ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts-   作:新世界のおっさん

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今度はALOからリアル側に移ります。


本当を生きると言う事

ボクは交通事故で<下半身付随>になってしまったあの日から、どんどん自分が嫌になった

 

皆、ボクの姿を見ると可愛そうな物を見るかのような顔をする。

見知らぬ赤の他人から、先生も、友達も、時には親までもそう。

気遣って、無理に笑って、面倒を見てくれる。

その時はいつも皆に迷惑かけてばかりで嫌だと感じる。

 

時にボクを好奇心でよりどん底に落とそうとする人もいる。

物がなくなったり、車椅子のタイヤに穴が空けられたりした。

たまに直接的に口で色々文句や悪口を言われたりもする。

それに対して確かにな、と思うこともある。

 

それが堪らなく嫌だった、そんな自分が…嫌いだった。

 

VRMMOの話を聞いた時にはとても嬉しかった。

こんなボクでも跳んだり走ったり出来るなんて夢のようだった。

SAOには参加出来なかったけど、今はALOがある。

結局初心者のボクは迷惑をかけちゃった……けど楽しかった。

その分……より現実が嫌に感じた。

 

今日はボクが買い物の当番、親がどちらも不在だから。

ボクは車椅子に乗り、外に出る……。

ずっとこのまま変わらない、そう思ってた……今日までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、幸穂に東条?」

 

「何?直貴君」

 

「何?稲生君」

 

「頼むからさ……あんまりこう密着されるとさ……周囲の視線がね?死線がね?殺意がね?すごく集まるの……」

 

稲生直貴は現在早見幸穂、東条冬に挟まれている。

こうなっている原因は、近々SAOに巻き込まれかつ当時未成年者だったプレイヤーを集めた学校が開校するのだ。

すると現在地理で優位だった自分達が、アドバンテージを失う……その為今のうちに距離を詰めようという二人の作戦なのだ。

 

「だってこの方が暖かいよ?」

 

「いや、まあそうだけど!」

 

「なら良いじゃない」

 

「くそ!取りつく島もない!」

 

最近は<いつも>こんな感じである。

二人は彼の温もりに甘え、幸せそうなので直貴もとても引き剥がしにくいのである。

 

(まあ、しばらくはリハビリで相手出来なかったし……色々はっきりしない俺も俺か……)

 

直貴は抵抗を諦め、激流に身を任せた。

 

 

 

 

 

 

昼になり用事の為名残惜しそうに帰った二人を見送り、直貴は一息つく。

 

(乗りきった!やったぞ!俺!)

 

SAOでは良く接触していたがやはりリアルの感触や感覚と比べると別格であり、かなりドキドキするし良い匂いもする。

母親にはいつも女の子の匂いがするとからかわれ、父親とは……川原で話し合い(物理)をした。

 

「さてと、もう用事ないし帰りましょうか……?」

 

直貴がふと見た時、車椅子から車輪が外れ倒れている女の子がいた。

周りの人間は声をかけるべきかを迷いながら結局スルーし、歩いて行ってしまう。

 

(おいおい、そりゃねぇだろ!)

 

直貴は女の子に近づいて行く、近くまで来ると頭を打ったのか抑えて苦しそうに呻いていた。

 

「おい、しっかりしろ!今病院連れていってやる!」

 

そう伝えたが女の子は首を横に振る。

 

「何遠慮してんだ、辛いだろそれ……って血も出てるぞ!?」

 

頭を打ったとき切ったのか、血がダクダクと出ていた。

それでも女の子は首を横に振る。

 

「分かった……病院には連れていかない……だが治療はさせてもらうぞ!」

 

直貴は女の子の腕をとり自分の背中に背負い、近くの公園まで走った。

 

 

 

 

公園までつくと、まず傷口を水で綺麗に洗い、冷やし、タオルで止血……そのあと母親に勧められた切り傷に良い<キズパワーパッド>を貼り、ベンチで安静にさせる。

 

「どうだ……楽になったかい?」

 

直貴は女の子に顔を向け語りかける。

女の子はやはり虚ろな瞳で首を横に振る。

 

「どうして……?」

「?」

 

女の子が突然話し始める。

 

「どうしてボクを助けるの……ボクは……放っておかれてた方がよかった……」

 

「……なんで……?」

 

「ボクは迷惑ばかりかける嫌な人間だから……生きてるだけで迷惑でいらない人間だから……」

 

