ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
詩乃コミュを進めます。
昨日はお台場を遊び回り、木綿季は幸穂、珪子と友達になった。
そして、直葉から和人に勝ったことと今日の夕方から世界樹攻略を行うということがメールで送られてきていた。
「夕方からか……別に今からログインしてても構わないっちゃ構わないが……?」
そう思っていると、メールが来る。
差出人は以前出会ってアドレスを交換していた朝田詩乃からだった。
内容は<助けて 前の公園>とだけ書いてあった。
「! くそっ!今行くぞ!!」
直貴は焦って家を飛び出した。
「…………あれ?」
「モグモグ… …あ、来てたの?」
何かあったのだと思っていた直貴だったが、そこには普通にクレープを食べながら待っている詩乃がいただけだった。
「いやいや、普通あのメール内容みたら余裕でダッシュするよ」
それを聞いて詩乃は申し訳なさそうな顔をする。
「最初は色々書こうって思ったんだけど……どうしても思い浮かばなくて……私、誰かにメールするのとか……初めてだし」
「……ああ、なるほどな……悪い俺が気回らなかった」
直貴は彼女が何故PTSDになったのか、それを思い出すと察しがついた。
殺人と言うレッテルは、人を変え、孤独にする。
そこに学生の人間関係も加わると、必然胸くそ悪いことしか浮かばなくなってしまう。
直貴は思考をやめ話題を変える。
「で、何を助けてほしいんだ?」
「ん……実は私一人暮らしをしてるんだけど……その、事情があってかなり部屋が荒れていて……」
「……片づけを手伝えばいいのか?」
「……時間があるなら、で……いいんだけど……」
そう言って詩乃は目をそらす。
反応からみてかなり酷いあれ具合なのか、それとも別に事情があるのか……それとも両方か。
「良いぜ、それぐらいならお安い御用だ」
「そっか……ならお願いするわ……着いてきて」
詩乃はそのままベンチから立ち上がり、歩き出す。
直貴はそれを追いかけるが、その時何かの空耳のようにか細くだが確かに聞こえた気がした。
「ゴメンナサイ……」
詩乃のアパートは文京区の湯島町にある。
オートロック付きの程ほどに綺麗な外観のアパートだ。
しかし、詩乃の部屋を開けたときの衝撃は例えるなら。
「地獄だな」
中はゴミがあっちこっちに散乱しており、タバコや酒の臭いも充満している。
これが見目麗しき女子高生の部屋とは到底思えなかった。
「……だから、荒れてるって……」
「ああ、分かってるさ……始めるぞ」
直貴はマスクをし、箒とチリトリをもち、無駄に高速思考をつかってる状態ででゴミの山へと突っ込んでいった。
「よ~し!ゴミまとめ完了!」
「す、すごいね……あれが1時間たらずでここまで綺麗に……」
スッキリした家の中を見て詩乃は素直に感心する。
流石に<箒二刀流(裏)>(リアルでは非効率極まりないので、よゐこは真似しないように)をしだした時はどうなるかと思ったが。
「ファブリーズ無双だなまったく……ゴミだしは、つか本当は掃除も出きるだろ、詩乃は……」
「……なんで、そう思うの?」
確信めいた言い方をした直貴に詩乃は聞く。
「流石に酒のんだり煙草吸ったりはしないと思うし、落ちてるゴミの大半が複数人で食うもんばっかだしな……粗方<ナニカ>が荒らしていったんだろ?」
「……それは、友達が来たときに」
「メールのひとつも初めてな詩乃が?」
「うっ……そ、それは……」
痛いところを突かれた詩乃はどういえば良いのか分からず、しどろもどろになる。
「そろそろ聞かせてくれないか……理由」
真剣な表情でジッと詩乃を見つめる直貴。
しばらくして観念したのか詩乃が口を開く。
「……実は」
しかしそれは、突然のチャイムにより阻まれる。
それを聞いた詩乃は立ち上がり玄関へ向かう。
するとやって来たのは直貴が予測したものに遜色ないものだった。
「いたいたぁ、マジでイケメンじゃん!」
「勿体ないよねぇ、あんなクズにはさぁ」
「わかるわかる!まじありえねぇわ~!」
ぞろぞろと明らかに不良然とした女子高生たちが入ってきた。
「なんだ?あんたら」
「は?あたしらの事何も話してねぇの?」
「アイツマジで使えないわぁ」
ケラケラと笑う女子高生を無視し、詩乃を見る。
彼女はうつむきながらごめんなさいと、念仏のように唱えていた。
「ちょっと、クズ!何をボーッとしているのよ!出しなさいよ!金!」
「あんた<人殺し>なんだし、それくらい問題ないわよねぇ……早くだせよ」
威圧的に金銭の要求をする女子高生たちに、詩乃は鞄から財布を取りだし、金を出そうとするが……。
「詩乃」
「……」
直貴に阻まれる。
「ちょっと兄さん、それじゃうちら金もらえないんだけど?」
