ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts-   作:新世界のおっさん

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戦いを終えた戦士たち、一時の休息。


今こそもう一度~ALfheim Online~

現在木綿季と合流した直貴は、木綿季の双子の姉である紺野藍子に会いにきていた。

 

「お姉ちゃん、早く会いたいなぁ……」

 

「このエレベーター上がったらすぐなんだろ?」

 

「そうだよ、外身は見てるから分かるけど……精神的には分からないし……気になっちゃって」

 

「まあ、そりゃそうだな……俺も懐かしいからな、気にはなるよ」

 

互いに会っていた時間も場所も違っている二人だが、彼女を心配している気持ちは同じらしい。

エレベーターがつき、すぐ横の扉まで行くと確かに名前が書いてあった。

 

「……開けるぞ?」

 

「うん」

 

ドアを開け、中を見るとベッドから起き上がりこちらを見つめる藍子がいた。

 

「お姉ちゃん……」

 

「……木綿季……?」

 

「良かった……良かったよぉ……!」

 

近づき手を握り、涙を流す木綿季。

 

「……ゴメン、遅れちゃったね」

 

謝りながら、妹の頭を撫でる藍子。

久方ぶりの姉妹の再会は今果たされた。

藍子がふと前をみると、起きる前までやたらと夢に出てきた人物がいた。

 

「イノ……センス……!」

 

「何だ、げっそりしてるが思いの外元気そうだなラン」

 

「まあ……久しぶりに木綿季に再会できたんだもの、テンション上がるわよ」

 

「相変わらず、妹大好きだな……」

 

SAOから変わらない藍子の様子に安堵する直貴。

ふと、藍子が直貴を見つめる。

 

「何だ?」

 

「お前が助けてくれたんだろ?いつものお節介で」

 

「いんや、残念ながらバイトだよ……有志のバイト」

 

「有志なら結局お節介でしょうが……全く……」

 

やはり、彼のこういう場所はどこでも変わらないのだなと藍子は思う。

そんな直貴の事を藍子は前から尊敬していた、真っ直ぐ自分を貫き通して、結果人を救う彼に何度魅せられたか。

そして、寝ている間……不安と恐怖で占められた彼女の夢に現れてくれて助けてくれたのも直貴だった。

いつしか、夢の中ではそれが日常レベルになっていき……いつの間にか感情が別の何かに掏り替わっていた。

 

「……ちょっとこっちへ来い」

 

「? なんだよ?」

 

「……ん」

 

「「!?」」

 

近づいてきた直貴の胸ぐらを掴み頬にキスする。

直貴はもちろん木綿季も驚きのあまり涙が引っ込んでいた。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「これは……私からの報酬、助けてくれた礼だから」

 

「ラン……なら、ありがたく受けとっとくよ 」

 

「……うん」

 

そう言って頬を赤く染めそっぽを向く藍子。

 

「(お姉ちゃん……まさか……)」

 

木綿季は今の反応で、姉が直貴に好意を持っていると直感する。

 

「(木綿季が昔と雰囲気が違うのも、イノセンスのお蔭かな……?やっぱり姉妹で双子だし、趣味が似たのかもね)」

 

一方で藍子も、木綿季が直貴に好意を持っていると推測する。

 

「木綿季、ラン」

 

二人は直貴に声をかけられ反応する。

 

「これからもよろしくな」

 

「こちらこそ、だな」

 

「もちろんだよ、お兄ちゃん!」

 

直貴の言葉にどちらも笑顔で答える。

秋の夜の病院での出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、須郷信之が逮捕されALOは一時閉鎖と相成った。

あの世界を愛する者たちには苦行だが、あんなことがあった後ではそれも致し方ない事だといえる。

秋が過ぎ、11月……SAOに巻き込まれた日に同窓会と称してエギル、本名アンドリュー・ギルバート・ミルズから招待状がフレンド達に配られた。

当然そこには直貴も誘われていたのだが、他にもALOでの知り合いたちも世界樹攻略で仲良くなったので誘われていたようだった。

 

「しかし、エギルの奴……リアルでは美人な奥さんに小洒落た喫茶店の店主とは……阿漕な彼が懐かしいねぇ」

 