女の子はそれがさも普通なように語る。

 

「いつもそう、今日も見知らぬ貴方に迷惑かけた、昨日もそうだった……いつも上手くいかない……」

 

俯く彼女は吐き捨てる様にそう言う。

 

「きっと一生……」

 

「それで?」

 

「…………えっ?」

 

女の子が顔を上げると直貴がジッと彼女を見つめていた。

 

「だからそれで?……どうなりたいの?どう変わりたいの?」

 

「いや、だから」

 

「答えて?素直に本当のそのままの君の気持ちを……」

 

「ッ!だから!一生このままだよ!!どうせ変わらない!!何やったってどうせ!!」

 

直貴の畳み掛けるような言い方に頭に来た女の子は怒りに任せて叫ぶ、直貴にも自分にも言い聞かせるように。

「じゃあ君は変わろうとしたのか?自分から一度でも」

 

「……は?……え?」

 

女の子は直貴の言葉に面喰らう、そんな事聞かれた事もないからだ。

 

「初めから無理だと決めつけてないか?自分はこうだから、こう出来ない、ああ出来ないって自分に<限界>を作ってるだろ……それだと本当に成長出来ないぞ?」

 

直貴は優しく、だがしっかり諭す。

<女の子>をしっかり見てこう付け加える。

 

「<方法はあるはずだ、決めるにはまだ早い>」

 

「ッッッッ!!!!」

 

女の子は驚愕し目を見開く、目の前の青年とゲームで出会った彼 がひとつに重なる。

女の子は分かってしまった、この人物こそ<彼>だと、そしてその彼は自分を嫌ったり変に気遣ったりせず真正面から向かってきてくれる初めての人間なのだと。

 

「う……うぅ……!」

 

「もう一度聞くよ?君はどうなりたいの?」

 

涙が溢れる……既にリアルでは枯れたものだと思っていたのに。

 

「う、あ、ああぁ……くぅっうううぅ!」

 

辛かった……本当は誰より助けを求めていた、自分はどうしたら良いのかと。

 

「ふぐぅっ……グスッ!……たい」

 

だが、今ここに来て分かった……自分はどうしたかったのか本当は決まっていたのだと……絞り出す、その言葉を。

 

「<生ぎだい>!!……<本当の自分らじぐ生ぎだい>ッ!!」

 

足が動かなくなって……封じ込めてきた自分……いつも笑顔で明るくて、たまに抜けてるけど何かを頑張る事が大好きな自分……生きたかった……そんな風に生きたかった。

それが、彼女の<本能>だ。

直貴は女の子を優しく抱き締める。

泣き止むまでずっと……そうしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

「元気良いな!……いやそれが一番様になってる気がするよ」

 

「えへへ、ボクはこれが本来なんです」

 

「ならそれで生きていけ、これからも互いに頑張って生きていこう」

 

「はい!」

 

あのあと直貴に背負われ、自宅まで送ってもらった女の子はすっかり影がとれ元気いっぱいの姿をみせていた。

 

「あ、じゃあそのままさよならも寂しいし連絡先交換しないか?」

 

「ふぇっ!良いんですか!?」

 

「良いよ、ほら」

 

まさか願望の一つが叶うとはと、ドキドキしながら二人で交換する。

 

「<稲生直貴>さん……?」

 

「ああ、そうだよ……んで君は……<紺野……もめん季?>」

 

「違うよ、失礼な!それは…………<ゆき>って読むの!」

 

「ほう、<紺野木綿季(こんのゆき)>か……ならこれからはユキって呼ぶよ」

 

直貴は笑顔で答える。

 

「うん、よろしくね!直貴さん!」

 

「じゃっ俺急ぐから、またな!」

 

「またね!……行っちゃった」

 

見送る彼に少し嘘をついた。

 

「まだバレたくないから、もう恥ずかしくはないけど……もっとしっかり自分が<生きてから>……正体を明かしたい」

 

そんな彼女の中にも小さいが確かに、<牙>が生まれていた。

 

「頑張るから……絶対……本気で変わるから……ずっと見ててよね……<お、お兄ちゃん>……」

 

何かが変わり始めていた。




速攻地雷除去、イノセンスはまじそう言うところ優秀です。

そして、彼女にフラグと共に植え付けられた<ナニカ>……成長して<絶剣>となる彼女を見届けてあげて下さいませ。
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