「ふう…」
「いきなり何すんだよ!おかげでぺしゃんこになったわ!?」
「すまんすまん。少し思い当たることがあってな」
「思い当たることって…ここか?」
理事長たちとの話を終えた阿武野は罰鳥を掴んでグラウンドに来ていた。
「ああ、私はシンボリルドルフとレースをした。そしてその時の速度についてなんだが…
「ん?どゆこと?」
「この本によるとウマ娘は基本的にレースでは60~70、速ければそれ以上は出ると書かれてある。実際練習していた他のウマ娘たちもこれくらいだ。しかし私とシンボリルドルフが走った時には距離は短いが明らかに80以上が出ていたんだ」ペラペラ
「えぇ?つまりシンボリルドルフはウマ娘じゃないってこと?」
「いや、いくら速いからと言って一概にそうとも言えない。例として昔単距離だが80以上を出したウマ娘もいたそうだ。しかし今回は2000mの中距離。更に
「うーん…単純に気持ちの問題ってだけじゃねえの?」
「流石に気持ちだけで10kmも増えるはずはないと思うんだが…うーむ…」
「(そもそもあれはただの発破、確かにここにはウマ娘は特定の条件下で強くなると書かれているが…にしては速くなりすぎているし…ん?これは…)」
阿武野が本を片手にターフの上を捜索していると、何か凹んでいるような跡を見つけた。
「足跡の形からして私ではない。恐らくは奴の足跡だ。しかし地面が凹むほど踏み込んでいるとは…余程強く踏み込んでいたのか、はたまた単にここが柔らかいだけなのか。しかしやつはピッチ走法で走っていたはず…これは気持ちの説が濃厚になってきたな…」
「おーい、収穫あったか?」
「…いや、無いな。そろそろ月も出てきた。さっさと切り上げてパトロールを始めよう」
そうして一人と一匹は夜の学園を見回りにいった。
「(もしも気持ちだけであれだけ力が増えるのならば…比喩ではなく、本当に心の中に怪物は存在しているのかもしれないな)」
夜も更け、あたりはすっかり闇に包まれたころ…
「…」
「…」
「…」
「…暇!」
「いきなりそんなことを言われてもな…特に面白いものは持ってないぞ」
「じゃあ何持ってんだよ?」
「ふむ…トレーナーについての本と…
あとは爆薬ぐらいだな」
「?????????????????????????????」
「どうした?」
「なんで爆薬なんか持ってんですかね???」
「L社から逃げ出すときに持ってきたんだが…爆発の心配をしているのか?普段は体内に保管してあるから心配しなくていいぞ」
「いや爆発は正味どうでもいいんだよ。今はなんで持ってくるに至ったかを聞いてんの!OK?」
罰鳥はバックに宇宙を背負い、頭が?で埋め尽くされていたがなんとか残った平常心で質問していた。
「何故か…あの時は逃げることに必死で周りの物を手当たり次第に吸収しては排出を繰り返していたからな…その中で現在私の中にある一つがこれなのだ」
「そんなノリで爆薬拾ってくるんじゃねえ!?下手したら俺ら死ぬぞ!?」
「そんなので死んだら今頃私たちはここに居ない。L社の職員の攻撃の方が充分…む?」
「どうした?」
阿武野が話をしていると、暗闇でよく見えないが奥に何かいるのがわかる。普通なら見えないだろうが収容室という名の牢獄で生活してきた影響だろうか。暗い所を見る事については長けていたようだ。
「罰鳥、静かにしていろ。誰かいる」
「!!」
阿武野は足音を出さないようにその人物の背後まで近づいた。
「動くな。私の質問に答えろ。何故ここにいる?」
「…君は…」
その人物が振り返ると、阿武野はその見覚えのある顔に驚いた」
「お前は…オグリキャップか。何故ここにいる?」
「阿武野トレーナーか。実は今日用事で外に出ていたんだが…道に迷って気づいたら夜になっていたんだ」
「一体お前はどれだけ迷えば気が済むんだ…まったく…寮まで送ろう」
「…なあ阿武野トレーナー」
「ん?どうした?」
寮に帰ろうとした途端、オグリキャップが彼を呼び止めた。暗くて顔は見えないが、その声に元気はなかった。
「私は今日、クラスの子達とレースをしたんだ。レクリエーションという形でだ。勝負では勝った。勝ったんだが…」
「だが?」
「
「……」
「私は…怖いんだ。地方から出て、カサマツのみんなの思いを背負って、クラスメイトを負かして…」
「私は、本当にここに居ていいのだろうか…」
時間にしておよそ3分、時間に表してみれば短いが彼女にしてみれば自らの気持ちを吐露するにはとても長い時間だった。
「お前の実力はかなり高いのだな…しかし話し始めたかと思ったらそんなことか。いちいちそんなことで悩むな。時間が勿体ない」
「そんなことって…私は真剣に…」
「くだらん。何を当たり前のことで悩んでいるんだ?」
「いいか?他人を蹴落としてこその人生だ。蹴落としてこそ自分という生き物の価値が証明される。他人の目を気にして生きてるようじゃそれは人生とは言えない」
「…!」
「それに、他人に嫌われるのを恐れて勝ちを譲るのならば、それこそお前の大切な仲間への裏切りじゃないのかね?」
「カサマツのみんな…」
「…まあ、これは私の持論だ。これが正しいというわけでもないがな」
「といわけでだ。お前はどうする?
