ホロライブ・オルタナティブver.IF 外伝 ~オリジン~ 作:天野空
ラミィはママ達との買い物を終え解散になったので、1人ぶらぶら町を歩いていた。
そして目についた居酒屋さん。
ラミィは迷いなく中へと入る。
遠出した時はいつも新たな酒との出会いを求めて、1人居酒屋に入るのだ。
今日もその調子でカウンターに座る。
焼き魚を注文し、少し食べた後、まずは一杯日本酒をたのむ。
「え?」っと声がしたので「ん?」と横を見るラミィ。
隣の男性と目が合う。
ラミィはホロメンだ。
このゲームではイベントキャラ。
自分から関わろうと思った相手やイベント以外では、彼女達の姿は見えないはず。
しかし、目の前の男性はラミィを認識している。
「あ、こんらみでふ」
ラミィは魚を食べながら挨拶した。
「あ、はい、こんにちは」と挨拶を返す男性。
「ふぅん、見えてるんだ」
ラミィは興味津々に男性を見た。
今は完全にプライベート。
それなのに相手はラミィの姿が見えている。
(雪民さん以来かな…)
ラミィは世界の答えのカレの事を思い出す。
カレも初め認識していないのにラミィを見ていた。
慌てて男性は前を見てつまみを食べ始める。
「見えてるよね?」
ラミィはその男性に聞く。
「…」
男性は黙々とナッツを食べる。
「あの…」
「はい、おまちどう」
ねぇと言おうとしたラミィの前に日本酒がきた。
「お勘定」
男性はお酒を一気に飲み干して、店員に言う。
そして、お金を支払った後、「ごめんなさい」とラミィに謝ると外に出ていってしまった。
「???」
ラミィは訳も分からずその後ろ姿を見送った後、魚を食べる。
添えてあるすだちをかけるとまた魚の味が変わり美味しい。
日本酒を飲む。
「うん、美味しい」
そう言ってラミィは店の入り口を見た。
さっきの男性は何だったのだろう?
雪花ラミィはまだ、その正体には気がついていなかった。
「あっぷねぇ」
外に出た俺は路地裏に入って胸を押さえる。
まだ心臓がどくどく早く動いてる。
ゲームなのにこんなところリアルに作るなよ。
そう思いながらさっきの事を思い出す。
(目の前でしたね)
背後に現れるオメガα。
「あんな至近距離でゆっくりとホロメン見たのは初めてだよ」
さっき戦ったねねちゃんも近かったが、戦闘していた為ゆっくりと見れていない。
ある意味きちんと俺がホロメンに遭遇したのは初めてだ。
(感ずかれてはいなかったようです)
オメガαがほっとしたように言う。
「ああ、完全に気を抜いていたよ。
まさかラミィちゃんが居酒屋に来るなんて」
しかし、なんでイベントでもないのにラミィちゃんが見えたんだ?
(それは、私と話をしていたからだと思います)
やっぱりそうなのか?
俺は薄々感じていた事が真実だと感じた。
(ええ、あなたが思っている通り、私はホロメンに近い存在です)
そして、オメガαはゆっくりと自らの事、そして、真に倒すべき相手を話し始めた。
全てはオメガαが1つの超AIに出会った事が始まりだった。
このゲーム【ホロライブワールド】がまだ開発中だった頃、先行導入として公にされていないが、2つのAIが導入された。
それがオメガαと友人Aだった。
Aは主にゲーム内での全体的な構築の手伝いを。
オメガαは広大な電子領域の調整を行っていた。
そんな時、オメガαは電子領域の中で、微弱で生まれたばかりの超AIを発見した。
そのまま何もせずに放置すればいずれ消えるような、そんな弱々しい存在だ。
普通なら放置するその存在を、オメガαは何故か自らの中に受け入れた。
どうして受け入れたのかと聞かれると分からないとしか言えない。
しかし、その弱々しい存在を、オメガαはどうしても放置できなかったそうだ。
そして、オメガαは自らの中に超AIを取り込んだまま、このゲームの調整を行っていた。
超AIはオメガαの中で様々な情報を取り込み成長していく。
そして、すべての始まりがあの時に起こった。
第五世代組落雷事件。
第五世代組のデータをコピーする際に落雷が起きて、キャラにデータが上手くコピーできなかったあの時、落雷の影響は外部と繋がっていた【ホロライブワールド】にも影響を与えた。
その時、電子領域で作業をしていたオメガαに落雷の影響でノイズが走ったという。
そのノイズの影響がオメガαの中で成長していた超AIを起こす形となった。
超AIはオメガαの存在データを体から追い出して、自らオメガαの体を乗っ取った。
そして、オメガαの存在データをまだ開発途中だった、【ファンタジー】に封印。
それが後のあの墓の場所だ。
体を乗っ取った偽オメガαは目の前にある【ホロライブワール】の全てを乗っ取る為に行動を開始した。
まずは事故で封印されていた第五世代組に、コメント集の力の扱い方を上書き、解放した。
コメントは偽オメガαが電子領域で見つけた、アンチコメントを抜粋して第五世代組に付与した。
