ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
弟子であり妹分な彼女ですが、思うところあるみたいです。
<月が綺麗に輝く夜>
それが<巌龍>こと<サファイアウィルム>の出現条件……それが一番信憑性の高い情報だと情報屋<鼠のアルゴ>の言葉であった。
その情報を元にいつものメンバーが<竜の湖>に集まった。
サチ、シリカ、トト、結、キリト、クライン、そして普段はいなかった人物が一人……<閃光>のアスナである。
「今日はアスナも参加するんだ、心強いね」
「でも攻略の鬼と呼ばれた貴女が珍しい……どういう風の吹き回し?」
素直にアスナの参加を喜ぶサチ、一方で何か裏があるのではと疑うトト。この三人は第一層で奇妙な友情を結んでから最近まで親交を深めてきた。
「それはもちろん、攻略ばかりで疲れもあるしたまには息抜きと好奇心……もあるけど……」
と言いつつ、チラリとキリトに視線を向けるアスナ。
「最近<圏内事件>があったでしょ?それを私とキリトくんが組んで解決に当たったんだけど……その時にちょっとあって……その……気になってて……」
「「お~」」
赤面するアスナに意外そうな声をあげる二人。
それを聞きつけやってきた結とシリカ、並ぶと姉妹の様だ。
「恋話の匂いを感知、突貫します!」
「結ちゃん、あんまり踏み込んだ事聞いちゃダメだよ!……私も気にはなるけど」
「あらら、アスナピンチだよ?」
「結ちゃんは怖いよ……じわりじわりと包囲網をつくるから簡単には逃げられない」
「えっ、ウソっ、そんなの聞いてないよ!?」
焦るアスナを皮切りに盛り上がる女性陣。
一方で男性陣は湖を見つめ警戒する。
「二人とも……俺はな~んか嫌な予感がすんだよなぁ」
「ああ、俺もだ……多分辛い戦いになるだろうぜ」
「だがそれでこそやる価値があるだろ?」
「「まあな」」
この戦いには間違いなく意味がある……三人は同じ意見だった。
「しかし二人とも武器一新だが、クラインは和装で刀だからぴったりに思うが……キリトは線が細いから両手剣がかなり不釣り合いだな」
「ははっ、確かにそうだな」
「ほっとけ、自覚はあるよ……だけど丁度高い性能のレアドロップが出たから使いたかったんだよ」
キリトの今装備している両手剣<アスカロン>は、実は元ネタを考慮されているためかドラゴンキラー武器である。今回のためキリトは担いできたのだ。
その時湖が波立つ、地面が揺れて何かの気配が高まる。
「な、なんですかこれ!」
「強大なモンスターの気配を感じます!みなさん気をつけて!」
「やべぇ!これはぜってぇやべぇぞ!!」
全員に緊張が走る、そして。
「フオオオオオォォォン!!」
「う……わ……」
「何これ……ふざけてるの……!?」
「イノ……!」
「ああ、想像以上だ……こいつ……!!」
現れたサファイアウィルムは異様なまでに巨大な体長に加え角が生えている大蛇のようだった。
サファイアの名の通りに輝く美しい蒼の体躯で、湖上でとぐろを巻き黄金に煌めく鋭い瞳でイノセンス達を睨んでいる。
「全員しっかりしろ!来るぞ!!」
固まっていたメンツがハッとして構える。
サファイアウィルムはブレスの構えをとる。全員が範囲から逃れるため全力で逃げた……が。
「……これは酷い」
結果として全員が無事だったが、サファイアウィルムの水のブレスは周囲の森を削り、地面を深くえぐった。こんなもの食らったらひとたまりもないであろう。
「不味いな、何か考えないと……こんなモンスター普通に倒せるはずないし……よし」
本能の牙発動。思考を加速させるイノセンス。
導きだした答えは。
「……囮と攻撃の二手に分かれていくか」
このままでは突っ込めばやられ、避けつづけると倒せないと言うジリ貧な状態になるなら、二手に分かれて確実に攻める。方針は決まったため、イノセンスは指示をだす。
「サチ、結、シリカはこの場で俺と囮!その隙にキリト、トト、クライン、アスナは回り込んでアタック!!」
「「「「「「「了解!!」」」」」」」
全員が声をあげ散開する。
「奴は、その場からは動かないタイプの様だ!二度目のブレスに備え、隙を突くぞ!」
サファイアウィルムは動かない……その巨体は確かに脅威だが陸上は苦手なのか上がってこないのだ。イノセンス組が翻弄してブレスを誘発しキリト組がその隙を突きダメージを与える作戦。
「ブレスいったな!いけぇ!!」
「そらよぉ!」
「沈んで……!」
「はああぁ!!」
どうやらその策は的中したようで、ブレス回避後の反動に対してキリト組が全力攻撃を当てたところ、大きなゲージの減りを確認できた。
「! これなら行けます!パパ!」
「ああ、次はこっちの番だ!」
サファイアウィルムがキリト組にヘイトを動かした隙に今度はイノセンス組が攻撃を仕掛ける。再びはっきりとHPが減った。
「このまま続ければあの体力でも削りきれますよね!」
「<巌龍>にスピードが無くて良かったよ……」
優勢……どうみてもその筈だがイノセンスとキリトの表情は晴れない。
「「おかしい……幾らなんでも弱すぎる……攻略組ならこの程度対応できる筈だ」」
これだけで攻略組のギルドが引きこもってしまうほどの相手とはイノセンスも、反対側にいるキリトも思えなかった。
「そこぉ!!」
結が弓のソードスキル<サイドワインダー>を放つ。ガンッ!ガガガガンッ!と5連続で顔にヒットした矢にサファイアウィルムは大きく仰け反る。
「! グラララララ!!!」
「なんだぁ!?」
「様子が変!離脱しよう!」
「え、ええ!」
ゲージが半分に突入し、いきなり暴れだすサファイアウィルム。キリト組イノセンス組ともに離脱しようとしたが、運悪くこのタイミングでシリカが周囲に飛び散った水に足を滑らせる。
「あっ!」
怒り狂ったサファイアウィルムはブレスをやたら目鱈に撒き散らしだした。このままでは確実に流れ弾の餌食になるシリカは恐怖し身体が言うことを聞かない。
「や、やだぁっ!!助けてぇ!」
「くっそぉ!!」
「パパ!無茶です!」
師である自分が今動かなくてどうする!!
