ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts-   作:新世界のおっさん

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しばらくぶりの更新。

滝30こと多木美恵メイン回。

彼女がショタコンっぽい理由が明かされます、意外と理由はシリアスだった。


ありがとう

 

GGOを始めてから20日目。

イノはグロッケン市街酒場<ギアーズ>にて悩んでいた。

 

「軽い気持ちで受けたが、これはソロじゃ出来ないクエストだな……」

 

GGOにおけるクエストは、固定のクエストNPC以外にも、酒場にランダムで貼られる<シャッフルクエスト>があり、指定されたモンスターを狩ったり、アイテムを一定数集めるなど、単純なクエストが貼られ、誰かが受けると一件なくなり別の一件が追加されるのだが。

しかし、たまにだが特殊な内容のクエストが紛れ込む時がある。

それは<エクストラクエスト>と呼ばれ、報酬が良質な事で知られる。

イノはその<エクストラクエスト>を運良く見つけ受けたは良かった……しかしこれの内容は一人では無理なタイプのクエストだったのだ。

 

「知り合い少ないのは辛いなぁ」

 

イノはそう言ってカウンターに項垂れる。

今の彼は傍目からすると勉強に頭を悩ませる小学生にしか見えない。

 

「どうしたの?イノ君、一人で」

 

「えっ?ああ、滝30か……」

 

そんな彼を見かねてか、たまたま酒場に来た滝30が話しかけてきた。

 

「あんま大きい声では言えないんだが、俺<エクストラクエスト>ゲットしたんだ」

 

「えっ!?……そうだったんだぁ、イノ君は運がいいんだねぇ」

 

<エクストラクエスト>と聞いて思わず声を上げてしまったが、その後は小声で微笑みながら、イノに話す滝30。

 

「だけどこれが一人じゃ無理なタイプのクエストでさ、ソロの俺は困ったって訳だな」

 

「あらら、なるほど……ならさ、おねえさんに任せてみない?私頑張ってイノ君のために働くよ!」

 

内容を話して再び項垂れるイノに、年上の余裕(アバター状は)で話す。

 

「え、良いのか?滝30はファントムバレッツでの活動ないのか?」

 

「今日はナッチがリアルの用事でこれないし、シノンは次回のBoBに向けて情報収集をしてるらしいの、だから私はフリーかな」

 

イノの質問にそう返して滝30は笑う。

 

「……なら、お願いしていいか?」

 

「うん、もちろん!そんな遠慮なんかしないでよ、もう!」

 

彼女は快く了承し、イノを抱き締め、撫でる。

滝30はおとなしめな良い娘なのだが、イノにたいしてはかなり積極的かつベタ甘なところがあり、彼はそこが少し苦手だった。

 

「お、おい、頼むからもう離れてくれ……見られてるから」

 

「えっ、ああ!ごめんね!ついやっちゃうの!」

 

周囲の視線が、明らかに生暖かいのに気づき、慌てて離れる彼女はイノに謝る。

普段は彼が女性をリードするのだが、どうにもイノだと彼女だけは無理なようだ。

 

「もういい、行こうぜ、クエストの場所が座標的に遠いから乗り物使うし、早めに出ないと」

 

「あっと、ま、待って!」

 

彼女にそう言って、イノは酒場を出る。

滝30も急いで彼を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

酒場を出た二人はグロッケンの駅から鉄道に乗り、途中下車してクエストの目的地であるダンジョン<死者の洋館>に来ていた。

名前の通り、アンデッド系モンスターが徘徊しており、毒や呪いの状態にかかりやすい危険な場所である。

 

「こ、ここはかなり雰囲気あるねぇ……」

 

「あんまり人気ない場所らしいしな、他のプレイヤー全然いないのがまたそれっぽい……」

 

今にも誰かの悲鳴が聞こえて来そうな場所であり、デザインが某ゾンビゲーを彷彿とさせる。

 

「クエスト始動キーは、協力者と一緒に二階にある不死鳥の紋章が入った扉を調べろとある……さっさと探さないとな」

 

「い、イノ君は恐くないの?如何にもで、出そうだよ!」

 

「(そりゃそんなのを恐がる時期、とうに過ぎてるしな)」

 

怖がりながら聞いてくる彼女に、イノは笑いをこらえつつ先に進む。

すると奥から、呻き声をあげながら<ゾンビ>の群れがやって来る。

 

「そい!」

 