直貴はそう呟きながら彼の店に入ると、既に全員集まっていたようだ。

 

「よいっす」

 

「きたか、色男!好きなとこ座んな」

 

「イノ、こっち空いてるぞ!」

 

「お、じゃあ座らせてもらうぜキリト」

 

和人に催促された直貴は隣に座る、反対隣には明日奈が座っていた。

 

「よお、新婚夫婦」

 

「「ブッ!!」」

 

二人同時にジュースを吹き出したのを見て、その場にいたリズベットこと<篠崎里香>とクラインこと<壷井遼太郎>は笑い出す。

 

「あはは!イノセンスにまで言われてるわよアスナ!」

 

「どう見てもそうとしかみえねぇしな!」

 

「お前らなぁ……あんまからかうなよ……」

 

「そ、そうだよ!<まだ>結婚は無理だから!!」

『<まだ>?』

 

「はっ!」

 

「ダメだアスナ、余計な発言は自爆を招くぞ」

 

和人と明日奈が付き合っているのは、もはや皆周知の事実であるためこうやって良く弄られるのである。

そうして楽しみながら、目の前のフライドポテトをつまんで食べると、ふと目の前に見慣れぬ黒髪でボブカットな少女がいてこちらをチラチラみていた事に気づいた。

 

「……どうした?」

 

「あ、いや、その……イノセンス?」

 

「そうだが……リーファか?」

 

「う、うん」

 

目の前の少女はリーファ、つまり和人の妹直葉であると判明した。

 

「そっか、リーファと直葉ってかなり外観違うんだな……分かんなかったぜ」

 

「それ、こっちのセリフ……やっぱりオプションが強いとお互い分からないわね」

 

互いに髪型、髪の色、瞳の色、肌色、身長まで変わっているのだ……知り合いでも普通気づけないだろう。

 

「リーファのイメージが強かったから、こんな小柄で可愛らしいお姫様とは思わなんだ」

 

「あんたこそ長身褐色のワイルド王子様とはあたしは思ってなかった」

 

「嫌いになったか?」

 

「まさか、寧ろ体力派な私は好感持つわよ」

 

「なら、良かったぜ……親友の妹に嫌われたらどうしようかと思った」

 

二人は最初はぎこち無かったが話し出すと次第にいつもの調子を取り戻していた。

 

「私がそんな狭量な女に見えるなら嫌いかな~何て……」

 

「あ~あ、キリト~俺直葉にフラれた~」

 

「だぁ~、抱きつくなよもう」

 

直貴が突然和人に甘えだし、和人は何故か満更でも無さそうだった、それを見た直葉は気づいてしまった。

 

「これは……」

 

「気づいてしまったのね、直葉ちゃん」

 

「そうなった以上はもう後には引けないわ」

 

「貴女もナカーマよ」

 

「え?」

 

気がつくと、幸穂、明日奈、冬の三人がそばにいた。

直葉と三人は同じ感覚を味わった同士だったのである。

こうして新たな同士を得て彼女たちの勢力は拡大した……。

 

 

その一方で、直貴はエギルにとある相談をしていた。

 

「実はさ、最近<真っ赤なサンタ>から早めなクリスマスプレゼントを貰ったんだが……」

 

「は?なんだそりゃ……<ザ・シード>?」

 

「こいつをさ、ネット上で無料配布したいんだが……頼まれてくれるか?」

 

ザ・シードとは、コンパクトなサイズのVRMMORPG作成・制御用のフリーソフトらしい……つまり、VRMMOの種なわけである。

直貴は、これが拡散すればもっと多くの人々にVRMMOの楽しさを知ってもらえると考えたのだ。

それに恐らくだが、<真っ赤なサンタ>の願いもこれのはずだと思うから。

 

「ああ、良いぞ……ただしこれからもウチを贔屓にしてくれよ」

 

元商人なだけあって、エギルはこう言う所はちゃっかりしていた。

 

「ま、言われなくてもそのつもりだったが……そうするよ」

 

直貴はそう言って笑った。

 

「イノセンスく~ん!一緒にお酒飲も~♪」

 

「アリシャ、彼は未成年なんだぞ?」

 

