ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
ですが、本当の素は男勝りで少し勝ち気だけど優しい女の子って、私は勝手思ってます。
あの後、詩乃と連絡先を交換した直貴はいつでも相談に乗る旨をメールすると返信で、頑張ると来ていた。
相談をするのに何をそんなに頑張るのかと直貴は苦笑した。
ALOに入る前にシャワーを浴びて、気持ちを切り替えてからログインする。
「……ふぅ……さてと……」
取り敢えずメールを確認するとサクヤとアリシャ、リーファからメールが来ていた。
サクヤとアリシャはそれぞれインプとプーカと極秘裏同盟に成功した事と計画の成功への激励が書かれてあった。
一方でリーファは昨日暴れた事への謝罪と、今日は個人的に話がしたいと書いてあった。
「取り敢えず、計画は順調か……んで、リーファの話は何だろうな?」
昨日の荒れようから考えればリアルで何かしらあったと考えるべきだろう……そしてリーファの正体……。
何となくだが察したイノセンスは、リーファと待ちあわせている場所へと向かった。
待ち合わせ場所である<ミロルの浜辺>は透き通った海が間近で見れる美しい場所であった。
リーファはそこで膝を抱えて待っていた。
「黄昏てますな、お姫様」
「……誰が姫よ、誰が」
イノセンスはリーファの隣に来て座り、彼女が話すのを待った。
しばらくしてリーファが口を開く。
「……イノセンスは……お兄ちゃん……キリトと知り合いなんだよね」
「……ああそうだよ……親友にして、可愛い弟分だ」
リーファは先程の発言で自分がキリト、本名<桐ヶ谷和人>の妹<桐ヶ谷直葉>だと認めたのだ。
イノセンスは特に気にせず素直に自分の考えを言った。
「そっか……私さ、お兄ちゃんがSAOに閉じ込められるまで知らなかったんだけど……実は従兄妹だったんだよね」
「……知ってる……」
その事についてはキリトから聞いていた、色々と悩みにも答えたりした記憶もある。
「そこまで知ってたんだ……それでね、お兄ちゃんが起きるまでの間ずっと面倒見てるうちにさ……段々……好きになっちゃってた……」
「それは知らなかった」
「いや、そこまで知ってたらおかしいじゃない……って茶化さないで!」
「すまんすまん、ついな?」
「もう……」
空気が少し重かったためつい茶化してしまったイノセンスに対して、頬を膨らませ拗ねるリーファ。
「戻ってきた時には、お兄ちゃん……凄く優しくて……昔より垢抜けて凛々しくなっててさ……より好きになった、でもお兄ちゃんにはもうアスナさんがいたの」
SAOにおいて、結婚手前まで行ったらしいあの二人が、リアルで恋仲になるのは普通だろうなとイノセンスは感じた。
ならばリーファの想いは……。
「だけどさ……イノセンスとユウキちゃんの絆を見て決心してさ……昨日……告白したの……」
「……一応聞いとく……結果は?」
「……フラれちゃった」
やはり昨日の最初の落ち込みようとその後の荒れようはそれが原因だったかと、イノセンスは納得する。
「そうか……」
「だからさ……今日かなり家でもお互いギクシャクしちゃって……話す事さえままならなくて……」
告白したことにより兄妹としても上手く接する事が出来なくなってしまった二人。
キリトにはアスナがいるが、リーファにはまともに相談出来る相手がいなかった……故にイノセンスを頼った。
「あたし……このまま兄妹としてもいられなかったらって……思って……あたしもうッ……どうしたらッ ……!」
「なるほど……事情はのみ込めたぞ」
顔を抑え泣くリーファにイノセンスは答える。
「そうだな……一回ガチで喧嘩したらどうだ?」
「……グスッ……えっ?」
「お前らの家道場なんだろ?試合でもしながら互いの気持ちを気迫にのせてさぁ……面!倒!ってさ?」
