ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
虎視眈々と正妻の座を狙う彼女により、修羅場発生?
しかし、そこにやって来たのは……?
「まさか……スグからこんな事を……誘ってくるとは……思ってなかったな……」
「だって……昨日までの感じで……ずっといるの、嫌だったから……さ」
道場の縁側で、和人と直葉の二人は汗だくで息切れしながら会話していた。
試合の結果は直葉の勝ちに終わり、互いに色々言えなかった事を吐き出すことができた。
今は互いにモヤモヤが無くなり、晴れやかな表情だ。
「ふーっ……スグは強いなぁ……俺とか正直どう決着をつければいいか、分かんなかったのに……」
和人はそう言って苦笑する。
しかし、直葉は首を横に振る。
「違うの……本当はさ、誰かさんの提案をあたしが採用しただけなんだ……」
「……もしかしてさ……その誰かさんってのはアイツなのか?」
和人は察した様に言う。
アイツとはもちろんイノセンスこと稲生直貴の事である。
「流石、親友なだけあるね」
「まあ付き合い長いしな……だけど直貴とはどこで知り合ったんだ?」
和人は不思議そうに質問する。
「ALOでだけど、知らなかったの?彼が今やってるのに?」
「ああ、聞かされてないからな……まさかアイツ、何か隠してるな?」
「あっ」
和人の言葉に直葉は思い出す。
「そう言えばSAOから戻ってこない人達の話題で、そのために来たって!」
「! 直貴の奴、何で黙ってるかなそう言うことを……自分は相談しろだの頼れだの言うくせに……!」
「(ああ、確かにそう言うとこあるかなアイツは……ふふっ、まあそこが美点の一つだとも思うけどさ)」
直葉は和人の言葉に共感し、笑った。
和人は少し考えていたが、何かを閃いた。
「……フフフ……」
「お兄ちゃん?」
兄の様子に戸惑う直葉。
和人は意地が悪そうにニヤリと笑う。
「期待してろスグ、アイツが本気でびっくりしてる様……見せてやるよ」
「あはは……頑張れイノセンス……」
後の彼を思い、直葉は思わず苦笑した。
今日はALOを休んでゆったりしようと決めていた直貴は、現在親の車でドライブに出ていた。
「SAOのお陰とは思いたくはないが、今こうして乗り回せるのはあれがきっかけだよな」
SAOに巻き込まれた彼は現在休学しているため、リハビリついでに自動車免許も<合宿教習>で既に取っていた。
練習も兼ねて気楽に運転していると、鞄のスマートフォンが鳴る。
「ん?誰だろう……?」
適当なコンビニに駐車し、画面を開くと<綾野珪子>と書かれていた。
「もしもし、珪子か?」
『はい、珪子です!お久しぶりです!』
彼女の元気な声に、直貴は頬を緩ませる。
しかし、互いに忙しいために連絡はメールでしようと決めていたのたが、突然の電話な為に直貴は疑問を持つ。
「ああ久しぶり……珍しいな、電話してくるなんて……急ぎか?」
『ええ、そうと言えばそうですね♪実は私今東京に来てまして……理由はその……直貴さんに会いにでして……ね?』
珪子は電話ごしに恥ずかしがりながら、そう話した。
「……今何処にいるんだ?迎えにいくよ」
素直に自分に向けられた好意に答えるため、直貴は聞く。
「! 今は東京駅にいます!」
「待ってろ、すぐに行く」
「はい!」
電話を切ると、直貴はすぐさまエンジンをかけた。
「直貴さん……まだかな……さっきから私緊張しっぱなしだよ」
珪子は駅前で待機中。
時折時間を確認し、落ち着かない様子を道行く人に微笑ましそうに見られたりしていた。
「珪子!こっちだ!」
「! 直貴さ……はわわ……」
直貴の声に珪子が反応し振り返ると、銀のGT-Rに乗った直貴がいた。
「直貴さん、結構な高級品買ったんですね!」
「いやいや、俺個人で買えるわけないでしょ……これは親父のだよ、さぁ乗った乗った!」
「は、はい!」
珪子を助手席に乗せ、直貴は車を走らせた。
「リクエストがあればそこ行くが、どうする?」
「あ、いえ、私この辺り詳しくないのでお任せします」
そう言って珪子は微笑む。
「ならお台場でも行くか」
「わあ、お台場行きたいです!」
「オッケー、全速前進!」
二人はお台場へと向かった。
お台場はいわゆるデートスポットとして有名なだけあり、あちこちにカップルが見当たる。
直貴は単なる観光のつもりできていたが、珪子はいやでも意識してしまう……全く嫌ではないだろうが。
「……SAOから抜け出せてから、しばらく経ちましたけど……お変わりなくて良かったです」
「それはこちらのセリフでもある、君が元気でよかった」
「はい!私は元気が取り柄ですから!」
珪子は並んで歩く直貴に自然に近づき、腕に抱きつく。
それに対して慣れている直貴は特に抵抗もなく受け入れる。
「でも、やっぱり少し……寂しかったかもしれません……いつもあったぬくもりが……愛しい誰かが近くにいない、会えないのは……」
