ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
そして、彼はあれの存在に気づく。
いよいよ夏休みも最後に迫り、焦る人が増えだす。
最後の夏休みを楽しむため、今回はリズベットこと篠崎里香が夏祭りに出掛ける事を提案した。
多数決をするまでも無く、全員一致で行う運びとなった。
「夏祭りか、SAO、ALO共に参加したけどリアルではマジで久しぶりだな」
彼のリアルの夏祭りは幸穂と一緒に行ったのが最後で、去年も一昨年も行っていなかった。
故に彼は今日を楽しみにしている。
「また、女の子たちタブらかすんだろ……夜は背後に気を付けるんだな」
「こええこと言うなよ、つか襲撃かけんの主にあんただろが……行ってきます!」
「は~い!気を付けてね!」
親に見送られ直貴は待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所では元SAOのメンバーに木綿季と直葉が加わっている面子が談笑しながら待っていた。
「すまん、遅れたか?」
「あ、直貴君!」
「遅れてないわよ、私たちが早く来すぎただけだから……ほら、稲生君」
幸穂と冬から手が差し出される。
しかし、そこに割り込む二人がいた。
「お兄ちゃん!出来ればボクの車椅子押してくれると嬉しいな!」
「そうですよ直貴さん!ここは労りの精神を持って木綿季ちゃんを押すべきです!」
それは木綿季と珪子の2名であり、直貴と同年齢かつ付き合いの長い幸穂や冬に主導権を握らせまいと手を組んでいた。
「二人とも……」
「……あくまで邪魔立てするなら容赦はしない」
「くっ!相変わらず凄いプレッシャー!でも!」
「負けませんよ!お二人には!」
四人は火花を散らす、譲れない思いがそこにはあった。
が、そんな事をしていれば。
「直貴……手握ってくれないかな?」
「いつも遠慮してんだし、たまには良いわよね」
「ん、じゃあ」
直葉と里香に掠め取られるのは必定だった。
「「「「ーーーー」」」」
「直葉ちゃん、いつの間に直貴君の事好きになってたんだ!」
「俺も直貴なら安心して任せられるかな、ただ兄貴分なのに義弟になるけどさ」
明日奈は驚き、和人は微笑みながら見守る。
こうして、主導権が誰か決定してから夏祭りが始まった。
「それでさ、決勝の大将が凄い強かったんだ!でもALOでの経験生かして全開で挑んだらなんと勝てちゃったのよ!」
「相手もまさかゲームでお前が強くなってるとは思うまいよ」
「あたしはゲーム内のことが生きる場面あんまないから羨ましいかもな~それ」
直葉はなんと快進撃でインターハイ団体で優勝を決め、個人でも準優勝と凄まじい成績をあげたらしい。
直貴は嬉しそうに語る直葉を見て微笑み、頭を撫でる。
「良く頑張ったな、スグ……俺は誇らしいよお前が」
「うぇっ、えへへ~参ったなぁ…♪」
「……ますます羨ましくなったわ、こんちきしょう、寧ろ妬ましい」
撫でられ喜ぶ直葉を見て、やはり嫉妬してしまう里香。
彼女もSAOで直貴に惚れ込み、いつか思いっきり甘えたいと願っていたが……増えるライバルに今まで出遅れてしまっていた。
今日提案したのも、そのチャンスだったから。
里香は直貴の腕に抱きつく。
「おうっ?……里香?」
「う~……私だって……私だって……」
「……ほれ」
直貴は里香を一旦腕から離し、肩を抱き寄せる。
「ふわぁっ!?」
「……昔、こう言う事やったよな……そう言えば」
「え?……あぁ……あの時」
アインクラッド第55層にて、西の山を登っている時の事を直貴は言っていると里香は理解する。
「俺はあの時の事今でも覚えてる、大変だったけど……楽しかったんだ……」
「な、直貴……」
「それにお前が金鵄を打ってくれてなかったら、今頃俺はここにはいないから……だからさ、いつでも甘えたいってんなら甘えてくれよ……遠慮なんかせずさ」
直貴が里香を抱き締める手に少し力が入る。
より強く肌の暖かみを感じて里香の胸が高鳴る。
熱の篭った視線で直貴を見つめる。
「じゃ、じゃあ甘えちゃおっかな!今日とか特に!」
「おう、そうしてくれ……んじゃ二人はどの屋台いきたい?」
「あたしはチョコバナナ!」
「私は焼きそばで!」
「おう、じゃあその二つから行くか」
「「おー!」」
「(直貴が取られちゃうのはイヤだよ)」
「(おかしい、こんなことはあってはならない)」
「(直葉さんが今は敵……強すぎるっ!)」
「(どちらも胸囲の戦闘力ですが、負けるわけには……っ)」
