ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
原作では彼女はクリスマスに……だからこそ救いたくて、彼女をメインヒロインにした経緯があります。
気弱な娘が主人公に出会い、成長して人一倍優しい女の子になる。そう言うのも魅力的だなと思いました。
<聖夜祭>……クリスマスイベントであり現在攻略されている第65層までに気候に関係なく雪が降り、街はイルミネーションで飾られる……カップルが街を練り歩き「爆発しろ!」……と言われる日なのだ。
しかしサチはそんな真っ最中なのに家で食事の支度をしていた。
「はぁ……忙しい忙しい……」
「……サチさん……本当に良かったんですか?」
結がサチへと問いを投げる。
「仕方ないよ……私負けたんだから」
負けたと言うのも、昨日に遡る。
相変わらず最近いがみ合っているサチとシリカだったが、ここでシリカが提案した。デュエルで勝った方が明日イノセンスと出掛けると言う賭けをしてサチが乗っかった形になり、デュエルの結果負けてしまったのだ。
「……今頃二人はデートかぁ……」
元々師弟として仲が良かった二人だが、<巌龍>の件から一気に急接近している……自分の入る余地がいまなお削られていると思うと憂鬱だった。
「サチさんって……どうやってパパと知り合ったんですか?」
「え?うーんと、そうだねぇ……じゃあ昔の私から話すね」
サチの言葉に結は頷く。
サチはリアルの記憶、早見幸穂としての記憶を懐かしみながら語りだした。
幸穂のいた学校は私立のそこそこに学力のある学校で、彼女の所属するコンピューター部は全員学力があまりないため肩身の狭かったメンツで構成されていた。
「私……こんなんじゃ駄目だよね……」
「別に良いじゃねぇか早見、周りの言葉なんか気にすんなよ」
「それより、俺のパーティーメンツ足りないんだよ~来てくれよ♪」
「いやいや、早見も女の子だからな……色々と気になるお年頃なんだろ?」
「あ、やばいリンクした!」
中学ではそれなりの成績を残していても、高校に上がって上手くいかなくなってしまい……今でこそコンピューター部が友達だが、以前は中学の知り合いが一人もいなかったため上手く馴染めず孤立し、完全に高校デビューをしくじっていた。
「……今日はちょっと帰るね」
「ああ、気をつけてな」
サチは気分が優れなかったため、その日の部活は帰る事にした。
「どうしよう……」
家に帰ったは良いがやることがなかった、彼女は結局。
「はぁ……パソコンが恋人だよもう」
中学から気弱で、あんまり積極的に人と話せない彼女はゲーム内のチャットなら話す事ができた。
「よろしく~」
(よろ~)
(よろしくです(´・ω・`))
(サチさん今日もよろです)
最近野良で良く組む人物が今回もいた。
「(イノさんかぁ……この人フレンドになってくれないかな?)」
毎回戦いにおいてかなり上手い立ち回りで、周りのメンバーを引っ張っている人物だ。きっとベテラン無いし色んなMMOをプレイしている廃人の可能性が高かった。
「イノさん」
(はい、何ですか?)
「私あまり上手くはないですけど<フレンド>になってくれませんか?」
正直サチは自分が上手いとは思わなかった。彼のような立ち回りは少なくとも無理だろう。
(いいですよ、サチさん良い人そうですし)
「ありがとうございます」
プレイヤー<イノ>はあっさり承諾してくれた。
何気に誉められてもいたので彼女もうれしかった。
(今後もよろしくです)
「はい、よろしくお願いします」
その後めちゃめちゃパーティープレイをした。
「ファーストコンタクトは普通そのものですね」
「まあ、普通のMMOだからね」
「そこからどうして今の様に?」
「ああ、それはね……」
それから彼女は頻繁に<イノ>と組み、彼が良く話をふってくれるので大分打ち解けるようになった。
(サチさんって学生?インする時間が俺と似通ってるんでききましたけど)
「そうですよ、もう毎日勉強が難しくて……」
(そうですか……まあ、学業が本分ってのが学生ですからね)
「イノさんも学生さんなんですね」
(ええ、部活終わったら真っ直ぐインしてますよ)
この日は二人とも比較的リアルの話題が多かった。
それゆえかつい口に出たのが。
「そう言えばオフ会ってやってみたいなぁって」
(おお、もうすぐ夏休みですしね……俺は大丈夫ですよ、やります?)