「……<シリカ>」
「ふぁ……<イノさん>……」
彼女の寂しさを埋めるように、優しく抱き締め、かつての世界での名を呼ぶ直貴。
珪子は直貴の身体に顔を埋め、久しぶりの好きな人の暖かさを、匂いを、感触を味わう。
「ん……来てよかったです……やっぱり私、 イノさんの側にいるのが……一番幸せです」
「シリカ……」
甘えてくる珪子が愛らしくて、直貴は彼女の頭を撫でて愛でる。
その時、後ろで何か落ちた音がした。
直貴が、気になり後ろを振り向くと……鞄を取り落として青い顔をしている早見幸穂がいた。
「……なんで貴女がここにいるの……?」
「お久しぶりですサチさん、私はいても立ってもいられず来ちゃいました♪」
「……なんと言うタイミング……もはや運命なのか?」
威圧的なオーラを放つ幸穂に、より直貴に密着し楽しそうに煽る珪子、そして絶望顔の直貴の三者により、どう見ても修羅場な空気が醸し出されていた。
近場にいたカップルはそれを見てその場から離脱していき、よりその空気が顕著になっていく。
「やっぱり貴女が私の一番の敵!」
「私も同じ意見ですよ、何なら白黒ハッキリさせますか?この場でッ……!」
二人のオーラが激突し、火花を散らす。
直貴は願った、この空気を破壊する勇者の存在を。
すると。
「……直貴さん?」
現れたのは……紺野木綿季だった。
彼女は状況を把握して、何となく察しがついた。
「ユキ……!」
「「……誰?」」
二人の迫力に若干気圧されたが、負けじと木綿季は言葉を発する。
「……ボクはこの間、直貴さんに救ってもらった者です……見たところお二人は彼の知り合いの方ですよね……しかしそんな険悪なムードだと直貴さんが困ってしまうんじゃないですか?」
「……確かに、そうだね」
「……ここは矛を納めましょう」
正論で二人を制し、直貴に近づく。
「すまない、助かった」
「借りを返しただけですよ、気を付けてください!……貴方はモテるんですから」
そう言って、木綿季はため息をつく。
そんな様子を見て二人は気づく、彼女もまた彼に好意を持っている可能性を。
故に二人はここで彼女に鎌をかける。
「じゃあ、仕方ないから三人で何処か行こっか?」
「そうですね、行きましょう!イノさん!」
「おうっ?」
「えっ?」
二人に腕を引っ張られ連れていかれる直貴。
それを見て先程と一変して慌てる木綿季。
「あ、いや、待ってくださ……待って!」
「? どうしたの?私たちは貴女が言った通り険悪なムードにならないように、三人で遊びに行こうとしてるだけだよ?」
「それに貴女は前にイノさんに助けてもらっただけですよね?これは私たち三人の問題なので、気になさらないでくださいね」
「ふ、二人とも?」
二人の発言でカチンときた木綿季は思わず言ってしまう。
「ボ、ボクだって!<お兄ちゃん>の事が好きだよ!!仲間外れにしないでよッ!!」
「……<ユウキ>?」
「……ハッ……!」
バレてしまった、自分がユキではなくユウキである事が直貴に。
「……ユウキなんだな?」
「……うん……」
低い声で近づいてくる直貴に、木綿季は少しビクビクしていたが……直貴は彼女の頭を優しく撫でた。
「俺の正体に気づいてたんなら先に言ってくれよぉ……てっきり俺は三つ子なのかと冷や冷やしてたんだぞ?」
「えっ?」
彼は笑っていた、真っ直ぐに彼女を見ながら。
「ってことで悪い、二人とも……<四人>じゃだめか?」
「お兄ちゃん?」
「良いよ、全然オッケー!」
「寧ろどう言う関係なのかとっても気になってたんで、是非来てください!」
「え、えーっ!?」
ここで木綿季は二人に鎌をかけられたのだと気付いた。
そう思うと途端に恥ずかしくなってきた。
「んじゃ行くか、飯の時間だし……ご当地麺祭りにでも」
「「賛成!」」
「あ、あうぅ……」
「ほら、行くぜ?何で黙ってたかはラーメン啜りながらでもゆったり話せばいいし……二人も待ってる」
そう言って木綿季の車イスを押す直貴。
「い、いいのかな?ボクも一緒で?迷惑じゃ?」
「バカ、迷惑なわけないだろう……それに」
笑って直貴は付け加える。
「俺も木綿季と一緒に遊びたいんだよ……ダメか?」
「あっ……」
直貴の言葉に木綿季は心が満たされる。
彼と一緒にいたいと感じる。
「うん、ボクも一緒に遊びたい!連れていってお兄ちゃん!」
「おうよ、行くぞ!四人で!」
「お腹ペコペコだから、しっかり食べるよ!」
「ですね、大盛り頼んじゃいます!」
三人は歩調を合わせ歩く。
そう言う気遣いを含め木綿季は思う、きっと自分も皆と仲良く出来ると……そして今日は目一杯楽しもうと。
心踊らせ、前を見つめていた。
夏バテで昨日はまるで執筆できないという(笑)
シリカちゃんはヒロイン性もあるし、動かしやすいキャラだと個人的に思っています。
師弟の絆はつよしです。