イノはイングラムを構えて突撃、乱射して怯ませ草薙で首を撥ね飛ばす。

 

「い、イノ君だけ戦わせはしないもん!」

 

滝30もショットガン<イズマッシュ・サイガ12>を持ち、気合いで応戦、散弾の衝撃力でゾンビを吹き飛ばす。

音に反応したのか次々やって来るゾンビや紛れてくる<スケルトン>に対応しつつ、二人は階段に駆ける。

 

「情報不足で突っ込んだのがミスだな!サイレンサー必須だったか!」

 

「ど、どうするの!?」

 

「つってもな!入り口は反対だし、もう扉に駆け込むしかッ!……ちっ、もう追い付いてきた!」

 

『ウオアァァァァァ……!!』

 

二階に登ったが、今だついてくるアンデッド達にイノは武器を構える。

 

「滝30!不死鳥の紋章のついた扉探せ!!ここは俺が食い止めとく!」

 

「!? 無理よ!!イノ君を置いて逃げるのは嫌!!」

 

「んなこと言ってる場合か!!ここでどっちも捕まる方が面倒なんだ!!頼むから行ってくれ!!」

 

イングラムを撃ち牽制しながら、難くなに行こうとしない滝30に叫ぶイノ。

しかしここで、彼女は意味深な言葉を張り上げる。

 

「二度も貴方を見捨てるなんて!失うなんて!そんな事許せる訳無いじゃないの!!」

 

「えっ?」

 

彼女の言葉に反応し振り返った時、彼女が手に持っていたのはGGOでは大変高価な市販最強武器、ロケットランチャー<RPG-7>であった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

滝30は叫びと共にアンデッドの波に撃ち込み、全てを消し飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……助かった、感謝してる……だから泣くのは止めないか?」

 

「……ぐすっ……うぅ……」

 

二人はあの後、近くにあった部屋に入り、床に座り込みながら滝30はイノを抱き締めながら泣いていた。

 

「……俺が間違ってたらすまない……もしかして君は元SAOプレイヤーなんじゃないか?」

 

「! な、なんで!?」

 

イノの言葉に滝30は驚愕する。

彼は落ち着いた声で話す。

 

「似たような状況化で誰かを失うとなると、リアルじゃ考えにくい……となると、同じVRMMO……死んだら現実でも死ぬSAOに限定される……俺も元SAOプレイヤーだから分かるのさ」

 

そう言って滝30を見つめるイノ。

彼女はイノをしばらくマジマジと見ていたが、それからゆっくり話し始める。

 

「貴方の言う通り……私はSAOからの生還者……そして、SAOの中で大切な人を……弟を亡くしたの……」

 

「……そうだったか……」

 

彼女は瞳に哀しみを滲ませながら、話し続ける。

 

「私は弟が小さい頃から可愛がっていて、いつも一緒で……SAOも弟が欲しいからって一緒に買ったの……そしてデスゲームに巻き込まれて……私は怯えてばかり……でも弟は、あの子は勇敢で正義感の強い子だったから、いつも前で戦ってた……」

 

「……だからこそ、か……」

 

「うん、あの子は私を逃がすために、囮になったの……私を逃がす時あの子言ったの……<俺の分まで生きて>って……まだ12才なのに……!あの子必死に……ッ!」

 

「……」

 

彼女の過去を聞き、何故アバター<イノ>をやたら可愛がってきたのか、彼は分かった。

滝30は自分と弟を重ねていたのだと。

12才で、姉を守るために自らを犠牲にするなど、随分大人びていたみたいだからよけいに被ってしまうのだろう。

 

「あの子の言葉通り、今でも生き残ってきた……でもね時々思うの……<貴方に生きて欲しかった>って……私なんかが生き残るより、あの子に生きて欲しかったのに……って……」

 

彼女は今でも自分を責め続けていた、そうしたからと言って彼が戻る訳ではないと分かりながらも、そうし続けるしかなかった。

そうしなければ自分を保てなかった。

だが同時にそれは、彼女も弟も救われない選択だ。

そう思ったイノは、彼女の顎の先を指で挟み、顔を自分に向ける。

 

「えっ?」

 

「そんな事を言うな、弟が悲しむぞ」

 

困惑する彼女に、イノは諭す。

 

「生きて欲しかったのは、弟だって同じだ……何のためにあいつが身体を張った?君を守るためだろう?なのに私なんかが生き残るより、なんて考えるのも、口に出すのも、弟の犠牲を無駄にすることになる……違うか?」

