ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts-   作:新世界のおっさん

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台所は戦場だ、リアルに。
嘗めてはいけない、あそここそ本当の地獄だ……。


<番外編>クッキング・ウォー

「最初に言っておく……どうしてこうなった」

 

デスゲームが始まり約半年が過ぎた、現在48層まで攻略され主街区<リンダース>にリズベットが正式にリズベット武具店を立ち上げる事になった。今回はそのお祝いの為に知り合いが集まったのだが、そこで話題に出たのが<誰が料理を作るのか>……正直誰でも良かった筈なのだが意見が割れたため結が提案した。

 

「一番料理が上手な人にしましょう!」

 

と言う事で、現在料理スキルが高いと評判の三人が並んでいた……と言うかカップリング<イノキリ>で盛り上がっていた三人組だった。

 

「まさかの勝負だけど……負けないよ!」

 

サチはYシャツにネクタイリボン、黒いブラウスと紺のミニスカートに青のエプロンを着けた、女子学生が帰ってからそのまま料理するようなスタイル。

 

「私も、二人が相手でも加減はしない!」

 

アスナはYシャツにネクタイ、そして茶系のスカートスーツに白いエプロンと言う仕事帰りのOLからの料理スタイル。

 

「容赦はしない……」

 

そしてトトはまさかの割烹着で中は黒、昭和のオカンスタイルだった。

 

「これはまたバラけたわね~」

「いえ、絶対トトさんが一番浮いてるパターンですよアレ!」

 

リズベットは存外三人の勝負は面白そうなのでノリ気で実況し、シリカは解説なのだがツッこんでいた。

 

「因みに割烹着着せたの誰なんだ?」

「俺だぜ、トトにはぜってぇ割烹着だと思ったんだ」

「まあ、東条には似合うよな……他二人は自分で決めたんだよな?」

「そうらしいぞ、自分のやりやすいスタイルなんだそうだ」

「まさに勝負服ですね♪」

 

エギル、クライン、イノセンス、キリト、結は審査員を務める。

 

「三人共、用意はいいかしら?」

「うん」

「任せて」

「大丈夫」

「OK……ならよ~い、始め!」

 

一斉に全員が食材を実体化させ、作業に取りかかる……がここはSAOなため調理は簡素。故に独特な味付けや盛り付けなどが主な審査対象だ。

 

「やっぱり、ここは皆が食べられそうな物が良いかな……」

「ここは印象が残りやすい様にパワーがありそうな……」

「……アレしかないな……」

 

三人はそれぞれ今日のため持ち込んだ食材を投下する、どんなものが来るのか審査員五人は待ちわびる。

 

「「「出来た!!!」」」

 

三人がほぼ同時に料理を蓋をして置く、審査が始まる。

 

一番手はサチ、少し恥ずかしそうにしながら料理を持ってくる。

 

「皆が美味しく食べられそうなものにしたよ……イノ君には思い出の料理かな」

「おお、リアルで食ったってことかな?」

「羨ましいねぇ、このこのぉ」

「芳ばしい香りがする、焼き物か?」

「サチさんの料理は優しい味がして美味しいですから楽しみです!」

「サチとのリアルでの思い出料理って、まさか……」

 

ゆっくりと開かれる蓋の下にあったのは<カボチャとニシンのパイ>であった。

 

「あたしこのパイ、キライなのよね……ニシンが大概酢漬けだからさ」

「そもそも大元のスウェーデンが酢漬けのニシンを良く食べるそうですからね、その上日本だとニシンは数が少ないから海に面してないとスーパーにあまり置いてないそうですから」

 

実況がネタをするも真面目に解説をするシリカさん、審査員はフォークを持つ。

 

「懐かしいなぁこれ、再現しよって誘われて二人で作ったわ」

「参考までに聞きますと、どちらの家でですか?」

「サチの家だが?」

「(やはりサチさんが一番のママ有力候補……?)」

「……何考えてんだか、さあ食べよう」

「待ってました、腹減ってたんだよなぁ!」

 

全員がパイにフォークの歯を通し口に運ぶ、サクッとした感触と

カボチャの甘味とニシンの旨味が口一杯に広がる。

 

「おおわ、うんめぇ!」

「小骨までしっかり処理してるあたり、料理スキルが高い証拠だな……酢漬けでは無くして全員が食べられる様にもしてるんだな、Good job」

「生臭く無くて旨いな、魚苦手だったがこれならいける」

「カボチャが甘くて美味しいです~」

「ふふ、旨いな……流石サチだ」

「良かった、皆が笑顔でほっとしたよ」

「やはりサチは強敵ね」

「思い出か……私には無いもの……だけど負けないよ」

 

二番手はアスナ、コホンと咳払いをして持ってきた。

 

