ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
イノは見た目が小学生な分イノセンスより旗建能力は弱いですが、当たり判定が小さいため戦闘では存外脅威です。
ALO内央都<アルン>、そこでイノセンスは仲間達から視線を浴びていた。
理由は最近ALOへのログイン率が大きく減少しているため、また黙って一人で事件に首を突っ込んでいるのではないかと疑われているからだ。
「は、白状してください!」
「事と次第によっては、貴方を止めなくてはならない」
「私らもいるんだからさ……もう少し頼ってくれない?」
「お兄ちゃんは、ボク達といるのが嫌になったの?」
「ちょっと、ユウキを悲しい顔にさせないで」
「み、皆落ち着いて……まだ何か決まった訳ではないんだし」
「そうそう、イノセンスをもう少し信じよう?」
「パパ、皆さんはああ言ってますから……教えてあげたらどうです?」
殆どのメンツがかなり疑っているのも、前科がある故の裏付けが大きかった。
結に促され、頷いたイノセンスは全員を見渡す。
「とりあえず皆に心配かけてしまったみたいだから謝る、すまなかった……ただ俺は別に何かの事件に巻き込まれているんじゃなくて、個人的に気になったゲームをプレイしてるだけなんだ」
皆に謝罪し、自分の現状を説明するイノセンス。
その言葉に一同安堵する。
「良かった~お兄ちゃ~ん!」
「パパ~!」
「お~よしよしすまんすまん」
抱きついてきて甘えるユウキ(妹)と結(娘)。
「それでイノ、何てゲームをやってるんだ?」
「ああ、それはガンゲイル・オンラインってゲームだ……銃で戦うVRMMORPGなんだ」
「何か殺伐としてそうだね、そのゲーム」
キリトの質問に答えを返すと、アスナは想像したGGOにごくりと唾を飲み込む。
「まあ、遊びでやってない奴が多い場所だから大体あってるかも……俺は遊びだけど」
「お前ほどVRMMOにダイブしてる奴なら、イヤでも遊べるだろうな」
イノセンスの言葉にキリトは苦笑する。
「そう言うことなら私たちはとやかく言わないよ」
「あんたのゲーム好きは、あたしら良くわかってるからさ」
「サチ、リーファ……」
そう言って微笑む二人に、心から感動するイノセンス。
ふと、キリトがイノセンスの肩を抱き締め後ろに方向転換する。
その顔はかなりニヤニヤしていた。
「んで、最近スグと距離近いよな……何かあったろ?」
「! いや、スグとは別に」
「スグ?そうか……あだ名で呼ぶ程の仲になったか……感慨深いな」
「しまった」
女性陣の視線がイノセンスとリーファに突き刺さる。
リーファは全く動じていないが。
「どう言うこと……?」
「教えて欲しいな、リーファさん」
「……たのよ……」
かつてのメインヒロイン二人の質問に対して、リーファは爆弾を投下する。
「ファーストキスもらったのよ!……バーチャルダケド」
一瞬にして場の空気が凍りつく。
女性陣各々が自らの得物を抜く。
「覚悟はおありなんですね」
結は真剣な表情で聞く。
リーファはニヤリと笑う。
「上等!全員纏めて相手してあげる!インターハイ準優勝の力、見せてやるわよ!」
そこにはラスボスがいた、イノセンスに好意を抱くものにとっては間違いなく彼女は今ラスボスだった。
リーファの叫びに合わせ、彼女たちは飛びかかる。
迎え撃つリーファには確かにそんな風格があった。
「いつかこんな日が来るとは思ったが……凄まじいな」
「思いっきりキリト君が引き金引いたんだけどね」
勃発している戦争をキリトは見つめ、アスナは苦笑する。
イノセンスはどうしたら良いか、本能の牙を使っても分からなかった。
「……どうすれば……」
「イノ、行かなきゃいけないんだろ?行ってこいよ、GGO」
悩むイノセンスにキリトは声をかける。
「しかし、これほっといて行くのは……」
「大丈夫、キリト君が引き金引いた分、責任はキリト君と私が負うから」
「アスナ……ありがとう」
「決めたでしょ、一緒に背負うって……」
キリトとアスナは何だか甘い雰囲気だった。
それを見たイノセンスは察した。
「あっ……任せた……」
イノセンスはアルンのレンタルハウスでログアウトした。
GGOを始めてから10日が経っていた。
あの後から、イノとして表だってPvPににも参加するようになり、その身体に不釣りあいな実体大剣を背負った対人戦闘の鬼の紅い小兵の噂は瞬く間に広がった。
「さてと……メール来てんな」
ログインし、メールを確認する。
二件あり、一つ目はイナリから、二つ目はシノンからだった。
イナリからは、今日は用事のため早めにログアウトしたから依頼はないと言うことが書いてあり。
シノンからは、話があるから来て欲しいと場所のデータも添付されていた。
「了解……んじゃ行きますかね、シノンの所に」
