ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
イノセンスは目的のため我が道を行く
あの後惚けていたユウキを何とか正気に戻してから、イノセンスとリーファは首都<スイルベーン>に向かった。
そして領主<サクヤ>の元へ今回の事を報告に向かった。
「はぁ~、まだ顔が熱いよ」
ユウキは先程の事が尾を引いているのか、今だ抜けない頬の熱に惑わされていた。
(変だなボク……こんな感覚人生初めてだよ)
「ユウキちゃん、大丈夫なの?」
「無理はするなよ、身体に響くからな」
二人はユウキを心配するが。
「だ、大丈夫!」
ユウキはこう返事するだけだ。
「まあ、もう着いたし今さらよね……入ります!」
領主の部屋まで着いたため、リーファはユウキを気にするのを止めて、ノックをして中に入る。
中には領主サクヤが座って待っていた。
「リーファか、良くきたな……それとその二人は?」
「ああ、紹介するね。こっちのインプの娘がユウキちゃん、今日始めたばかりで迷子になっていたから色々レクチャーしたの……まあ、あとは理由が合ってここまで着いてきてもらったのよ」
「初めまして、ユウキです!よろしくお願いします!」
ユウキは多少緊張しながら、しかし元気に挨拶する。
その様子を見てサクヤも笑顔になる。
「ふふっ、よろしくな」
「次にこっちのプーカの男がイノセンス、昨日始めたばかりらしいのに滅茶苦茶な強さで私とユウキちゃんを助けてくれたの」
「よろしくお願いします、サクヤさん」
イノセンスは丁寧にお辞儀する。
礼儀正しい人物としてサクヤはイノセンスに好感をもった。
「ああ、よろしく……リーファが他者に世話になるような事態……やはりサラマンダーか?」
「ええ、またあいつらよ……何かと外で出くわしたら殆ど問答無用で襲ってくるのよ、サラマンダーは!」
このALOはPK推奨のゲーム故にこう言う事態は普通ではあるが、余りにも執拗に攻撃してくるサラマンダーは最近度を越えてきていた。
特に隣接地であるシルフは確実に良いカモにされている。
「……私としても彼らを何とかしたい、だが此処で争うのは正直得策ではない……」
サクヤもその事を憂いてはいたのが、これからシルフはケットシーとの領主同盟会議も控えている……にも関わらず大きな争いを起こせば確実に会議はご破算になる。
「だから動くに動けん……頭が痛い問題だ」
「じゃあ……黙ってやられるしか……ないの?」
ユウキは悲しげな表情でそう言った。
この世界ではこう言う理不尽が日常だった。
しかし、イノセンスはそれを否定する。
「いや、そんな事はないはずだ」
「「「……えっ?」」」
三人が驚き、イノセンスを見る。
「俺はこの世界に来てまだ浅いし、情報が少ないからまだはっきりとは言えないが……方法はあるはずだ、決めるにはまだ早い」
その言葉に嬉しくなりユウキは笑顔に戻る。
「イノセンスさん……うん、ボクもそう思うよ!」
「俺も手伝わせて下さい、サクヤさん、リーファ……何かこの話きな臭くて気になるんで」
「うぇっ?いやそりゃ此方としてはあんたみたいな強い奴がうちに来たら嬉しいけど」
「協力してくれるのか……プーカの君が?」
この世界においては種族同士の壁が厚いがイノセンスには何処吹く風だ。
「シルフだとかプーカだとかは関係ない、協力したいから協力するんだ……それが俺の生き方だ」
「……面白いな、君は……このゲームの中で真剣に自分を確立し、確かな信念をもって動いている……気に入った」
サクヤは立ち上がりイノセンスを見据え、宣言する。
「君はこれよりプーカでありながら、シルフ領の協力者だ……必要なものがあれば手配するが?」
「この世界についての情報を出来るだけ提供してほしいってくらいですね、此処での衣食住は自分で獲得するので」
「結構、周囲の者には君の事を伝えておくよ……よろしく頼む」
「はい」
サクヤとイノセンスは友好の握手をする。互いの気持ちの一体感を感じた。
それを見たユウキもまた名乗りを挙げる。
「ボクも!ボクも協力します!」
