ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
当時は意味が良く分かってなかったのですが、知った時は確かに剣道にぴったりだなと思いました。
ALOケットシー領首都<フリーリア>。
海に囲まれたこの場所は観光地としては娯楽に富み、多くのプレイヤーが実際に海外に行くのは難しいからとここに来るのだ。
以前イノセンスとユウキが見に行った<テイミング・レーサー>の他にも、欲望と金が渦巻く<地下街カジノ>や、普段じっくり見れないモンスターを眺められる<魔物園>など多岐にわたる。しかし安定した人気を誇るのは、リアルにもある綺麗な海が思う存分に楽しめるプライベートビーチだ。
「いや~夏だなぁ……」
強い日差しに目を細め、イノセンスは笑う。
現在彼は白に黒のラインが入った海パンでプライベートビーチに来ている。
「よう、イノ!……相変わらず凄い肉体だな……」
「単純に細身な俺やキリト、ガッチガチの筋肉のエギルとは全然ちげぇ~からなぁ」
「正に理想の肉体だな、そいつで一体何人落としてるんだ?」
「前二人は良いけど、エギル……てめぇはダメだ」
今回はアリシャ・ルーからの誘いで、フレンド達が集められていた。
キリトはやはり黒一色。
クラインは赤。
エギルは緑……のTバックの水着を着ていた。
「だが、イノ……それに魅せられた女性プレイヤーも実際結構多くいると思う……俺が女だったら絶対惚れてる自信ある」
「強そうとか男らしいとか、筋肉はモテるポイントだかんなぁ……俺もジムとか通うかなぁ……」
「お、お前らまで……」
キリトはさりげなく爆弾発言をかまし、クラインは下心見え見えの考えを漏らしていた。
イノセンスが項垂れていると、女性陣がやってきた。
「着替えて来たよ」
「これちゃんと巻けてるかな?」
「バッチリです!」
「もう少し露出した方が良かったかな?」
「いやぁ、変に出しすぎても露骨になるかも」
「今日は人間サイズで参戦します!」
サチは水色のワンピース水着。
アスナは白に赤のラインのビキニに花柄のパレオを巻いている。
シリカはピンクのフリフリが付いた白のガーリービキニ。
トトは黒に黄色のラインのビキニ。
リズベットは白に茶色のラインのビキニにショートパンツ。
結は定番なスクール水着着用。
「水着着るなんて、いつぶりだろう……」
「なら、今日は思う存分楽しもう」
「またサイズ上がってた……」
「それは良い事じゃないか」
「あたしなんて、もう諦めてるのにぃ~贅沢だぞぉ?」
ユウキとランはお揃いで紺に赤のリボンが付いたセパレート水着。
リーファは白に黄緑のラインのビキニ。
サクヤは緑の競泳水着。
アリシャは黄に茶のラインがビキニ。
全員が一斉に並ぶと壮観だった。
「ヒャッホー!水着最高!!」
「「「テンション上がりまくりだな、おい」」」
イノセンスはある種慣れで、キリトとエギルは既に愛する人がいるため、クラインほどの上がりようではなかった。
「キリト君、行こ?」
アスナはキリトに手を差し出す。
キリトはその手を握り走り出す。
「お先!」
「おう!行ってこい!」
キリトに手を振るイノセンス。
ふと気がつくと周りを囲まれていた。
「……あれ?なにこれいじめ?」
「そんなわけ無いでしょ?ほら、行くよ!」
「お兄ちゃん!一緒にビーチバレーしよ!」
「実はここに手頃なスイカがある……どうだ?」
「イノセンス君、オイル塗りお願いできないか?」
「ここは、まず普通に水遊びでしょ!」
皆から色々と誘われ悩むイノセンス。
すると結が近づいてきて手を引く。
「パパ……一緒に砂のお城作りたいです……」
「……すまない、結を優先する」
イノセンスの答えによって敗北する一同。
いかに魅力的な女性陣でも愛娘には勝てなかったようだ。
「出来ましたね」
「ああ、これは芸術だな」
「なぁ、イノに結ちゃん……なんで俺が城の一部になってるんだぁ?」
二人の努力により確かに城は完成したのだが、城のパーツとしてクラインが組み込まれていた。