イノセンスはブレスで巻き上がる土くれや水の中を踊る様によけつつ駆け抜け、シリカを抱き上げる。
「間に合ったか!」
「マスター、ごめんなさ……あ……マスター!!」
シリカの反応に振り返るイノセンス、そこにはブレスが迫っていた。高速思考の中、最善の動きをすることにより直撃は避けれたが……被弾は免れなかった。シリカを抱き締めながら吹っ飛ぶイノセンス。
「ガッ……!!」
「キャアア!!」
二人はまとめて湖に落ち、姿が見えなくなる。
「イノ君!シリカちゃん!いやぁ!!」
サチの絶叫が辺りに響き渡った。
「…………む、うぅ……」
気絶から目か覚めたイノセンス、周囲を見渡すが自分が抱き締めていたシリカ以外はなにもいない謎のフロアであった。
「……湖に入った拍子にどっか変なとこ入ったか……或いは死んだのか?」
死んだにしてはSAOの姿なのはおかしいし、何よりもシリカのぬくもりをはっきりと感じる……やはり違う。
「……これは前者かな?それならどっかに出口があるだろうが……おい、シリカ!起きろ!」
「うっうぅ、ふぇぇっ……マスター……?」
「どうやらワケわからん空間に入ったみたいだ、調べよう」
「は、はい!」
どう言う状況かを把握しなくては、先に進まなさそうなのでシリカを誘いこの辺りを調べる事にしたイノセンス。
歩きながら周りを見回すが、何かの遺跡の様な雰囲気が漂っていた。ふとシリカが話しだす。
「……あの、マスター……ありがとうございます」
「ん?さっきの事なら礼の必要はないぞ?シリカの師匠としては当然の事なわけだしな」
「あ、その……それもあるんですが……実はそれだけじゃなくてですね」
「……どう言う事だ?」
何だかしおらしくなっているシリカを見つめるイノセンス、シリカは続ける。
「第四層でマスターが皆さんと仲直り出来てから……殆ど二人きりになる機会無かったじゃないですか、だからこの際言えなかった事言おうかなって……助けてくれたあの時から今の今まで本当に……ありがとうございます」
シリカは頭を下げる、それは精一杯の気持ち……今まで自分とともにあり、自分を受け入れてくれた師匠への……イノセンスへの感謝であった。
「……そうか……なら、俺もありがとう」
「……えっ?」
シリカは驚いた、まさか自分が感謝されるとは思っていなかったからだ。
「俺はあの時、何だかんだで維持をはっていた……一人じゃ生きられない癖に悪者演じて孤立して……いつも胸が張り裂けそうだった」
それは事実、イノセンスが感じていたもの……仲間と一緒に生きていたかった。だが離れるしかなかった、自分を偽り続ける故の苦悩は彼にとってかなりの苦痛であった。
「だがそんな時に君に会えた」
「!」
「君は他のやつらと違った、俺と面と向かってくれた、理解しようとしてくれた……嬉しかったよ、俺」
そう言いながらイノセンスは口元を綻ばせる。
「シリカが俺に感謝したように、俺もシリカにスッゴい感謝してるんだぜ?……君がいなければ今でも俺は一人かも知れなかったんだ……だからさ」
「ありがとう……これからも側に一緒にいてくれるか?」
「あっ……」
ドクンと心臓が跳ねる、彼の笑顔と言葉に……シリカは己の心の中で何かが生まれたのを感じた。
「……はいっ、もちろんです!ずっと……ずぅっと!お供します!マスターの側で!」
「ははっ、ほんじゃまあ出口探し再開と行くか」
「はいっ!」
二人は歩く、並びながら手を繋ぎ……互いの存在とその重さを確かめる。続く回廊を歩きつづけた。
二人がたどり着いた広い部屋、そこには窓の様な物が2つ付いている場所だった。二人は外を見、確信し驚愕する。
「これは……まさか!」
「はい、間違いないです!つまりここは!」
「「<巌龍>の中!」」
そう、二人がいたのはサファイアウィルムの体内だった。湖に落ちた二人をサファイアウィルムが丸のみにし、体内に保管したのだ。
「中があんななのは、きっと遺跡か何かをこいつが飲み込んで俺ら同様に保管したんだな」
「ど、どうします?って皆苦戦してる!」
外では仲間たちが必死に戦っていた。
「もちろん出るさ」