不機嫌そうな声を女子高生は直貴にかけるが無視する。
「これで良いのか?こんなゴミと見分けがつかないような奴等に良いようにされていて?」
「! ……仕方ないでしょ……今はこうするしか……」
内気であまり積極的に喋らない彼女がさらに声を弱々しくして、そう言った。
「分かった、お前がやらないなら俺がやる」
「え?」
直貴は窓を向き叫ぶ。
「いやぁ!今日は快晴につき清掃日和だな!詩乃!」
「は?兄さんなにいってんの?ゴミはそこに纏まって」
「あるなあるな、ゴミが……沢山!!」
箒二刀流(裏)で我が物顔だった女子高生たちをぶったたき、部屋から叩き出す直貴。
「イッターイッ!!何すんのよぉ!?」
「イタイイタイ!やめてマジ!!」
「ア、アンタ!あたしらにこんなことしてただじゃ済まさないわよ!!」
キレる女子高生に直貴は言う。
「テメェらガキに何が出きるんだ?え?んなことよりな、ここは詩乃の家だ、お前らの物置小屋じゃないんだ……次ここに置かれてたら、今度はちゃんと隅々まで<分別>してから網の中に突っ込んでやるからな!!」
「「「ひ、ひいいぃぃぃぃ!!恐いこのイケメン!!」」」
慌てて逃げ出す、女子高生達を見送ったあと部屋に戻ると……土下座した詩乃がいた。
「おう、詩乃……ゴミ片付いたからスッキリしたな」
「……なさい」
「……」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!……ごめんな……さい……」
恐くて、辛くて、悲しくて、情けなくて、自分にはどうしようも出来なくて……だから頼っていいと言っていた彼に頼ってしまった。
詩乃は泣き崩れながら謝ることしか、出来なかった。
「何で謝る?」
「……え?」
「詩乃はずっと一人で頑張ってたんだろ?自分の過去、周りからの弾圧、孤独の日々、ずっと耐えて生き抜いて来てるだろ?ならさ……良いんだよ、頼ったって」
直貴は詩乃にそう言うが、詩乃は。
「ダメだよ、私が……私自身が何とかしなくちゃ……結局変わらない……私が変わらなきゃ!」
自らに重い枷を負い生きてきた彼女には、自立しようと、しっかりしようともがいていた彼女には、頼ると言うことはとても難しいものだった。
「そんな意識だからこそ詩乃は変わらないんだよ」
「……何でさ……?」
直貴の言葉を理解出来ない詩乃は、すがるように聞く。
「全部自分で何とかするってのは素晴らしいことさ、だがな……それは真に自分の力を理解してる、大人の究極の考え方だからな?……キツいことを言うけど詩乃はまだ子供だ、だからさ身の程をわきまえてくれ」
「うっ 」
「その上で自分が何とか出来るならそうしてくれ、出来ないなら<頼れ><甘えろ><助けを求めろ>……それが本来の子供の特権なんだよ」
「子供の……特権……」
詩乃は早くに父を亡くし、母は精神的に幼児退行してしまっていた。
故に母を守る義務感から今の人格を形成してしまった。
だから、子供らしく過ごせた期間が極端に短いせいで誰かに甘えることもほとんどできない。
「俺は詩乃の過去はほんの一部しか知らない、だが今のままじゃだめだってのは分かる……だからさ」
直貴は彼女を助けたい一心でこう言った。
「俺にお前を守らせてくれ、身体も、心も、全部!」
「ーーーー」
自らをまっすぐ見つめ、告げた彼の言葉が詩乃の心を縛っていた鎖を打ち砕いた。
本気だった、彼は本気で自分の全てを守ると言ったのだ。
止まっていた彼女の時間は、今動き出した。
「……ならさ……本当に、頼るわよ?何を言っても甘えるし、助けだって求める」
「最初っから上等だよ」
「本当に……守ってくれるのね?」
「男に二言はない」
直貴はそう言って笑う。
その笑顔に釣られしばらくぶりに心から笑う詩乃。
「ふふふっ……じゃあ今から一つ甘えさせて貰うわ」
「? 何だ?」
「動かないでよ……」
詩乃は直貴に近づき抱きつく。
直貴の身体は度重なるリハビリにより、元の体型に戻っていたため筋肉質で男らしい抱き心地に逞しさを感じる。
「ああ……凄い落ち着くわね……これ」
「そうか、なら抱かれた甲斐ありだな」
抱きつくのに慣れていない詩乃とは違い、慣れている直貴はつい癖で詩乃の頭を撫でる。
「んっ……」
「あ、悪い……つい……」
「……もっと欲しい」
「えっ?じゃあ……」
「ん♪」
今までにない心地好い感覚に詩乃は身を委ねる……。
彼が帰る時間になるまで、ずっとずっとそうしていた。
詩乃フラグ一つ回収。
まだ恋愛ではなく、父親や兄貴に対する親愛的な何かではありますが……甘えます。
少し心の余裕が出来た彼女は、原作シノンっぽくクールな面を見せるようになっていきますが、直貴に唐突に甘えたりとかします……甘々ですね(笑)