「いや、なんかクラインって皆ね尻に敷かれてるイメージがあってつい」
「つい、じゃねぇよ!掘り出せ早く!」
「せっかく出来たお城さん、壊すんですか……?」
イノセンスの言葉に怒るクラインだが、それを見た結がしょんぼりしてしまったので慌てて否定する。
「あ、いや、大丈夫!壊さなくて良いよ!おれぁ大丈夫だからよ!」
「そうなんですか?良かったです!」
「流石クライン、懐が広いな」
「これは、あくまでも結ちゃんのためだかんな?」
クラインはそう言って城に甘んじた。
「さてと……俺はそろそろ他の所でも……あれ?」
イノセンスは移動しようと周囲を見渡すが、一人見当たらない事に気がつく。
「……やれやれ、本来探すべき奴はまだ気がついて無いみたいだし……探してきますか」
イノセンスは目的の人物を探すため駆け出した。
「メン!メン!メェーン!!」
岩がいり組み出来ている空洞の中で、リーファは自らの長刀で素振りをする。
「……ふぅ、やっぱり……ダメかな……」
自分の中で納得していないのか、ため息を吐く。
「何がダメなんだ?」
「えっ!?……イノセンスかぁ、びっくりさせないでよ」
いつまにか後ろにいて、声をかけたイノセンスにリーファは頬を膨らませて拗ねる。
「いきなり声かけて悪かったよ、それで?」
「……ん、あんたには話そっかな」
イノセンスになら話しても大丈夫かと考え、リーファは今の自分の悩みを話す。
「実はあたし部活でさ、一年なのにレギュラーに選ばれちゃってね……」
「おお、喜ばしいことじゃないか……中学最後にベスト8まで残った猛者だけあるな」
リーファこと直葉は去年の夏、キリトへの恋に惑わされながらでもベスト8に入った、レギュラーになるのは至極当然だとイノセンスは思う。
しかしリーファは首を横に振る。
「最初は嬉しかった……けど周りから沢山の期待されて、稽古してて思ったんだ……私は皆の期待に応えられるような力はないって」
リーファは神妙な面持ちで続ける。
「他のレギュラーの先輩方は皆三年生……あたしより経験豊富で強いの、他にも三年生がいたはずなのにレギュラーになっちゃったあたしは……正直自信無くした……」
「……ふむ」
「ねぇ、あたし何がいけないと思う?最近ずっと伸び悩んでて……焦っても焦っても周りとの差が埋まらないの……悔しいよ……あたし……」
悔しさが表情に滲み出るリーファ、相当自分を追い詰めてしまっているようだ。
それに対してイノセンスはこう答える。
「当たり前だろ」
「……はい?」
「そんな事になったら、焦るのも悩むのも当たり前だ……ましてリーファは若いんだから尚更な」
イノセンスはリーファの今の状態を肯定し、さらに続ける。
「だが、リーファはちょいと自分を追い込みすぎだ……それじゃ出せる実力も出ないぞ?」
「そう……なの?」
「そうだ、リーファはどうもそのせいで剣に迷いがあるように感じる……だから稽古でも実力が出せなくて周りより自分が弱いって思い込んでるんだ」
イノセンスはリーファに近づき突然拳を放つ。
「!」
咄嗟に反応したリーファは長刀で拳を受け止める。
「な、何を……」
「今、何も余計なこと考えず攻撃を防いだろ?……つまり、これが今のリーファに求められてるものだ」
「……ああっ……」
「悩もうが、考えようが良い……だが相手と剣構えてやりあってるのに余計なこと考えたり悩んだりして迷ったら、剣も鈍る」
イノセンスは笑い、リーファの肩に手をポンと置く。
「お前にこの言葉を送る、<一意専心>……他に心を動かされず、ひたすら一つのことに心を集中することって意味だそうだ……」
「一意専心……」
「それさえ覚えときゃ県予選落ちは100パーないだろ、お前は強いんだからさ」
そう言ってイノセンスは微笑む。
リーファはそんな彼を見て今まで入っていた力が抜ける。
「おっとあぶねぇ!」
「わっ」
倒れそうになってイノセンスに抱き止められるリーファ。
彼女は自分でも驚いていた。
「ったく、毎度世話が焼けるお姫様だ……」
「イノセンス……」
彼には何度もこうやって救ってもらった、悩みがあれば聞いてもらい、ピンチの時は駆けつけて守ってくれる。