三人は屋台に向かって仲良く歩き出した。
後ろで歯噛みしながら見守る4つの影があったりしたが。
「やっぱ、射的は苦手なんだよな……」
「和人くん、私に任せて!」
そして、夫妻はいつも通りであった。
あの後、他四人に乱入されたり、エギルが出店をやっていたりしたが夏祭りは問題なく終わった。
帰ってきた直貴はシャワーを浴び、ネットを検索する。
「VRMMOは常に増え続けてんなぁ……見たことないのかなり増えたし」
無料配布はかなりの効果だったようで、今なお新しい世界が生み出されているのだと思うと感慨深かった。
ゲームを次々検索していき、ランキング上位の作品を見る。
「ん?これとか今流行ってるのか……<ガンゲイル・オンライン>?」
ガンゲイル・オンライン、通称GGO。
発売してからまだ8ヶ月ながらかなりの人気を誇るVRMMORPGらしい。
テイストとしてはFPSのそれもあり、<ゲームコイン現実還元システム>が特に異質な部分と言えた。
「銃で戦うVRMMO……」
それを見て思い出す、詩乃の言葉。
<希望が見えたの!このまま続ければいつか……克服出来るかもしれない!>
「可能性はかなり高いよな……これ」
直貴は現状これが彼女が努力しているものなのではないかと考える。
リアルではなくVRMMOなら、もしかしたらとは直貴も思っていたからだ。
「月に3000円の課金だが、こいつのシステムと……伯父さんに頼んで土日とかにバイトもらえばいけそうだな」
彼は決意を持ち立ち上がる。
「行こう、GGO買いに」
彼は詩乃を案ずるが故に、今ヤマ電に向かった。
暗い入り組んだ町の中、一人の少女が潜む。
少女は黒いコンバットスニーキングスーツで全身を隠し、仮面を着けており、その正体はうかがい知れない。
少女が辺りを探ると、銃を持った男達があちらこちらで周囲を警戒している。
「……」
無言で腰に下げた二挺のハンドガン<M1911>通称<コルトガバメント>を左右の手に持ち不意に飛び出す。
驚いた相手の一人の額に空中で体勢を捻りながら銃弾を叩き込む。
「出やがった!<猟犬(ハウンドドッグ)>だ!」
「ぶち殺せ!」
サブマシンガンを乱射する相手に対して、<猟犬>と呼ばれた少女はニヤリと笑う。
その場で地面を蹴り飛び上がり、さらに壁を蹴って敵の射角から外れ、自らは一方的に撃つ。
壁げりを利用し、立体的な動きで敵を翻弄しながら的確にヘッドショットをする猟犬に男達は恐怖する。
「は、話で聞くより人間染みてねぇじゃねぇか!」
「ギャア!」
「! くそったれが!」
消えていく仲間達をただどうすることも出来ない男は、その場から離脱を図ろうとするが、その前に猟犬が彼の前に躍り出る。
「……バケモノか……」
そう言った時には既に額に弾丸を撃ち込まれていた。
倒れた男が最後に見た物は、仮面を着けた少女の笑い顔だった。
一方、総督府では第二回BoBの結果が出ていた。
優勝はゼクシードと呼ばれるプレイヤーで、当人は<敏捷力>が最強と周囲に噂を流しながら、自分は別のステータスをあげ、さらにGGO内でレア武器の<XM29 OICW>を用いてBoBを制覇したため、かなりのプレイヤーから反感を買ったらしい。
「やっぱ腹立つわねアイツ、言う通りにしなくて正解よ」
「私も、ナッチに合わせて良かったよ……シノンちゃんは惜しかったね」
「……慰めはいらないわ、負けたのは事実だし……次回こそ……」
ナッチと滝30は予選で敗北したが、シノンは決勝まで残った物の経験の差や武器の性能で惜しくも敗れてしまった。
「やぁ……シノン」
「ん?ああ、シュピーゲル……貴方も残念だったわね」
シュピーゲルとはシノンこと詩乃をGGOに誘った<新川恭二>のアバターである。
「ああ、悔しいよ……特にゼクシードの奴にまんまと踊らされたのが特に……!そのおかげで僕はいま伸び悩んでるんだから」
憎しみに顔を歪めるシュピーゲルにシノンは強く否定する事が出来なかった。
「……強くなるしかないのよ、貴方も私も」
「シノン……うん、僕頑張るよ」
シュピーゲルの様子を見て大丈夫そうだと安堵するシノン。
しかし、彼の中では別の感情が沸き上がっていた。
「(そうだよねシノン……いや詩乃、君の様に人を殺せるくらい強くならなきゃいけないよね……ああいう悪い奴をぶち殺せるくらいに……)」
いままさに事態は悪い方向へと向かっていた。
遂にGGOに介入することに、しかしまだデス☆ガンが出てきてないのでオリジナル回となります。
ゼクシードの死によって物語が始まるので、彼が死ぬのは確定なんですよね(笑)