イノは銃弾専門店で、イングラム用の銃弾.45ACP弾と予備の9x19mmパラベラム弾を購入してから指定された場所へ向かった。
グロッケン市街の酒場の一つ<ギアーズ>でスコードロン<ファントムバレッツ>の三人は寛ぎながら、シノンのおすすめのプレイヤーを待っていた。
「にしてもさ、シノンが仲間として信用をおける他プレイヤーがあたしら以外にいるとはね」
ナッチは赤いツインテールを揺らしながら、AK-74の手入れをしている。
黒のコンバットスーツで、シノンに負けず劣らず露出が多く周囲のプレイヤーの視線をよく集めている
「私も少し驚いたかも、シノンちゃんってあんまり人と関わりたがらないから」
そう言って滝30は自分の青い右前髪を弄る。
白のコンバットスーツはドレスタイプで、露出は少ないが女性らしく清楚なイメージがある。
「好き勝手言うわね、まあ確かに得意ではないけど今回誘ったあの子は間違いなく強いわよ」
二人の言葉に自信をもって二人に返すシノン。
「あの子ってことはまた女子か!シノンは女の子引っ掛けるの上手いわね!そっちの気あるんじゃないの!?」
「ええー!そうなの!?」
ナッチは笑って冗談を言い、滝30が半ば本気にする。
その声に周りが反応しだしたのでシノンが焦る。
「ちょっと、声がでかい上にそうじゃなくて……」
シノンが否定しようとしたタイミングで酒場の扉が開く。
三人がカウンターから目を向けると小さな男の子がいた。
「あ、いましたねシノンさん」
彼はシノンに気付いて、とことこと近づき挨拶をする。
「こんにちは、初めましてイノと申します」
「……イノ?」
「か、かわいい~!シノンちゃん!こんな子どこで見つけて来たの!?」
滝30は子供好きなのか、イノを見て直ぐ様駆け寄って抱き締める。
「10日ぐらい前に、街角の武器屋で会ったの……それからフレンドになった」
「へぇ~」
「……あの、くすぐったいです」
「あ、ごめん、ついね、許してね」
イノの言葉に焦って離れる滝30。
一方でナッチはずっとイノを訝しげな目で見ている。
「あのさ……その名前、茶髪茶瞳のアバター……まさかあんた……」
「えっ?」
イノはヤバいと感じた。
もしかしたらこの少女は、イノセンスをよく知っている人物で、故にバレてしまったかもしれない。
しかし、その先は少しズレた言葉だった。
「イノセンスさんに憧れてるわけ!?あははっ、面白すぎるわ!」
「あ、はい!実はそうなんです!」
ナッチはどうやら違う解釈をしたようだ、イノはとりあえず相槌をうち、安堵した。
「さあ、そろそろ出よ?周りの迷惑になるし」
「そ、そうですね……行きましょう」
「うん、行こう」
「はいはい、行きますよ」
シノンの言葉に三人は同意し、ギアーズを後にした。
グロッケンの地下には迷宮のダンジョンが存在し、今回はここの探索のために万全を期すためのパーティー集めとしてイノはよばれたらしい。
「まあ、その子がどんな子かは分かったけどさぁ……正直不安なんだよね、本当に強いの?」
「ナッチ、失礼だよ!イノ君は私たちの為に参加してくれてるのに!」
ナッチはいまだ信用はしていなく、完全に嘗めきっており、それに対して怒る滝30。
「分かったわよ、言い方悪かったからそこまで怒んないでよショタコン」
「ショ!?ち、違うよ!私は……」
「二人ともそこまでにして、敵が来たわ……北西からよ」
シノンが指摘した方角から、石像のモンスター<ガーゴイル>が歩いてきた。
「出やがったわね、蜂の巣にしてやるわ」
気持ちを切り替えたナッチはAKを構える。
しかし、その前にイノが駆け出していた。
「ちょっ!待ちなさい!」
「イノ君!一人で突っ込んだらダメ!」
二人は叫ぶがイノは止まらない。
腰のホルスターからイングラムを取り出し片手で撃ち牽制する。
ガーゴイルは実弾に強く、あまり大きなダメージにならない……ガーゴイルは持っている斧槍でイノに襲いかかる。
その時既に左手でメニューを操作していたイノの背中に大剣が現れる。
「! あの大剣、草薙の字……!」
「イ、イノ君が噂の紅い小兵!?」
イノは草薙でガーゴイルの斧槍を弾く。
「シノンさん!」
「ええ!」
ガーゴイルは胸の中央のメダルがコアであり、シノンはそれをスナイパーライフル<FR-F2>の精密射撃で撃ち抜く。
「ギャワアアアオ!!」
ガーゴイルは文字通り砕けちり、光の粒子になった。
シノンは構えを解いたあと、二人をみる。
「まだ異存あるかしら?」
「「ありません」」
二人は即答した。
四人は歩きながら周囲を警戒しつつ会話をする。
「このダンジョンって特に特徴って無いんですか?」
初めてここに来たイノは三人に質問する。
「私らも最近来はじめだし、大した情報がある訳じゃないけど……たまにトラップがあるらしいわ」
「トラップ?」