言葉でわだかまりが出来たなら、もう剣で語るしかない。
それがイノセンス理論だ。
「あいつ口下手な上に不器用だからさ、それが一番オススメだよ……仲直り……したいんだろ?」
「イノセンス……さん……」
「ふふっ、良いよ今更さん付けも敬語も……リーファの……直葉の素直な姿が、俺は一番好きだよ」
「ーーーー」
イノセンスはそう言ってリーファの頭を撫でる、丁寧にいたわる様に。
それを受けてリーファは目を見開き、驚く。
イノセンスと兄 和人の姿が重なったから。
「……そっか、分かった!じゃあ今まで通り行くから!今更撤回しても遅いからね!?」
「おうおう、それが一番リーファさんらしいでございますよ?」
「くっ、その余裕ムカつくなぁ!……まあ、それがイノセンスらしいけどね!」
「誉め言葉と受け取ろう」
ニヤリと笑い立ち上がる二人。
リーファの表情からはもう先程の影は見当たらなかった。
「さて、結論は出たし……っとユウキを迎えに行かないとな……リーファはどうする?」
「あたしは武器のメンテがあるから……それ終わらせてから合流するよ、先行ってて!」
「リョーカイッ、ではまた後でな~」
「うん!また後で!」
イノセンスが飛んで行ったあとリーファは一人残り、海を眺めていた……澄んだ瞳で。
「……ありがとう……<王子様>……」
ユウキを回収した後、四人はアリシャの元へと集う。
連絡によるとサクヤはしっかり誤情報を流せたようだ、シグルドさまさまである。
「イノセンス様!万事整いましたぁっ!」
「よろしい、面をあげい!」
「何やってるの、お兄ちゃんとアリシャさん……?」
「「……領主様ごっこ?」」
「いや、貴女が領主でしょ!」
二人の謎ごっこに呆れるユウキとツッコミを入れるリーファ。
「いや~ツッコミがいるとつい遊びたくなるんだよねっ♪」
「リーファさん、ああ言ってるけど?」
「大丈夫、あたしはもう慣れたし!」
「駄目だこりゃ……」
今日は何故かリーファもテンションが高いため、唯一おいてけぼりをくらうユウキ。
と、ここらで空気を切り替えるイノセンス。
「ではそろそろ向かいますか、<アルン高原>」
「だねぇ、皆準備は良い?」
『オー!!』
アリシャの声かけにより集まったケットシーの精鋭たちと、同盟国プーカの軍楽隊が集結している。
「シルフとインプも準備完了、行けますよ」
「うし!全速前進にゃー!!」
号令がかけられ、一斉に飛び立つ。
決戦の火蓋は切って落とされた。
「シグルドの情報によるとやつらはこのアルン高原にて、会議を開いているらしいですな」
「……ふむ、兄者も<問題ない>と言っていたからな……ここで合っているだろう」
部下の発言に対してサラマンダーを率いる、ALO最強プレイヤーユージーンはそう答える。
事実、アルン高原は他種族間での交流に良く使われる場所だ。
シグルドの情報も信憑性は高いだろう。
しばらく全軍が進むと<会議中>と思われるテントと外を見張るケットシーとシルフの兵士を発見した。
「将軍!間違いないようです!」
「おう、フフフ……長きに渡る禍根はここらで摘み取らなくてはな……全軍突撃!!」
『オー!!』
ユージーンの号令でサラマンダー達はテントに向かい突撃する。
しかし、ここでテント前に立っていた兵士が、テントの裾を掴み外した中には<誰もいなかった>。
「何!?」
『こ、これは!?』
全軍が動揺し、動きが止まる……。
この瞬間気づく、これは敵の計略だったのだと。
「ニャハハハ!!!本当に<まんま>と引っ掛かったねぇ♪猫だけに!」
「貴様らの策、総て露見していたぞ!ユージーン!」
アリシャとサクヤの声に合わせ、周囲からサラマンダーより遥かに多くの伏兵の同盟軍がゾロゾロと現れる。
「こやつら、嵌めおったな!」
