提督を探し回って、やっと会えた
提督……どこに行ってたの……?
詳しく事情を聞こうとした
……けど、提督はなんだか疲れている様子だったのでやめておいた
後で最上から聞いたけど
港に止まってる黒い船の中に
今日ずっと閉じ込められていたってさ…
提督……あいつらに何かされたの?
ねぇ、提督……
◇七日目
マルハチマルマル
司令室の前で
満潮をはじめとした駆逐艦たちが提督に詰め寄っていた
どうやら大本営の連中との諍(いさか)いがあったことを聞きつけたらしい
「提督……なんだか元気がないように見えますよ~」
「ちょっ…提督!山ちゃんのこと無視しないで、ちゃんと説明してくれる!?」
「どうして私たちのこと頼ってくれないのよ…!」
そうだよ……提督
あいつら……
提督のことを無理矢理、狭い部屋に閉じ込めて
大人数で提督に酷いこと言ってたんだってね……
許さない……
◇八日目
雨。
提督は…雨、好きなのかな
僕は
ちょっと苦手だな
止まない雨は…ない……よね、提督
◇九日目
マルゴーマルマル
朝起きたら、例の黒い船からぞろぞろと人が出てきた。
またあいつらだ。
提督が無事か確認しないと…
司令室へ向かおうとしたら、扶桑に呼び止められた
彼女は「大丈夫よ」と微笑むと、そのまま司令室へ向かって行った
提督……僕、心配だよ
◇拾日目
フタマルマルマル
秘書官に今日の演習の報告を終えて、日記に筆を走らせている
例の船は数日前からずっと停泊したままだ
あの船が来てから、提督は忙しいみたいで全然会えていない
提督がまたあいつらに攻撃されてるんじゃないか心配だ
でも大丈夫だよ提督…
どんなことがあっても
どんな相手だとしても
僕が絶対、提督を守るからね
◇拾壱日目
「提督が辞職なさるそうです」
秘書官の大淀がそう言った。
意味が分からなかった。
わけがわからない。
理解したくもない。
考えたくない
◇---
今日も提督と会えない
お願い
僕を一人ぼっちにしないで
◇---
マルヨンサンマル
司令室から提督が出てきた
ごめんね、こんな朝早くから
え? ちゃんと寝たか…って…?
……大丈夫だよ
提督のためなら これくらいへっちゃらさ
ねぇ、提督……どうして急にいなくなっちゃうの?
「いつかまた会える……」
だから大丈夫……?
…
……
提督ってさ
僕らに嘘をつくとき
目を見て話してくれないよね
なんで
どうして?
教えてよ
…
……
そっか……
きっと僕が悪いんだよね……
僕が提督をちゃんと守れなかったから……
ごめんね……提督……
僕のせいだ
◇---
眠れない…
だって、明日で提督がいなくなっちゃう…
寒い……寒いよ…提督……
提督、言ってくれたよね
いつでも一緒にいても……
"いつまでもそばにいていい”……ってさ
◇---
夜、提督に会った。
「今日でもう…お別れだね」
ねぇ、提督…
行かないでよ…
「朝早くなんだね……そっか……ううん、なんでもないよ」
もう会えないなんて嫌だよ……
「僕がお見送りしようか? あ、ごめん…余計だったかな…」
一人は嫌いなんだ…
「ねぇ提督、みかん一緒に食べよ。あ……お茶、淹れるね」
僕を置いていかないで……
◇---
マルゴーマルマル
部屋の外から
あいつらがドアを叩いて叫んでいる
「貴様は完全に包囲されている!」
「人質を開放しろ!」
「要求はなんだッ!」
…
……
何を言ってるんだ
提督を僕から奪おうとしているのは、キミたちだよね?
提督は僕の膝の上で眠っている
睡眠薬が効いてるみたいだね…
たまにはゆっくり休まないと
だってほら、提督……一人で無理しすぎるからさ……
……提督の寝顔、可愛いなぁ…
大丈夫、僕がいるから……
ずっとずっと…
僕が提督を守ってあげるからね
◇---
マルゴーマルマル
部屋の前から鈍い音がしたと同時に
あいつらの気配が消えるのを感じた
気がつくと、目の前に扶桑たちがいた
「さぁ、私たちで提督をお守りしましょう」
そっか……キミたちも
僕と同じ気持ちなんだね……
◇---
窓から黒い船がたくさん見える
大丈夫だよ、提督
僕らがついているから
さて、今日もうるさい小バエを落とさないと
提督、またいっぱい褒めてくれるかな
ずーっとずっと
いつまでも……
一緒だから…………
ね、提督
アニメ2期、まさかの延期ですね。
待ちきれなくて、こんなSSまで作ってしまいました…
次回は「最上」。
世界観は一緒なので、また見てくださると幸いです。