 

「あ……あぁ……」

 

滝30は何も言えなかった。

彼の言うことは事実だと、自らが理解していた。

イノは彼女の目をしっかり見て言う。

 

「逃げるのは嫌なんだろ?なら弟からも逃げるな……現実から目を反らすな……真に弟に思うべきは、言うべきはそんな言葉じゃないだろ……」

 

「……」

 

イノは滝30の肩をポンと叩き、立ち上がり、切り替えるために背伸びをし、彼女を見る。

 

「さ、<姉ちゃん>!言ってみろよ!俺はずっと待ってたよ、だってこのままじゃ俺も浮かばれないし、姉ちゃんも辛いだろ!」

 

「ーーーーッ!!!?」

 

そう言ってイノは子供らしくニカッと笑う。

滝30は驚愕する、今まで重ねていただけのイノが、本当に弟に見えたからだ。

 

「ほらっ!」

 

「……」

 

「俺姉ちゃんを守ったんだぜ!」

 

「……がとう……」

 

「えっ!?聞こえない!!」

 

「ッ! <ありがとうッ!!>」

 

彼女は叫んだ、言えなかった言葉。

彼の死から逃げるのに必死で、口に出せなかった言葉。

<ありがとう>……その感謝の言葉を。

彼が死んでから幾年が過ぎ、ようやく彼女は彼の死を真の意味で受け止めた。

 

「……こっちこそありがとう、ずっと生きていてくれて、俺の言葉を覚えてくれていて……ありがとう、お姉ちゃん……さようなら」

 

「ぐすっ……さようなら、仁(じん)……さようなら……」

 

泣き崩れる滝30。

イノは彼女に寄り添う。

 

「頑張ったな……やれば出来るじゃないか……ちゃんと逃げずにお姉ちゃん出来たよ、お前は……」

 

「うあああああぁぁッ!!」

 

すがり付く彼女を抱き締め、微笑むイノ。

冷たい空気が二人をそっと撫でた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

あの後、二人はクエスト起動キーを動かし中で待ち構えていた、騎士のアンデット系のボス「ザ・ナイト・オブ・リッチ」と相対した。

強力な斬撃とブレスでかなり苦戦したが、滝30の果敢な援護

と、イノの剣技が勝り、何とか倒すことが出来た。

 

「んで、ドロップが盾か……最近STR重視に切り替わったのが、ここで功を奏すとは……」

 

不死鳥が描かれているが、装飾が禍々しく、イノを覆い隠せる程の赤い大盾であった……名は<アエテルヌム>と言った。

 

「まあ、こっちは良いとして……クエスト報酬が<ウェディングベール>だった……どう使えと……」

 

鉄道に揺られながら、ベールを見つめるイノ。

ふと前にいる滝30がこちらを見ている事に気づく。

 

「? 何だよ?」

 

「あ、いや、あのね……こんな事言ったら変に思われるかもしれないけど……着けてみたいなぁ……なんて……」

 

「……これをか?」

 

彼女は頷く。

考えれば、彼女は協力者になってくれた、それに女の子なのだしこう言う物にも憧れるだろう。

イノはそう思い、立ち上がり彼女の前に来て、ベールを彼女の頭に被せてやる。

青い綺麗な髪に、真っ白なベールはとても映えた。

彼は臆面もなく言う。

 

「似合ってる」

 

「ーーーー」

 

みるみる滝30の顔が赤くなっていく。

そして俯き、呟く。

 

「あ、ありがと……」

 

「ん、どういたしまして」

 

イノは笑って彼女の対面に座る。

滝30はいまだに真っ赤で、イノは噴き出す。

 

「フッ、恥ずかしいなら取れば?」

 

「! いい!良いの!」

 

滝30は大袈裟に首を横に振る。

その姿に苦笑したあと、イノは言う。

 

「言い忘れてた、<ありがとう>」

 

「……こちらこそ、<ありがとう>」

 

二人は互いに感謝し、互いを理解しあった。

イノと滝30の関係は<今>、始まったのかも知れない。

 





滝30→たきさんじゅう→たき三重→多木みえ→多木美恵。
なんとめんどくさい名前(笑)

と言うわけで美恵ちゃんとはイノとしてフラグが建った。
これはショタコン疑惑まったなし!
……まあ、いつかはそれも無くなりますよ(ショウガクセイハサイコウダゼ
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