「ど、どうやって!?」
イノセンスはイタズラっぽくニヤリと笑う。
「この窓みてえな目んたまぶちわってな!!!」
俊足の剣技でほぼ同時にまどを割るイノセンス。愛刀<雷切>も満足そうにパリパリと音を鳴らす……と同時に凄い悲鳴が響く。
「出るぞ!外だ!」
「流石マスター!大胆ですね!」
二人は一緒に外にでた。
戦っていたら突然両目が潰れ、エグい状態になるサファイアウィルム。キリト達外にいたメンバーは困惑する。
すると、次の瞬間サファイアウィルムの両目の穴から飛び出てその頭の上に乗ったのは先ほど死んだと思われた二人だった。
「おいおい、イノ……お前ほんと……」
「うっそ~……」
「んだよぉ!生きてたならそう言いやがれよ!!」
「遅いよ……バカ」
「パパ……良かったです……パパァ」
「イノ君……うぅ……グスッ……生きてたぁ……」
各々言葉を述べる中、悶えるサファイアウィルム。決着の時が来た。
「シリカ!<アレ>を使うぞ!」
「! <アレ>ですね!遂に使うんですね!」
頷くイノセンスにシリカは笑い、体勢をとる……イノセンスに合わせて。疑問符を浮かべる下メンバーを尻目に二人は呼吸を合わせる、動きを、そして心までもシンクロさせる。
「見よ!これぞ!師弟の絆が可能にした!!」
「究極のシンクロ技です!!」
二人は全く同時に飛び上がり体術スキル<流星脚>を発動する。どこぞの赤と紫のロボットのようなものに乗ってる人ら真っ青のその動きのシンクロ度合いと完成度、そして無駄な熱さ加減に全員が唖然とする。
「「くらえぇ!!<双破滅龍脚(そうはめつりゅうきゃく)>!!!」」
光に包まれ凄い速度で叩き込まれたダブル飛びげりに堪らず下に頭を下げるサファイアウィルム。
「今だキリト!ソイツでやれ!!」
「はっ!おう、任せろ!!」
危うく雰囲気に飲まれかけたキリトだったが、その元凶に意識を戻されソードスキル<シックルムーン>を発動。振り上げ、振り下ろしからの突きの三連撃で見事に止めをさした。
「パパは何度言っても無茶ばっかりです……いい加減私怒りますよ?怒っちゃいますよ?」
「ごめんなさいでした」
戦いのあと報酬の分配が終わり、エギルの店で目標額が達成したのを確認したあと、こうして父親は情けなく娘に頭を下げていた。
「結ちゃんだったか?まあ、許してやんなよ。ソイツは男として約束果たすために精一杯やったんだからさ」
エギルはフォローを入れる。同じ男として不憫に感じたのだろう。結も実は怒りの引き際が分かってなかったため、エギルに合わせ矛をおさめる。
「仕方ありません、今回は特別ですよ?」
「ありがとうございます」
そして、彼はリズベットにまずメールで後で向かう胸を報告してから外にでる。
「よう、待たせたな三人とも」
そこにはサチ、トト、そしてシリカがいた。
「大丈夫だよ、三人で色々話してたんだ」
「例えば、今度はお泊まりでもしようとか」
「家主の居ぬ間でそれ進めんといて、まあ良いけどさ」
二人はガッツポーズをして喜ぶがシリカはジッとイノセンスを見つめる。
「どうした?シリカ?」
名前を呼ばれると胸が高鳴る……見詰められると恥ずかしいけど嬉しい、そして一緒にいると……。
「えっ?」
「「はっ?」」
「Oh……」
抱き締めたくなる。
「えへへ……」
「シリカ?」
「行きましょう!<イノ>さん!」
「えっ?ちょおま!」
もう、恩人でも師匠でもなくてもっと暖かい何かに変わった……だからもう遠慮はいらない!シリカは自覚していた。
己の本当の気持ちを、イノセンスが好きな事を。
「ま、待った!どこ行くの!?ちょっと置いてかないで!」
「……嘘……でしょ……不味いなこれ」
「ムフフッ、本当にパパはモテモテですね♪」
二人が駆け出した後は、三者三様の反応だけがそこに残った。
書き直したり、リアル忙しかったりで2、3日ぶりの更新です。
明日も暇なので更新はしたいです。
とそれは置いておいてシリカちゃん可愛い。
アニメがGGOに入ってからまた見ましたが、皆可愛いです。
シノンはクール可愛い。でもこっちでいつ出ます事やら(汗)