ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts-   作:新世界のおっさん

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身体の距離が離れても、心の距離は簡単には離れない。
確かな絆を信じて。


ぬくもり

第四層の街<ウィルム>

ここの広場で今回の会議が行われる。

主催はもちろん<軍>を取りまとめる<青光の騎士>ディアベル。

続々とプレイヤーが集まる中、ディアベルはそのプレイヤー達を眺める。

最初期の攻略組<風林火山><月夜の黒猫団><黒の剣士>そして最近出来たギルドである<血盟騎士団>と<青竜連合>が見当たる。

そこには<彼>の姿は無かったが。

 

(……来てはくれないのだろうか?)

 

<真紅の怪人>ことイノセンスが来なかろうと、攻略に向かう事に変わりはないだろう。しかし、ディアベルにとっては彼がより攻略に貢献して、彼の身に降り注ぐ悪意から早く脱して欲しいと願っていた。彼がいなければ自分は第一層で死んでいた。故に恩を感じ、彼を助けたいと思うのはディアベルにとっては当たり前事だ。

 

(君はいまだに全てを背負い続けるつもりなのか?)

 

もうすぐ会議開始時間、他の攻略組は今か今かと会議を待っている。

 

(致し方ない……)

 

個人の感情を持ち出すのはこの場ではご法度だ、立ち上がり声を出そうとして出なかった。

 

<真紅の怪人>が<愛弟子>を連れて現れたからだ。

 

 

 

 

「出やがった!<真紅の怪人>だ!」

「どの面下げて攻略に参加するつもりだ!」

「帰れ!<ビーター>野郎が!」

 

敵意を持った野次が彼に降り注ぐ、しかしそんな事はどこ吹く風で<師弟>はまっすぐディアベルに向かう。

 

「ディアベルさんに近づくな!化け物!」

「俺達のリーダーを汚すな!」

 

「お前たちは黙ってろ!!!」

 

突如ディアベルが怒号をあげる、それに驚き野次は止まり、他の攻略組の視線も集まる。まるで四面楚歌だ。

ディアベルはイノセンスを見つめ、言葉をかける。

 

「……すまなかった、彼らには後で良く言い聞かせておく」

「大丈夫だ、大して気にしてないからな」

 

そう言ってディアベルの肩に手を置くイノセンス。

安堵のためいきを吐き、後でゆっくり話そうと言い残しディアベルは元のいた位置に戻っていった。

そのまま、イノセンスは<黒の剣士>キリトへと向かう。

キリトは慌てて立ち上がりイノセンスを見据える。

 

「よう、本当に久しぶりだな<イノ>」

「懐かしいなその呼び方は……あれからまだ1ヶ月しか経ってないはずなんだが」

 

感慨深そうに顎をさする動作をするが、アバター状は顔が無いように見えるため酷く滑稽に映りキリトは吹き出してしまう。

 

「どうした?」

「いや、やっぱりお前は変わってなくて……<アレ>がお前の真意じゃないと信じて良かったと思ったよ」

 

とキリトは笑顔で答える。

 

「ふむ、俺もキリトがキリトで良かったと思うよ」

 

そう言い手を差し出すイノセンス。

キリトもそれに答え手を握る。

 

「あの時は嘘でも、<友情ごっこ>なんて言って悪かった」

「いいさ、これで言いっこなしだ」

 

互いに強く手を握り、<真の友情>を確かめあう。

 

「ところで、後ろの娘は?」

「ああ、俺の<弟子>だ」

「……随分<師匠>と対照的で可愛らしい<弟子>だなおい」

「うるさい、ほっとけ……」

 

自覚はあるよ、とためいきは吐く。

すると、<弟子>シリカは<師匠>の横に並ぶ。

 

「シリカです、初めましてキリトさん。話は<マスター>から聞き及んでいます……今日は共に攻略よろしくお願いします!」

 

そう礼をするシリカに感心するキリト。

 

「礼儀正しい良い娘だな」

「ありがとうございます」

 

えへへと照れながら頬をかくシリカをイノセンス優しく撫で、また後でなとキリトに伝えその場を離れる。

 

次に向かったのは<風林火山>だ。

 

「ようやく来やがったか、こいつぅ」

「ふふっ、すまないクライン……あんたには特に迷惑と苦労を押し付けてしまった」

「気にすんなよ、これが大人の務めだしな」

 

とクラインは苦笑する。余程苦労をかけたと見える。

そして、苦労の原因らしき人物に目を向ける。

 

「…………」

 

彼女はただ黙ってイノセンスを見ていた。しかしその瞳には確かな動揺があった。

 

「よう……1ヶ月ぶりだが……随分変わったな、君は」

 

彼女の姿をみてイノセンスは言う。

 

「……んで……」

 

彼女<トト>は微かに声を出すがイノセンスには届かない。

 

「なんだ?聞こえないぞ?」

「!……だから!何故戻って来たのって言ってるの!!」

 