「やりたいですねぇ、でも互いの住んでる地域次第ですけど」
確かにイノは良くリアルの相談も乗ってくれるし、学生同士仲良くなれそうなのでリアルでも話をしたいと考えていた。だが距離が離れているとかなり会いづらい。学生なら尚更だ。
(なるほど確かに、因みに俺は東京ですが)
「えっ……私も」
(……物凄く早く解決しましたね(笑))
「ですね(笑)」
彼女が思っているよりもずっと身近に相手はいたようで、何事もなくオフ会をすることになった。
そしてその当日、待ち合わせは渋谷駅だった。
「どんな人なのかな……俺が一人称だから男の子だとは思うんだけど」
やはり、面と向かっては初めてで幸穂も緊張する。
するとお決まりのパターンでナンパに絡まれ出した。
「ねぇ君、そこに喫茶あんだけど……飲んでかない?」
「はぁ?いえ、その、待ち合わせがあるので」
「まあ、そう言わずにさぁ」
「や、やめ……」
しつこく食い下がるナンパにあまり強く言えず怯える幸穂だったが、そこへやって来たのが。
「あの、すみません……その娘俺の連れなんで離していただけます?」
「はぁ?何だよ……邪魔しないでよボウヤ」
「もしも、これ以上続けるなら実力行使になりますが……よろしいですか?」
プレイヤー<イノ>こと<稲生直貴>だったのだ。
結果ナンパは鉄拳制裁でのびる事になったわけで。
「初めまして、イノこと稲生直貴です、サチさん」
「つ、強いんですね……早見幸穂です」
二人は握手を交わした。これを皮切りにどんどん仲良くなっていき、高二の始めにSAOに巻き込まれたわけである。
「パパはリアルでも強かったんですね」
「空手部でかつ柔道部にも助っ人で入るらしいから」
「なるほど、納得です」
先程の話をして、昔の自分と比べると今の自分はかなり生き生きしてるんだろうなと言うことはサチにも良くわかった。
「でもやっぱりリアルにいた時は、二人っきりで遊べたけど……今は付き合いも増えてあまりゆっくり話もできてないかも……あれ、私……グスッ……何で……」
「……やっぱり、サチさんはパパの事が」
「結ちゃん、私もね……色々と考えてる……けど今一歩が踏み出せないの」
やはり自分の本質は臆病だとサチは暗意に語っていた。
「だから、私は此処で……」
「ジングルベ~ル、ジングルベ~ル、鈴がなる~!」
「……え?」
突然聞こえた大声に反応するサチ、急いで外に出ると。
「今日は~、楽しい~、クリスマス~!」
「なん……で……?」
そこには髪を銀に染め、サンタコスをしたイノセンスがいた。
「サンタクロースだぜ、<幸穂>」
「……<直貴くん>……」
イノセンスはサチに近づき頭を撫でる。
「サンタは良い子にしてると、その子の所にやって来てプレゼントをくれるんだ……その子が一番欲しいものをね」
「!」
「<幸穂>……何が欲しい?」
イノセンスはサチの目をジッと覗きこむ。早く言えと言わんばかりに。
「わ、私は……」
「うん」
「私は……ね……」
「ああ」
「貴方の……側にいたい……」
「その願い、叶えてやるよ」
イノセンスはサチを抱き締める、サチも抱き締め返す。
「私……シリカちゃんに負けたよ?」
「それは二人が決めた事だ、俺は知らないよ?」
「……シリカちゃんは?」
「出掛けて色々みたあと別れて、このコスゲットしてここまできた……大変だったぞ?」
「何で……?」
「二人で居たかったからじゃ……だめなのか?」
「! そんなこと!……ないよ」
「泣いてるのか?」
「なぃ、泣いてない!!」
「嘘つきめ、サンタコスびしょびしょだぞ?」
「ううぅぅ、<直貴くん>の馬鹿あぁぁぁぁ!!!」
泣きじゃくる彼女は子供に還ったようだった。
「パパ……」
「結もこっち来るか?」
「……はいっ!」
イノセンスは二人を纏めて抱き締める。
「一緒に飯食べよう、そして昔みたいに話そう……愚痴でも悩み相談でも聞いてやるから」
「……うん……グスッ」
「パパは……やっぱり、パパですね」
「おうとも、いつも変わらぬパパでありたいね」
イノセンスは笑顔でそう言った。
「……今回だけですよ、こんなのは。銀髪のイノさんかっこよかったなぁ……来年……もしリアルに帰れてたら……二人で過ごしたいです」
シリカは実はこっそり付近に潜伏していたのであった。
二人の出会い編……ですが上手くかけてない(小並感)
サチとイノセンスはリアル時代は端から見ると恋人同士みたいな付き合い方してるせいで夫婦感強いです。
しかし、SAO第一層後から離れていた時間も長かったため、お互いにやっとまともに向き合えた感じですね。
そして、結もシリカも可愛い。