今だってそうだ、彼はいつも自分のヒーローであり続けてくれている……お姫様を救う王子様でいてくれる。
気がつけば無意識に彼の身体に腕を回し抱き締めている。
彼の逞しさは安心できる……そう、いつもそばにいてくれたら良いのに。
「……えっ?やだっ、あたし……」
「? どうした?」
先程考えた内容に顔が異様に熱くなり、いつも以上に彼と接するのが恥ずかしくなる。
リーファはかつて、キリトに抱いた経験のある、だが異なる部分もある感情を彼に持った事を自覚する。
「あのさ……もう大丈夫だから、離れよ?」
「そうか、なら……」
イノセンスが離れるとリーファは少し寂しく感じた、より自分の感情に自覚を持つ。
「あのさ……あたし、頑張る……ベスト8なんかじゃなくて、もっともっと上目指す!そして、あんたがあたしを助けてくれた分……絶対報いるから!」
「リーファ……そうだ、その粋だ」
リーファの言葉を嬉しく思い、イノセンスはサムズアップする。
リーファは続ける。
「だからさ……その……力分けて欲しい」
「ん?そりゃどういーーーー」
イノセンスの質問は最後まで紡がれる事はなかった。
リーファが彼の唇を奪ったからだ。
両頬を手で挟まれながら、イノセンスの唇を貪るリーファ。
「ん……ふ……ちゅ……ぷぁっ」
「ぷぁっ……はぁ……はぁ……リーファ?……」
まさか、唇を奪われるとは思っていなかったイノセンスは息を切らせながら彼女を見る。
リーファはとても満足そうな笑っていた。
「ファーストキスだかんね?」
「……俺もだよ」
イノセンスはやれやれ、と言った表情になる。
「期待してな、絶対度肝抜いてやるから」
「既に度肝抜かれた気もするが、ここまでしたんだし期待するぞ?」
「まっかせといて!!……あ、あとこれからはスグって呼んでくれると嬉しいかなって……」
「ふふっ、分かったよスグ」
自分で言ってもじもじしだす彼女を、優しく撫でながら言う通りにするイノセンス。
二人はしばらくそこから動かなかったそうな。
一面に広がる荒野でモンスターと戦う少女が二人。
一人はアサルトライフル<AK-74>を装備しておりモンスターに向かって掃射する。
「おらおらおら!!」
しかし、このモンスターには効きづらいのか、あまりダメージが入らない。
「くそが!」
「下がって、ナッチ!グレネードを使うよ!」
もう一人の少女は、ショットガン<イズマッシュ・サイガ12>を装備し、グレネードを多く持っていたため、モンスターに向かって投げる。
<ナッチ>と呼ばれた少女は急いで離脱する。
途端にグレネードが爆発し、辺りに土煙が舞う。
「これで、くそ固かったこいつも御陀仏……」
「! まって、普通に生きてる!」
「! マジだ!しかもほぼ無傷とか!マジくそ!」
敵モンスターはアルマジロの様にまるまり、爆発から身を守ったのだ。
「たぶん、弱点は貫通とか、光弾だね」
「どっちもあたしら無いじゃん!詰んだ!」
敵モンスターが突撃する構えにはいる。
二人は吹っ飛ばされる覚悟を決めるが、突如凶弾がモンスターの頭部を襲い、モンスターが爆散する。
「えっ?どこから?」
「……狙撃ね……そこにいるんでしょ!?」
ナッチが付近にあった崖に声をかけるとまた一人の少女が現れた、彼女はスナイパーライフルを背中に背負っていた。
「あんたは?」
「シノンよ、貴女達は?」
「……ナッチよ」
「滝30(サーティー)です」
互いに名乗る少女たち。
シノンから二人に話したかったことを切り出す。
「そう、私ただ狩りに来たわけではないの……貴女達にお願いがあって」
「お願い?」
「なんですか?」
疑問を抱く二人にシノンは言う。
「一緒にチームを組まない?」
後にこの三人が作ったスコードロン<ファントム・バレッツ>はGGO界でよく知られる様になるのだった。
VFK(バーチャルファーストキス)はなんとリーファの物になりました。
ついに、直葉もはっきり参戦し、GGOも段々準備が進み、近づく本編……書いてる私も楽しみです(^ω^)