叫ぶトトは関が切れたように続ける。

 

「貴方は……十分苦しんだ……辛い思いをした!攻略のため沢山の人のためにその身と心を削ったじゃない!自ら悪を名乗って!」

「……」

「だから、私は貴方の分まで……貴方にこれ以上辛くなって欲しくなくて!強くなった!力を付けた!……もう、あんな思いは嫌だから……!」

 

涙が溢れてくる、思いが怒濤のようにせめよせてくる。

 

「だっ……からっ……もう……来ないでよぉ……私の前に……現れないで……私を許してよぉ……!!」

「……」

 

その言葉を受けたイノセンスは黙ってフードを外して素顔を露にする。その顔は確かに微笑んでいた……昔の彼とその微笑みが彼女の中で重なる。

 

「あっ……」

「許すよ」

 

そう言ってトトを優しく抱き締めるイノセンス。

 

「えっ?」

「だから許すって」

「……嘘、ダメだよそんな」

「何で?」

 

頑なに自分を許さないトトに疑問を呈するイノセンス。

 

「だって、許されたら私……弱くなっちゃう……またあの頃みたいに臆病な自分に<弱い自分>に戻っちゃう……!」

 

トトは心中を吐露する、自らがずっと抱えていた問題を。

しかし。

 

「そんな事ない」

 

イノセンスは否定する。

 

「……えっ?」

「君は弱くなんてない」

 

イノセンスはトトを腕から解放し、面と向かい合う。

 

「君は強くなろうとした、誰かのため、自分のために……そして本当に強くなった……そんな君を誰も<弱い>なんて思わない。」

 

言葉を紡ぐ彼の瞳は真剣そのもので、嘘をついているものでは無かった。

 

「俺は<トト>のこと……いや、<東条>のこと<強い>って思うよ」

 

彼は笑顔でそう言った。

 

「うっ……うううううぅぅ……うわあああぁぁぁぁ!!!」

「君も辛かったよな、苦しかったよな……もう大丈夫……無理なんてするな……辛かったら誰かに甘えたって良いんだからな?」

 

止めどなく流れる涙……彼女の頭を撫で見つめるイノセンスはとても晴れやかな表情であった。

彼女が泣き止むのを確認すると、後は頼むとクライン達に彼女を任せる……そして、最後に。

 

「サチ……ケイタ……テツオ……ササマル……ダッカー……久しぶりだな、元気そうで何よりだよ」

「……やっと……戻ってきたんだね」

 

<月夜の黒猫団>の元へ。

 

「ああ、<最前線>には今回から参加する」

「やっぱり……ギルドには入ってくれないんだね」

「まあ、あんな事言って今更入るとは言えねえな」

 

建前とは言え、言った事をあっさり翻すのは自分の主義に反した。

 

「イノセンスのおかげで今の俺達があるんだし、そっちの意思を尊重するよ」

「すまないな、好き勝手やってしまって」

「本当にな、お前が抜けた後のサチ……かなり落ち込んでたんだからな……しっかりフォローしてくれよ?」

「ああ、もちろんだ」

 

ケイタの言葉を受けしっかりと頷く。

 

「これからは……こっちから会いに行く」

「うん……待ってる」

 

サチはイノセンスの手をとりそう言った。

そこでシリカが顔を出す。

 

「あのっ、初めまして!シリカと言います!」

「おっと、再会で頭がいっぱいだった……この娘は俺の<弟子>だ」

「この娘がイノ君の……よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

 

サチとシリカは握手を交わすその一瞬目が合い互いを理解し合う。

 

(この娘(人)が私のライバルだ!)

 

サチにとっては隣に居たかった大切な友人。

シリカにとっては恩人であり尊敬できるマスター。

どちらが彼の隣に立つべきかのライバル同士と言えた。

 

「……大丈夫かこれ」

 

イノセンスは二人が考えていることを高速思考し理解する、だが簡単には解決できない問題のため、ただ見ていることしか出来なかった。

 

 

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彼は優しすぎる……こんな自分を……<トト>ではなく<東条冬>を強いと言ってくれた……嬉しい……嬉しいよぉ。

<弱い>と切り捨てたかった過去まで……彼は受けとめてくれた。認めてくれた。許してくれた。

……やっぱりどう頑張っても……過去を捨てる事など出来ない。それをはっきり理解する。

 

あの頃の私は否定していた、自らの全てを

こんなのただの気の迷い、一時の感情

そもそもそんな事を考える資格さえ、私はないと思っていた。

 

だが……今の私は違う……。だってこんなにも暖かい、こんなにも苦しい、……こんなにも……恋しい……。

 

ああ、私は彼が……<稲生直貴>が好きなんだ……。




ヒロインであり、主人公の<トト>……開始される三つ巴の戦線……しかし結果は確定事項です(バッサリ
ただし、要望があればifルートも書くかもしれないです。
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