「最初に嵌めようとしたのはどっちだ?まあ、バレていては意味はないがな」
サクヤは扇子で顔を覆いクツクツと笑う。
「さあ、覚悟を決めるか、降伏するか選ぶといいさね!」
アリシャが手を上に挙げると兵士が武器を構える。
すると、突然サラマンダー達が笑い始めた。
『ハハハッ!こりゃ傑作だ!』
『コイツら、これで勝ったつもりでいやがるぜ!』
「……何が可笑しい?」
笑っていたサラマンダー達が左右に避けるとそこには、ユージーンがいた。
「兵達の言う通りだな……覚悟を決める?降伏する?聞いて呆れる」
ユージーンは同盟軍を嘲笑う。
「俺はユージーン!自他ともに認めるこのALOにて最強の男!!俺を倒したいのならば、この十倍は連れてこい!!」
ユージーンの放つ気迫に同盟軍の兵士達は怯え、怯む。
実際にユージーンは単騎でこれだけの軍勢を蹴散らせるほどの実力はあるだろう。
だからこそ、兄であり、智謀に優れた領主である<モーティマー>は策に気付いていたが<問題ない>と言ったのだ。
ユージーンはさらに話し続ける。
「こんな話を知っているか?かの三國志において、蜀の国を裏切った<将軍>魏延がその蜀の前でこう言ったそうだ……<わしを殺せるものがあるか>とな、その後魏延は名乗り出た自分の部下の馬岱に斬られたそうだが」
ユージーンは同盟軍を挑発するように前に出る。
「果たして、このセリフを俺が言ってでてくるものは……この場にいるか試してみようか」
そう言って笑うユージーンに釣られサラマンダー達も笑い出す。
同盟軍の兵士達がざわめきたつ。
しかし、領主二人とユウキとリーファは冷静にそれを眺めていた。
「(確かに<普通なら>無謀な策だったろう)」
「(確かに<今まで>なら名乗り出るわけはないよん)」
「(だけど<今なら>それを覆せる人が!)」
「(いちゃうのよね、これが……私達の<馬岱>が!)」
ユージーンは息を吸い込み叫ぶ。
「<俺を殺せるものがあるか!!>」
「<ここにいるぞ!!>」
「……なに?」
同盟軍が左右に避けるとそこには一人のプーカがいた。
それを見てユージーンは拍子抜けする。
「プーカだと……?戦闘タイプでもない、まして無名のお前が俺を殺せる?笑わせるな」
しかし、サラマンダーにおいてこの事態を恐怖している者がいた……ランス隊隊長カゲムネとメイジ隊隊長ジータスクである。
「(ヤバイ……将軍、その男は……!)」
「(何て事だ……何て事だ……!)」
しかしそれを口に出すことは出来ず、ただ見守る事しか出来ない二名であった。
ユージーンは愛剣である<魔剣グラム>を抜き、構える。
「まあ、良いか……名乗り出た以上は相手をせねばな」
「是非ともそうしていただけるとありがたいよ、ユージーン将軍」
イノセンスは笑いながら<神刀キンシ>の柄を掴む。
「ふんっ、さも偉そうな口を貴様が叩くな!!」
ユージーンが猛然と斬りかかり、イノセンスはそれを紙一重で回避し背後を居合いで斬りかかるが、既に振り返っていたユージーンはそれを防ぐ。
「その動き……!……貴様……名は?」
「……イノセンスだ……」
「! 何だと!?」
互いに切り払い距離をおく。
ユージーンはその身を震わせて歓喜する。
「まさか……無名のプーカと思いしは、かのSAOの英雄だっただと?」
「まあ、その通りかな?」
「フハハハハハッ!!!……武人として、これ程栄誉のあることもあるまい!!」
ユージーンは今度は本気でイノセンスに対して構える。
「良いぞ英雄、お前を倒し……真にこの世界最強を改めて名乗らせてもらう!!」
「安心しろ、ユージーン……ALO最強は今日を以て廃名だからな!!」
二匹の雄の頂上決戦が今始まった!!
次回はユージーンとの戦い。
強敵との戦いは燃えますよね、この人なんて猛炎の将とか言われてますから余計ですな(モットアツクナレヨー