「まあ、こんな日くらい無礼講で良いではないかサクヤ」

 

此方では領主二人とユージーンが酒を飲んでいた。

 

「……まあ、約束ですから少しくらいなら」

 

「お、悪だねぇ♪でも頑張ってるんだからお酒の一杯くらい飲ましてやりたいのが人情!」

 

「全く……ならば私も混ぜろ、彼と酒を酌み交わしたい」

 

「俺も混ざるぞ、イノセンスよ何が飲みたい?」

 

「じゃあビールで」

 

「「「お~、イメージぴったり」」」

 

「……それはそれであんま嬉しくない」

 

直貴の言葉に三人はドッと笑った。

それを横目に木綿季、珪子、藍子は直貴の話題を話していた。

 

「お兄ちゃんってSAOでも凄かったんだ」

 

「そうですよ、群がる敵と女の子を千切っては投げ千切っては投げ……!」

 

「……かなり語弊があるような言い方なのに、強ち間違って無いのは……何でだろうな」

 

珪子の言葉にため息を吐く藍子。

 

「……これ以上ライバル増えたら不味いよ……」

 

「他の皆は警戒心が無さすぎますから、私たちがちゃんと良く見てないと!」

 

「その通り、ボクたちがお兄ちゃんを守ろう!」

 

二人が盛り上がっているなか藍子は思う。

 

「絶対無理だな……」

 

彼、彼女らのドンチャン騒ぎは夜更けまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の年の四月、ALO解禁の知らせが届く。

ザ・シード製の万全を期した体制で運営されているこのALOなら誰もが安心してプレイできる。

キャラは以前のデータで出来るため、古参のプレイヤー達も楽しんでいる。

 

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!こっちこっち!!」

 

「ははっ、もうユウキ引っ張らないでよ!」

 

「元気があって良い事だ」

 

久方ぶりのALOにはしゃぐユウキ、それに連れられ笑うラン、二人を眺めながら微笑むイノセンスがスイルベーン周辺を飛んでいた。

ランはSAOデータをコンバートしつつ、種族はユウキと同じインプを選んだ……双子のせいかパッと見瓜二つになってしまった。

 

「お~い!イノ君!」

 

「サチ?それに皆もきたのか?」

 

後ろからかけられた声に反応すると、フレンド達が勢揃いで飛んできた。

 

「ああ……その様子だと今日のアップデート告知しっかり見てなかったな?びっくりするぜ、多分」

 

「? そりゃ、どう言う」

 

「イノセンス!あれ!」

 

「お兄ちゃん!」

 

ユウキとランが突然叫ぶ、その視線のさきにあるのは……かつて見た空に浮かぶ巨大な城だった。

 

「つくづく縁があるなぁ……あれには」

 

「先に行ってるぞ、イノ!!」

 

「わわ!キリト君!?」

 

ボンヤリ眺めていると、キリトがアスナを抱え飛んでいった。

 

「お兄ちゃん!ボクも!」

 

「むっ、なら私にも!」

 

「……じゃんけんで勝った方が前、負けた方が後ろな」

 

イノセンスがこう言うと直ぐ様二人はじゃんけんを始めた。

 

「勝った!お兄ちゃんお姫様抱っこ!」

 

「つ、次は勝つんだからな!……背中失礼する」

 

「っしょい、行くぞ……しっかり掴まれよ!」

 

ユウキを抱き、ランを背負って飛ぶ。

普通は速度がかなり遅くなるが、本能の牙を発動すれば速度が制限されない。

イノセンスは向かう、かつて75層で終わってしまったあの世界へ。

 

「今こそもう一度!今度は全部制覇してやるよ!アインクラッド!!」

 

「いっけー!お兄ちゃん!!」

 

彼の戦いは、まだ序章に過ぎないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

第二章<フェアリーダンス>……完。




第二章終了ッッ!!
本当は昨日投稿するはずだったこの話。
しかし、リアルの事情には勝てなかったです(クヤシイ

第三章からはGGOを舞台にしようとしています、ただ最初や合間にリアル描写を入れますので、三章がかなり長くなる事請け合いでございますが……頑張ります(笑)
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