「本来このダンジョンはね、階層を降りるごとに敵が強くなったり、貰えるアイテムやお金が良くなる……不思議なダンジョンみたいな仕様でね、自分たちのビルドや装備に合わせて調整しながら進むのがセオリーなんだ」
「ああ、なるほど……」
トラップの話題でこのシステム、イノは何がトラップなのか分かった気がした。
「それでトラップと言うのは、嵌まったら強制的に下の階層に落とされる物なんだけど……一気に深くまで落ちる事が大半で、殆ど死は免れないと言われているわ」
「やっぱりそうなんですか、それは恐いですね」
イノは苦笑する、他のダンジョンの時もトラップは恐ろしい仕様が沢山あったがここも大概なようだ。
「まあ、でも本当にごくたまにだから、そこまで深く気にすることないわよ!大丈夫大丈夫!」
そう言って、ナッチは笑うがその時カチンと言う音がした。
「は?」
「え?」
ナッチと滝30の下に穴が開いていた、どうやらトラップにかかったらしい。
「いやぁああああ!!」
「ひああああああ!!」
「! 二人とも!!」
「くそっ!!」
落ちた二人をシノンとイノは飛び込み追いかける。
深い深い落とし穴によりどんどんと奈落に落ちていく四人。
しかし、次第に下が見えてくる。
「ナッチさん、滝30さん、体勢立て直せ!」
「くっ!のおおおぉ!」
「フンギギッ!」
二人はSAO時代の事を意識し、気合いで受け身の体勢に持ち込む。
「うっ……これは……」
だがシノンはVRMMOはこのGGOが初めてであり、高所からの落下や受け身をとる事態にまだ不慣れであった。
「グッ!」
「フッ!」
「っと……!」
「ガハッ!」
そのまま地面に叩きつけられる三人、イノは綺麗に着地。
ナッチと滝30は受け身で衝撃を減らせたが、シノンはそのまま叩きつけられ勢いで跳ねる、その先の下にはまだこちらの存在に気づいていない巨大なモンスターが。
「オラァッ!!」
必死に手を伸ばし掴むイノ。
なんとかシノンは落ちずに済む。
「イノ君……!」
「! しっかり掴まってろよ!!シノンッ!!」
イノは本能の牙を使い、シノンを一気に持ち上げ抱き上げる。
何とか全員死なずにすんだ。
「……ふぅ……たくっ、三人揃って下手打ったらフォローが大変だぜ……」
イノはため息をつく。
それを見て、シノンは疑問を抱く。
「……もしかして、それが君の素なの?」
「え?……あ……」
必死だったのでつい素で喋っていたイノ。
その反応を見て三人は笑う。
「そう言う男らしいしゃべり方も、出来るんじゃない!あたしはそれ好きよ」
「それがイノ君の素なら、それで良いと思うな」
「二人と同意見よ……私もその方が、嬉しいかな」
「……そっか、皆がそう言うならそうするよ」
呆気にとられたが、イノはすぐに三人の意見を取り入れ切り替える。
「さてと……それは良いとしてあれをどうするかだな」
イノは下の巨大なモンスター、恐らくだがボスに目を向ける。
距離が離れているせいか、全く動いてこない。
「多分突っ込んだら全滅必死でしょうね」
「どうするの……?」
「……私がやってみる」
シノンは狙撃の体勢になり、FR-F2を構える。
敵の額を慎重に狙い、撃つ。
わずかにHPが減ったが、敵は反応しない。
「……根気との勝負ね」
「まさにスナイパーの真骨頂だ」
「シノン……いけるな?」
イノはシノンを信頼する、今この事態を変えられるのはシノンしかいない。
「……やって見せる」
シノンは気合いをいれ、再度構える……自分との戦いが始まった。
「ぬわぁぁん!見てるこっちも疲れたわぁ!」
「ま、まあこうして無事帰れたんだし、良かったじゃないナッチ」
あの後、ずっと手に汗握るスナイピングで何とかボスを倒したシノンは戦利品として対物ライフル<ウルティマラティオ・ヘカートII>を手にいれた。
「皆……私これでより頑張れる!……ありがとう、特にイノには感謝してる」
「うんうん、しっかり私らに貢献しなさいよ」
「こっちこそ、ありがとう……シノンちゃんがいなかったら全滅だったんだし」
「俺がやったのは軽い手助けと、シノンを信じただけさ……あいつを倒したのはシノンの実力だよ、強くてカッコよかった」
「!?」
ナッチはドヤ顔をし、滝30は礼を返し、イノはシノンの力を認めた。
その時のイノが直貴とダブって見え、シノンは驚くが、気のせいだと自分に断じる。
「……ありがとう、そう言って貰えて光栄だわ……」
そう言って微笑むシノンを見てイノは、何となくこう思った。
「(ヘカートって確か死の女神が元なんだっけか……我らの勝利の女神にはピッタリの装備だな)」
イノは彼女の今後を思い、相対するものを哀れんだ。
これからシノンはその力の頭角を表していくのだから。
シノンが、ヘカートⅡを得る話でございます。
対物ライフルには憧れます、なにせカッコイイですから(笑)