「今回は素材の味を活かしつつ、工夫でより良くした豪快な逸品です」

「素材の味を活かすってぇと……」

「シンプルな料理の可能性が高いな……何かをそのまま焼いたりとかな」

「その分の工夫が気になりますね」

「<閃光>の手料理を俺らが独占してるなんて噂がでたら、ファンが突っ込んできそうだな」

「! この匂い、この熱量……まさかアスナ……!」

 

アスナがにこりと微笑み蓋をあける。中身は肉厚で肉汁たっぷりな<ドラゴン・ステーキ>だった。

 

「デタァァァア!!説明不要!!!」

「アスナさん、勝負に出ましたね……稀少なドラゴンの肉を使った豪華な料理です!」

 

審査員勢……圧倒される。

 

「さっきのパイからこれはすげぇギャップだな、おい」

「ああ、程よいバランスの味のパイから旨味の塊のステーキだからな……」

「純粋に旨そうだが……」

「一体……どんな工夫が……?」

「……」

 

ナイフで切るととても柔らかく、湯気と共に肉汁が溢れて、よりジューシーな事が分かり口から自然に唾液が垂れてくる……恐る恐る口に運び噛み締めると肉の旨さ、味付けに驚く。

 

「うんまぁ!そしてこいつは<ワサビ醤油>!?」

「工夫の一つだな、ワサビはツンとした辛味で食欲を増幅させる!」

「そして、添えてある<おろしステーキソース>がさっぱりしてていいな」

「はい、私も食べやすいです!」

「リアルで高いヤツ食った時の感覚が忘れられなかったが、これがまさにそれって感じだ、最高だぜアスナ!」

「これぞ、王道!って言う奴よ!」

「アスナ、<抜刀妻>は伊達じゃないみたい」

「予想どおりかなアスナは……だが私は勝ってみせる」

 

三番手はトト、堂々と料理を運んでくる。

 

「私はリアルでは家庭的じゃないし、知ってる料理もたかが知れてる……だから私はこれを選んだ」

「そりゃつまり……」

「家庭の味かな」

「ほう、そりゃ逆に期待だな」

「パパ、家庭の味とは?」

「簡単に言うと……ママが良く作る料理だな」

「ママが……」

 

結がジッとトトを見つめる、そのプレッシャーに若干気圧されるがトトはそのまま蓋をあける。その中身とは……<肉じゃが>だった。

 

「お~、肉じゃがだ!」

「寸分違いなく肉じゃがですね……あれ?なんだか無性に食べたいですね……」

 

審査員は全員沈黙、静かにイモに箸を入れるとほくっとした感じに割け崩れ湯気がたちこめる。出汁と肉と野菜の旨味が染みたイモを口に運び咀嚼する。

 

「……うぅ……かぁちゃん……」

「俺は外国人だが、何故か親しみが持てるんだよな……」

「懐かしい……そして旨いなぁ……スグ……」

「……結、これが家庭の味だ」

「……何でしょう、初めてなのに……懐かしい……不思議です」

「ありがとな、東条……良いもん食わせてもらった」

「う、うんその……稲生君が望むならいつでも……」

「気がついたら手を伸ばしてたよ、おふくろパワーつよし」

「むむむ、勝てるか不安になってきたよ……」

直ぐ様、審査員が審議に入る。緊張する三人。

 

「見事な接戦に感じましたが、いかがでしょうシリカさん」

「正直三人とも出せるものを出しつくしたはずです……私にも分かりかねるので、やはり審査員の心次第ですね」

 

審査員が前に出てきた、どうやら結果が出たようだ……。

 

「結果を発表する……今回のバトルの勝者は……<エギル>!料理名は<イルファング・ザ・コボルド・キバオウさん>!!」

「「「……えっ?」」」

「オチを安く仕入れて安く売るのがウチのモットーなんでな」

「なんでや!!?」

 

 

 

 

 

 

「う~ん……やだこれも~」

「ん?……フフ……寝言かな?」

「パパなんとなくうなされてません?」

「きっと枕がもう少し低い方が良いんですよ……ですから私に」

「だめ」

「サチさんはケチですね」

「……最近シリカちゃん油断するといつもイノ君をどっか連れ出すから、良いじゃない」

「……」バチィッ

「……」バチィッ

 

サチはイノセンスに膝枕しながら、シリカはイノセンスの手を握りながら火花を散らす、昔と違い互いに迫力があるように思われる。

因みに先ほどまでのは夢……だが。

 

「肉じゃが……いつか本当に食べたいです」

 

結にとってはどうだったのか……定かではない。




番外編は夢落ちですが、結はイノセンスと力で結ばれているため夢に干渉できた感じです。
あ、48層まで攻略出来ているのは本当ですし、リズベット武具店のお祝いも実際にありましたが、バトルは無かった感じです。
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