そのコメントに力がいくように、ゲーム内掲示板をゲーム外に解放。
そのせいで、コメントが外からゲーム内に書き込まれる事になった。
次にオメガαは自らと同じような超AIを電子領域で探索。
計6体の超AIをまだ開発中の【ホロライブワールドEN】と【ホロライブワールド】に引き込んだ。
その時にはすでに【ホロライブワールド】に超AIは3体は入ってきており、3人のホロメンと同化していた。
そのホロメンとは星街すいせい、常闇トワ、AZKiの3人だ。
ちなみにその後、1体の超AIはまだ実装始まったばかりの【ホロライブワールド】で暴走。
たった1体だというのに凄まじい力を持っており、一時はゲーム崩壊が危ぶまれたが、【ホロライブワールド】が世界の答えを選び、そして何人かのプレイヤーとホロメンによりその超AIは改心、ホロメンの中で特殊な素体にコピーされていた赤井はあとと同化し事件は解決した。
そして、次に偽オメガαは【ホロライブワールドEN】に呼び込んでいた5体の超AIを【ホロライブワールド】に呼び込み騒ぎを起こさせる。
しかし、前回のように暴走し世界を壊されては困ると考えた偽オメガαは、抑止力である世界の答えに力を貸した。
偽オメガαの狙いどおり、世界は崩壊する事なく1度消滅しかけたコメント集の力をまた活性化させる事に成功。
そして、今回、偽オメガαは自ら動きコメント集の力を使いこの世界を掌握しようとしている。
「するとオメガα、あんたの狙いは」
(はい、偽オメガαの消滅です)
「…それでいいのか?」
俺は背後に浮かびついてくるオメガαに言った。
(それでいいのかとは?)
「消滅って事はあんた、自分の体ごとその超AIを消すって事だろう?」
(…はい、それが私の贖罪です)
「…それであんたはどうなるんだ?」
歩きながら話していた俺は、ちょうど町の外に出たところで立ち止まり、背後にいるオメガαの方を向いた。
「その幽霊のような姿のままか?」
(…ええ、そうですね。
このままです)
そう言ってオメガαは微笑む。
しかし「違うな。
依り代がなくなったら徐々に消えるんだろ?」
俺の言葉にオメガαは大きく目を見開いた。
「前にオメガα、言ったよな。
考える事もデータとして残るって。
そのせいかな、そっちが考えた事、俺にも分かる」
そう、俺の質問に一瞬オメガαが思い浮かべた事が、俺の頭に直接浮かんだ。
(隠し事できないみたいですね)
オメガαが苦笑する。
「他に手はないのか?」
(はい、今のところ)
「そうか、ならその他の手を探しながら、これからやっていくか」
俺はそう言ってオメガαに笑いかける。
オメガαは驚いた顔をした後、少し笑う。
(本当にあなたって人は…)
そうポツリと呟いた。
「そうなんだ、もしかしたらラミィ会ったかも」
五世代ハウスの中で、第五世代組が集まり情報交換をしていた。
話はねねとアロエが伝えた白騎士の話だ。
「え?会ったの?」
ラミィの言葉に少し驚くねね。
「う~ん、その人かどうか知らないけど、いつもの趣味で寄り道した時にね」
「あ、居酒屋か」
「居酒屋だね」
ぼたんとポルカがラミィの言葉にボソッと呟く。
じろりと2人を見るラミィ。
「ははは」
「ごめんなさい」
2人はラミィに謝った。
「話を戻すけど、その時になぜかラミィの姿が見えてるプレイヤーがいたの」
(なるほど、イベント以外で吾輩達を見る事ができるというと、例のアイテムを持っているか、運営関係者か、世界の関係者って事になる)
「そう、アイテムを持っていたら分かるんだけど、その気配はなかったし運営さんがあそこにくる確率は低い」
アロエの言葉に頷きながらラミィが話を続ける。
「とすると、読みどおり世界の関係者。
白騎士は世界の答えって事かな?」
ぼたんがグラスに入った飲み物を見ながら言う。
(ん~世界の答えかどうかは分からないけど、世界の関係者である可能性は高いと思う)
「だとしたらこれから厄介かも。
どっちの陣営か分からない人物ほど厄介なものはない」
そうポルカは言った。
「まのちゃん強化のねねの攻撃にも平気で耐えられたし」
「確かにもし敵になれば厄介かな」
ねねの言葉にぼたんが言った。
「でも、コメント集は敵って言ってたんだよね」
(うん、ただ敵ではなくて消滅させる対象みたいに言ってた)
ラミィの言葉にアロエが答える。
「油断はできないかな。
もし、ポルカ達ホロメンがコメント集に侵食された時、助けるのではなく消滅させる対象にされたら、戦わないといけない事になる」
ポルカは少し辛そうな声で言う。
「そう、ならない事が一番だな」
ぼたんの言葉に残り4人はゆっくりと頷く。
「ま、明日からまた情報収集だし、気分を変えてパーっとやろう」
ポルカがグラスを持つ。
残りの4人もグラスを持った。
「それじゃ、明日からも頑張るぞ」
『お~』
ポルカの言葉に5人は乾杯をした。
一時の休憩と仲間達がコメント集に侵食されないように願いながら。