「私は…」
「…すまない。その返事を聞くのはまたいつかのようだ。いいかオグリキャップ、
今は何も聞くな。何も見るな。何も質問するな。今すぐここから離れろ」
「え?」
「離 れ ろ」
「!わ、わかった!」
いきなり彼が話の腰を折ったことで困惑していたオグリキャップだが、彼のあまりの恐ろしい声色にただ命令に従う事しかできなかった。
「さてと…一応面は被っておこう。そしてそこのやつら、出てこい」
彼がそういうと建物の物陰から4人ほどの人影が出てきた。
「おいおい、やっぱバレてんじゃん。これ絶対ロビンのせいだって」
「は?今のはテルトのせいだろ?」
「はいはい二人共、今は
「あーこちら安全チームチーフのドリス、ALEPHクラスアブノーマリティ、無の欲望及びTETHクラスアブノーマリティ、罰鳥を発見。直ちに鎮圧、回収を行う」
無の欲望、罰鳥、アブノーマリティ。その名前を口に出したということは彼らはL社の人間であることは一目でわかった。
「安全チーム…飲んだくれネツァクの所か」
「へえ、案外ウチのことよく知ってんじゃん」
「良くない覚え方されてるぞ」
「これからは『最強の職員がいる』安全チームって覚えてもらおう!」
「そんなことどうでもいい。取り敢えず…
死ね」
「ビッ…」
「罰鳥!!」
その瞬間、隣にいた罰鳥が撃ち抜かれた。ドリスと言っていた男を見ると長い銃を持っていた。
「あの色合い…魔弾か!」
「良く当たりますね、それ」
「私の射線上に入るなよ。お前たちは可能な限り私の援護だ」
「「「了解」」」
そう言うと残り三人が武器を出し、攻撃を仕掛けてきた。
「(武器は…魔弾に憎しみ、更には天国と傭兵の武器…全てWAWクラス。厄介すぎる組み合わせだ。主な攻撃は天国、そこにサブとして傭兵、遠距離で憎しみと魔弾か…偶に飛んでくる魔弾が一番威力が高くて厄介だな…)」
「ホラホラ!どうしたの?苦しい!?キツイ!?死にそう!?」
「ちっ…」
「テルト、あまり近づきすぎるな。私とドリスさんが誤射してしまう」
「早く鎮圧されてくれないかな~早く帰りたいんだけど」
「次弾装填完了、FIRE」
「グゥッ…」
彼は少しずつ押されていた。4対1ということもあるのだろうが彼は本来戦闘向きの能力ではない。彼は体を使って
「(少しだけ時間があれば…あるいは…)チッ…」
「そろそろだな、アブノーマリティ。じゃあ死ね」
そうして向けられた銃身の先から銃弾が放たれた。
再現するのには時間が掛かる。では、
「なっ!?」
彼は撃たれる瞬間、人間体の再現を解き、銃弾を回避した。
「これで、時間が出来たな?」
その瞬間、職員達は認識を改めた。余裕がない?押されている?勘違い甚だしい。奴は狙っていた。獲物を狩る瞬間に出来るこの隙を。
「あはは…ねえ、これ不味くない?」
「再現って言っても、これは…!」
「あまりにも無慈悲すぎるでしょぉ…!?もう再現とかそんなレベルじゃ…」
「まさかよりにもよって
そこには無の欲望の姿はなく、黒い箱に大きな鍵穴とそこから覗く眼、下部には機械の脚が生え、左右には大きな丸鋸が二本生えているだけではなく、鉄の体には不似合いな赤く細い羽のようなものが背中に付き、頭には黄色の大きな眼がこちらを見ていた。別々のものが混ざり合ったその姿はまさしく生命への冒涜としか言い表せない姿だった。
「生キルモ、殺スモ、見ルモ、見ナイモ、我次第」
本当は今回で職員との戦闘書ききって日常パートへ移行したかったんですが…如何せん全て書こうとするとどうしても4~5000字くらいになってしまうので分けます。そして今回の能力は見てはいけないやつと見なければいけないとかいう管理人なら誰しもは思う最悪の組み合わせです(2敗)。