手を上げながらピョンピョンと跳ねるユウキ。
「君も?しかし、始めたばかりでそれは大変だろう……無理はしないほうが……」
「ボクもイノセンスさんと同じ気持ち!見てみぬフリは出来ない!お願いします、協力させてください!」
「…………ふむ」
「? 何です?」
強く頭を下げるユウキにサクヤも少し悩むが、イノセンスを一度チラリと見てから。
「……分かった、君も協力者だ」
「ありがとうございます!」
ユウキは満面の笑みを浮かべる。
そこである問題に気づいたリーファが問題を提起する。
「でもユウキ、衣食は良いとして住むところどうするのよ?」
「あ」
ユウキは自分の領から抜けて<スイルベーン>に移るための資金も保証もなかったのだ、途端に涙目になるユウキ。
「ボクは何て迂闊なんだぁ……」
「仕方ない……俺の家来るか?」
「へ?……い、今なんと?」
ユウキにとってその一言はかなり刺激が強かった。
「俺の家で一緒に住むか?」
「はい喜んで!!」
ユウキは激しく混乱していた……。
(パパは相変わらずですね♪)
そして実はずっと結は黙って姿を消しているだけだったり。
『順調に事は進んでいるか、シグルド』
「ええ、彼女には悟られてはいません……」
<スイルベーン>の地下にあるフィールドで、サクヤの側近であり軍部を掌握するシグルドと何者かが魔法により連絡して接触していた。
『例の会議の時は手筈どおり頼むぞ』
「もちろんです、お任せ下さい」
魔法の気配が消え、シグルドはニヤリと笑みを浮かべる。
「俺の出世のため、犠牲になってもらうぜサクヤ……」
(なるほど……そう言う事か……)
(パパ……)
(大丈夫だ、全く穏便に解決する気最初からないから)
高笑いするシグルド、彼は気づいていなかった……青く光る瞳が近くに潜んでいた事を。
イノセンスはスイルベーンで空いていた端の一角のそこそこの家を買った。
そこを今後のイノセンスとユウキの拠点として行くのである。
先程イノセンスは用事だと言って出ていってしまったので、ユウキは一人家でゆったりしていた。
「何か勢いで凄い事に……って思ってたけど、考えたらこれゲームだからログアウト出来るんだよね……あ、焦ったぁ~」
ユウキはぐったりと備え付けのベッドに身を預ける。
「……そろそろ、戻らないといけないよね」
今まで明るく振る舞っていたユウキが突然暗くなる。
「この世界は凄いなあ、羽を使って自由に飛んで、走り回って……本当に楽しいよ……もう現実に戻りたくないくらい」
自分の手のひらを見つめながらポツリポツリと口に出すユウキ。
「イノセンスさん……イノセンスさんかぁ……格好いいなぁ……フフッ……あんな人がいるんだなぁ」
自分を救い、そしてシルフの問題に自ら立ち上がる彼を見て、自分も動かないと絶対後悔すると思った。
「あ、これからも……何回も会えるんだよねっ!明日から……色んな事話して、どんどん仲良くなって……リアルの連絡先とか聞いちゃって、リアルで会って……デ、デートとかしたりなんて!それから……それから……」
彼との華々しい未来を想像しようとする……だがそれが一向に浮かぶ気配がしない。
「……無理だよ……ボクがリアルで幸せには……きっとなれっこないね」
ユウキはログアウトする旨をフレンド登録したイノセンスとリーファにゲーム内メールをする。
すぐに了解と返事が来たためメインメニューを操作してログアウトする。
世界から隔絶され、元の現実に戻る。
見慣れた天井、白い部屋。
ナーブギアの後継機<アミュスフィア>を外し、動くため体を起こそうとするユウキ。
ベッドを起き上がらせ、腕を使い身体をずらし、何とか起き上がる。
両足は相変わらずダランとしたままでまるで力が入らないし、感覚もない。
ユウキは窓の外を見て呟く。
「こんなボク……見せられるわけないじゃない……」
ユウキは涙を誘うキャラ、一理ある。
ですが、ここからハッピーエンドまで持っていきますよ~。
結、説明が厄介な都合上最初はあんまり出てきませぬ。
そしてサクヤさんとリーファはデカイ!(ドウイウコトナノ…